広崎うらんが語る、ダンス×人形劇『ひなたと月の姫』~不思議で心に響く世界を演出・振付
広崎うらんと『ひなたと月の姫』人形たち
ダンスパフォーマンス“REVO”を主宰すると共に、演劇、ミュージカルなどの振付を数多く手がけている広崎うらん。2021年7月31日(土)~8月1日(日)には日生劇場ファミリーフェスティヴァル2021 ダンス×人形劇『ひなたと月の姫』の演出・振付を務める。月からやってきたかぐやと、ひなた、かんた、オババ、村長らが織り成す物語だ。自身のことを"僕"と呼び、パワフルに舞台への愛を語る鬼才に、同作への意気込みを中心に、2021年夏に振付として参加するミュージカル『アニー』や蜷川幸雄七回忌追悼公演『ムサシ』について聞いた。
広崎うらん
■イマジネーションあふれる舞台を
――日生劇場ファミリーフェスティヴァル2021で上演されるダンス×人形劇『ひなたと月の姫』は「竹取物語」が原作です。2018年のダンス×人形劇『エリサと白鳥の王子たち』の時は振付として関わりましたが、今回は演出も担当されます。演出・振付の両方をやられての印象は?
『エリサと白鳥の王子たち』の時は、演出の扇田拓也さんが人形のことを考え、私はダンサーをどのように人形と融合させるかをメインにやらせていただきました。演出家のもとで振付に携わるときは、演出家の意図を汲み、自分がどこまでその作品に貢献することができるか、とことんまでやる喜びがあります。一方、演出と振付を兼ねるときには、全体像を思いのままにイメージでき、ダイレクトに構築してゆける利点と楽しさがあります。演出を任されたら、ひたすらわがままに「うらんワールド」を追求するのみですね(笑)。
『ひなたと月の姫』は「和もの」ですが、月がテーマですし、どこか宇宙的な感覚の舞台ができないものかというところから入りました。子供たちがイマジネーションを膨らませ、何かふだんは意識しないものを見付けられるような舞台にできたらいいなと。そこから、舞台美術は建築家にお願いしたいと思い、舞台美術やアートの分野でも活躍されている長谷川匠さんに依頼しました。また、衣装も完全な古典にはしたくなかったので、スウェーデンのデザイナーであるミラ・エックさんに頼みました。
――台本を担当されたのは長田育恵さん(てがみ座主宰・劇作家・脚本家)です。長田さんとはどのように協同作業を行いましたか?
長田さんとは、一緒に何回も打ち合わせをして、この物語をどのような世界にしていこうか、子供たちにどういうものを伝えたいのか、というところから話して創っていきました。オリジナルキャラクターのかんたの存在もそこから出てきました。かぐやが金の玉の状態から成長していく妖怪的なところ、宇宙人的な感じも、長田さんと相談しながら進化していきましたね。
稽古場にて
■1年延期で実現するありがたさと感謝、喜び
――昨年2020年に上演予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて今年に延期されました。何か変化はありましたか?
延期は2年先が候補としてはあったのですが、2年待つと作品の種が腐っちゃうんじゃないかという思いがあったんですね。舞台作品って、その時に背負った運命みたいなものがあると思います。厳しい状況の中、いろいろと複雑な思いを抱えながらもこの作品に向き合って、少しでも来ていただいた方たちにきらめきを届けたいという思いは変わりませんが、何より「今」を共有できるのが舞台です。この夏、みんなが抱えた様々な思いがきっとそれぞれの胸に響き、「体験」として刻まれることと思います。そして、「今」そうすることができるありがたさと感謝、喜びを感じています。それが作品自体に反映されると思っています。
――台本を拝読しました。月から見た地球は「青い星で綺麗だけれども、あの星には人間がいて、いろいろな重い感情をもっている」というように寓話的ですね。
月では記憶や気持ちのような重いもの、苦しいものは要らないので、記憶を失くして皆で幸せに生活しているんです。でも、今、辛いことや苦しいことを皆で共有している時間が非常に愛おしいというか、それを持って前に向かっていくことを感じますよね。今回、大人とか子供とか関係なく、心に刻まれる作品にしたいと思っています。
――ダンスと人形劇とのコラボレーションの面白さはどこにありますか?
