【DDT今林久弥GM 横浜決戦直前インタビュー】変態ユニット・フェロモンズとの最終決着戦に選手として臨む「子どもたちにやられっぱなしの姿を見せ続けるわけにはいかない」
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男色ディーノが昨年8月に結成した変態ユニット、フェロモンズ。毎回毎回放送コードギリギリの暴走行為を繰り返してきたが、彼らを寸でのところで止めてきたのが今林久弥GMである。フロントとして当然の仕事ではあるが、これにキレたのがフェロモンズだった。
そのたびに辱めを受けてきた今林GMだが、5月1日の横浜武道館大会で最終決着戦がおこなわれることに。なんと今林GMが選手(?)として試合に登場、「スペシャル6人タッグマッチ フェロモンズvs今林GM最終決着戦」飯野“セクシー”雄貴&男色“ダンディー”ディーノ&今成“ファンタスティック”夢人組vs今林久弥&AKIRA&マッスル坂井がマッチメークされたのである。
そこで本欄では、今林GMに話を聞くことに。元・新日本プロレスのAKIRAという強力な助っ人ともにリングに向かう、人生懸けた大一番への意気込みを聞いてみた。
<スペシャル6人タッグマッチ フェロモンズvs今林GM最終決着戦>
飯野“セクシー”雄貴&男色“ダンディー”ディーノ&今成“ファンタスティック”夢人組vs今林久弥&AKIRA&マッスル坂井
――今林さんは、レスラーじゃないですよね。
「レスラーじゃないですねえ」
――GMですよね。
「なんでこんなことになっちゃったんですかねえ…」
――なにがどうしてこうなってしまったのですか。
「いやいや、もう…。フェロモンズからオマエと闘いたいと指名を受けたんですよ、ハイ」
――試合のタイトルが「スペシャル6人タッグマッチ フェロモンズvs今林GM最終決着戦」となっています。
「最終決着戦っていうか、そもそも抗争してたのかってところもあるんですけど。まあ確かにここ半年くらい、ずっと毎回毎回ありましたからねえ。だって、アイツら脱ぐじゃないですか。レッスルユニバース生中継やYouTube生中継とかで映っちゃいけないところが映ってしまったら、会社的に大変なことになるんですよ」
――今林さんとしては、フェロモンズの暴走行為を止めようとしているんですよね。
「もちろん。脱ぐたびに止めて隠したりするんですけど、毎回こっちが逆にやられて、お尻に顔をつけられたりすることがそれこそ半年ぐらい続いてるんです。怒りたいのは、こっちなんですから。ただ、向こうにしてみれば、なんで毎回試合止めてんだ、介入してるんだってところがあったんでしょうねえ」
――フェロモンズからすれば、乱入され邪魔されていると。
「そうですねえ」
――とはいえ、GMの立場としても止めないといけないですからね。
「ハイ。GMとはいっても、私は会社員でもありますし」
――団体内での役職がGM。会社員であることに変わりはないと。
「ハイ。何より会社に不利益があってはいけないですから、立場的にも止めないといけない。それが向こうには気に入らないみたいで。自分は指名されたんですけども、まさか試合をやるとは思わなかったです。でも、横浜ラジアントホール大会(4・1)のときにAKIRA選手が助けに来てくれて、『やられてばっかりでいいのか?』『オマエはレスラーじゃないけど一人の父親だろ』って言われちゃいましたからね。確かに、子どもたちにやられっぱなしの姿を見せ続けるわけにはいかないよなっていうのがありましたよね」
――かつて、マッスルでは鶴見亜門さんがAKIRA選手と絡んだことがありましたよね。
