THE ORAL CIGARETTESの最新曲「Red Criminal」が告げる、"ロックバンド"の帰還とさらなる確信
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THE ORAL CIGARETTES 撮影=高田梓
THE ORAL CIGARETTESが6月30日にリリースした新曲「Red Criminal」。そこでは迷いなく、気負いなく、これまで以上に洗練されたオーラル印のロックが炸裂している。軸足はロックに置きつつも音楽性の幅を大きく押し広げた昨年のアルバム『SUCK MY WORLD』以降、彼らはなぜ、いかにして再び“ロックバンドであること”と真正面から向き合うようになったのか。ゲーム/アニメ『SCARLET NEXUS』とのタイアップといった背景の部分や制作過程で試みたことなども含め、たっぷりと語ってくれた。
――第一印象は「これこれこれ!」でした。『SCARLET NEXUS』とオーラルの関係でいうと、去年の段階から「Dream In Drive」がゲームタイアップ曲として発表されてましたが、アニメのオープニングテーマ「Red Criminal」に関してはどのような出発点だったんでしょうか。
山中拓也:いつやったかな?
あきらかにあきら:たしか去年の8月とかには制作してたから――
鈴木重伸:曲作りで久々にスタジオ入った去年の夏フェス前のタイミングで、拓也がリハ以外の空いた時間で何曲か試したいメロディとかフレーズあるからっていう話で。そのタイミングで僕ら3人は初見で聴いて、その場で合わせたのがこの曲の始まりですね。
――『SCARLET NEXUS』とのお話はもっと以前からあったわけですよね?
山中:そうですね。「Dream In Drive」を提出したタイミングで先方さんがめちゃくちゃ気に入ってくれて、アニメになるからそれも頼みたいって言ってはります、っていう話を会社の方々からお聞きして。だから立て続けの一連の流れで『SCARLET NEXUS』とは関わっていたイメージです。
――つまり「Red Criminal」は当初から『SCARLET NEXUS』に向けて制作したと。
山中:書き下ろしで書かせてもらってるんですけど、俺らのテンション感としては『SUCK MY WORLD』で拡げるところまで拡げたので、もう一回ちゃんとシュッとロックバンドに戻るっていう……「ロックバンドってここまでやっていいじゃん」を全部『SUCK MY WORLD』で提示できたので、コロナの影響も相まってですけど、ここからはもう一回ロックバンドのカッコよさみたいなものに戻ってみようか、みたいな。
――僕が「これこれこれ!」と感じたのはそこなんだと思います。『SUCK MY WORLD』での多様なアプローチを経た今作は、ずっとやってきたことを今あらためてやっているというか。曲作りに関しては、コロナ禍でいろいろストップした経験やそこでのインプットも作用していますか?
山中:俺は多分、生きてきた中で去年が一番曲を作ってたと思うので。あと、「こういうジャンルはこういう並びでやったらいいんだ」「こういう構成でやったほうがいいのか」とか、いろんな曲からのインプットをすごく突き詰めた一年でした。
――インプットとして色々な曲を聴く時間はたくさん取れたと思うし、ライブでお客さんと向き合ったり、他のバンドを観たりする刺激が少ないぶん、より音楽的に広く深く追求していくことになったのかなと。
山中:これまで誤魔化してたといったら変なんですけど、俺らは専門学校に入ってたわけでもないので、テンション感でカバーしてたりっていう部分があって、そこを一旦冷静に考える時間があった感じですね。音楽家の友達といろいろ会話したり電話とかLINEで曲のデモを聴かせたりする中で「もっと知っとかなあかんことがあるな」「なるほど、音楽を専門でやってる人はメロディの譜割がこういう風に行ったほうが気持ちいいと思ってるのか」とか、一旦自分を無視して全部基本的な部分を取り入れる、天才たちの意見を取り入れるみたいな(笑)、そういうことはやっていて。それをそのまま終わらすんじゃなくて、一回理解したことを自分なりに落とし込んでいくために取捨選択していく作業をやっていけたんちゃうかな、昨年は。
――「なんとなく」でやっていたことの答え合わせみたいに、自覚したこともあったり?