人形劇団ひとみ座の小川ちひろさんが人形をデザインしてくださいましたが、最初は結構クラシカルな文楽人形風だったんですよ。でも、形式ばったものより、もうとんがっちゃおうよ!と提案し、キャラクターが突き抜けて非常に面白くなりました。かぐやに求婚する貴族たちも、ラッパーとかロッカーとか、人間も一緒にいたら負けちゃうくらいの存在感となりました!
『ひなたと月の姫』人形集合
■オリジナル作品ならではの面白さを追求
――ひなた役の辻田暁さん、かんた役の大宮大奨さんはダンサーですが台詞も多い役柄です。起用された理由は?
辻田さんは『エリサと白鳥の王子たち』から出演されていて、すでにキャスティングは決定していました。ダンサーとしても役者としても非常に魅力的で面白い方。大宮君は、少年らしさを持った驚異的なダンサーで、かんたのキャラクターにも合うと直観し、本人も芝居にもぜひチャレンジしたいとのことで決定しました。
――能楽師の津村禮次郎さんが村長/月の王です。能楽の要素を入れたのはどうしてですか?
せっかく「竹取物語」なので、どこかに日本の古典芸術を活かしたいという気持ちがありました。津村さんはフレキシブルな方で、能だけでなく、村長役としてダンスやお芝居をしっかりやっていただいております。
――音楽・演奏は渡辺庸介さん(パーカッション)、ファルコンさん(ギター)、中西俊博さん(ヴァイオリン)です。どのような経緯で出演してもらうのですか?
越後妻有の「大地の芸術祭」で、渡辺さんとファルコンさんが2人で山の中でパフォーマンスの演奏をしていたのがめちゃくちゃかっこよくて、すぐに話しかけ連絡先を聞きました。その後、この作品のオファーをしようと下北沢にライブを観に行ったら、たまたま中西さんとのユニットで、『ひなたと月の姫』にドンピシャなイメージの演奏だったので、お三方に出ていただくこととなりました。
――リハーサルが進む中で、手ごたえはいかがですか?
生演奏が加わり、エネルギーをビンビンに感じてますが、舞台でさらにどう変貌していくのか、未知への期待を抱く今日この頃です。
稽古場風景
■振付も相次ぐ2021年夏~ミュージカル『アニー』、『ウェンディ&ピーターパン』、『ムサシ』、ミュージカル『SMOKE』
――2021年8月14日(土)~15日(日)東急シアタオーブにてミュージカル『アニー』夏の公演が行われます(松本、大阪、名古屋公演あり)。昨年は中止になり、今年は4月、緊急事態宣言発令のため初日のみ上演できました。夏のツアーで東京公演も決まりましたね。こちらへの思いもお聞かせください。
1年経ち(2年前のオーディションで選ばれた)子供たちは大きくなりました、今年だけの特別な『アニー』が開幕される予定でした。今回ダンスキッズのレベルがめちゃくちゃ高かったんです。(感染症対策のため)6人が1チームだったのに、2人ずつ出すことになりました。でも、ゲネプロまでやった後に、緊急事態宣言発令によって公演が1日で終わってしまうことになり、急遽全員出すことになりました。子供たちは泣いている暇もなく、僕も振付を変更!衣装の発注!とフル稼働で、なんとも言葉にできないすさまじい時間でした。ダンスキッズは地方公演に出られず、東京公演のたった一回のみの出演となりました。
子供たちは稽古場でもご飯もおやつも今までのように食べられず、PCR検査をするにも唾が出せず、泣きながらがんばったりしていました。実に健気に。大恐慌時代のニューヨークの孤児であることが、今までになくリアルな感覚としてあったのは、皆悔しい思いをしたからかもしれません。絶対に花咲かせてくれるだろうと思っています。子供たちの気持ちとか、一生懸命やっている業界の苦しみとか様々ありますが、この夏シアターオーブで『アニー』が上演できることは、みんなにとっても大きな喜びです!
