ロックミュージシャンたちが弾き語りで集った『UKFC Extra〜弾き語りの夕べ〜』公式レポ到着

レポート
音楽
2021.10.29
小池貞利

小池貞利

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下北沢の老舗インディ・レーベル/マネージメントのUKプロジェクトが、毎年夏に行ってきた、所属アーティストたち中心のイベント『UKFC on the Road』。11年目にあたる2021年は、時期を秋=10月24日(日)に、会場を新木場スタジオコーストから恵比寿ガーデンホールに変更し、『UKFC Extra〜弾き語りの夕べ〜』というタイトルで開催となった。Streaming+で生配信もあり、10月31日(日)23:59までアーカイブ配信も行われる。

例年どおり、UKプロジェクト遠藤社長の挨拶からスタート。7月8月と感染者が減らない状況が続いていたので、今年の開催は無理と思っていたが、秋にこの会場が空いていたことと、普段から弾き語りでもライブをやっているteto小池貞利とHelsinki Lambda Clubの橋本薫を中心にイベントをやればおもしろいんじゃないかと考えたこと、ふたりが呼びたい人に声をかけて集まってもらったこと、などの経緯を説明する。そして、イベントがスタート。

14:00 たかはしほのか(リーガルリリー)

たかはしほのか

たかはしほのか

赤いエレアコ・ギター1本で、エレクトリック・ギターの鋭角的な音、アコースティック・ギターのやわらかな音など、エフェクターも駆使して、曲ごとに表情が変わる伴奏と共に、6曲を歌唱する。
「GOLD TRAIN」「高速道路」を経て、3曲目は語りが入る「蛍狩り」。エレキ・ギターのクリーン・トーンが、たかはしほのかのまっすぐな声と溶け合い、抑え目の照明やステージ後方の美術装飾とも相まって、ステージ上が、なんとも絶妙なムードになる。

たかはしほのか

たかはしほのか

「今はだいたい14時ぐらいということで、元気にいきましょう。ということで、カバーを1曲やらせてもらいます」という紹介から歌われた4曲目は「眠れぬ森の君のため」。まだ何者でもなかった、プロのミュージシャンに憧れていた頃の自分と「君」を描いた、KANA-BOONの初期の名曲である。たかはしほのかが歌うと、歌に新しい聴き方が加わっていくような感覚がある。

たかはしほのか

たかはしほのか

「UKFCは普段はバンドがたくさん出るイベントなんですけど、今日は弾き語りで、いろんなバンドのフロントマンが出て来て。見てみたら、私だけ(名前が)ひらがな表記だったので、すごく恥ずかしい気持ちになりました(笑)」「今日は1日、耳の休憩もしつつ、楽しんで帰ってください」というMCをはさんでのラストは「好きでよかった。」。
「きみの曲を作ろう きみのことを歌えば 明日好きな人を歌っても ずっときみを忘れないよ。」という、いつどこで聴いても耳に刺さるリリックが、素朴であたたかなメロディに乗って、ガーデンホールに響いた。

14:45 百々和宏(MO’SOME TONEBENDER)

百々和宏

百々和宏

フェンダー・ツインリバーブにつないだ赤いセミアコをかき鳴らし、イントロや間奏でハープを吹き鳴らしながらの「ロックンロールハート(アゴーゴー)」でスタート。歌い終え、今の曲は10月29日にリリースされる4枚目のソロアルバム『OVERHEAT 49』の収録曲で、毎回「ロックンロールハート」というタイトルの曲をソロアルバムを作る度に入れている、「虎舞竜方式」と呼んでいる、と説明する。次はタイトルそのまま、博多弁の言葉だけで歌われる「H・A・K・A・T・A・BEN」。

百々和宏

百々和宏

「昨日ね、吉祥寺の飲み屋さんでライブをやったんですよ。お酒飲みながらライブをやったら、そういう機会がコロナ禍になってからなかったもんで、スルスル飲めて、その報いが今私の身体をむしばんでいる。二日酔いですね」と申告。そして、「こんな時期にぴったりの曲を作りました」と、コロナ禍のストレスフルな生活を綴ってメロディにのせた「コロちゃん」を歌う。

百々和宏

百々和宏

自身の49歳の誕生日である11月2日(火)に下北沢シャングリラでライブを行う、アルバムに参加したウエノコウジやヤマジカズヒデらのミュージシャン勢に、MO’SOME TONEBENDERの武井靖典&藤田勇も出演することを告知し、「見習いスーパーマン」「サルベージ」「ハルノハクチ」へ。ここまでの6曲、すべて、『OVERHEAT 49』に収録されている曲である。
「ありがとうございます、しっかり聴いてくれているのは伝わってまいります」をオーディエンスにお礼を言い、最後の曲へ。「ロックンロールハート(イズネバーダイ)」。ひとつ前のアルバム『スカイ イズ ブルー』収録のこの曲を、激しく儚く美しいシャウトと、ギター・ノイズで締めくくると、客席から大きな拍手が上がった。

