楊琳、先輩の大貴誠や桐生麻耶からもらったお守りのような言葉とはーーOSK日本歌劇団創立100周年連載『OSK Star Keisho』第2回
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楊琳 撮影=田浦ボン
1922年に誕生し、2022年に創立100周年を迎えたOSK日本歌劇団(以下、OSK)。一部公演は中止となってしまったが、2月18日(金)から20日(日)まで大阪松竹座にて上演を予定している『レビュー春のおどり』でも、「伝統のバトンを次なる時代へと繋ぐ」をテーマに、OSKらしさ全開のレビューを展開していく。SPICEでは1月よりスター達に質問の「バトン」を用意してもらい、次のスターへと繋ぐリレー形式のインタビュー連載企画『OSK Star Keisho』をスタート。第2回は、100周年という大きな節目の年にトップスターを務める楊琳(やんりん)が登場。長身で端正な顔立ち、颯爽と踊る姿も凛々しい楊だが、インタビュー中はよく笑い、周囲を明るく照らすような魅力にも溢れている。「OSKはみんなのもの」と話す楊、その真意とは?
『OSK Star Keisho』
――レビューの世界を知ったキッカケから教えてください。
中学2年生のときにBSで宝塚歌劇団を初めて観て、歌劇という世界を知り、それでハマってしまいました。宝塚音楽学校も受験したのですが落ちてしまい、通っていたダンススクールにOSKのOGの方がいらっしゃって、しょげている私を見て「OSKに挑戦してみたらどう?」と勧められて。当時はOSK存続の会の頃でしたが、「険しい道だけど、それでもやりたいんだったら公演を観て、行ってみたら」とアドバイスをいただきました。そして2004年に66年ぶりに大阪松竹座に帰った『春のおどり』を観て、一目ぼれしてしまって。「まだ自分の夢を追えるんだ」と思い、OSKへの入団を決めました。
――楊さんは生まれも育ちも横浜ですが、入所当時、大阪はいかがでしたか?
横浜と結構離れているので最初は不安だったんですけど、皆さんが本当に温かくて。私は中華街で育ったのですが、中華街では、みんな親せきみたいな感じなんです。人との距離感が近くて。おばあちゃんの家も誰かしらやって来ておすそ分けをくれたりとか。逆にそんな習慣のないところに行くのが不安で、大阪はどうなんだろうと思っていたんですけど、中華街のあの感じに近かったので「あ、良かった」と(笑)。
楊琳
――OSKに入団されて、憧れたレビューの世界に理想と現実のギャップはありましたか?
華やかだけじゃないんだと思いましたし、そこに至るまでの努力は見えないじゃないですか。楽しいことばかりじゃない、むしろ大変なことばっかりで、やっぱり時間がかかることなんだと思いました。
――楊さんは表現者として何を一番大事にされていますか?
お客様の存在です。自分を通してお客様に楽しんでもらいたい。自分も舞台を観るのが好きなのですが、何で舞台が好きなんだろうと考えたところ、その瞬間しかないからなんですよね。同じ内容のことをされていても毎回違いますし、観た後の感動は自分にとって本当にかけがえのないもので。よくファンの方からお手紙をもらうのですが、「生きる糧です」とか、私の舞台を見るために「毎日お仕事頑張ってます」とか書いてくださっていて。自分の舞台がその人の生きる軸や糧だと思うと、生半可な気持ちで立てないじゃないですか。責任重大なお仕事だと思うので、皆様に楽しんでもらって、生きる力の糧になればと思っています。本当に尊いお仕事だと思うので、何よりもお客様が大事です。
――かえってそれが自分にとってプレッシャーになることはないですか?
プレッシャーはベースとして常にあるものだと思います。ただ、それが良い緊張感になって、だからこそ真摯に向き合えるというか。これは私だけの考えですが、そういうことを感じなくなったら、もう潮時なんだろうなと思っています。
OSK日本歌劇団 360°VR舞台映像(円卓の騎士)
――2007年の初舞台からこれまで、一番大変だったことと、逆に一番嬉しかったことは何でしょうか?
