ストレイテナーがバンドの懐を見せつけた2015年の締めくくり「大忘年会」のツアーファイナル
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ストレイテナー
2015.12.19 ストレイテナー FREE ROAD TOUR ファイナル@新木場STUDIO COAST
シンセのサウンドが鳴り響き、ステージは光で包まれた。その中に、4人のシルエットが浮かび上がると、場内に大歓声が沸き起こった。広がるシンセの音色、その中で浮かび上がるポップなメロディー。ホリエアツシ(Vo/G/Key)がピアノを弾きながら歌う「覚星」で、ストレイテナーにとって2015年最後のワンマンステージが幕を開けた。続けてベースが激しくうなりをあげ、<オ〜オオオ〜!>というコーラスが大合唱になった「The World Record」。トリッキーな演奏で聴かせる豪快なロックンロールのナンバー「Super Magical Illusion」が繰り出されると、曲に合わせて赤や青にとライティングが瞬く。「覚星」に出てくる“物語の始まりは”という言葉が思い起こされ、今宵は一体どんな物語を見せてくれるのか?と、期待がいっそうかき立てられた。
ストレイテナー ホリエアツシ
ストレイテナーによる全国ツアー「FREE ROAD TOUR」のファイナルが、2015年12月19日に東京・新木場STUDIO COASTで開催された。年末のこの時期は、ここ新木場STUDIO COASTでのライブが恒例になっているそうで、冒頭からホリエも「始まりましたよ、忘年会」と、どこか年末の締めくくりモード。実際にセットリストも、2015年にリリースした「The Place Has No Name」、「NO 〜命の跡に咲いた花〜」、「DAY TO DAY」という、3つのシングルの収録曲を中心に演奏され、2015年の集大成といった内容になっていた。MCでも「俺たち、何回もファイナルの夜を越えて来たよな。今日お台場のビルディングを見ながら、“今年も生き残って来たな〜”って思ったよ。みんなで一緒に、お墓に入ろうな!」と、2015年を振り返ってしみじみとするような場面があった。結成して18年、数々のバンド仲間の意志を受け継いでここまでやって来た。どんなことがあっても、俺たちだけは残っていかなければならない……。そんなことを思ったのかもしれない。そして、ホリエからの「一個だけお願いがあります。……楽しんでいってください!」という心からの言葉に、会場は一斉に沸いた。
ストレイテナー 大山純
この日は、2014年にリリースされた最新アルバム『Behind The Scene』からの楽曲も数多く演奏された。ハネたシャッフルビートのナンバー「Yeti」では、観客がリズムに乗せて身体を揺らす。深いディレイのかかったギターと複雑なビートで構成された「78-0」では、美しさとダークさがお互いを引き立て合い、観客はステージに向かって手を伸ばした。キラキラとしたギターとファルセットの歌声、胸をキュッと締め付けるような哀愁漂うメロディーは「The Place Has No Name」。ホリエがアコースティックギターを弾きながら歌った「NO 〜命の跡に咲いた花〜」では、優しく包み込むような雰囲気が会場に広がり、観客は微動だにせずジッと聴き入った。一転、力強いグルーヴィーなリズムが心地よい「DAY TO DAY」では、観客がこぶしを振り上げながら、耳馴染みのいいメロディーを一緒に口ずさむ。間奏ではビートが速くなって、ハードロック調になる展開も楽しく、聴かせる部分と盛り上げる部分の両面で観客を盛り上げた。
ストレイテナー 日向秀和
季節柄もあって「GHOST OF CHRISTMAS PAST」も演奏された。軽快なリズムが心地よくキュンとするメロディーが秀逸なナンバー。最後に客席に向かって「メリークリスマス」と言ってキメると、言い方が少しキザに聞こえたようで、観客からそれをイジられ「冷やかすなよ!」と照れくさそうに笑ったホリエ。クリスマスと言えば、ドラムのナカヤマシンペイが「来週はクリスマスだね」と客席に声を掛けたときには、どうやら彼氏や彼女がいないファンが多かったようで、一瞬会場はシーンと静まりかえり、慌てて「す、すまん。嫌なことを思い出させてしまった。今日はクリスマスのことなんか忘れさせてやるよ!」と、フォローするひと幕も。MCでもホリエは「今回のツアーで思ったのは、おひとりさんが多いということ」と話していた。「千歳空港で足止めを食らったときには、“大阪から来ました”というおひとりさんから声をかけられたりして。若いころって、何かと仲間でワチャワチャするものだけど、(会場を見渡して)こんなにおひとりさんがいるんだな。でもここに来れば、こんなにも仲間がいる。実は俺もけっこうおひとりさんです。最近では、ひとりでレキシのライブに行ったし」と、自身のおひとりさまエピソードを披露していた。
ストレイテナー ナカヤマシンペイ
アンコールではインディーズ時代からのナンバー「ROCKSTEADY」や、数々のフェスを盛り上げてきた鉄板ナンバー「Melodic Storm」が演奏された。胸を熱くさせる心の叫びとアッパーのビート、シンプルなギターサウンドで、初期のころからストレイテナーのステージを支えてきた「ROCKSTEADY」。ギターのOJこと大山純は、ピョンピョンと飛び跳ねながら演奏し、ベースの日向秀和は、縦横無尽に身体を動かしながらアグレッシヴに演奏を披露した。「Melodic Storm」では、この日いちばんの手拍子とかけ声があがり、大合唱となってまさしく会場が一つになったことを感じさせた。ドラムのイスの上に立ち上がって、観客をあおったナカヤマシンペイ。ホリエは、エレキ、アコギ、ピアノと多彩な楽器を駆使しながら、珠玉のメロディーと心に響く歌詞を届け続けてくれた。
ロックバンドとしての地位を築きながら常にチャレンジを続け、歌心という部分で数多くのファンを魅了してきたストレイテナー。この日のステージは、その両面をいかんなく発揮し、彼らの懐の深さや18年続いて来たわけを実感させるものになっていた。
「ストレイテナーの大忘年会にお越しいただき、ありがとうございました。次にみんなと会えるのは先になると思うので、この光景を目に焼き付けていきます。おひとりさんも、いつでも来てね!」
おひとりさま上等! 一人でも見に行きたいと思うだけの魅力と価値がストレイテナーにはある。クリスマスの話題でシーンとなった、そのことこそがその証しだ。
撮影=橋本塁(SOUND SHOOTER) 文=榑林史章