アイビーカラーただいま絶賛進化中いしわたり淳治をワードプロデュースに加えた最新ミニアルバム『tomorrow』について4人聞いた
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アイビーカラー
アイビーカラー、ただいま絶賛進化中。「今までにないアイビーカラーを見せる」というテーマを達成した前作『WHITE』を経て、最新ミニアルバム『tomorrow』では、その意思が全方向へとパワーアップ。いしわたり淳治をワードプロデュースに、白戸佑輔(Dream Monster)をアレンジに迎え、バンド史上最も明るくポップにはじける「街角のラプソディ」を筆頭に、ピアノと歌だけのバラードあり、ヒップホップ的グルーヴあり、初のウェディングソングありの全6曲。アイビーカラーはいかにして音楽的に、そしてメンタル的に大きなブレイクスルーを成し遂げたのか?4人の証言を聞こう。
――「街角のラプソディ」のミュージックビデオ、今までとがらっとイメージが変わりましたね。カラフルでポップで可愛いシーンが続出で、メンバー全員が演技っぽいこともやってみて。
佐竹惇(Vo&G):メンバー4人だけのMVは、今回が初めてなんですよ。今までは、せつない曲やノスタルジックな楽曲をリード曲にして、MVにすることが多かったんで、女優さんや俳優さんを起用したほうが映像的に映えるというスタンスやったんですけど、今回は「街角のラプソディ」という楽曲が、こういう状況の中でみんなに前を向いてほしいという、喜びの明日へ向けての希望の歌になればいいなという曲なので、メンバー4人が一番ハッピーな映像をお届けできるのがベストなんじゃないかな?という考えでMVを作りました。こんなポップに撮ってもらうことがなかったので、ぎこちなかったりもすると思うんですけど(笑)。
アイビーカラー
――それもこれも、楽曲の世界観をより強く表現するために。
佐竹:そうです。ジャケット写真も、今回が5枚目のミニアルバムなんですけど、4枚目までが女性の振り返りのカットで、今まで4枚の統一感でやってきたものを一旦止めて、そこも含めて新しいアイビーカラーを見てもらいたいというのが、毎回そういう思いはあるんですけど、今回は特に一番強いんじゃないかな?と思います。
――5枚目のミニアルバム『tomorrow』。どんな1枚になったと思いますか。
川口彩恵(Key):前作の時もお話ししたと思うんですけど、曲によって色が全然違うという、今作もそうなってると思います。私のピアノで言うと、たとえば1曲目「街角のラプソディ」と、4曲目の「雨」と、その2曲を同じ日にレコーディングしたんですけど、「ほんまに同じ人間が弾いてるんかな?」という違いを感じてもらえたら、私的には大成功です。それと、いつもは「せつなさ」を強めに出して行くんですけど、今作は全体を通して明るく前向きな雰囲気を作りたかったので、それがうまくいったんじゃないかな?と思ってます。
碩奈緒(B):『tomorrow』というタイトルにもあるように、明るめな前向きな曲が多めです。歌詞的に前向きではないのは「ライター」なんですけど、そんなに病んでるわけではないというか…(笑)。今まであったような、すごい落ちてるような曲よりは前向きという印象があって、全体的に前向きだと思います。そういうアルバムを、世間的にこういう状況の中で出せたことが良かったかなと思います。
酒田吉博(Dr):今回はミックスエンジニアの方が変わったんですよ。それがめちゃ良かったなと思ってます。今言ってた「ライター」が、音のクオリティの面では一番好きなんですけど、ほかの曲もバチっと決まって、より一層アイビーカラーらしさがありつつも、メジャーっぽさというか、売れてる人らっぽい感じのイメージにできたかなと思ってます(笑)。
――そこは具体的に言うと、音のクリアさとか、広がりとか?
酒田:今まで頼んでいたエンジニアの方々は、ドライめの、録り音重視の方が多くて、それはそれでめっちゃ良かったんですけど、今回はより幻想的というか、今どきっぽさというか、そういう感じにしたいなと思っていたので。その時たまたま仲のいいバンドの音源を聴いて、それはお洒落でアダルトな感じと言うか、「ライター」みたいなタイプの曲が多くて、すごくいいなと思って「この音録った人誰なん?」って聞いて、その方がやっているほかのアーティストの曲も聴いてみたら、「街角のラプソディ」みたいな曲もやっていて、「この方がいいんじゃないか」と提案したら、ばっちりハマりました。音はもちろん、人としてもめっちゃ良かったよな? すごくやりやすい環境でした。
――その、リード曲になった「街角のラプソディ」。これはどんなふうに?
