古川雄大初のミュージカルコンサート開催、珠玉のナンバーでおもてなし~山崎育三郎ゲスト回をレポート

2022.4.10
レポート
舞台

古川雄大 (撮影:旭 里奈)

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『エリザベート』『モーツァルト!』など、数々の大作ミュージカルに出演する傍ら、ドラマ、映画などでも幅広い活躍を見せ、躍進し続ける古川雄大。そんな古川にとって、初のミュージカルコンサートとなる『古川雄大 The Greatest Concert vol.1 -collection of musicals-』が、IHIステージアラウンド東京にて開催された(2022年4月1日~4月10日)。ここでは、山崎育三郎をゲストに迎えた4月6日の公演の模様をお届けしよう。

客席に着き、まず目に飛び込んできたのはいくつもの窓がある「お城」の映像。続いて、招待状の画像と共に「このたび、素敵な宴を催す運びとなりました。皆様のご出席を謹んでお待ちしています」という古川のアナウンスが流れると、客席は“お城に招かれた来賓”という特別感に包まれた。ステージには、おとぎ話に出てきそうな、頭巾を被りランタンを持った人物たちが現れ、下手から上手へ、観客を誘うようにステージを駆けていく。どうやら、城の入り口へと案内してくれているようだ。IHIステージアラウンド東京といえば、「客席が360°回転する」のが特徴の劇場。案内人たちの先導に合わせてゆっくりと座席が回ると、アトラクション感と共に開幕へのワクワク感が一気に高まった。

入り口に到着し真紅のカーテンが開くと、重厚感のある柱と煌びやかなシャンデリアがあり、そこはまさに豪華な宮殿。中央の階段上にある扉が開き、スポットライトを浴びた古川が厳かに登場。真っ白に輝く衣装を纏った姿は、まるで「一国の王子」のようだ。客席に深く一礼したあと、空気はガラッと一変。『ロミオ&ジュリエット』の「世界の王」をダンサーを従えて歌い、コンサートは華やかにスタートした。第一部は古川のミュージカル人生を振り返るセットリストと聞いていたが、アップテンポで盛り上がるこのナンバーを一番最初に持ってくるのは少し意外で驚かされた(あったまってきた中盤あたりで披露されると予想していた)。だが、3度もロミオ役を務めてきただけあり、さすがの“持ち歌感”である。客席からも自然と手拍子が湧き、会場は早々に一体感に包まれた。

一転、暗闇に包まれると、黄泉の帝王“トート閣下”がお出ましに。純白の衣装から黒のシックな衣装に変わり、『エリザベート』から「最後のダンス」を披露。ダンサー陣もこの曲では“トートダンサー”へと早変わり、観客をぐっと『エリザベート』の世界に引き込んだ。

続いて、『黒執事』から「嗚呼」「私はあなたの駒となり剣となる(Reprise)」の、壮大でドラマティックな2曲を。シリーズ三作の主演を務めてきた貫禄を十分に感じさせる力強い歌唱が印象的で、時折見せる“悪魔”としての表情にぞくりとさせられた。

ここからは、少し駆け足で出演作のナンバーをメドレーで披露。仮面、ツバメ、碇、ビリヤードの球、ハート……といった絵が描かれたカードが舞台上に飾られるのだが、それぞれの絵は、古川が出演してきた作品を観てきた観客にはピンとくる「ヒント」になっている。出演作を観てきた観客はなつかしさを、最近知ったファンはきっと新鮮に映ることだろう。新旧のファンどちらもたのしめる、必聴のコーナーだ。

第一部でとくに魅了されたのは、『マリー・アントワネット』からの「遠い稲妻」「マリー・アントワネット」の2曲だ。ウィーンミュージカルの巨匠、シルヴェスター・リーヴァイ作曲の美しいメロディーが耳に残る。同作で古川が演じたのは、マリーの愛人のスウェーデン貴族・フェルセン伯爵。どこか遠くを見つめる熱い眼差し、そして情感のこもった歌声を聞いていると、その視線の先にいるであろうマリーの姿が目に浮かぶようだ。フランス革命による残酷な運命に翻弄された、その後の二人の行く末を知っているだけに、より切なさが胸に迫る。

