ASCA「君が見た夢の物語」リリース記念インタビュー 再び『ロード・エルメロイII世の事件簿』の主題歌で梶浦さんとご一緒できるのは「私が見た夢の物語」
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ASCA
2017年からASCA名義での活動をスタートし、2021年6月には8枚目となるシングル「カルペディエム」をリリース。2021年下半期には『ASCA LIVE TOUR 2021 -百希夜行-/-君の街へ- 』を成功させ、2022年のライブツアーの開催も決定と、勢いがとどまることを知らないASCA。2022年1月にはニューシングル「君が見た夢の物語」のリリースも決定し、今年の活動からも目を離すことができない彼女に2021年を振り返るとともに、今回のシングルに収録した楽曲に込めた想いを語ってもらった。
――2021年はお名前をお見かけする機会がすごく多く、忙しい日々を過ごしていたのではではないかと思います。振り返っていかいがでしたか?
そんな忙しいだなんて、人並みな感じですよ。とはいえ今年の後半は2年ぶりのツアー、それも初めての全国ツアーがありましたから、それに向けて身体を作ったり声の調子を整えたりということで充実した日々は過ごしていました。音楽と向き合う時間がすごく長かった日々だったとは思います。今はそれが終わって一息ついているって感じです。
――つい先日までツアー真っ只中でしたからね。
そうなんですよ。なので一時の自堕落な期間が今という感じです。ただ2022年のツアーも決まりましたから、そろそろまたエンジンかけなければとは思っています。
――そういう意味では、今だからできることもあったりするのでは?
もう本当に、今は好きなものを食べて、って感じです。私、激辛の食べ物とか大好きなんですけどそれも封印していましたから。
――やはり辛いものを食べると声が出なくなったりするんですか?
喉へのダメージはありますね。あとは願掛けみたいなニュアンスもあるんです。我慢してライブに臨めばきっといいライブになる、みたいな。
――それだけ気合いの入れて2021年は臨まれたということですね。以前のインタビューではみんなに会いに行きたい、というお話もされていましたが、それも今回のツアーで叶ったかと思います。
ライブに来ていただいた皆さんに、進化した私を見てもらいたいという想いもあって、皆さんに会えることを本当に楽しみにしてたんですよね。実際にライブをやってみたら、皆さんの顔を見てこちらのほうが元気もらえて。本当に楽しいライブでした。
――やはりファンの皆さんがASCAさんにとっての元気の源だった、と。
本当にファンの皆さんには元気をもらっています。今回ライブツアーを回る中で、京都公演で一度声が出なくなってしまったんです。これまで経験したことがなくて、すごく焦ったのですが、それを見ていたお客さんがずっと「大丈夫!頑張れ!」と言ってくれて。それを見ていたら、私のファンの人達ってなんて優しい人達なんだろう、って感動したんです。もちろん完璧なライブができなかったという申し訳なさもあったのですが、それ以上に皆さんの温かさに心動かされた。それで「皆さんにもっともっと良いものを今後も届けていかなければ」と思えたんです。
――心温まるエピソードです。
おかげで荒んでた心が浄化されました。
――そんなに荒んでたんですか(笑)?
荒んでましたね。前作の「カルペディエム」の作詞をしていた時は荒みきっていて、歌詞に「荒む」って出てきてますから。でも、あれから半年ほど経って、改めてライブで「カルペディエム」を歌って感じたんです。「私、もうそんなに怒ってないな」って。
――そうすると「カルペディエム」の時とは全く違う心境でリリースされたのが、今回の「君が見た夢の物語」ということになりますね。
そうなんですよ。歌に込めた感情が「カルペディエム」の時と全然違うものになってます。
――そんな新たな気持ちでリリースしたシングル、表題曲「君が見た夢の物語」がアニメ『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』(以後『エルメロイII世の事件簿』)特別編の主題歌ですね。
そうなんですよ、私自身もこの作品が大好きで、その続編の主題歌を歌えるなんてもう「私の見た夢の物語」ですよ!
――そんなにお好きなんですね!
世界観も良いし、なんと言っても主人公であるロード・エルメロイII世が良いんです。憎めないキャラクター、普段はすごくクールで理屈っぽいけど、たまに昔のウェイバー・ベルベットの中二病っぽい感じが出てくる。すごく人間臭くて見ていて共感できるし、安心できるんですよ。
――ロード・エルメロイII世は確かに、すごくギャップがあって魅力的なキャラクターですよね。そんな愛溢れる作品の主題歌を担当されたわけですが、制作はどういった流れで始まったのでしょうか?
