ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2021年夏編】

2021.6.30
コラム
動画
舞台

画像を全て表示(2件)


祝・ブロードウェイ再開(されそう)! 2021年5月6日、クオモNY州知事が9月14日からの再開を認めると発表し、それを受けて各公演が次々と再開日を発表。ミュージカルでは、最新のトニー賞受賞作『ヘイデスタウン』が9月2日より先陣を切り、14日から『シカゴ』『ライオンキング』『ウィキッド』『ハミルトン』のロングラン組が続き、さらには開幕予定日当日から長期閉鎖に入るという憂き目に遭っていた新作『Six』が17日からプレビューを再開し…と、6月23日時点で『ウエスト・サイド・ストーリー』といくつかの新作を除く25作品が具体的な再開日を明示している(詳細は下記のリストをご参照)。

まだまだ予断は許さないし、予定通り無事に再開されたとて東京オリンピックを抱える我々が行ける日となると未知数中の未知数なわけだが、まずはホッとひと安心。というわけでこの連載も、ロングラン作品を毎回3本ずつ紹介する、という当初予定していた形に戻すことにする。…といっても、閉鎖期間中に『アナと雪の女王』『ミーン・ガールズ』がひっそりと閉幕を決めてしまったため、すでに残るロングラン作品は5本しかないのだが。一刻も早く、新作レポートをお届けできる日が来ることを願ってやまない。

■ロングラン第7位:『ハミルトン』

『イン・ザ・ハイツ』映画版の公開を控える天才リン=マニュエル・ミランダの、『~ハイツ』(2008年初演/原案・作詞・作曲・主演)が出世作ならこちら(2015年初演/脚本・作詞・作曲・主演)は紛う方なき代表作。日本でも上演されたばかりの『~ハイツ』を履修済なら彼の書くラップ主体の音楽がとんでもなくかっこよくて気持ちよくて中毒性があることはご存じだろうが、そんな超現代的な音楽でアメリカ建国の父アレクサンダー・ハミルトンの伝記――要は時代劇を描いてしまったことの革新性と、それが単なる成立を越えて最適解として存在していることの奇跡に言葉を失うこと間違いなし。振付、衣裳、ヘアメイク、セットとの化学反応も凄まじく、たとえ言葉が聴き取れなくてもストーリーが追えなくても、演劇界の話題の枠を超えて社会現象にまでなった本当の理由はアメリカ人にしか分からなくても、ミュージカル史に残る大傑作であることは誰が観ても明らかだろう。必修。

■ロングラン第8位:『ディア・エヴァン・ハンセン』

『ハミルトン』の翌年のトニー賞を席巻した作品。軽い精神障害を抱える男子高校生エヴァンと彼を取り巻く友人たち、また彼らと親世代との確執や絆を、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポール(『ドッグファイト』「グレイテスト・ショーマン」)によるキャッチーな音楽とマイケル・グライフ(『RENT』『ネクスト・トゥ・ノーマル』)によるスタイリッシュな演出で描く。パセック&ポールがリン=マニュエル・ミランダに次ぐ時代の寵児みたいな扱いをされていたことから、『ハミルトン』並みの衝撃を期待して行ったら正直そこまでではなかったのだが、刺激的な作品であることは確かなので日本語版を待望中。心情の細かいところまで描いた作品だけに、母国語で観たら改めて衝撃を受ける可能性もありそうだ。

■ロングラン第9位:『カム・フロム・アウェイ』

『~ハンセン』が席巻した年のトニー賞で、辛うじて演出賞をもぎ取ったカナダ生まれの作品。思えばこの年は大変な豊作で、筆者的には無冠に終わりロングランにもならなかった『グラウンドホッグ・デー』が1番、この『カム・フロム・アウェイ』が2番、『~ハンセン』が3番目に好きだった。911の日、アメリカの空港に着陸できずカナダの小さな町に降り立った飛行機の乗員・乗客と、受け入れた町の側の人々とをたった12人のキャストが演じ分けながら、そこで生まれた数々のドラマを丁寧に描き出していく。実話に取材した力強いストーリーとシンプルな演出に胸打たれ、休憩なしの100間というコンパクトな上演時間も手伝い、観ている間から早く立ち上がって拍手がしたくて仕方なくなった良作だ。

【2021-2022シーズンの新作】
*情報は2021年6月23日時点のもの

『1776』2022年秋プレビュー開始予定
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/1776/