山中:ありますあります。だからこの曲はこういう受け方をしたんだとか、自分ではずっと気付かなかったことを友人たちに教えてもらったり。「この曲はこれができてるよ」「この曲はこうしたほうがもっと良かったかもね」とか。緊急事態がちょっと空いたときに何人かで温泉に行ったときも、夜中まで一日中そういう話をしたりして、自分も刺激をもらえていたので。トラックメイカーとのやりとりも増えたから、相手が作ったトラックをそのままデータとして見れるっていうのは、俺の中でかなり勉強させてもらった部分ですね。
――そのへんはメンバー間でも共有していったんですか。
山中:してるのもあるし、してないのもあります。例えばコード進行の部分はあきらと考えたりもするので、そこで必要になる俺の身につけた知識を共有して、「これだったらどう捉える?」みたいな話し合いをして。でも、あまりにも全部を共有しすぎるのも幅をどんどん狭めちゃうし、ワンマンバンドになってしまう気もするから、取り入れたものはとりあえずデモの中に入れておいて、あとはメンバー間で料理してもらったほうがオーラルになるっていうのは絶対あるので。
あきら:ひとつ考えることや選択肢が増えたというか。たとえば拓也の友達の誰々はこういうメロディにこういうコードをつけるらしいよ、そのメロディとコードの関係性はこうで、みたいな話をされたのを今思い出したんですけど。世には出てない新曲の中でも、拓也のデモが来たときに「こういうコードの使い方もできるかも」っていうものに変えて提案したりという作業を試したものがありますし、良いものを教えてもらったなっていう感覚ですね。
――新たに見えてきたものが多かったゆえに、こういうど真ん中な曲を過去作と差別化して作れたんじゃないかとも思うんですけど。
山中:それもありますし、良い意味で「知った」ことによってロックバンドのカッコよさをより感じられたのもあったんですよね。いろんな他ジャンルのものを自分の中に取り入れたことで、「じゃあロックバンドのカッコよさって何?」みたいなところに辿り着けたので。知識としていろいろバーっと入れましたけど、思ったよりも作り方としてはそんなに変わってなくて。ロックバンドのカッコよさって衝動的な部分だとあらためて気づけて、ここはこう行ったほうが良いかもしらんけど、こっちの方がロックはカッコいい、ここを譲ったら他のポップスと変わらんくなるやんとか。そういう考え方ができるようになりました。
俺、別で始めたボイステラス6っていう企画ではトラックメイカーとトラックを作る作業があったりするので、余計に4人で音を鳴らすことのカッコよさだったり、バンドサウンドのカッコよさに気づくことがいっぱいあって。これからはその気づきを全部ロックとして落とし込んでいこう、みたいな。そうやって研ぎ澄ませたものを取捨選択していった感じですね。
――「Red Criminal」はリハの合間にスタジオでメンバーにお披露目したとのことでしたが、デモをしっかり作りこんでからメンバーに渡すのが最近のやり方でしたよね?
山中:ずっとそうしてきてましたね。でも今回の「Red Criminal」はスタジオでドンで合わせたほうがもしかしたら衝動的でカッコいいかもしれないし、一回ちょっと昔の作り方に戻ろうかって。
鈴木:後ろでドラムの生音が鳴ってたほうがイメージがつきやすいみたいな話をして。
――そのときの曲に対する印象とかって覚えてます?
中西雅哉:単純にその(制作の)やり方が懐かしいなっていうのが最初でした。僕はわりと変に頭でっかちなので、昔は拓也の制作の過程で勝手に脳内再生して考えたりもしたんですけど、それがハマらないことも多くて。それだったら自分の作業は後々できるし、拓也のイメージに近づけることを一番優先にしようと思ってました。「なんか違うな」っていうときはわかるんですよ、後ろ姿をみていると(笑)。
――受け取ったものに対して直感的にアプローチしつつ、そこでの反応を見ていくと。シゲさんはどうでした?
鈴木:パソコン上でやることに僕自身も慣れてきて、そっちがだんだん主流になってきたタイミングでもあったので、まさやんも言っていたようにまずは懐かしい感覚がありました。地元の奈良にいたときはずっとそういうスタジオでやる環境でしたけど……今やから言えるんですけど、せーのドンで何かをやりましょうっていう、瞬発力が試されるのはあんまり得意じゃなかったんですよ。でも久々にやってみて、パソコン上やったら「拓也はこれどうするんねやろ」「どういう意図なんやろ」みたいなことを音から感じ取るしかなかったのが、会話ができる環境というのは楽しかったですね。
あきら:僕はどっちかというとシゲと逆なので、セッションが好きでパソコンはまだ全然苦手で「みんなごめん」って感じなんですけど(笑)。だからスタジオでやるのは心地よかったし、最初にバンドを始めたときに感じた楽しさにひとつをまた体感できたのは嬉しかったですね。あとは単純に、当時コロナで3ヶ月くらい顔を合わせてなかったので、そもそもみんなで合わせるの楽しいやん、この勢いで曲できたら最高やなって。そういうのも踏まえて僕はずっと伸び伸びと、「楽しかったな、この制作は」っていう思いでした。
――レコーディングも結構前ですか?