「2006年の9月29日の北沢タウンホール、『マッスル11』ですね。そのときは2公演してるんですね。翌日の30日に新木場1st RINGでもやってます。その翌日にボク、結婚式を挙げてるんですよ。結婚式の前日、前々日にマッスルをやるとなって、結婚式の準備とか全部を奥さんに任せっぱなしになっちゃって、すごい気まずかったんです。そのときにマッスルのマッスル坂井から『今度試合してもらいます。誰か闘いたい相手いますか?』と聞かれて、自分は素人なんでとてもじゃないけど闘えないなあと思ったんですけどね」
――しかし実際には元・新日本のAKIRA選手と対戦しました。以前から面識はあったのでしょうか。
「AKIRA選手とは2000年の大晦日ですか、年越し6時間演劇っていうので共演したんですよ」
――そこでプロレスラーのAKIRA選手と知り合ったと。
「そうなんです。まずは演劇を通じて知り合いになりました。そのときすごく、AKIRAさんの姿勢に感銘を受けました。すごい尊敬できる方だなとの印象があって、試合なんてとてもじゃないけどできないけれども、もしやらせていただけるのならばAKIRAさんとと言って、断られるのを覚悟のうえで恐る恐るお願いしたら、快諾していただいたんです」
――マッスル出るよと。
「ハイ。当時のマッスルってまだプロレス界でもそんなに評価されてなくて、メジャー出身のレスラーが出てくれるなんてありえなかったんですけども、AKIRAさんに出ていただき、しかも2日連続闘って。さらにその翌日に自分が結婚式を挙げるという、自分の人生の中ですごく重要な3日間を過ごさせていただいたんですね」
――それはもう忘れられない3日間ですね。
「そうですね」
――そのAKIRA選手が今回助けに来てくれた。しかも今度は組んでくれると。
「マッスルで闘ってからまた一緒にお仕事できる機会あるのかなと思っているうちに時間が経ってしまったんですけど、AKIRAさんが助けに来ていただいて『やられっぱなしでいいのかよ』と言ってくださった。AKIRAさん、自分がフェロモンズにやられてるってことさえ知っててくださってたんですよね。『息子たちに立ち上がる姿を見せなきゃダメだろ』と言われたら、自分としてはもう断れないですね。やるとしか言えなかったです」
――試合に臨む決心がついたと。
「ハイ」
――マッスルでは鶴見亜門でした。今林さん自身が対戦カードに入って試合をしたことはなかったですよね。
「試合と言っていいのかわからないですけど、毎年夏のビアガーデンプロレスで東京女子プロレスの甲田(哲也)さんとやってます。ただ、これは素人同士が闘ってるわけですから正式な試合じゃないですよね。ダークマッチとしてやってますし。なので、プロの選手と今林久弥が闘うのは初めてになりますね」
――これは、レスラーデビュー戦なのでしょうか?
「わからないです(苦笑)。闘ったからオレはレスラーですなんて、とてもじゃないけど言えないです」
――今回は6人タッグマッチ。AKIRA選手、マッスル坂井選手とのトリオですが。
「そうですね。AKIRAさんと自分が組む。もうひとりは誰にしましょうかとなったときに、AKIRAさんが『ボクらで組むならもうひとりはマッスル坂井しかいないでしょ』と言われたんですね。確かにそうだなと思います。ホントに忘れられないマッスルの2日間を作ってくれたマッスル坂井にいてもらわないとな、という気持ちにはなりました。だけれども、よくよく考えたら戦力的にはあんまりあてにならないよなって気はします(笑)。でも、AKIRAさんがいるので大丈夫でしょう」
――これまで何度も辱めを受けてきましたが、そのたびにどういう思いがするものですか。
「いやあ、もう、やられてるときは気が遠くなって意識朦朧としてるので…。実は長男の友だちが、『オマエのお父さんのツイッター見てるぞ』って長男に話したらしくて、『オマエのお父さん、おもしろいな』ってことを言ったらしいんですね。それを聞いて長男がどう思ってるんだろうというのはやっぱりありますよね…」
――直接は聞けないですよね。