佐竹:初めての試みなんですけど、スタッフの提案で、いしわたり淳治さんという方に詞の添削をお願いしました。初めてなので正直苦戦する場面もあったんですけど、それは悪い意味ではなくて、歌詞の中の起承転結とか、接続詞の大事さとかを、俺はけっこう見落としていたんだなという、作詞家としての自分に気づかされたことがあって、すごくいい経験でした。今まではせつないラブソングや、ドロッとした歌詞が得意な分野で、「街角のラプソディ」みたいな、前向きに頑張って行こうというコンセプトの曲はあまり書いてこなかったので、歌詞では一番苦戦した曲なんですけど、結果的にこのサウンドとこのメロディに合った、本当にいい歌詞が書けたなと思います。
アイビーカラー
――ピアノがいい仕事してますね。はずむような、転がるような。
川口:この曲にはアレンジャーさんがついているんですけど、最初にアレンジを聴いた時に「この感じのピアノ、一番苦手」と思って…(笑)。リズム系でちょっとお洒落系みたいなものは、正直苦手なので、「できるかな?」と思ったんですけど…制作期間が短かったので、逆に、「録り直しになっても私は悪くない!」と思って、開き直ってぶつかったら、思ったよりも苦戦せず、楽しくできたかなと思ってます。
碩:曲調がすごく楽しい感じで、MVも楽しい感じでやってるんですけど、演奏自体はめちゃめちゃ難しくて…(笑)。えぐかったです。今までのレコーディングで一番「ヤバイ、どうしよう」って、めっちゃ緊張しました。逆に、追及しすぎたら一生終わらないと思ったんで、わりと少ないテイクでさらっと録れたんですけど、めちゃくちゃ難しい上に準備期間も短かったので、心の余裕はなかったです。結果的にすごくいいものになったなとは思ってるんですけど、レコーディングまでの1週間はめっちゃ焦ってました。
酒田:僕は逆に、こういうリズムは得意なので。でも制作期間が短かったので、奈緒ちゃんと一緒に焦ってはいたんですけど、昨日もライブで演奏したんですけど、「なんであんなに焦ってたんやろ?」と思うくらい、さらっと叩けちゃうんですよ。ただ、箇所箇所で難しいことはしているので、ライブでは緊張感を持って叩かなきゃいけないなと思ってます。
アイビーカラー
――こういう曲調、ライブですごい武器になると思います。しょっぱなでもいいし、中盤で雰囲気を変えるのにもいいし、ラストで盛り上げてもいい。
佐竹:それは思いますね。
――ほかにも、本当にいろんな新しい曲調にトライしているので。恒例の、メンバーそれぞれのお気に入りソングを聞くコーナー、行きましょう。彩恵さんは?
川口:それ、聞かれるかなーと思ってたんですけど。今までもラジオとかで、ちょこちょこお気に入りソングを話してるんですけど、実は私、毎回めちゃめちゃ迷ってて、どうしよう…。
――「雨」って言うかな?と思ったんですけどね。初めての、歌とピアノだけのきれいなバラード。
川口:「雨」はもちろんお気に入りなんですけど、ちょっと置いといて。やっぱり「アカツキ」かなぁ。ヨシくんがたぶん「ライター」を推すと思うので。
酒田:「ライター」、別に言ってもええよ(笑)。僕は「アカツキ」でもしゃべれるから。
川口:いや、「アカツキ」にします。この曲は、明るいんですけど、アイビーカラーらしいせつなさもありつつ、ほかの曲にはないエモさもけっこうあって、そういうところをピアノで表現するのがすごく楽しかった。そこにプラスで、ストリングスを入れたくなってしまって、大変なことになったんですけど…。
酒田:フレーズは全部作ってもらって、若干の添削と、振り分けと、音作りを僕がやった感じです。この曲が一番時間かかりました。
川口:苦労したぶん、納得いくものができました。個人的に言うと、ピアノも聴いてほしいけど、ストリングスも同じくらい聴いてほしいなと思ってる曲です。
――彩恵さん、今回、たとえば「ライター」でもピアノのほかにオルガンの音色が入っていたり、いろいろやってるでしょう。
川口:「ライター」のオルガンの音は、『WHITE』に入っていた「カフェ」の時に、「体に悪そうな音」とか言ってたんですけど、さらに体に悪そうな音を入れたくて(笑)。最初にフレーズを作る段階では、「入れたいけどどうしたらいいんだろう」って悩んでたんですけど、ヨシくんに投げて、音作りしてもらいました。
酒田:僕は「ライター」が一番好きで、たぶんここで聞かれるやろなと思ったんで、「ライター」でコメントは用意してたんですけど(笑)。でも、今日(10月6日)の夜中0時に全曲が配信開始されたんですけど、自分で聴いてて、「アカツキ」がめっちゃいいなと思いました。
碩:私も「アカツキ」が好き。
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――「アカツキ」、一番人気です。これはどんな作り方を?
