THE ORAL CIGARETTES『RUSH BALL 2021』ライブレポート ーーそれぞれから受け継いだバトン、音楽への愛と喜びに満ちたフィナーレへ
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THE ORAL CIGARETTES 撮影=瀧本JON…行秀
『RUSH BALL 2021』THE ORAL CIGARETTES
初日のトップバッターであるサイダーガールから繋いできたバトンを受け取り、『RUSH BALL 2021』2日間を締めくくるのはTHE ORAL CIGARETTES。「大トリを務めさせていただきます、よろしくお願いいたします!」と山中拓也(Vo.Gt)の挨拶から「5150」でライブをスタート。今は声援や歓喜の声をワッとあげられないながらも、「待ってました!」と言わんばかりに会場のあちこちで思わずグッと手を上げたり、飛び跳ねて喜びを露わにする人が続出。でっかい音と歌で一気にムードが変わる、「これぞライブ!」という光景に胸の熱くなる幕開けだ。そのまま「GET BACK」、最新シングル「Red Criminal」と追い討ちをかけるように畳み掛け、山中もギターをかき鳴らし、瞬きをゆるさない目まぐるしい展開に興奮の沸点がグングンと上昇していく。
THE ORAL CIGARETTES
MCで山中は、とにかく今日だけは大トリとして『RUSH BALL』のステージに帰って来れたことを祝わせてほしいと真っ直ぐに伝えた。「『RUSH BALL』と中止になってしまった『SWEET LOVE SHOWER』だけが、インディーズの時からオレらを呼んでくれていました。1年目の『RUSH BALL』は大雨で、『大魔王参上』を歌ったら雨でシゲ(鈴木重伸)のギターが潰れて。オレのギターを渡したことからハンドマイクをやり始めたんです。そういう歴史をから始まって、8年掛けてここに来れたんです。だからすごく嬉しくって、みんなの励みになることとか何を言おうか考えてたんですけど、今日は祝って欲しい」と、感慨深気に語る。
THE ORAL CIGARETTES
続けて明るいニュースが少ない世の中について触れ、「ここにいるみんなにとっては、オレらとか他のバンドが『RUSH BALL』に出たことで、ひとつハッピーな話題になってたり。オーラルがようやくトリを取るということがハッピーなニュースになってたら、オレらはまださらにこれから先も頑張っていけると思います。今までの伝説と歴史を作ってきたバンドマンたちと、これから先も『RUSH BALL』という大切なイベントをあなたたちと一緒に歩めるように」と、久しぶりの披露だという「CATCH ME」をハンドマイクで届けた。そのまま中西雅哉(Dr)とあきらかにあきら(Ba.Cho)のリズムに観客もその場で身を委ねながら、鋭く鳴り響く鈴木重伸のギターソロを全身で浴びた「BLACK MEMORY」を投下。大トリのステージにかける並々ならぬ想いを、受け取ったバトンを握りしめながら音に変えていく彼らの姿に観客も手を振り応える。
THE ORAL CIGARETTES
今度は「みんな自分にとって大切なもんあるか?」という山中の問いかけから、再びMCへ。「全員が全員、大切なもんを守りたいだけやと思うわ。オレらはあんたらを守りたいし、ロックシーンを守りたいし、新しい時代を作るとかそんなんじゃなくて。今まであった最高のロックシーンを守るためにここに立ってます。今日のスタッフたちもそうやと思う。守りたい人を守りたいだけなんやと思います。何が悪いねん! あなたの近くにいる大切な守りたい人、一人一人がその人だけでいいから守ったら、もっと素敵な未来が待っていると思います」と訴え、「容姿端麗な嘘」へ。開催を実現させた『RUSH BALL』スタッフたちの思いを代弁するようにして、そして集まった観客たちと音楽を通してつくる明るい未来を願うようにして大切に歌い届けられた。
THE ORAL CIGARETTES
「最後は愛を歌って帰ります」(山中)と、温もりあるメロディーにのせて「LOVE」を披露。<夢で見てたこのステージも 分かち合ったこの『RUSH BALL』の喜びも>と歌詞を変え、清々しい笑顔をみせるメンバーたち。一人ではできない、『RUSH BALL』というみんなで作りあげた喜びに満ちた瞬間を分かち合うように、続々と手が上がり、キラキラと眩しい光景が泉大津の地いっぱいに広がる感動のフィナーレとなった。
ここで終わりかと思いきや、まだ時間が少しあることを確認して最終曲へ。「オレらは初心を忘れずに、これからも頑張って行くから、応援よろしくお願いします。声枯れるまで歌うから! みんなも心の奥で歌ってくれ!」と鳴らされたのは、メジャーデビューシングルの「起死回生STORY」。これまでバンドと『RUSH BALL』が歩んできた歴史の集大成ともいえる渾身のアクトであり、ここからまた新しい歴史が生まれる期待感に満ちた大団円に。
THE ORAL CIGARETTES
冒頭で山中は、「この『RUSH BALL』の大トリ、THE ORAL CIGARETTESを聴くことで、みんなの中で意義を見出してほしい。これから先の未来へ」と語りかける場面もあった。この日のステージが彼らにとっても観客にとっても、『RUSH BALL』にとっても特別なものとなったことは間違いない。果たしてどんな意義を見出したのかは、夜空に咲く花火の余韻に浸りながら、それぞれが自分なりに感じていたことこそが答えなのかもしれない。
そして、バンドと『RUSH BALL』が繋いできたバトンをひとりひとりが受け取り、未来へと受け継ぐ先にどんな景色が待っているのか。その答えを確かめるために、また泉大津の地に帰ってきたいと思う。
取材・文=大西健斗 撮影=瀧本JON…行秀
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