『Caroline, or Change』2021年10月8日プレビュー開始予定
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/caroline-or-change/

『アメリカン・ユートピア』2021年9月17日プレビュー開始予定
映画版も公開中の、ミュージカルに近いコンサート。2019-20シーズン以来の再演。
https://americanutopiabroadway.com/

 

『Flying Over Sunset』2021年11月4日プレビュー開始予定
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/

『Freestyle Love Supreme』2021年10月7日プレビュー開始予定
『ハミルトン』クリエイター陣が製作する即興ミュージカル。2019-20シーズン以来の再演。
https://freestylelovesupreme.com/

『MJ The Musical』2021年12月6日プレビュー開始予定
マイケル・ジャクソンの半生を『パリのアメリカ人』のC・ウィールドンの演出・振付で。
https://mjthemusical.com/

『ザ・ミュージックマン』2021年12月20日プレビュー開始予定
H・ジャックマンとS・フォスターが夢の共演。スタッフ陣も盤石で大ヒット確実!
https://musicmanonbroadway.com/

『シング・ストリート』2021年冬または2022年プレビュー開始予定
同名のアイルランド映画(副題「未来へのうた」)の舞台化。オフでの好評を受けてBW入り。
https://singstreet.com/

『お熱いのがお好き』2022年プレビュー開始予定
M・モンロー主演の名作映画をC・ニコロウ(『アラジン』)の演出・振付で舞台化。

『The Who’s Tommy』2021年プレビュー開始予定
中川晃教主演で日本でも上演されたロックオペラの新演出版。演出は再びD・マカナフ。
https://tommythemusical.com/

【2019-2020シーズンの新作】

■閉鎖前に開幕していた作品

『Girl From the North Country』2021年10月13日再開予定
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/

『Jagged Little Pill』2021年10月21日再開予定
アラニス・モリセットの同名アルバムをミュージカル化。演出は『ピピン』のD・パウラス。
https://jaggedlittlepill.com/

『ムーラン・ルージュ!』2021年9月24日再開予定
B・ラーマン監督映画をA・ティンバースが演出した話題作。2023年、日本での上演決定!
https://moulinrougemusical.com/

『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』2021年10月8日再開予定
ロンドンでの好評を受けてBW入り。オリヴィエ賞ノミネートの主演女優が続投。
https://tinaonbroadway.com/

『ウエスト・サイド・ストーリー』
ヴァン・ホーヴェ演出、ケースマイケル振付による大胆リバイバル。評判イマイチ…⁉
https://westsidestorybway.com/

■プレビュー中に閉鎖期間に入った作品

『カンパニー』2021年12月20日プレビュー再開予定
ソンドハイムの傑作コメディを『ウォーホース』の演出家でリバイバル。P・ルポンが出演。
https://companymusical.com/

『ダイアナ』2021年11月2日プレビュー再開予定
ダイアナ元妃の人生を描く。無観客収録された舞台が10月からNetflixで配信予定。
https://thedianamusical.com/

『ミセス・ダウト』2021年10月21日プレビュー再開予定
同名映画を『サムシング・ロッテン!』の作家兄弟と売れっ子演出家J・ザックスが舞台化。
https://mrsdoubtfirebroadway.com/

『SIX: The Musical』2021年9月17日プレビュー再開予定
ロンドンで大ヒット。ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!
https://sixonbroadway.com/

 

 

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』2021年9月28日再開予定
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』2021年9月14日再開予定
『オペラ座の怪人』に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』2021年9月14日再開予定
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/

『オペラ座の怪人』2021年10月22日再開予定
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/

『ウィキッド』2021年9月14日再開予定
開幕から15年が経ち、ようやくに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『Ain’t Too Proud』2021年10月16日再開予定
『ジャージー・ボーイズ』のチームが描くテンプテーションズの軌跡。二番煎じだが良い。
https://www.ainttooproudmusical.com/

『ブック・オブ・モルモン』2021年11月5日再開予定
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/

『カム・フロム・アウェイ』2021年9月21日再開予定
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/

『ディア・エヴァン・ハンセン』2021年12月11日再開予定
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/

『Hadestown』2021年9月2日再開予定
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』2021年9月14日再開予定
超入手困難なモンスター級ヒット作。ディズニー+で配信中(英語音声のみ)。
https://hamiltonmusical.com/