「そうですよねえ。長男はプロレスには興味ないんですけども、YouTubeとかでフェロモンズにやられてる動画とかあがってますからね、それを見てるのか見てないのか、どう思ってるんだろうって…」
――自分からは『お父さんの動画見たか?』とは聞けないですよね。
「ハイ、そうですねえ…」
――先日AKIRA選手と公開練習をしました。そこでもフェロモンズに襲われ酷い目にあったじゃないですか。練習はいいんですけども、公開するからああいう酷い目に合うんじゃないですか。公開したらフェロモンズの思う壺ですよ。
「いやあ、確かに(苦笑)。ごくわずかなマスコミにしか伝えてなかったんですけどねえ、なんで場所が分かったのか。内通者がいるのかもしれないです」
――フェロモンズに連絡とった人がいるかもしれません。
「ただ、AKIRAさんがホント真剣にトレーニングに付き合ってくれまして、サーキットトレーニングを一緒にやってくれたんです。もうホントにしんどくて、倒れそうになって、正直ここまでやるとは思ってなかったんですけども…」
――ただそれは打倒フェロモンズのための練習ではなく、それ以前に普通のトレーニングをしている段階ですよね。そのあとで襲われてしまったわけですが。
「ハイ。AKIRAさんに『これくらいやらなきゃダメだろ!』『カッコいい父親の姿を見せるんだろ!』って言われたらやらざるを得ないです。その時点ですでに意識が朦朧としてて…」
――そこでAKIRA選手が席を外している間に襲われてしまった。完全に墓穴を掘りましたね。
「そうですね。ボク、(サーキットトレーニングで)意識朦朧としてて、この先もAKIRAさんがいろいろやってくれてるものだと思ったんですよ。ただ、電話ってことで席を外したと。すぐに戻ってきて補助してくれてるんだと思ってたら。頭がクラクラでゼイゼイしてるなかで、いつの間にかパンツ一丁にされてて…。こんなトレーニングもあるんだなと思ってたら、それがフェロモンズだったんですよねえ」
――飯野“セクシー”雄貴、男色“ダンディー”ディーノ、今成“ファンタスティック”夢人。あらためて、フェロモンズの3人はどうですか。
「いやあ、悔しいけどファンに支持されてますよね。技のバリエーションもすごいですし」
――技なのか、なんなのか…。
「まあ、そうですけど(苦笑)。飯野の尻を中心に技を考えてくるというのは、そこに関しては自分が敵じゃなかったら天晴だって思っちゃうのかもしれないんですけども」
――路線は継承していると思うのですが、フェロモンズのディーノ選手は以前とは違いますか。
「フェロモンズの頭脳というか指揮系統にディーノがいることによって、そこでより破壊力が倍増しているような気がします。うまく今成と飯野を使ってますよね」
――それにしてもフェロモンズの破壊力は壮絶ですよね。
「ハイ」
――実際、試合どうしましょうか。今林さん、絶対狙われますよ。
「坂井はわからないですけど、AKIRAさんが助けてくれます! ボクが出ないのが一番勝つ確率が高いのかもしれないですが」
――コーナーで控えているのが一番いいと。
「ハイ。ただ、子どもたちも当日見に来ると言ってくれたので、闘う姿を見せないわけにはいかないですよね」
――ただ、失礼ながら今林さんがやられている姿しか想像できないのですが。
「(苦笑)。いやでも、スタナーを何回か決めてますから、私!」
――確かに、4・10後楽園でも決めてました。スタナー以外にも何か考えていますか。
「いやあ、まったく考えてないですねえ。自分に何ができるんだろうって」
――当日までに何とか策を練らないと。
「そうですね、AKIRAさんと、さらにトレーニングを積みたいと思います」
――フェロモンズはKO-D6人タッグ王者でしたが、4・10後楽園で陥落。無冠になったことで、かえって怖いのではないですか。
