MISIA、平和を願う「キャンドルナイトライブ」を河口湖で開催 清水ミチコや加藤登紀子がゲスト出演
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Photo by SANTIN AKI
ニューアルバム『HELLO LOVE』が発売中のMISIAが、4月30日(土)~5月4日(水・祝)の期間中、山梨県・河口湖ステラシアターにて『MISIA CANDLE NIGHT LIVE 2022 PEACE OF MIND』を開催した。
MISIA Candle Night Liveとは、東日本大震災をきっかけに2012年より断続的に開催されているライブシリーズで、“大切な人と、キャンドルに祈りを込めながら、大切なことを見つめなおす”ということをテーマに開催。客席やステージにはたくさんのキャンドルが設置され、終盤には願いを込めながら一斉にキャンドルを吹き消すという印象的な構成となっている。
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今回の公演では「平和への願いや祈り」が最大のテーマとして掲げられ、このテーマに賛同した加藤登紀子、清水ミチコ、村治佳織、沖仁といった豪華ゲストが出演した。夕闇が迫る中、キャンドルの炎はまだうっすらとしか見えない。ここ、河口湖ステラホールは古代ローマ劇場をイメージして造られた野外大ホールで、吹き抜ける風や草のにおいなど自然をダイレクトに感じられるのが特徴だ。
MISIAが登場し1曲目に披露したのは「Hello Love」。昨年12月にリリースしたオリジナルアルバムのタイトルトラックだ。すでに多くのステージで披露されていることもあり、オーディエンスのノリにもグルーヴが染み込んでいるのがわかる。2曲目、『あなたにスマイル:)』の中で伝えた言葉が印象的だった。
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「この『Candle Night』は今から10年前、2012年にスタートしました。東日本大震災の後、振興と復興への祈りを込め、そして私たちにとって大切なものを守っていこうという願いを込めて始まりました。今日はみんなでキャンドルを灯して音楽に耳を傾けて、心を開いて、大切なものが守られるように願いを込めましょう」
と、この「Candle Night」は、彼女が今みんなと確かめ合いたい感情やメッセージを共有する大切な場所であり、選曲もそうした想いに貫かれたものになっている。
「大切な人からもらったものを未来へつなぐ力が私たちにはあるのだと思います。大切な人との思い出や言葉が木漏れ日のように自分を照らしてくれる、そんな気がします」というMCに続いて披露されたのは「木洩陽の記憶」。そしてキーボードのインプロに導かれて歌い出したのは「Higher Love」。総立ちになったオーディエンスから自然とクラップが鳴らされ、ステージとフロアが一体となった荘厳にして力が漲るようなグルーヴに背中を押される。
ここでMISIAがステージ招き入れたのはフラメンコギタリストの沖仁。叙情的なギター演奏に合わせて珠玉のラヴソング2曲「恋は終わらないずっと」「逢いたくていま」を続けて披露すると、「オルフェンズの涙」のイントロではこれぞフラメンコギターの情熱的なフレーズで魅せる。未来の子供達へ希望と愛を伝えるメッセージが胸に染みる。
そして沖仁のギタープレイに導かれて登場したのは加藤登紀子。ロシア語の歌謡曲として知られ、加藤登紀子がカバーして日本では有名になった「百万本のバラ」を披露した。ここで沖仁を送り出し、加藤登紀子がこの曲のエピソードと想いを語ってくれた。
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「この『百万本のバラ』は今から30年前、当時はまだソ連だったバルト三国のラトビアでちょっと寂しい子守唄としてできた歌だったんですね。でもラトビア語のままだとラジオなんかで放送できなかったので、ヴォズネセンスキーという改革派の詩人の方が“どんな愛も夢も諦めちゃいけない”という大きなストーリーにしてロシア語の歌にしたんです。そしてソ連からラトビアやウクライナはじめ多くの国々が独立していくときに民衆の皆さんを勇気づける花束のような歌になりました。本当に戦争は起こってほしくないけど、何がどうなっても私たちはそこで必死になって生きている人たちを応援するという気持ちを忘れないでいたいと思います」