古川雄大 (撮影:旭 里奈)

再び『エリザベート』から、「愛と死の輪舞」。古川の甘やかな歌声がよく合う、ロマンティックな楽曲だ。今年のトートはどんなアプローチでいくのか、早くも期待が高まるひと時となった。

45分間ノンストップで駆け抜けた第一部の最後の曲は、『モーツァルト!』の「影を逃がれて」。昨年(2021年)春、二度目の挑戦となったヴォルフガング役は、前回よりも歌唱面で飛躍的な進化を遂げ驚かされたが、その感動を再びこのステージでも味わうことができた。

第二部は、古川自身が出演していない作品のナンバーを交えて、観客と一緒にたのしむコンサート形式で進行。冒頭、ダンサブルな曲でダンサーを引き連れて踊る古川の姿は必見だ。近年の出演作ではダンスシーンを観ることが少なかったが、ダンサー出身の古川ならではの魅力が詰まった場面になっている。ダンスナンバーからそのまま「誰の為に踊らされているのか」(『1789 -バスティーユの恋人たち-』より)を歌う流れはまさに“ショー”を観ているような感覚で、思わず「かっこいい……!」と声に出してしまいそうになるほど。

ここで初めてトークが挟まれる。「ようやく開催することができ、満席の劇場を見て、心から幸せだな、と思いました。皆様には心からたのしんで帰っていただきたいと思います」と古川から観客へ向けて、真摯な思いが伝えられた。この城は“マジェスティック・キャッスル”と名づけられているそうで、マジェスティック=「雄大」、と自身の名前にかかっていることを明かしてくれ、「なるほど…!」と膝を打った。

ミュージカルの楽曲には、女性が歌う魅力的な曲が多いため挑戦してみたかったと、『マンマ・ミーア!』から「Dancing Queen」が歌われた。古川による手振りの誘導もあり、客席の動きの揃った揺れるペンライトがなんともきれいに映った。続けて『アニー』から「トゥモロー」を披露。意外性のある選曲だが、古川の持つ声音のやさしさが楽曲に見事にマッチ。不安定な世情が続く今だからこそ、この前向きな歌詞の明るいナンバーに勇気づけられる。

古川雄大 (撮影:旭 里奈)

第二部では日替わりで豪華ゲストが登場する本公演。この日のゲストは、ミュージカル界の先輩、山崎育三郎が出演した。

華やかなオーラを纏い登場した山崎は、早々に頼もしい先輩としての姿を見せる。「もっとみんなの近くに行こうよ!」と、ステージの前方や両サイドの端まで古川を誘導し、客席を湧かせる一幕も。共に主演を務めた『モーツァルト!』の公演でのエピソードなど、トークコーナーは終始和やかに盛り上がりつつ、MC慣れしている山崎の方がホストのようになるという想定内の展開にも。仲のいい先輩・後輩の様子が窺える時間となった。

二人のデュエットは、今年、同じトート役で出演が決まっている『エリザベート』から「闇が広がる」。山崎がトートを、古川がルドルフのパートを歌い、スペシャル感溢れるコラボレーションが実現した。客席諸共飲み込まれそうな山崎の圧倒的な歌声に、“新生トート”の誕生がさらにたのしみになった。続いての山崎のソロナンバーでは、『美女と野獣』から「ひそかな夢」を。圧巻の歌声に会場全体が酔いしれた。

ゲストコーナーの最後は、Wキャストで主演を務めた『モーツァルト!』から、「何故愛せないの?」。ヴォルフガングが、ありのままの自分をなぜ受け入れてくれないのか、と子供のように父親に訴えかけるこの曲は、劇中でも毎回心が震えるナンバーだ。デュエットとして歌われることで、さらに楽曲の持つエモーショナルさが増幅され、印象深い場面となった。

山崎は4月から、自身にとって過去最大規模の全国ツアー「LIVE TOURーROUTEー 36」がスタートする。歌、ダンス、芝居とミュージカル要素満載のエンターテインメントコンサートで、山崎の多彩な魅力を存分に味わえる時間になりそうだ。