「そうかもしれません。ただ、(新王者)DAMNATION T.Aの闘いぶりは参考にはなりましたね。飯野のOバックを脱がせると、さすがのディーノもそこは動揺するんだなって。ただ、それをボクが使えるかって言ったらねえ…。逆に自分が放送事故とかを起こす側になってしまうので」
――そうなると、会社員としての立場が危うくなりますよ。
「ボクねえ、攻撃された後はテンション上がってYouTubeとかレッスルユニバースの放送事故なんてどうだっていいんだ! オレは1人の父親としてオマエらに立ち向かうんだ!と威勢よく言っちゃいましたけど、あとから冷静になると、GMの立場もあるしなあ…みたいなところもあるんですよね。それが試合でどう左右するか。試合中にそれがふっと脳裏をかすめちゃうとよくないのかなとか。そんな気がしてます」
――プロレスでは、レスラーではない人が試合をするケースが稀にあります。これまで芸能人や団体のフロントが試合をすることもありました。今林さんの場合は後者になると思います。こういったケースの先例で参考になるような試合はありますか。
「ウチの場合はタレントさんが上がったりします。こないだ(3・20両国)もLiLiCoさんや純烈の小田井涼平さんが試合をしました」
――LiLiCoさんの引退試合で、こちらも対フェロモンズでした。
「ハイ。あと、クロちゃんも出たりしてますし。何か一芸に秀でてるあの人たちって、パワーであったり何かしらの破壊力を持ってらっしゃるんだなと思いますね。果たして自分にそういうのがあるのかないのかわからないですけども、なにかに特化して勝機を見出さなければいけないと思ってます」
――ある意味、今林さんにとって人生最大の大勝負かもしれません。
「そうですね。今年50歳になりますし」
――最終決着戦とうたわれてはいますが、それがまた何かの始まりなのかもしれないし。
「イヤですねえ(笑)。最終決着戦にしたいです」
――タイトル通りに。
「ハイ!」
――そのためには何が必要でしょうか。
「難しいですね。でも、AKIRAさんに任せて信頼して、なんならマッスル坂井も信頼してますし。あの2人がついてくれてたら大丈夫だと思ってます。とにかく立ち上がろう、やられてもやられても立ち上がろうと思ってます。15年半前のマッスル11でAKIRAさんから『プロレスラーは見てる人に勇気を与えることが仕事だ』『立ち上がる姿を見せるのが仕事なんだ』と言われました。そのとき『アンタ(鶴見亜門)は立派なプロレスラーだったよ』と言ってもらえました。その言葉を胸に、今度も頑張ろうかなと思います」
――ということは、5・1横浜はやはりプロレスラーとしてリングに立つと。
「おこがましいですけどねえ(笑)。素人なんで、なんて言い訳はもうできないと思ってます」
――なるほど。ところで、GMの立場からお聞きしたいのですが、5・1横浜大会はDDT初進出の横浜武道館です。先日は久しぶりの両国国技館大会を成功させ、今度も大きな会場。そのなかで、GM的にはどのカードに注目しますか。
「やはりなんといっても遠藤哲哉vs上野勇希のKO-D無差別級選手権試合ですね。竹下幸之介がアメリカに行って、いつ帰ってくるのか未定ななかで、これからのDDTを引っ張っていくのは誰なんだというところで、それを見るにはやっぱりこのメインですよね。あとは、KO-Dタッグ選手権試合クリス・ブルックス&高梨将弘組vs秋山準&岡田佑介組も気になります。秋山さんがレフェリーを道具のように使うCDKの闘い方を批判してましたからね。それに対してクリスと高梨のCDKが試合を通じてどういうアンサーを出していくのか。そこが大いに気になります」
今林GMからは覚悟のほどがうかがえたが、それでも思い浮かべてしまうのが酷い目に合うGMのあられもない姿。見たいような見たくないような…それでもやっぱり怖いもの見たさで見てしまうであろう大一番。その先には、思いもしない感動が待っているかも!?
聞き手:新井宏