カネヨリマサル「みんなの毎日を音楽で守るのが私が唯一できること」、初の東阪ワンマン『SAVE YOUR YOUTH』で示した4年間の集大成
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カネヨリマサル 撮影=タカギユウスケ
カネヨリマサルONE MAN LIVE「SAVE YOUR YOUTH」
2022.5.7 渋谷クラブクアトロ
彼女たちの“初めて”を今日ここで目撃できた人は、本当に幸せだと思う。東京と大阪で開催される『カネヨリマサルONE MAN LIVE「SAVE YOUR YOUTH」』の初日、東京公演。それは3人が揃って4年間の集大成であり、さらなる飛躍へのジャンピングボード。渋谷クラブクアトロのフロアがスタンディングでこんなにいっぱいになっているのも、久しぶりに見た。みんなが笑ってる。空気に期待感が満ち溢れている。
「今日は来てくれてありがとう。最初っから、みんなの顔見たら、胸いっぱいになっちゃった。ここにいる全員を信じて、いい日にしたいと思います。カネヨリマサルですよろしく!」(ちとせみな)
満面の笑顔で出てきたのに、いきなり言葉に詰まるちとせみな。言葉の代わりに3人が手を重ね、ちとせみなが歪んだギターを思い切りかき鳴らし、もりもとさなのドラムが支え、いしはらめいのベースが加速させると、いつものように大胆で骨太でセンチメンタルでエモーショナルなカネヨリマサルの世界がそこに現れる。特別な日だが特別なことはしない。最新配信シングルだが昔からのレパートリーでもある「関係のない人」を、いしはらめいがぴょんぴょん飛び跳ねながら楽しそうに弾いている。フロアからも拳がよく上がっている。いい雰囲気だ。
「今までいろんなところでみんなに言ってもらった言葉とか、ライブに足を運んでくれたこととか、一個一個思い出しちゃって。みんなが思っている以上に、私たちはそういう一個一個にめっちゃ助けられてます。救われてます。みんなのおかげでやれてます」(いしはらめい)
でも救われているだけじゃダメ、「ちゃんと音楽で返したい」という、いしはらめいのセリフがかっこいい。セットリストはこれまでのベスト・オブ・ベストに、ワンマンならではのレア曲なども織り交ぜてどんどん進む。ちとせみなの書く曲は失恋や挫折や後悔を歌うものが多いが、涙を振り切るものと涙にひたるものとどちらもある。ライブ中盤で聴けた「春」は涙にひたる代表曲で、みながスポットを浴びて一人歌うシーンがあまりにせつなく、バンドが一体となって力強く進むシーンはあまりにドラマチック。そんなに毎回、1曲1曲に感情を込めすぎて大丈夫なのかといつも思うが、それがカネヨリマサルのやり方。遠い失恋は今も生々しく、古い曲もできたばかりのようにいつも新しい。
「初のワンマンライブやし、みんなをびっくりさせるようなことをしたいなと思います」――いしはらめいが楽しげに宣言した通り、この日のセトリとパフォーマンスは王道でありつつとても挑戦的。ネタバレは避けるが、特に印象的だったのは高校の後輩で旧友のぎゃりー(東京少年倶楽部)をゲストに迎えた「もしも」で、ぎゃりーのかっこいいギターソロをフィーチャーした分厚い演奏は、これまでのカネヨリマサルにはなかったもの。今の時代、ギターソロをスキップする人が多い? こんなおいしいものを知らないなんてもったいない。そして、歌詞に合わせて夕焼けのオレンジの照明をチョイスするスタッフもわかってる。みんなの気持ちが一つになっている。
「出番前に足が震えるような3人やけど、絶対みんなのおかげでここまで来たって今日ほんまに思いました。今日は、“みんなの青春を守る(「SAVE YOUR YOUTH」)”というタイトル。みんなの毎日を音楽で守るのが私が唯一できること。ここまで来れたお返しにできることはこれしかない。みんなの気持ち全部受け止めて帰るから全部ぶつけてください」(ちとせみな)
ワンマンだからいつもよりMCは多いが、結局言いたいのは“ありがとう”の気持ちだけ。涙を振り切る代表曲「はしる、夜」の気合みなぎる演奏を聴きながら、走り続けていないと倒れてしまう宿命のバンドを愛おしく思う。音を外したって声がひっくり返ったってどうでもいい、走り続けるカネヨリマサルはかっこいい。
「楽しめましたか、大丈夫ですか? 最後まで目に焼き付けてください」(もりもとさな)
アンコール。もりもとさながしゃべると、なんだか場の空気がほっこりする。
「私たち、まだまだバンドやるから。みんなの青春、みんなの心を歌っていくから。任してね」(ちとせみな)
ちとせみながしゃべると、場の空気がぐっとエモくなる。
そこから最後のゴールテープを切るまで全力疾走、フロアから上がる無数の拳に煽られてぶっ飛ばし、最後はみんなとびきりの笑顔でゴールイン。全員参加の記念撮影で、3人はまるで修学旅行の学生みたいに普通の女の子の顔で笑ってる。また一つ、カネヨリマサルは大きなステップを上がり、一つ大きなバンドになった。満員のオーディエンスは、その誇らしい目撃者だ。
残るはあと一つ、5月29日の梅田クラブクアトロでの地元・大阪初ワンマン。サッカーで言えばまだハーフタイム、勝負はこれから。ずっと記憶に残るであろう大切な日をもっと素晴らしいものにするために、バンドは走る。ファンも走る。走り続けてどこまで行けるか、まっさらな未来予想図が楽しみで仕方ない。
取材・文=宮本英夫 撮影=タカギユウスケ
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