この曲、もともとはアニメ『エルメロイII世の事件簿』のオープニング「starting the case : Rail Zeppelin」に歌をつけるということで制作がスタートして。それで歌をつけるにあたって梶浦さんがメロディを新しく書き直してくれたんです。
――そうだったんですね。そうすると曲としてもアニメ『エルメロイII世の事件簿』とかなりリンクした楽曲となりますね。
アニメ『エルメロイII世の事件簿』のエンディングとして歌わせていただいた「雲雀」と同じワードが随所に散りばめられていたりもするんですよ。本当に梶浦さんの作品愛が存分に注ぎ込まれて作られています。
――やはり梶浦さんの作品への理解度はすごいんですね。そうなると歌い方としても「雲雀」を引き継いでいる部分はあるのでしょうか?
これが全然違うんですよ。Dメロは「雲雀」と近い歌い方をしていますが、それ以外は全く違う、これまで挑戦したことのないような歌い方をしています。梶浦さんの言葉を借りると「ミュージカルのように歌う」ということで。
――ミュージカル、ですか?
そうなんです、これがこれまでやったことのない歌い方だったんですけど……。ミュージカルのように演じて、喋るように歌っているんです。これまで私がやってきた歌い方っていうのは、リズムに対して言葉をタイトにはめていくような歌い方だったんです。それに対して言葉を一つ一つ、喋るように丁寧に発音して、リズムに乗せることに対して、あまりタイトにしないようにしているんです。
――なるほど、そうすることで一つ一つの言葉やメッセージがスッと頭に入ってくるようにしている、と。
そうです。
――なるほど。そんな梶浦さんのディレクションを受けていかがでしたか?
梶浦さんは本当に褒め上手な方なんですよ。歌い終わるとトークバックですぐに「素晴らしいです!」って言ってくれるんです。歌っている側にとって歌い終わった後のトークバック(リアクション)がなかなか来ないのは、一番恐ろしいことなんです。でも梶浦さんはすぐにトークバックをくれるし、すごく具体的に良かったところを言ってくれる。そうすると歌っている側も気持ち良くなって、もっともっといい歌を歌おうと思える。結果的に普段以上の力が引き出された歌が出来上がるんですよね。梶浦さんが素晴らしい曲を次々に生み出していけるのって、こういう人を気持ち良くさせる力から来ているんだな、って思いました。もちろん楽曲が良い、というのも大前提なんですけどね。
――やはりいい曲を作るにはいいディレクションが必須、ということなんですね。
それは本当にあると思います。あと梶浦さんのディレクションのすごいところは、判断が早いこと。曲を聴いて、それが良かったかどうかをすぐ判断して、すぐに言葉にして伝えてくれるんです。歌う側としてはこんなにやりやすいことはないです。
――そうすると3曲目に数録されている「雲雀 –winter whisper version-」もかなり気持ちよくレコーディングができた、と。
本当に気持ちよくやらせていただきました。「ねぇほんとはいつだって光の中にいたよね」のところで「本当に光の中にいるようでした!」と言っていただけたりして。「ASCAさんの声ってハスキーだけど芯があって、その芯がある声の周りにキラキラの光の粒がまとわれているところが魅力なんです」なんて言っていただいて、もうそう言っていただけただけで一年は幸せに暮らせます、みたいな気持ちで。
――それは嬉しくなりますね。こちらアレンジ版を収録しようと思ったのはどう言った経緯からだったんですか?
「雲雀」をこれまで何度もライブで披露させてもらう中で、この曲って表現の幅がすごく多様だってことに気付かされたんです。それで、今だったら前のレコーディングの時とは別の歌い方をするな、今ならレコーディングの時とはまた違ったメッセージを込めた「雲雀」が歌えるな、そう思っていたんです。
――歌詞の解釈も変化してきた、ということですかね。
そうなんです。例えば「ねえ、本当はいつだって一人は寂しいからね」って歌詞は、レコーディングの時は本当に寂しさを込めて歌ったんです。でも、ライブで披露していく中でだんだんと「一人は寂しい、だから目の前にいてくれるあなたに感謝したい」そういう気持ちを込めて歌うようになっていったんです。そうしたら、その後の「光の中にいたよね」の光の中って今まさにファンの皆さんと相対しているこの場所だって気付けたんです。
――すごく素敵な情景が浮かびます。
最初のレコーディングの時はただっ広い空とか、草原とか、歌詞から得たインスピレーションの光景を思い浮かべて歌っていたんです。でも今回はファンの皆さんの顔を思い浮かべて歌っています。是非それを堪能してもらいたいですね。
――なるほど、それは是非とも届いて欲しい曲ですよね。そして今回のシングルに収録されている楽曲にゲーム『ソードアート・オンライン アンリーシュ・ブレイディング』の主題歌「逆境スペクトル」もあります。こちら作詞作曲をノイさんが担当していますがASCAさんと組むのは初めてですね。
そうなんですが、とても初めてとは思えないほどに私のことを理解していただいた上で作ってくださった曲なんですよ。
――それはどういったところから感じられたのでしょうか?
