新たに総合プロデューサー相馬千秋氏を迎えて「豊岡演劇祭2021」9月に開催決定

2021.4.3
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「豊岡演劇祭2021」記者会見より。(左から)中貝宗治豊岡市長、平田オリザ氏、相馬千秋氏。

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兵庫県豊岡市とその周辺地域を会場に、様々なジャンルのパフォーミングアートを上演する「豊岡演劇祭」。昨年はコロナ禍の中、第一回目を開催して、規模を縮小したにも関わらず、県外の観客も含めて5000人近い人々が来訪した。その成功を受け「豊岡演劇祭2021」が、2021年9月9日(木)~20日(月・祝)に開催されることが決定。また今回から新たに、アートプロデューサーの相馬千秋氏が、演劇祭の総合プロデューサーに就任することが、3月30日に豊岡市内で行われた記者会見で発表された。

豊岡市長で、演劇祭実行委員会会長の中貝宗治氏は、昨年の演劇祭について「たくさんの方々に宿泊していただき、演劇が地域の経済につながるという、観光の新しい形──演劇ツーリズムの形が見えてきたスタートとなりました。と同時に、様々な課題もあったので、その反省に立ちまして、総力を上げて大成功に導きたいと思います」と意欲を語る。

(左から)中貝宗治豊岡市長、平田オリザ氏、相馬千秋氏。

またこの演劇祭を行うことで、豊岡市および但馬エリア一帯に、次のようなメリットがあることを述べた。

一つは地域経済。劇団・スタッフの方だけでも約3,500泊いただき、特に神鍋エリアはコロナで宿泊客がほとんどいなかったけど、(演劇祭のあった)9月は対前年比が少し減るぐらいで収まり、演劇祭がいかに地域を支えるかが明らかになりました。次に教育や学習への効果。4月には[芸術文化観光専門職大学]が開校し、世界最先端の取り組みの中で実習ができるのはいい経験になると思います。また豊岡市の中学生が、この演劇祭に来られるお客様に、自分たちの故郷について語るという交流を予定しています。このことによって、地域への愛着はさらに高まり、交流の刺激によって視野が大きく広がるだろうと思っています。

3つ目は、豊岡や但馬のブランド価値を上げる。昨年の演劇祭も『よくコロナ禍の中で旗を上げてくれた』という高い評価を受けました。演劇祭を脈々と受け継ぐことを通じて、但馬のブランド価値が上がり、それが地域の誇りにつながるという好循環が期待できます。そして4つ目は、非常に広いエリアでまばらにある会場間の移動を、最先端のテクノロジーでどう埋めるかの実験を始めていますが、それは非常に非効率な、今の豊岡市全体のモビリティをどうすればいいか? という解決の可能性を探るため。この結果は、おそらく日本中の過疎地の答につながっていくという、壮大な目的を掲げています」。

「豊岡演劇祭2020」ハイライト動画。

昨年に引き続き、フェスティバルディレクターを務める「青年団」主宰の平田オリザ氏は、次のように概要と抱負を語った。

会場はほぼ昨年と同様ですが、今年からは養父市と香美町も参加し、範囲を広げて上演します。昨年は確実に成功させるために、ほとんど私の知ってる劇団に来ていただきましたが、今年からは公式プログラムも公募の枠を作って、広く参加を募りたいです。多くの方が楽しめるものから先端的なものまで、できるだけ幅広い演目にしたい。ネームバリューがあったり、『これも演劇なの?』と思うような所とも、交渉している最中です」。

何よりも大事なのは、安全に開催すること。昨年の今頃はコロナの正体がよくわからなかったけど、今はだいたいの波の予測が付くようになってきた。昨年はそれができなくて、特に広報活動があまり打てなかったので、今年はより広報に力を入れて、多くの方に来ていただきたいです」。

(左から)中貝宗治豊岡市長、平田オリザ氏、相馬千秋氏。

そして今回から、「フェスティバル/トーキョー」を世界水準の演劇祭に育て上げたのを始め、数々のフェスティバルのプロデューサー・キュレーターを務めてきた相馬千秋氏が、総合プロデューサーに就任。その狙いについて、平田氏は以下のように語る。

国際演劇祭をプロデュースするのは、相馬さんの得意分野。私と相馬さんの、2つのコネクションとネットワークを使っていきたい。芸術面はディレクターの私が全責任を負って、相馬さんは『こういうお芝居をやりたい』というのを実際にできるかどうかを考える。全体のタイムテーブルを決めるなどの実務面も含めて、どうやって(演劇祭を)実現していくのかが、総合プロデューサーの仕事だと考えています」。

