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結成1ヶ月でEggsを席巻した4人組・yutoriの新曲「午前零時」を聴いた

2021.5.24
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yutori

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yutoriという4ピースバンドが今じわじわと注目を集めていることをご存知だろうか。メンバーは、佐藤古都子(Vo/Gt)、内田郁也(Gt/Cho)、豊田太一(Ba)、浦山蓮(Dr/Cho)。yutoriというバンド名は、4人が2001~2004年生まれでいわゆる“ゆとり世代”であることから。

2020年11月に結成。その約1ヶ月後、初の楽曲として「ショートカット feat. 矢口結生」をEggsに投稿したyutori。すると、同曲はEggs内のランキング4部門(楽曲デイリー、楽曲ウィークリー、アーティストデイリー、アーティストウィークリー)で1位を獲得し、以降、3週間連続で1位を保持した。実際に曲を聴いてみると、確かにバンドのポテンシャルを感じ取ることができる。

「ショートカット feat. 矢口結生」は、気持ちが重なることはもうないと自覚している男女の曲で、それぞれの心情をツインボーカルが叫ぶように唄っている。女声の方がyutoriの古都子で、男声の方はフィーチャリングの矢口結生(埼玉の4ピースバンド・ペルシカリアのボーカル&ギター)。二声が一緒に唄っている箇所でも互いに調子を合わせることはなく、ニュアンスが違うのみならず、それぞれが違う言葉を唄っている箇所すらある。バラバラになった二人そのもののような歌だ。

そのスリルをさらに加速させるのがバンドのサウンドで、特にボーカルのメロディに絡みつくギターの動きは耳に残る。メンバーは主に2010年代の邦楽ロックから影響を受けているのだそう。初期衝動に満ちた音色からは10代ならではの青さと眩しさを、各楽器のフレージングからは、自分たちの好きな音楽を衒いなく鳴らす素直な心を読み取ることができた。

この原稿を書いている5月中旬時点でも、Eggsのランキングには「ショートカット feat. 矢口結生」が残留している。あの曲がもたらした熱がまだ冷めないなか、yutoriは5月22日に新曲「午前零時」を配信リリースした。「ショートカット feat. 矢口結生」は矢口結生が書いた曲だったが、今回は作詞も作曲もyutori名義。また、「ショートカット feat. 矢口結生」はEggsを通して公開された曲だったため、バンドにとっては今回が実質初のリリースとなる。

「午前零時」

ヒリヒリとした質感のアッパーチューンだった「ショートカット feat. 矢口結生」に対し、「午前零時」はミドルバラード。一人部屋にいる時間の孤独感から脳内をぐるぐると巡る考え事、愛情が転化し執着と呼べるほどの狂おしさを纏っていく様など、静寂も激情も鳴らすことで深夜のワンルームの内側を表現している。サビでは古都子がファルセットで唄っていたりと、ボーカルも全体的に表情豊かであり、「ショートカット feat. 矢口結生」だけでは見えなかった側面を覗かせてくれているのも嬉しい。

歌詞で特に印象的なのが計4回登場する“バーコード”という単語(初出時は<袖の隙間からたくさんのバーコード>)。マカロニえんぴつの「ヤングアダルト」がそうであるように、映像に起こすとショッキングに成り得るシーンをどう言い表すか、その慎重さと誠実さに、ソングライターの作家性――もっと言うと、越えられない夜を抱える人にどれだけ寄り添おうとしているか――は表れる気がする。歌詞の内容が何に基づいているかは定かではないが、感情の乗った歌唱および演奏を聴いて、背景に切実な願いがあるのではと想像してしまった。

なお、「午前零時」はタワーレコード渋谷店のバイヤーによるインディーズバンドのコンピレーションアルバム『wish me luck3』に収録されるとのこと。リリースは6月9日なので、盤で欲しいという人はそちらを待つのがおすすめだ。

現時点で発表されているyutoriの楽曲は「午前零時」と「ショートカット feat. 矢口結生」の2曲のみ。また、メンバーの受験のためライブ活動は今年の10月以降に始動予定だそうだ。つまり、活動が本格化するのはこれから。今のうちにチェックしてみてはいかがだろうか。


文=蜂須賀ちなみ

リリース情報

yutori「午前零時」 
ダウンロード&サブスクリプション配信中
https://orcd.co/gozenreiji