15:30 岩崎優也(SUNNY CAR WASH)

岩崎優也

岩崎優也

会場で観ている人も、配信で観ている人も、本日のアクトが発表された時は、まさかこんな気持ちでこの人のライブと向き合うことになるとは、思わなかっただろう。SUNNY CAR WASHが、12月28日(火)ZEPP Diver Cityのライブで解散することが、2日前に発表になったばかりのタイミングで、ひとりでステージに立った岩崎優也。そう、たかはしほのかも百々和宏も、座ってのパフォーマンスだったが、この人は立って、アコースティック・ギターを弾きながら、9曲を歌った。サウンドチェックで歌ったRCサクセション「スローバラード」も入れると、9曲半。

岩崎優也

岩崎優也

最初に「それだけ」「ラブソング」の2曲を立て続けに歌い、水を飲み、ギターの音を確かめ、「『ティーンエイジブルース』って曲です」と紹介して、すぐ3曲目に入る。このままMCなしでいくのかな、と思ったが、同曲を歌い終えると、「今日は誘っていただいてありがとうございます。知っている人がたくさん出ていて、最後まで僕も楽しみです」と、普通に言葉をはさむ。
「週末を待ちくたびれて」「夢で逢えたら」「ハッピーエンド」の3曲で、調子が上がってきた。

岩崎優也

岩崎優也

バンドのような勢いとスピード感で駆け抜けた「ムーンスキップ」、「友達の歌です」という言葉から始まった「キルミー」、さらにひとりだがロックバンドのようなテンションだった「ファンシー」の3曲でフィニッシュ。ギターの音を止めないまま首からストラップを抜き、「ありがとうございました」と挨拶し、岩崎優也はステージを下りた。

16:15 清水英介(Age Factory)

清水英介

清水英介

Age Factoryのサポート・ギタリスト、有村浩希とのふたりでのステージ。1曲目は「Dance all night my friends」。清水英介のアコギと有村浩希のセミアコ、2本のギターの重なり合い方が美しい。続く「OVER」では、有村浩希が清水英介のボーカルにハーモニーをつけていく。
東京はしんどいと思うこともあるが、奈良に住んでいてしんどい時間もある、飽きてしまう、でもその飽きが愛おしいなと思って作った曲があるので──と、歌ったのは「Merry go round」。次は「このまま何もしたくないな、みたいな時に作った曲です」と「Feel like shit today」。「UKFC」の「FC」てなんや? という疑問を提起してから「Blink」。

清水英介

清水英介

清水英介がしゃべると落ち着いたムードになるが、ギターを鳴らして歌い始めると、場の空気がピッとはりつめる。聴き手に何も強いていないのに、自然にそんな感じでライブが進んでいく。
昔あったものがどんどんなくなる、しかもコロナで全然楽しくない。半年くらい前まで最悪の気分だったが、最近だんだん人と会えるようになって、イベントも増えて来て、心が循環してきた。仲間の大切さと、テリトリーの大切さを思い出しました──という言葉を経ての「HIGH WAY BEACH」は、今の時期だけに、よりリアルに聴き手に届くように感じた。

清水英介

清水英介

UKプロジェクトは昔から好きなインディレーベルなので、そこからアルバムを出せて誇らしい気持ちがある、今日も呼んでもらえてよかったです──とお礼からのラストは「nothing anymore」。なお、「OVER」「Feel like shit today」「Blink」は、11月24日リリースのニューアルバム『Pure Blue』に収録される曲である。

17:00 佐藤千亜妃

佐藤千亜妃

佐藤千亜妃

1曲目は「STAR」。書いた時はフォーク調だったが、04 Limited Sazabysに演奏してもらってパンク・アレンジにすることを思いついた曲だそうなので、元の形に戻して披露した、ということでもある。
「『UKFC』の『FC』は、『Family Conference』、『家族会議』っていう意味らしいです。なので、今日は、UKプロジェクトの家族会議へようこそ」と、さっきの清水英介の疑問を回収する。で、「という話をしたあとに、『大キライ』という曲をやりたいと思います」。

佐藤千亜妃

佐藤千亜妃

ここまでの2曲は、ひとつ前のアルバム『PLANET』からの曲。で、「9月15日に『KOE』というアルバムを出しまして。その中から何曲かやっていきたいと思います。弾き語りではまだやったことがないので、楽しみです」。そして「Who am I」、アルバムではカオスのようなバンド・サウンドで奏でられるこの曲が、弾き語りでもとても映えることを示してみせる。
「橙ラプソディー」を経て、UKプロジェクトの関わりを説明する。きのこ帝国でデビューした時からお世話になっていて、レーベルを離れてからも当時の担当とは会わない月はないくらい会っている、UKプロジェクトは実家みたいな感覚、とのこと。