その相馬氏は「それぞれの都市や、託されたミッションに対して、そのフェスティバルがどんな役割を担い、何を目指すのか? それに対して、アーティストがどういう作品を作り、どう育っていくか? を考えるということを、ずっと仕事にしてきました。豊岡でも、お役に立てる部分があるかなと思います」と挨拶。

「豊岡演劇祭2020」で上演された、『街角の恋人~湯けむりサーカス編~』。 [撮影協力]日高神鍋観光協会

相馬氏は、豊岡市内にある[城崎国際アートセンター]の、開設当時からの公募プログラム選考委員でもある。そのため豊岡の街には長らく親しんでおり、演劇祭が成長するポテンシャルのあるエリアだと分析。その上で、演劇祭の理想像を以下のように語った。

2014年の開館以来、毎年のようにこのエリアを訪れてますけど、何度来ても味わい深く楽しめるし、新しい発見がある。地域によって多様な文化と歴史に触れることができ、さらにそこに演劇が加わったら、毎回マストで来るような場所になるだろうと。シアターゴアな人たちだけでなく、地域を楽しむ人もこぞって来るようなポテンシャルをすごく感じるので、これから5年、10年かけて発展させていければと思います。

コロナの時代においては、芸術を体験する人々の心も変わってきているはず。面白いものをたくさん観ればいいという価値観から、一つひとつの経験を大切にして、そこから癒やしであるとか、未来を見据えていくヒントを得たいという形になってきています。そういう社会や時代の変化を先取りして、提示できるようなプログラムにしていきたいし、それが芸術の持つ役割──未来を予見し、過去を反省していくということにつながるのではないかと思ってます」。

城崎温泉を始めとする、抱負な観光資源が豊岡・但馬エリアの強み。 [撮影]吉永美和子

また平田氏は、演劇祭の戦略について、以下のようにも語った。

今回は国際共同制作も少しずつ入れながら、来年以降の本格的な国際演劇祭の下地になるような演劇祭を目指したいです。今は東南アジアのアートシーンが急成長していますが、[城崎国際アートセンター]に採択されると、それがお墨付きとなって、自国の助成金を得られると。まだ日本には──あと10年かもしれませんが、それぐらいのブランド力が残っています。その間に、豊岡演劇祭をアジアのハブの演劇祭に育てたいし、そこまで行けばすぐにでも、後進に道が譲れる。その基礎作りをするのが、私の仕事だと思っています。

まだ東京の演劇界は相当疲弊をしており、稽古場が借りられないという理由で、上演を中止する団体も出ています。『上演はしたいけど場所がない』という団体がたくさんいる中で、今は豊岡が表現の場を開くのが重要な役割だと思うし、その場所を守りたいと思います」。

公式プログラム&フリンジ公募の詳細は、後日発表される。昨年のフリンジでは、劇場施設での上演だけでなく、風光明媚な海岸や高原などの、豊岡の地の利を生かした作品も続出し、地元の人たちからも称賛されたという。特に公式プログラムまで公募する演劇祭は珍しいので、今夏以降の予定が見えてない人たちは、応募する価値は大いにあるだろう。

出演するアーティストや団体は、6月中を目安に発表する予定。また今年は、各種交通機関や旅館組合の全面協力が期待できるとのことなので、演劇祭用のお得で便利な旅行プランも充実するはず。最新の情報は、豊岡演劇祭の公式サイトで随時チェックしよう。

(左から)「豊岡演劇祭2021」フェスティバルディレクターの平田オリザ氏、総合プロデューサーの相馬千秋氏。

公演情報

「豊岡演劇祭2021 Toyooka Theater Festival」
 
■会期:2021年9月9日(木)~20日(月・祝)
■会場:城崎国際アートセンター、玄武洞、豊岡市民プラザ、豊岡市民会館、出石永楽館、江原河畔劇場、ほか豊岡市内各所+養父市・香美町内(会場選定中)
■出演アーティスト:
公式プログラム/10団体程度。
フリンジプログラム/25団体程度。
■問い合わせ:0796-21-9081 toyooka.theaterfestival@gmail.com(豊岡演劇祭 実行委員会) 
■公式サイト:https://toyooka-theaterfestival.jp/