本格ミステリ第3弾、熱量高く幕開け 舞台『RUST RAIN FISH』Team Black公演レポート
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舞台『RUST RAIN FISH』Team Black 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』が2021年9月23日(木・祝)、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕した。演出家・西田大輔が描く本格派ミステリ作品「ONLY SILVER FISH」シリーズの第3弾作品。今回は“Team Black”のキャストによる初日公演をレポートする。
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2018年に上演された舞台と映画の連動プロジェクト「ONLY SILVER FISH」、 2019年に第2弾「+GOLD FISH」が上演された、本当の名前を知ると過去を振り返ることができると言われる魚《オンリーシルバーフィッシュ》をめぐるストーリー。今作では、第二次世界大戦時の日本に現れる。
“上質なミステリ”をテーマに、史実とファンタジーが混ざり合うワンシチュエーション会話劇が描かれる本シリーズ。今回は異なる2チームが同じ脚本を演じるのも見どころとなっており、“Team Black”には2014年上演の『RUST RAIN FISH』劇団公演に出演したメンバーも多く集結している。
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開演後まもなく雨の音、優しくも寂しげなピアノが聞こえ、やがて大きな水槽が浮かび上がる。《オンリーシルバーフィッシュ》がいるという、揺れる水面はなんとも神秘的だ。萩野崇演じる黒木(仮)と田中良子が演じる星野(仮)が会話を交わし、二人が作り上げた厳かな空気があっという間に満ちてくる。役名に“(仮)”と表記されているのは、招待客たちが偽名を名乗っているためだ。
とある館に招待されたのは、振り返りたい過去を持つ14人の男女。共通点は「冤罪にかけられた」ことだが、館の主人によると本当の犯罪者がいるという。見つけたあかつきには魚の名前が教えられるとあり、各々の駆け引きが絡み合う。
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招待客は自分たちを集めた館の主を突き止めようとするが、言葉や指示はすべて手紙を通じて伝えられるため正体不明のまま。さらに、執事役を交代で行う仕組みをめぐって混乱が生まれていく。各々で決めたはずの偽名がなぜか重なる偶然も不可解だ。
重厚な物語でありながらも、会話劇の妙がしっかりと光る。純真な心がまぶしい松永有紗と佐久間祐人のひょうきんさ、絶大なコメディ力を示す宮下雄也が観客につかの間の安寧をもたらしてくれることも。硬軟巧みな塚本拓弥、赤塚篤紀の捉えどころのなさや杉山健一の曲者感、西田大輔の存在感もなかなかニクい。
作品全体に漂うミステリアスな空気感は圧巻。谷口賢志の従容たる佇まい、仄暗い気質を表現する堂本翔平、凛とした強さが印象的だった能條愛未にそつなく振る舞う山口大地の器用さ、風格漂う村田洋二郎らによって底上げされていた。
舞台『RUST RAIN FISH』Team Black 舞台写真
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誰が嘘をついているのか、振り返りたい過去とは、国家の命運をかけた大きな作戦とは何か……。謎に思いを馳せるほど、二幕以降の展開に翻弄されることになるだろう。何より、役者の気概が熱い。物語を生きる人物たちが抱えた重たさが、しっかりと密度を保ったまま伝わってくる舞台だった。2021年9月27日(月)より幕が上がる“Team White”公演にも期待が高まる。
東京公演は2021年10月3日(日)まで。10月15日(金)よりCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて大阪公演が行われる。観劇を重ねるたび、きっと新しい発見があるはずだ。
舞台『RUST RAIN FISH』Team Black 舞台写真
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取材・文=潮田茗