佐竹:「アカツキ」は…これは初めて言うんですけど、大阪の梅田あたりで待ち合わせをして、吉博と奈緒が車で来て、彩恵と僕を拾ってから現場に行く時に、待ってる時にこの曲のサビメロ全部がパン!と浮かんだんですよ。「これ、めっちゃいい」と思ったんだけど、隣に彩恵がいて、街なかでボイスメモを録るのもアレなんで、タバコでも吸ってくるわとか言って、こそこそと茂みのほうへ行って(笑)。ボイスメモに入れて、家に帰ったあとにAメロBメロを付けて、すぐにできたという思い出があります。
――その時、彩恵さんは気づいてた?
川口:まったく気づかなかったです。いつ?って感じ。
佐竹:たまにあるんですよ、そういうラッキーデーが。3人とも「アカツキ」が好きと言ってくれるのは、人の心にスッと入るメロディって、スッと降りてくるメロディなのかな?と思うので。今までもそういう経験が多いので、そういう感覚はこれからも大事にしていきたいと思います。
――「ライター」も、そういう感じですか。
佐竹:「ライター」は、「アカツキ」とは逆にけっこう作り込んで、歌詞の韻の踏み方とか、細部まで集中しながら細かく作って行った曲ですね。
――韻の踏み方が、ほとんどラップですよ。
佐竹:「ライター」は先にリズムが決まってて、歌詞のテーマ性もあったんですけど、一回書いてみたら、もっちゃりしちゃって。このゆったりテンポの中でどうやって歌詞をハネさせるか?と思った時に…ラッパーになってしまいました(笑)。歌詞で言うと、一番気に入ってるかもしれないです。
――明るい歌詞ではないんですけどね。女性言葉で、出て行った男への恨みと未練を、せつせつと綴る歌。
佐竹:前作の「L」という曲も、テーマ的には近しいものがあるんですけど、そういう歌詞が僕は一番すらすら書けてしまうんです。たぶん性格が悪いんかな?と思うんですけど、女性が苦しい思いをする歌詞は、めちゃめちゃ早く書けるんですよ。
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――そうさせた経験があるから?(笑)
佐竹:いやいや、大丈夫です(笑)。現実では、女性を悲しませるようなことはしません!
――そのへんの深層心理、興味深いです。奈緒さんのお気に入りソングは?
碩:「雨」は絶対しゃべられへんから…じゃあ「OCEAN」で。って、「OCEAN」に悪いけど(笑)。「雨」以外はどれでもしゃべれるんですけど。
佐竹:好きな曲でええよ。
碩:でも、バラけた方がおもろくない? とりあえず「OCEAN」から話すと、ライブ映えする曲を作ろうと思った曲で、構成もシンプルで、アウトロがなくてサビで終わる形も新しいし、個人的に気に入ってるのが2Aなんですけど。
――「ふてくされた顔がどうしても堪らない」のところ。
碩:惇が弾き語りの状態で持ってきたものに、それぞれが演奏を付けていくので、お互いのフレーズを聴かないままで作るんですけど、話し合ったわけでもないのに、そこのピアノの感じと考えてることが一緒で、ハマったなーと思う瞬間があって、そこがお気に入りです。あとはCメロの「愛してる恋してるその二つが混じりあう」のところは、ディレクターの方に出来上がったフレーズを聴いてもらった時に、「もっとこうしたら?」というアドバイスをもらって、リズムを変えることによって、めちゃめちゃ良くなったなと思ってます。後半にコーラスが入ってるんですけど、そこもお気に入りポイントです。
川口:「アカツキ」もしゃべったほうがいいんちゃう?