鈴木:レコーディングも秋前くらい?
中西:10月とかかな。
――かなり前に作り終えていたんですね。
山中:『SUCK MY WORLD』が終わったら「もう一回ロックに絞っていこう」みたいなテンション感になっていたのが、ツアーができなくなったことで、『SUCK MY WORLD』をライブでやっていないのに新曲を出すのは、ファンの立場からすると絶妙な気持ちにならん?って思って。だから去年一年は『SUCK MY WORLD』をちゃんと聴いてもらう期間として設けてたんですけど、「ロックバンドどう?」みたいなことをちゃんと突きつけられるテンション感は、多分あのときやからこそ増して出ていたと思うし、あのとき曲作りの作業をやっていなかったら、違う目標みたいなものが見えてブレてたかもしれない。
このコロナがどんどん長引く状況にあって、ロックバンドの重要さだったり、「ロックバンドはもっとカッコいい」っていうことを一から世間に伝えていく作業に対して着実に意識を向けていけたというか。「Red Criminal」を去年のタイミングで作っていたのは結構デカかったんちゃうかなと思います。
――当時、いろいろ先行き不透明でツアーの中止などもあった頃の心境や思考は、歌詞に反映された部分もあります?
山中:基本的にはタイアップで先方もいる話なので、詞に関してはアニメの脚本を読んで、主人公2人の感情だったり、絶望的な運命に対してどう前向きに動いていくのか?であったり、どう助け合っていくのか、何かを失うことがわかっていても自分の正義を貫くのか?とか……けっこう残酷な状況の中で主人公は戦っていかなきゃいけないから、そういう状況下の歌詞を書かなきゃなと思っていたんですけど。でも、あのタイミングってみんながコロナに慣れてなくて、これからどうしたらいいか全然わからなかったし、自粛すんのせえへんので争いが起こったり、マスクちゃんと配れよとか、一番荒れてた時期やと思うんですよ。
――そうでしたね。
山中:それで俺もめちゃくちゃストレス溜まってたし。あの状況下はかなりこの『SCARLET NEXUS』とマッチする部分があったので、アニメの主人公からいただいた言葉とかも歌詞の中に乗せながら、それをどう今のコロナ禍で伝えていくのかは意識しました。だから順序的には『SCARLET NEXUS』→コロナっていう感じですけど――。
――リンクする部分もかなりあった。
山中:うん。僕はけっこう合うなと思ってました。
――“世界”と“自己”とが交互に一対をなすように描かれていく曲ですけど、己と社会との交わりという話は「Shine Horlder」のリリースタイミングで拓也くんとしたことがあるし、このところのオーラルが伝えてきたテーマとも符合しますよね。
山中:たしかに。言われてみたらそうかもしれないです。視野は、世間に対していま何を思うのかがメインになってきてるのかもしれないです、歌詞は。
――サウンドの感触や各楽器のアプローチを詰めていく上でのテーマ、合言葉みたいなものはありました?
山中:アラビアンな感じ、宗教っぽい感じ、みたいなのがあって。オーラルのロックって何だろうってもう一回考えたときに、宗教的なものであったり、アラビアのメロディみたいなんがシゲのリフとかに入っていたりするところが強みとしてあったなって。より宗教的でアラビアンな感じをどこかで出せないかな?みたいな話はスタジオでもしていました。
――“宗教”って字面で見ると意味合い伝わりづらいかもしれませんけど、出だしから音には顕著ですよね。ミサみたいな。
山中:ああ、そうっすね!