第二部最後の曲は、「一人でデュエット曲を歌ってみてもいいんじゃないか」という思いから選曲したという、『マリー・アントワネット』の「私たちは泣かない」をしっとりと歌い上げ、作品世界の余韻を残しながら締めくくった。

鳴り止まぬ拍手とともに、再び古川がステージに登場。アンコールの一曲目は、昨年映画版も公開され話題になった『Dear Evan Hansen』 から「Waving Through a Window」を熱唱。そして最後となる曲では、「いろんな感情を与えてくれた、大好きな曲です。この曲の持つメッセージのように、僕自身も胸を張ってミュージカルの道を進めるようにという思いを込めて歌います」と紹介し、『モーツァルト!』の「僕こそ音楽」を披露。この難曲を自分のものにし、力強く歌い上げる姿には、これまでの古川が歩んできたミュージカル人生の軌跡が集約されているような感慨深さがあった。

今ではドラマに映画、音楽活動など多岐に渡り活躍する古川だが、これからもミュージカルというフィールドで活躍し続けてほしい、とあらためて感じさせられ、どんな作品や役と出会っていくのか、この先もさらにたのしみになった。

この公演の一か月後には、ミニアルバム「i be」を引っさげた東名阪ツアー「古川雄大 LIVE TOUR 2022 ~i be~」が予定されている。古川のライブは、オリジナル楽曲をはじめ、古川自身の魅力がより身近に感じられる、“ホーム”ならではのたのしさがある。約2年半ぶりとなるライブは、どんな想いが詰まった時間になるだろうか。ミュージカルコンサートとはまた違った一面を堪能できることは間違いないだろう。

取材・文=古内かほ

Blu-ray発売

「古川雄大 The Greatest Concert vol.1 -collection of musicals-
<Blu-ray 発売決定!予約受付開始!!>
 
■内容
・2022年4月9日開催のソロ公演@IHIステージアラウンド東京を収録。
・さらにスペシャル特典映像として、4月10日千秋楽公演の明日海りおをゲストに迎えた貴重な歌唱シーンや古川本人のインタビューを収録
・コンサート写真満載の全32ページにわたるフォトブックレット+ブックケース入りデジパック仕様
・超豪華スペシャルパッケージ!

公演情報

「古川雄大 LIVE TOUR 2022 ~i be~」

■日程:会場:
2022年5月2日(月) 17:30 大阪 Zepp Osaka Bayside
2022年5月6日(金) 17:30 名古屋 Zepp Nagoya
2022年5月15日(日) 17:30 東京 豊洲 PIT
■全席料金:指定:¥7,700、ドリンク代別途 600 円
■特設サイト:https://www.ken-on.co.jp/furukawa_tour2022

公演情報

「山崎育三郎 LIVE TOUR 2022 ーROUTE 36ー」
 
■日程:
2022年4月22日(金)18:30 神奈川県 相模女子大学グリーンホール
2022年4月24日(日)17:00 群馬県 太田市民会館
2022年4月30日(土)17:30 福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
2022年5月1日(日)17:30 長崎県 長崎ブリックホール
2022年5月7日(土)17:00 三重県 シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢
2022年5月8日(日)17:30 愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
2022年5月12日(木)18:30 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
2022年5月14日(土)17:30 北海道 コーチャンフォー釧路文化ホール
2022年5月21日(土)17:30 静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
2022年5月22日(日)17:30 大阪府 フェスティバルホール
2022年5月27日(金) 18:30 石川県 本多の森ホール
2022年5月28日(土)17:30 長野県 ホクト文化ホール
2022年6月4日(土)17:30 岡山県 岡山市民会館
2022年6月5日(日)17:30 山口県 周南市文化会館
2022年6月18日(土)17:30 福島県 けんしん郡山文化センター
2022年6月23日(木)18:30 京都府 ロームシアター京都 メインホール
2022年7月2日(土)17:30・3日(日)15:00 東京都 東京国際フォーラム ホールA
■料金:8,800円(税込)
※未就学児入場可(販売制限:3歳以上必要、3歳未満もお座席が必要な場合は必要)

 
最新の情報は公式ホームページをご覧ください。
■公式ホームページ:https://www.ken-on.co.jp/route36/
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