倉持裕「色とりどりの仕掛けを眺めているだけでも楽しめると思います」~新国立劇場『イロアセル』が開幕
(左から) 伊藤正之、箱田暁史 撮影:引地信彦
2021年11月11日(木)新国立劇場 小劇場にて、演劇『イロアセル』が開幕した。初日を迎えた本作から演出家・出演者のコメント、舞台写真が到着した。
小川絵梨子芸術監督が、その就任とともに打ち出した支柱の一つ、「演劇システムの実験と開拓」として、すべての出演者をオーディションで決定する「フルオーディション企画」。
第1弾『かもめ』(演出・鈴木裕美)、第2弾『反応工程』(演出・千葉哲也)、第3弾『斬られの仙太』(演出・上村聡史)に続く第4弾で、2011年10月に倉持裕が新国立劇場に書き下ろした『イロアセル』。演出に作者でもある倉持裕自身を迎え、20年10月より公募を開始、11月末から約3週間をかけて開催したオーディションを経て、10名の出演者が決定した。
物語の舞台は海に浮かぶ、小さな島。その島民たちの言葉にはそれぞれ固有の色がついている。それは風に乗って島の空を漂い、いつ、どこで発言しても、誰の言葉なのかが島のどこにいても特定されてしまう。だから島民たちはウソをつかない。ウソをつけない。
ある日丘の上に檻が設置され、島の外から囚人と看守がやって来る。島民は気づく。彼らの前で話す時だけは、自分たちの言葉から色がなくなることに――。
ネット上に溢れる匿名だからこそ話せる抑えてきた本音、匿名という隠れ蓑を利用した無責任な発言─。2020年代のSNS社会を揶揄したような架空の島のおとぎ話。
ネット社会やコロナ禍において、対面を必要とせず、言葉だけに頼るコミュニケーションツールが発達・増加した現代に、日常における対話や発言の在り方を、今改めて問いかける。
演出:倉持裕 コメント
フルオーディションによるキャスティング、稽古、スタッフミーティング、いずれもじっくり時間をかけて当たりました。おかげでいつもより平常心でこの日を迎えることが出来た気がします。
この作品は、SNS社会に対する批評がベースにはありますが、人間の業を描いた喜劇でもあります。そんなテーマやストーリーのことなど考えず、色とりどりの仕掛けを眺めているだけでも楽しめると思います。皆様、ぜひご覧ください。
出演:箱田暁史 コメント
第4回目のフルオーディション公演『イロアセル』がいよいよ開幕となりました。「囚人」とはいったい何なのか? 「色」とは?
ずっと考えています。私たちはいつも他人の目を気にし評価を気にしています。それは必要なことです。より良い社会とはみんながちょっとずつ我慢することできっと成り立っている。出さなかった声があるということです。じゃあその我慢した声、思いはなかったことになるのか?
そんなことできるのかな? みたいなことをぐるぐる考えているんです。こういうことって一言で言い表せないから物語が、演劇が存在しているんだと思います。ぜひ劇場で、体感していただけたらなと思っています。
公演情報
演劇『イロアセル』
プレビュー公演 2021年11月7日(日)
会場:新国立劇場 小劇場
作・演出:倉持裕
出演:伊藤正之 東風万智子 高木稟 永岡佑 永田凜
西ノ園達大 箱田暁史 福原稚菜 山崎清介 山下容莉枝
芸術監督:小川絵梨子
主催:文化庁芸術祭振興委員会/新国立劇場
に関するお問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999(10:00~18:00)