――そのまま荘厳に重厚にいくかと思いきや軽快になっていくし、ストレートにロックとしてつるっと聴けちゃうわりに、よくよく聴くと変なこともかなりやっているんですよね。でもそれが別にトリッキーなものには聴こえないという。
山中:それはめちゃめちゃ嬉しいですね。コピーできるもんならしてみろやって思ってますもん(笑)。2枚目のアルバムからそこは変わってないかもしれないですけど、やっぱり1枚目のアルバムで変なことをしすぎたのは正直あって。
鈴木・あきら・中西:(笑)。
山中:なんでこんな変拍子使ってんねやろ、なんでこんな訳わからんリフなんやろとか。それがでもカッコいいと思ってやっていた。その頃、いまも一緒にやっているディレクターから「お前らにとってのロックってこれなの?」みたいな話があって。その人はずっと海外のロックを聴いて育って、ずっと海外に身を置いてた人だから、海外的志向が強いというか。その人と一緒にやっていく中で、俺らも凝ったことはちゃんとやりたい、拘るところは拘りたいっていうのを通しつつ、その人が言う、いかにストレートにロックを届けていくかの大事さも絶対にあるなって思ったので。聴いている人を変な惑わせ方をさせないことがすごく大事だっていう。
鈴木:混乱させない。
山中:そう。「なんか展開変わったね、で、なんでこんなんしたんやろ?」と思われたら終わりというか。「うわ、こう来るのか、カッコいい」ってスラッと聴けたほうが絶対に良いっていうのは、この6〜7年くらいずっと意識してきたことだったので。
――それがここへきて実を結びつつあるのかもしれない。
山中:ある気がします。どちらかというと僕らは捻くれたUKロックっぽい音が好きなんですけど、USロックみたいなストレートであるカッコよさも、どちらの良いところも日本人としてどう落としこむか?みたいなことは面白い作業だなって思うので。わかりやすさはアメリカンロックから、捻くれの部分はUKロックから、最後に歌詞とかメロにジャパニーズロックを押し出していこう、みたいなのは多分、オーラルの楽曲を構成していく良い要素になってるんじゃないかな。最近、それを無意識にやってたんじゃないかなって感じはじめました。
――それは他の音楽家と交わることで自分たちがやってきたことを客観視して自覚的になったというお話とも繋がってきますね。
山中:そうですね。あんまり自分たちの曲を分析することとかなかったので。良いきっかけやったんちゃうかなと思います。
――楽器の話もすると、まずドラムは手数が多くて。
中西:増えましたねぇ。自分でもビックリしてます。デモになってから細かくオカズを入れていくんですけど。僕、あんまりドラムのコピーとか細かくやらないんですよ。それやったら一回デスクトップ上でコピーしようみたいな時期があって、めちゃムズいバンドのドラムとかを全部パソコン上で打ち込んでいってストックしていったら、「こういう展開はやったことないな」っていうのがけっこう出てきて。
身体でコピーしたものをデスクトップ上で表現するのって意外とムズくて、それだったらMIDIの感じで並びを覚えたほうが早いし、その方が僕には合ってるなって気づいたので、後でそれをドラムでコピーするっていう逆のやり方ですね。レコーディングに向けてドラムに向き合い始めたときに、自分で「難っ!」てなってましたけど(笑)、そういう作業は自分のできる範囲でやってない感が楽しいんですよ。
――そういうドラムのアプローチに対してベースはメロディアスな箇所も印象的で。
あきら:そうですね。重めのところ、あんまりいなくていいところ、軽く歌うところ、重めでいながら歌うところみたいな、大きく分けるとその4つを交互に飽きないようにやってる感じです。それもスタジオでやっったときの雰囲気そのままに残してるところもあれば、デモの段階で「ここもうちょっと歌ってほしい」「ドライブしてほしい」って拓也からリクエストがあって「もうちょっと動こうか」みたいな会話もして。ただただセッションするだけだったら生まれなかったフレーズもありましたし、初期衝動は残しつつしっかり今の自分を入れられたかなと思います。昔と比べて、弾くところはちゃんと弾けるようになったし、そこもここ5〜6年で変わったところかなと思います。
――イントロの高いところで鳴ってるリフはギターですよね?
鈴木:ギターですね。
――プラスして途中から低めで良い感じのギターも入ってくるのが印象的ですが、どんな風に詰めていったんですか。
鈴木:イントロの部分は最初、コーラスをメインにしたくてあまり弾いてなかったんですけど、拓也から何かフレーズを、それこそアラビアン的なのをちょうだいって言われて。昔、自分でも「気持ち悪いなぁ」みたいな、良い感じに気持ち悪いフレーズを弾いてたのがあったので――。
山中:「CATCH ME」のときな。
鈴木:「CATCH ME」だ。それを思い出して落とし込んだので、「オーラル、これだこれだ」みたいな印象はそういうところもあるのかなと思います。あと、これは7弦ギターでレコーディングしてるんですけど、多分6弦を無理くりチューニング下げたやつで拓也がデモを弾いてきたんですよ。
山中:そうそうそう(笑)。
鈴木:何回聴いても6弦ギターにその音はない(笑)。どういうこと?って聞いたら、チューニングを1音よりさらに下げてて。