普通に歌えば一曲の中で、私の声の強みが全部出てくるようにできてるんですよね。例えば私の声の強みの一つに低音というのがあるんですけど、それをきっちり見せられるようにAメロBメロは低めに作られていたり。本当にすごく研究されているな、と歌いながら思いましたね。
――それだけASCAさんの楽曲を聴き込んで作られたんでしょうね。
本当にありがたい限りです。歌詞でも以前に歌わせていただいた『ソードアート・オンラインアリシゼーション』の主題歌「RESISTER」で使ったワードも散りばめられていて。本当に素晴らしいな、と思いましたね。
――ASCAさんのことも、そして『ソードアート・オンライン』シリーズのことも知り尽くした歌になっている、と。
ノイさん自身、『ソードアート・オンライン』シリーズが大好きらしいんです。それで歌詞も作品の世界観をかなり綿密に織り込んであって、作品ファンの皆さんも聴いてすごく感動されていました。
――本当に好きな人じゃないと作れない曲ということですね。
もうデモをいただいた時点で完成度が高くて驚きました。ゲームの制作担当の方と歌詞を読んで、そのまま一発OKで歌詞が決まった感じでしたね。
――デモの段階でほぼ完成されていた楽曲だったということですね。実際に歌ってみた印象はいかがでしたか?
この曲はメロディラインが歌詞にぴったりあっているんですよ。メロディに沿って歌っていくと、自然とエモーショナルな歌詞の部分でエモーショナルな気持ちになるようにできている。そんなところまで計算され尽くされているなんて…、と思いました。本当にすごい楽曲です。
――本当に今回のために生まれてきた楽曲という印象が強いということですよね。そしてもう一曲、ボーカロイド楽曲である「金木犀」のカバーが収録されています。数あるボーカロイドソングからなぜ「金木犀」を選ばれたのでしょうか?
まず第一に「金木犀」って花が好きというのがあって。あとはそうですね、ライブで披露した時の情景が浮かんだんですよ。
――ライブで披露することが最初から念頭にあった。
ちょうど曲を選んでいる時が、ツアーの直前だったので意識がそっちに行っていたんです。それで、この曲でみんなでクラップしたら楽しいんじゃないかって思ったんです。まだライブ中は声が出せないということも多いので、声を出す代わりにみんなでこの曲でクラップができたら楽しいだろうな、と思って。
――なるほど、そこに向けてアレンジを作っていったということですね。実際に制作はいかがでしたか。
実は最初は結構難航したんです。歌ってみて、理由は分からないけどなにか違う、から制作がスタート。それでアイディアを出し合って色々と試して、でも最終的には出たアイディアは白紙に戻して、勢いで歌い切っちゃうみたいな感じでしたね。
――最終的には勢い(笑)。
あとは周りに有無を言わさない圧力。
――(笑)それもASCAさんの中に完成図が思い描けていたからできたことだとは思います。
そうですね。歌詞が悲しい曲なので、それをあまり全面に出さないように、というのはすごく気にかけてました。あくまでクラップしてみんなで楽しむ曲に仕上げたい、という気持ちは強くありましたから。
――本当にライブで楽しめるナンバーに仕上がっていると思います。ここまで伺った4曲が収録されたシングル「君が見た夢の物語」のリリースが、2022年のスタート直後ということになると思います。改めて今年の抱負はいかがですか。
2021年は自分の中にある理想に近づけた年だったんです。MCだったり、ライブパフォーマンスだったりにしても、やりたかったものが表現できるようになって。そこからの2022年、やれることをもっと増やしたいですね。
――例えばどんなことを考えられているのでしょうか?
先日ライブツアーを回って思ったんですが、もっとライブを楽しんでもらえるようにするアイディアって色々あるんじゃないか、って思ったんです。例えばダンスをやって見せるとか、楽器を演奏するとか、そういうのをできるようにして、ライブを見に来てくれた方を驚かせたいと思っています。
――となると来年のツアーは何が飛び出すかお楽しみに! って感じですね。
そうですね。期待していてくださいって感じです。もしかしたら手品で「雲雀」を出すかもしれませんよ(笑)。
インタビュー・文=一野大悟
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