大変も嬉しいも一緒なんですが、2019年7月に南座で上演された南座新開場記念「OSK SAKURA REVUE」「OSK SAKURA NIGHT」です。昼の第一部「歌劇 海神別荘」、第二部「STORM of APPLAUSE』というレビューショー、夜は『サクラ大戦』の声優さんとのコラボによるナイトレビューがあったんです。その時、『海神別荘』に出ている人はナイトレビューに出ない、ナイトレビューに出ている人は『海神別荘』に出ないという感じだったのですが、私だけ3演目全てに出たんですね。公演期間中はすごく大変だったけど、めちゃめちゃ楽しくて。あとは2018年12月に大阪の近鉄アート館で『円卓の騎士』の主演をさせていただいて、翌年の2019年1月に東京の銀座博品館劇場でも上演されて。そのあと3月、4月に近鉄アート館とクールジャパンパーク大阪で『新撰組 コンチェルト~狂奏曲~』があって、それも主演させていだきました。同時に東京の新橋演舞場と大阪松竹座にて『春のおどり』も出演させていただき、稽古が同時に3つ、重なったことがあったんです。それも大変だったのですが、舞台人冥利に尽きて、すごく楽しかったです。
楊琳
――怒涛ですね。公演を終えられたときはどんなお気持ちでしたか?
とりあえず無事に乗り切ったぞ! みたいな(笑)。振り返ると忙しい方が本当に楽しいですね。
――忙しいというのは、ありがたいことですね。
本当そうです。こういう舞台は、今しかできないことをやっていると思うので、とても充実した今を過ごせていることがすごく嬉しいです。あとは「楊ならやりこなせるだろう」と思ってもらえることも、信頼されている感じがしてありがたいです。
2021年6月『レビュー 夏のおどり』 (c)松竹
――トップスターに就任されて、舞台人しての意識の変化はありましたか?
「よりしっかりしなきゃ」と思いましたし、トップになってからは、語弊があるかもしれないのですが、「自分がOSK」という気持ちが強くなって、いい意味で迷いが消えたというか。ただやるだけ、突っ走るだけみたいな感じになりました。だからより「OSKを知ってもらうために何ができるか」などを考えるようになりました。
――トップスターになるまでは試行錯誤されることがあったのですか?
そうですね、どうしたらもっと戦力になれるのかと漠然と考えていて、試行錯誤と言っていいのかわかりませんが、そんな感じでした。でも、トップになったからにはもう進むだけじゃないですか。
――シンプルになった感じですね。「それしかない」。
そうですね。それしかないという感じです。
――劇団を代表してご挨拶されることも増えたと思うのですが、そのあたりでの意識の変化はどうでしたか?
一言一言に重みを感じますね。人前で話すのが本当に苦手なので、そういう意味ではいい経験をたくさんさせていただきました。
楊琳
――ほかのインタビューで2022年の100周年の年にトップスターを務めるということに関して、「星の下に生まれた」とおっしゃっていました。改めてこのタイミングにトップスターを務められていることについて、その思いを教えてください。
そうですね、まさか自分が100周年に立ち会えるとも思わなかったですし、この立場になるとも思わなかったので、本当に毎回言っていますが「なんて星の下に生まれてしまったんだ」と。その思いが強いですよね。100年という時間の中には、いろんな方々の思いがあるじゃないですか。みんなの嬉しい思いを抱えて舞台に立てたらいいなと思っています。みんながお祝いしたいはずなので。あとは「ありがとう」ですね。本当に。
――「星の下に生まれた」というのは運の強さも含まれると思うのですが、トップスター就任に関係なく、日常で運気アップのルーティンなどはされていますか?
運気アップになるのかわかりませんが、芸能の神様の神棚はあります。あと、毎日寝る前に玄関を水拭きして、お手洗いの掃除をしています。こう言うとなんか金運にめざといと思われるかもしれないですけど(笑)。あとは、どんなに寒くても暑くても、朝起きたらまずカーテンを開けて、窓を開けていますね。習慣になっていて生活リズムの中に入っています。
楊琳(右)と桐生麻耶 (c)松竹
――ありがとうございます。それは見習いたいですね。では、OSKの先輩から教わったことで、今でも大事にしている、お守りみたいなお言葉はありますか?
桐生麻耶(きりゅうあさや)さんから言われた「忍耐」ですね。「この言葉はどんなときも必要だよ」と。OSKを辞めたいと思ったことはあまりないのですが、確かに耐えなきゃいけない場面はいろんな意味であるので、その言葉を聞けてよかったなと思います。あとは、いつもはトップの方が来てくださるのですが、私達83期が研究所を卒業したとき、上級生の方々は「春のおどり」があったので卒業式に来られなかったんです。当時、大貴誠(だいきまこと)さんがトップで、『春のおどり』のポスターには大貴さん、若木志帆(わかきしほ)さん、北原沙織(きたはらさおり)さん、高世麻央(たかせまお)さん、桜花昇ぼる(おうかのぼる)さんが載っていて。それぞれがご自身の写真のところに一言メッセージを添えたポスターをくださったんですね。それがすごく嬉しくて。大貴さんは「華を持て、考えろ」という言葉を書いてくださって、その言葉は常に持っています。
――今後、後輩の皆様にOSKの何を引き継いでもらいたいと思いますか?