ロシアによるウクライナへの侵攻が始まった2月からMISIAがずっと歌い続けている歌があると語った。それがピート・シーガーによる反戦歌「花はどこへいった」だ。様々な訳詞が存在する中、MISIAは加藤が翻訳した歌詞で歌っていると言う。
「この歌の背景を知ると、コサックの子守唄を元に作られているんですよね。だからあの地域はずーっと紛争が身近にあるんだって気づかされるんです。加藤さんの訳詞の中には〈いつになったら 人は気付くのでしょう〉という言葉が入っていて、ずっと悲しみは繰り返されている。70年前に反戦歌として発表された歌ですけど、今こそ歌い継いでいかなければいけない歌だなと思います」とMISIAが想いを語れば、加藤は自身が感銘を受けたというピート・シーガーの言葉を紹介した。「アメリカというのは世界中に故郷がある国なんだと。世界中の故郷を、自分たちの文化を生んだものとして大切にしなきゃいけない。私たちは自分が掘り当てた井戸で喉を潤しているわけではない。ずっと昔の人が井戸を掘ってくれたんだろう。そして今自分の体を温めている火は自分が灯した火ではない。ずっと前に灯してくれた火がここにある。だからフォークソングというのは歌い継いでいくものなんだということを言った人なんです」
ステージには灯された無数のキャンドルの灯りがくっきりと目に映えるようになっている。和訳された歌詞による『花はどこへいった』を丁寧に歌う加藤とMISIA、そしてその歌声に耳を傾けているオーディエンスの目には“戦争のない未来”がはっきりと映っていたはずだ。まるで目の前で灯るキャンドルのように。割れんばかりの拍手で加藤登紀子を送り出した後、MISIAはこう言った。
「キャンドルの灯りが消えても誰かから分けてもらえる。キャンドルの光は広がっていく。そんなふうに私たちの願いがもっともっと広がっていけばいいなと思います」
世界の全ての人の毎日が明るく輝きますようにという祈りを込めた「One day, One life」、続けて「Candle Of Life」で本編を終えた。
アンコールでバンドに続いて登場したのは、清水ミチコ。これまでも何度もステージやラジオなどでMISIAと共演してきたことは知られているが、今回は『おはなしゆびさん』の歌詞を変えて5人の政治家のモノマネネタを披露してくれた。ネタ終わりにMISIAが登場して、ここがステージで今がライヴ中であることを忘れるような2人の仲の良い素のトークが繰り広げられる。と、ここでMISIAが「で、今日は矢野さん、ご一緒に歌っていただけるんですか?」とフリを入れると、清水が「ちょっと呼び出しますね」と天に向かって両手を広げる。すると瞬時に降臨。「ニューヨークから清水さんの体に到着しました。矢野顕子です」
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MISIAと清水ミチコで披露するのは矢野顕子の『音楽はおくりもの』。不思議な気分になるデュエットだが、なんだか得した気持ちにもなる。何より音楽っていろいろなものを超えていけるんだなと再認識した。
そして、平和の願いを込めて矢野顕子がMISIAのために書き下ろしたという未発表の新曲「希望のうた」をここで披露した。ラストは「歌を歌おう」。全てを包み込むようなメロディにオーディエンスが掲げたキャンドルの灯りが左右に揺れる。圧巻の歌声で最後を締めた。本日ゲストで登場した加藤登紀子、清水ミチコ、沖仁もステージに揃って、キャンドルに愛と平和の願いを込め、皆で一斉に灯りを消した。
「全ての願いが叶いますように!」
“Peace of Mind”と副題のついた今回の『Candle Night』、心の中に灯ったキャンドルの小さな炎を大切にしたい。
Photo by SANTIN AKI