それから、Bunkamuraオーチャードホールで行われる『ウェンディ&ピーターパン』にも関わっています。日生劇場『ひなたと月の姫』も、どちらも子供にも大人にも見てもらいたい夏の公演です。
――8月25日(水)初日の埼玉公演を皮切りに蜷川幸雄七回忌追悼公演『ムサシ』(作:井上ひさし、オリジナル演出:蜷川幸雄、演出:吉田鋼太郎)も控えています。ニューヨークやロンドンでも上演され好評を博した舞台です。今回の再演に際して、どのような気持ちですか?
蜷川さんが、また皆さんとお会いできる機会をくださったのだと思います。何度も再演されていますが、色褪せなくて、どこの国にいっても評判が良いのです。素晴らしいのは、役者さんやスタッフさんが、蜷川さんが居ようが居まいが真摯に、絶対的に作品に対して向かっていくこと。白石加代子さんはじめ、ベテランの方々が何のおごりもなく真摯に向かうことに毎回心洗われます。その思いは蜷川さんから引き継いだものであって、その現場に身を置かせていただけるだけで身が引き締まりますし、その気持ちを忘れないよう、たびたび呼び戻していただいているんだなと感じますね。
今、とても楽しいです。去年1年間、僕、仕事全部無くなっちゃったんです。舞台が9つくらい全部。なので、今年は『アニー』から始まって、コロナ禍でもがきながらも現場でやっている作品は本当に楽しいです。皆と一緒に作品創りをさせていただいているのが、本当にうれしく、楽しい。皆で愛情込めて想像する世界を少しでもたくさんのお客さんに見てもらいたいというのが切実な思いです。
リモートでインタビューを受ける広崎うらん
取材・文=高橋森彦
公演情報
ダンス×人形劇『ひなたと月の姫』
■会場:日生劇場
■出演:
辻田暁 松本美里(人形劇団ひとみ座)
大宮大奨 田根楽子 津村禮次郎
清家悠生 小島功義 浅沼圭 松本ユキ子
久保田舞 植田崇幸 新垣ケビン
<音楽・演奏>
渡辺庸介(パーカッション) ファルコン(ギター) 中西俊博(ヴァイオリン)
人形劇団ひとみ座
■原作/『竹取物語』
■脚本/長田育恵
■演出・振付/広崎うらん
■「ひなたと月の姫」公式サイト:https://famifes.nissaytheatre.or.jp/2021hinata/
※辻田暁の「辻」は「一点しんにょう」の「辻」が正式表記
※出演者や内容等に変更が生じる場合もございます。予めご了承ください。
公演情報
【東京公演】
■日程:2021年8月14日(土)~8月15日(日)
8月14日(土)12時開演 チーム・バケツ
8月14日(土)16時開演 チーム・モップ
8月15日(日)12時開演 チーム・モップ
8月15日(日)16時開演 チーム・バケツ
■料金:全席指定:8,700円(税込)
■に関する問合せ:キョードー東京 TEL:0570‐550‐799
アニー:荒井 美虹 / 德山 しずく
ウォーバックス:藤本 隆宏
ハニガン:マルシア
グレース:笠松 はる
ルースター:栗山 航
リリー:河西 智美
<チーム・バケツ>
アニー役:荒井 美虹(アライ ミク)
モリー役:山﨑 もも(ヤマサキ モモ)
ケイト役:成瀬 綾菜(ナルセ リョウナ)
テシー役:木内 彩音(キウチ アヤネ)
ペパー役:久野 純怜(クノ スミレ)
ジュライ役:藪田 美怜(ヤブタ ミサト)
ダフィ役:大谷 紗蘭(オオタニ サラ)
アニー役:德山 しずく(トクヤマ シズク)
モリー役:矢山 花(ヤヤマ ハナ)
ケイト役:難波 夏未(ナンバ ナツミ)
テシー役:加藤 凪紗(カトウ ナギサ)
ペパー役:山岡 さくら(ヤマオカ サクラ)
ジュライ役:長曽我部 夢(チョウソカベ ユメ)
ダフィ役:宿口 詩乃(シュクグチ シノ)
脚本:トーマス・ミーハン
作曲:チャールズ・ストラウス