いろんな人から応援してもらっていて、愛してもらっている劇団なんだよということを忘れないでほしいな。自分たちだけの劇団じゃないということも忘れないでほしいなと思います。
稽古の様子 (c)松竹
――続いては『春のおどり』について今はお稽古の真っ最中だと思いますが、現時点で第一部と第二部はどんな感じになりそうですか?
第一部、第二部ともにOSK100周年ならではという作品になっています。第一部の演出、振付は山村友五郎先生、尾上菊之丞先生、藤間勘十郎先生という異色コラボなので、最初はどんなことになるのだろうと思っていたのですが、先生方それぞれ担当されている場面が個性豊かで、すごく楽しめると思います。勘十郎先生は初めてOSKで演出されますが、立廻りにがっちり歌舞伎テイストが入っていて、本当に見応えがあります。歌舞伎のアクロバットな部分では、「みんな、本当に女の子?」という感じになっています。第二部の荻田浩一先生は、100年の歴史をすごく美しく追ってくださっていて、「OSKといえばラテン」を表した場面もありますし、タップでは笠置シヅ子(かさぎしづこ)さんが当時歌われていた楽曲を使用しています。1923年の第1回公演『アルルの女』の楽曲にアレンジを加えたもので踊らせていただきますし、「ビバ!OSK」「虹色の彼方へ」「桜咲く国」もふんだんに使っています。
稽古の様子 (c)松竹
――では、連載『OSK Star Keisho』の第1回に登場された桐生さんからのご質問バトンをお渡しします。桐生さんからは「100周年記念の年にセンターに立つ景色はどう見えますか?」というご質問がありました。
そうですね、「100年なんてすごいなあ」ですかね(笑)。いやあ、本当にすごいことだと思います。信じられないですよね。歴史の流れはすごいなあと思いつつ、でもみんながいるから大丈夫です。
――最後になりますが、連載第3回は翼和希さんがご登場します。翼さんの印象を教えてください。
すごくしっかりしていて、歌もべらぼうにうまいですし、これからより一層、大きな存在になってもらいたいです。OSKにとっても軸になっていく子なので、もうちょっとドーンと図太くなったらいいなと思っています!
――翼さんへのご質問バトンをお願いします。
「あなたにとってのOSKとは?」でお願いします!
楊琳
取材・文=K.Iwamoto 撮影=田浦ボン
公演情報
第一部「光」:演出・振付 山村友五郎・尾上菊之丞・藤間勘十郎
第二部「INFINITY」:作・演出 荻田浩一
【日時】
2月18日(金)11:00/15:00
2月19日(土)11:00/15:00
2月20日(日)11:00/15:00
楊琳、舞美りら、千咲えみ、白藤麗華、虹架路万、愛瀬光、城月れい、華月奏、遥花ここ、実花もも、翼和希、穂香めぐみ、結菜ほのり、りつき杏都、壱弥ゆう、朔矢しゅう、椿りょう、羽那舞、唯城ありす、京我りく、渚美怜、紫咲心那、有絢まこ、せいら純翔、瀧登有真、翔馬かいと、花うらら、梅名希歩、夏目せな、華蓮いろは
(特別専科)桐生麻耶、朝香櫻子
一等席(1・2階)8,500円/二等席(3階)4,500円
【日時(6公演)】
3月25日(金)12:00/16:30
3月26日(土)12:00/16:30
3月27日(日)11:30/16:00
楊琳、舞美りら、千咲えみ、白藤麗華、虹架路万、愛瀬光、城月れい、華月奏、遥花ここ、実花もも、翼和希、穂香めぐみ、りつき杏都、壱弥ゆう、朔矢しゅう、椿りょう、雪妃詩、唯城ありす、柚咲ふう、京我りく、凜華あい、依吹圭夏、純果こころ、せいら純翔、翔馬かいと、空良玲澄、真織ひな、璃音あかり、華蓮いろは、柊湖春
(特別専科)桐生麻耶、朝香櫻子
S席(1・2階)9,500円/A席(3階)5,000円
公演情報
第一部「陰陽師 闇の貴公子☆安倍晴明」:原作 夢枕獏『陰陽師』シリーズ(文藝春秋刊)より
作・演出 北林佐和子
第二部「INFINITY」:作・演出 荻田浩一
南座
7月9日(土)11:00/15:00
7月10日(日)11:00/15:00
7月11日(月)休演
7月12日(火)11:00
7月13日(水)11:00
7月14日(木)休演
7月15日(金)11:00
7月16日(土)11:00/15:00
7月17日(日)11:00/15:00
7月18日(月・祝)11:00/15:00
一等席:8,500円/二等席:4,500円