――ビヨンビヨンになりますよね。
山中:ビヨンビヨンです。
鈴木:それだとさすがにレコーディングで弾けたもんじゃないから、エンジニアの人が持っていた7弦ギターを借りて。
――なるほど。で、全体感としては浮遊している箇所もありラップ部分もありと、やっぱり“変”な曲ではあるんですけど――。
山中:変な曲ですね(笑)。
――でも確実にライブ映えはしそうだなと。
山中:それもめっちゃ意識して作りましたね。スタジオのときも「ライブではこうなるからこうしよう」みたいな意見がメンバーから上がってきてたし。俺らがライブに飢えてる以上にお客さんも飢えてると思うから、ライブがちゃんとできるタイミングになったときの新曲が全然ライブ映えせえへんのはロックバンドとして不正解やと思うし、ちゃんと新曲が「ライブでめっちゃ楽しそう」って思わせられるようにめちゃめちゃ意識しましたね。絶対にお客さんの顔が見える楽曲にしたい、みたいな。
――他にも作っているという新曲も、全体的にロック回帰というか、ロックバンド感の強いものが多いですか。
山中:今までの自分たちの曲をバーっと精査したときに、音楽的に綺麗であることを選んで、美しくやるためには歌っているときに音楽的責任感が伴う楽曲と、音楽的責任感はいらなくて思いっきり感情をぶつけられるような楽曲と、ガバッと分かれたんですよ。で、俺はどっちをやってたほうが気持ちいいか、どっちが「ロックバンドとしてカッコいいか」っていうと、やっぱり何も考えずにひたすらマイクにかぶりつくように歌ってるほうだと思ったので、エモっていうものをめちゃめちゃ大切にしはじめました。どれだけ歌っているときにエモーショナルになれるか、全てを忘れて息切れしてでも「伝えたい」って身体が動くか。そこが判断基準になってるんですよね、今作っている曲は。
――ベスト盤『Before It’s Too Late』と主催野外イベント『PARASITE DEJAVU』までを大きく第1章、アルバム『SUCK MY WORLD』から第2章と位置付けていて。その後コロナ禍があって活動予定は狂ったわけですけど、ロックと向き合う今のモードって、元々企図していたものなんですか。
山中:『SUCK MY WORLD』後に本来やりたかったことからは全然ぶれてないです。なんなら強くなってるくらいですね。さっきからめちゃめちゃ出てきますけど、「ロックバンドっていうものを大切にする」っていうのは。
――元々向き合おうとしていたことでもあるんですね。
山中:『SUCK MY WORLD』が終わったらめちゃくちゃロックやってやる、って言ってました(笑)。それは、寂しかったっていうのが根本にあると思います。アメリカでチャートにロックが入らなくなったのもそうだし、HIP-HOPやってたマシンガン・ケリーがロックやり始めてチャートで1位を取った、「マジかよ、こんなことあっていいの?」みたいな。それはすごいなっていう尊敬も込みですけど。あとは日本の「今聴いてる音楽なんですか」っていう街頭インタビューみたいなのを流し見してたときにロックが入ってなかった衝撃。HIP-HOP、J-POPみたいな並びの中にロックが入ってなくて「はぁ!?」って(笑)。で、絶対やってやろうって思ったのがちっちゃなキッカケの一つですね。それがコロナ禍でどんどん膨れ上がってる感じです。
――そうなると「Red Criminal」以降にも期待大です。まずは少し先ですが、いよいよ『SUCK MY WORLD』に区切りを付けるホールツアーが発表されて。そこに向けては。
中西:1年半あたためたアルバムのツアーでもあるし、あたためてただけではなく「Red Criminal」を聴いてもらえばオーラルが進化した部分もすごくわかるだろうし。僕らもすごく久しぶりなので、楽しみやワクワクがあるし、『SUCK MY WORLD』をずっと楽しみにしてくれたファンのみんなが純粋に……コロナとかで楽しめない状況が出てきてしまうのはすごくもったいないというか、悔しいので。行くまではもしかしたら不安や心配はあるやろうけど、終わった時に胸を張って「楽しかった」「ライブって良いよね」って帰ってもらいたいです。
鈴木:『SUCK MY WORLD』をレコーディングしてる時から、ライブで絶対楽しいだろうなっていうのは思っていたし、やっぱり生って良いよねって言えるライブになるだろうと思います。そこは特に『ORALIUM at KT Zepp Yokohama』(2020年9月に開催した有観客ワンマン)とかで確信に変わったところが自分の中でありました。1年以上ずっとあのアルバムに対して思ってくれてるものを、言葉じゃなくて音で一緒に答え合わせできる気がしているので、楽しみにしてもらえたらと思います。
あきら:久々のワンマンなので、僕ら飢えまくっているので。早くあの日々を取り戻したいなって、その一心ですね。早くライブでみんなに会いたいなっていう。だから心して来てもらえればと。
山中:俺ら今めっちゃカッコいいので。楽しみにしてください。以上です!
取材・文=風間大洋 撮影=高田梓
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