佐藤千亜妃

佐藤千亜妃

次の曲は、テレビドラマ『レンアイ漫画家』のテーマとして書いた曲で……と解説してから、「カタワレ」へ。弾き語りでライブで歌うのは二回目だそうだが、聴く人を瞬時につかむポップさで、客席の空気が上がるのがわかる。
ここでピークを迎えて終わり、かと思ったら、最後にサプライズあり。声優の入野自由に提供した「グッド・バイ」のセルフ・カバーをやってくれたのだ。入野自由が結婚を発表したので、そのお祝いに、ということだった。

17:45 橋本薫(Helsinki Lambda Club)

橋本薫

橋本薫

オリジナルよりもテンポを落とした「Jokebox」でスタートし、元曲も弾き語りの「チョコレイト」へ続く。3曲目は、「愛の形って、正解はないと思うんですけど。ちょっと、いびつなラブソングをやります」という紹介で「しゃれこうべ しゃれこうべ」。「左目を突ついて 中身がどろりと出てきた だけど死なないで 愛しい人」で始まる、ギョッとするラインだらけのリリックが、よく通る澄んだ声で歌われていく。この頭3曲で、今日のガーデンホールを完全に自分の場所にするパフォーマンスだった。

橋本薫

橋本薫

リズムもメロディも軽やかな「Time,Time,Time」で空気を変え、「僕は昔から、リップクリームを使い切ることができなくて。ここ数年で何回か使い切ることができたんですけど、今年に入って、もう三回くらいなくしちゃって。人って、変われたようでいて変われてないんだな、ってことを思ったりしてます」という言葉から「lipstick」を歌う。「普段はバンドで歌ってて、弾き語りの時はソロの曲もやったりしています。今日も1曲だけ短い曲をやります」と「ステラ」。バンドでおなじみの曲でも、そうでない曲でも、ステージへ向けられる集中力が、1曲ごとに上がっていくのを感じる。

橋本薫

橋本薫

『UKFC』には2014年から出ている、去年は開催できなくて落ち着かなかった、今年はあって、「落ち着く場所だな」と思った、僕にもそんな場所があってうれしいなと思った、みなさんにもそんな場所があればいいなと思います──というMCから歌われた「引っ越し」が、とてもよかった。
11月にtetoとHelsinki Lambda Clubで2マンツアーを行うことを告げてからの、最後の曲は「マニーハニー」。ラストにふさわしいアッパーなこの曲で、きれいに全8曲を締めくくった。

18:30 小池貞利(teto)

コート、サングラス、帽子、という出で立ちで登場。「小池貞利始めまーす。1曲目、新曲!」と言うや否や、ものすごい勢いでギターを弾き始める。「月曜夜は財布をなくし、火曜日は携帯をなくし、水曜は家の鍵をなくし、木曜まで探し続けたんだ、ロストマン ロストマン」(以上すべて聴き取り)で始まる、強烈極まりない曲である。次は「カバー!」と叫ぶと、アニメ『らんま1/2』のオープニングテーマ「じゃじゃ馬にさせないで」(西尾えつ子)を、これもすごいテンションで歌いきる。

コートとサングラスをとって「とめられない」「メアリー、無理しないで」と続いた、と思ったら、次は「木綿のハンカチーフ」。古今東西多くのシンガーにカバーされて来た太田裕美のこの曲、最近はすっかり宮本浩次の曲になっているが、小池貞利バージョンもすさまじい。
が、次の「9月になること」では、2コーラス目の途中で、右手を挙げてストップ。「……歌詞が、全飛びだね。なんだっけ?」と、しばしブレイクの後、思い出し、再び歌い始める。

「『UKFC』、久々で、あまり会えない人に会えるのがうれしいです」とMC。そして「invisible」「ルサンチマン」を経て、ギターをチューニングしてから、「やっぱ音楽は楽しいなと、ライブをするたび思うわけです。ありがとうございました、小池貞利でした」と挨拶し、ラストの「手」へ。曲の後半ではギターを弾くのを放棄、地団駄を踏みながら叫ぶように歌う。

客電が点いてBGMが鳴り始めても、アンコールを求める手拍子は収まらず、再度登場。「最近、『ハッピー・バースデー・トゥー・ユー』みたいな、ずっと同じリフレインが繰り返される曲が好きで。そういう曲ができた時、すごいうれしかったので、みなさんに聴いてもらおうと思います」と、歌ったのは「光るまち」だった。

夏ではなく秋、スタンディングではなく座席、弾き語りのアクトのみ、新木場スタジオコーストでなく恵比寿ガーデンホールでの開催、と、初めてのことだらけだった『UKFC Extra~弾き語りの夕べ~』。もちろん、2022年は通常の形で開催できる状況になることがベストだが、それとは別に、まさに『Extra』として、この形でも行う、というのも、ありなのではないか。そう思わせてくれる、魅力的なアクトが続くイベントだった。


文=兵庫慎司 撮影=高田梓(たかはしほのか、百々和宏、清水英介、佐藤千亜妃)、小杉歩(岩崎優也、橋本薫、小池貞利

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