作詞:マーティン・チャーニン
翻訳:平田 綾子
演出:山田 和也
音楽監督:小澤 時史
振付・ステージング:広崎 うらん
■協賛:丸美屋食品工業株式会社
■公式サイト:http://www.ntv.co.jp/annie/
<ツアー公演>
■会場:まつもと市民芸術館 主ホール
■日程:2021年8月7日(土)
■会場:シアター・ドラマシティ
■日程:2021年8月19日(木)~8月22日(日)
■会場:愛知県芸術劇場 大ホール
■日程:2021年8月27日(金)~8月29日(日)
公演情報
■料金:S席=12,500円 / A席=8,500円 / B席=6,000円(税込・全席指定)
平埜生成 前原滉 富田望生 山崎紘菜
新名基浩 田中穂先 中西南央 下川恭平 本折最強さとし 井上尚 坂本慶介 保土田寛
宮河愛一郎 原田みのる 乾直樹 近藤彩香 浜田純平 渡辺はるか
玉置孝匡 石田ひかり
堤真一
■作:エラ・ヒクソン(J.M.バリー原作より翻案)
■翻訳:目黒条
■演出:ジョナサン・マンビィ
■美術・衣裳:コリン・リッチモンド
■音楽:かみむら周平
■照明:勝柴次朗
■音響:井上正弘
■映像:上田大樹
■振付:黒田育世 広崎うらん
■ヘアメイク:佐藤裕子
■アクションコーディネーター:諸鍛冶裕太
■エアリアル指導:若井田久美子(AADP)
■衣裳スーパーバイザー:中野かおる
■通訳:
時田曜子(演出家)
河井麻祐子(美術・衣裳家)
池田治樹(大道具)
■美術助手:原田愛
■演出補:ルパート・ハンズ
■演出助手:加藤由紀子
■舞台監督:南部丈
公演情報
■期間:2021年8月25日(水)~8月29日(日)
■会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
■主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ
【東京公演】
■期間:2021年9月2日(木)~9月26日(日)
■会場:Bunkamuraシアターコクーン
■主催:ホリプロ
■企画制作:ホリプロ
ほか地方公演あり。
■キャスト:
藤原竜也
溝端淳平
鈴木杏
塚本幸男
吉田鋼太郎
白石加代子
大石継太
飯田邦博
堀文明
井面猛志
堀源起*
*さいたまネクスト・シアター
<スタッフ>
■作:井上ひさし(吉川英治「宮本武蔵」より)
■オリジナル演出:蜷川幸雄
■演出:吉田鋼太郎
■音楽:宮川彬良
■美術:中越 司
■照明:勝柴次朗
■衣裳:小峰リリー
■音響:井上正弘
■かつら:秋庭優一
■殺陣:國井正廣・栗原直樹
■振付:広崎うらん・花柳寿楽
■能指導:本田芳樹
■狂言指導:野村萬斎
■演出助手:井上尊晶
■舞台監督:今野健一
技術監督:小林清隆
プロダクション・マネージャー:金井勇一郎
▼公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/musashi2021/
▼公式Twitter:https://twitter.com/musashi_kenzan
公演情報
■日程:2021年8月28日(土)〜10月3日(日)
■会場:浅草九劇
■日程:2021年10月15日(金)〜10月17日(日)
■会場:シアタードラマシティ
大山真志 池田有希子
東山光明 伊藤裕一 山田元
内海啓貴 工藤広夢 中村翼
木村花代 井手口帆夏 皆本麻帆
ほか
■PRODUCED BY SOO RO KIM & MIN JONG KIM
■MUSIC BY SOO HYUN HUH
■BOOK & DIRECTED BY JUNG HWA CHOO
■日本語上演台本・訳詞・演出:菅野こうめい
■振付:広崎うらん
■音楽監督:河谷萌奈美
■主催:atlas