碩:「アカツキ」は…シンプルめの曲にしたいと最初から言ってて、結局ストリングスが入って壮大な感じになったんですけど、アイビーカラーが今まで出してこなかったような、熱めの曲を作ろうということになって、初期にあったようなシンプルめの曲を進化させたような曲になってます。この曲で初めて、ピック弾きをしてるんですよ。それもあって、「アカツキ」には思い入れがあります。
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――今までの話を聞いてると、全員の、アイビーカラーの楽曲に対する思いの入れ方が、ぐっと深くなったような気がする。
佐竹:確かに。この1年ぐらいで、みんな技術的にもうまくなってるし、楽曲に対するアプローチや知識も格段に進歩していて、よう頑張ってるなと思います。
酒田:たぶん、これができるようになるために、ディレクターさんが「アレンジャーを入れよう」って、前作ぐらいから言ってきてくれたんだと思う。
碩:確かに。そこから得たものが…。
酒田:得たものがめちゃめちゃあって、どういうふうにアレンジするか?というのがわかってきたというか。
佐竹:それはめちゃくちゃ大きかったな。ガチガチのプロのアレンジャーの方と一緒に制作するという経験が、こんなにも自分たちにとって大きくなるとは思ってなかった。
酒田:そういう方たちと知り合ってなかったら、たぶん「ライター」とかは作れてないと思う。「アカツキ」もそうやし。
――いいチームじゃないですか。
佐竹:そうですね。ちなみに僕のお気に入りは「オルゴール」なんですけど。
――「オルゴール」、いいですよね。語ってください。
佐竹:アイビーカラーにはラブソングは多いですけど、ウェディングソングを書くのは初めてなんですね。この曲を書く時期に、僕のお兄ちゃんが結婚することが決まったんですよ。ウェディングソングは、自分が結婚する時に書くものなんかなと勝手に思ってて、その時のためにとっておいたほうがいいんじゃないか?と思ってたんですけど、身内の結婚と言うことで、今の自分が思う二人の幸せについて書いてみようということで、作った曲です。「オルゴール」は先行配信で出ていた曲なので、ほかの5曲のほうが新鮮さがあると思うんですけど、あらためて振り返った時に、「この曲作れて良かったな」と思うぐらいの曲ですね。お兄ちゃんの結婚を聞いて作った曲だよとは、本人にはひとことも言ってないですけど、「こんな曲作ってくれてありがとうな」って喜んでくれたので、それも良かったです。
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――それもやっぱり、身内の結婚と言うテーマがきっかけだけど、今の時代にどういう曲を響かせたいか?という、ソングライターとしての惇くんの思いが自然に入ってるんじゃないか?と思いますけどね。「街角のラプソディ」も「アカツキ」も含めて。今は暗い歌を歌うよりも、前向きな気持ちになってほしいというか。
佐竹:それはあると思います。たぶん自分自身も、この1年間はポジティブな時期が少なかったぐらいの落ち方をしているなって、自分でも気づいていたので。コロナ期間だから明るい曲をいっぱい書こうと、最初から決めてたわけではないんですけど、たぶん自分自身を奮い立たすというか、ポジティブに前を向きたいなと思ったから、その表れがこの作品に自然となったんかな?と思います。
――だからこそ、この曲たちを今ライブで聴きたい。11月5日からツアーが始まりますね。どうなりそうですか。
佐竹:去年の『WHITE』のツアーは東名阪ワンマンしか回れなかったので、ツアーという印象がなかったんですけど、今回はリベンジも兼ねての全国ツアーなので。今作はライブ映えする曲が多くて、特に「街角のラプソディ」「OCEAN」「アカツキ」とか、今のアイビーカラーのライブにほしいなという要素が揃ってきた印象があるので、とにかくシンプルにやろうと思います。僕ら、ガチガチのライブハウスで育ってきたバンドマンなので、みんなの前で曲を披露した時にようやく「リリースしたぞ!」と思うので、この曲たちと一緒に、生でみんなで楽しみ合うことがむちゃくちゃ楽しみですね。
碩:めちゃくちゃ久しぶりに行く箇所も多いし、それが楽しみです。
川口:この状況でリリースできてツアーを回れるのは、ほんまにお客さんのおかげなので、感謝したいです。ありがとうございます。というのと、ライブはとにかく楽しんでほしいです。
酒田:今までとは違うライブができると思うな。もっと良くなる気がする。
取材・文=宮本英夫 Photo by 菊池貴裕