市川海老蔵『十三代目市川團十郎白猿襲名披露』演目&スケジュール発表~勸玄は9歳で『毛抜』粂寺弾正に挑む
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(右から)市川海老蔵、堀越勸玄
2022年11月、12月に歌舞伎座で、市川海老蔵が十三代目市川團十郎白猿を襲名、長男の堀越勸玄が八代目市川新之助を名乗り初舞台に上がる。7月7日に歌舞伎座で会見が行われ、襲名披露狂言が発表された。
海老蔵は『勧進帳』『助六由縁江戸桜』『押戻し』で、團十郎白猿の襲名披露をする。勸玄は『外郎売』と『毛抜』粂寺弾正役で、新之助としての初舞台を踏む。いずれも市川宗家ゆかりの演目、「歌舞伎十八番」となる。
松竹株式会社社長の迫本淳一氏は、「江戸時代から代々の名優が歴史を重ねてきた歌舞伎にとっての大名跡。9年ぶりの復活は意義深くうれしいこと。さまざまな挑戦を続けてこられた海老蔵さんが、さらなるご活躍を。勸玄さんがさらなる成長を遂げられますことを祈念します」と挨拶し、応援を呼びかけた。
襲名披露演目の発表とあわせ、襲名披露興行のスケジュールも明らかになった。2023年3月地方巡業、9月博多座、10月、11月地方巡業、12月京都・南座、2024年2月名古屋御園座、9月巡業公演、10月松竹座の予定。
■十三代目市川團十郎白猿襲名披露狂言・八代目市川新之助初舞台狂言
『十一月吉例顔見世大歌舞伎』(11月7日~28日)
<昼の部>
『歌舞伎十八番の内 外郎売』 外郎売実は曽我五郎 新之助
『歌舞伎十八番の内 勧進帳』 武蔵坊弁慶 團十郎
<夜の部>
『口上』 團十郎、新之助
『歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜』花川戸助六実は曽我五郎 團十郎、福山かつぎ 新之助
『十二月大歌舞伎』(12月5日~26日)
<昼の部>
『道成寺』より『歌舞伎十八番の内 押戻し』大館左馬五郎 團十郎
『歌舞伎十八番の内 毛抜』粂寺弾正 新之助
<夜の部>
『口上』 團十郎、新之助
『歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜』花川戸助六実は曽我五郎 團十郎
『外郎売』は、2019年7月に勸玄が、当時6歳で勤めた役。海老蔵が休演した日も、父親不在の中、見事に勤めあげて話題となった。『助六』は11月と12月で配役が変わる予定。その他の演目や出演者などの情報は後日の発表となる。
■襲名披露興行が新しい光となるように
海老蔵は、当初2020年に襲名を行う予定だった。
「約2年半、延期となっておりましたが、皆様のご指導のもと、11月、12月の歌舞伎座を皮切りに襲名披露興行をさせていただくこととなりました。長期にわたる襲名披露興行、心身ともに充分配慮し、みなさまのご期待に添えられるよう、そして歌舞伎がより一層発展しますよう、懸命に努力いたします」
延期について、海老蔵は「2年間の準備期間を与えられた」と受け止めている。
「各々が各々の苦労をした2年半だったのではないでしょうか。一見すると歌舞伎は、数少ない歌舞伎俳優だけが舞台に出る世界に見えるかもしれません。しかし舞台の裏には、衣裳、床山、大道具、小道具、鳴物などたくさんの方々がいて成り立っています。コロナ禍はまだ終わっておりませんが、襲名披露興行が行われることが新しい光となりますように。皆さまのご期待にお応えできるように勤めます」
各地を巡る襲名披露興行は、足かけ3年におよぶ。楽しみなことを問われると、海老蔵は「先輩方と一緒に舞台に立てること。同輩、後輩たちと一緒に新たな日常を歩めること。そして勸玄の世代の成長」と答えた。勸玄は、会見がはじまってから、視線さえほとんど動かすことのない集中力で会見にのぞんでいた。しかし、楽しみなことを問われた時、ふと屈託のない口調で「やっぱ……」と答えかけると、海老蔵が「やはり、ね?」とフォロー。勸玄の笑顔がこぼれ、プラス席の緊張感も和らいだ。勸玄は「やはり、歌舞伎が好きなので楽しみにしています!」と元気に答えていた。
会見の中では、勸玄に「毛抜きを使ったことがあるか」の問いかけも。勸玄は首を横に振り、海老蔵も「まだいらないからね」と笑う和やかな一幕も。
■勸玄、9歳で粂寺弾正
勸玄は2013年3月22日生まれ。現在9歳だ。
「11月は『歌舞伎十八番』の『外郎売』と『助六由縁江戸桜』の福山かつぎを勤めさせていただきます。12月の『毛抜』では、粂寺弾正を勤めさせていただきます。成田屋の歴史の中では最年少でござりまするが、懸命に勤めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
『毛抜』は、延期前の2020年の披露興行には予定されていなかった演目だ。子どもの歌舞伎俳優が勤めるイメージがない役だ。
「大変むずかしい役です。9歳でできるものではありません。しかし隔世遺伝というのでしょうか。勸玄には、私の父・十二代目團十郎に似た大らかさがあります。『毛抜』は、父が得意としていた演目。粂寺弾正を演じる上で必要なおおらかさが、彼には備わっています。動き、台詞に時間をかけて、稽古の真っ最中です」
勸玄は、2021年1月に新橋演舞場で上演された、海老蔵の粂寺弾正を見て、「僕もお父さんみたいにすごい役者になりたいと思った」と語り、自身でも挑戦してみたいと希望したという。
「勸玄本人の意志も尊重し、皆と話し合いの上で決めさせていただきました。2020年に予定通り襲名をしていたら、おそらくこの年で『毛抜』をやることは、ありませんでした。コロナ禍による2年半の延期も、プラスに考えていきたいです」
勸玄は、劇中で特にむずかしいところを問われると、粂寺弾正が腰元を口説く「巻絹のところ。あとは、台詞がとても多いです」と答えた。海老蔵は「男女の仲の機微など、この年ではむずかしいところもあります。ですが、歌舞伎には型がございます。型に忠実にやることが彼の使命です」とエールを送る。
海老蔵自身は、成田屋とゆかりの深い演目で出演する。
「名前を襲名させていただくことで、魔法のように私が急に変わるものではございません。父の襲名披露興行では、父が大変苦労する姿、その背中を見ておりました。私自身が苦しみ、あがき、そして歌舞伎に向き合う。何か新しいものではなく、父から受け継ぐ市川家の家の芸『歌舞伎十八番』の『助六』『勧進帳』を勤めあげる。そのような中で、私の精進によっては、お客様の目に"変わった"と思っていただけるものでは」
歌舞伎座『十一月吉例顔見世大歌舞伎』は11月7日から28日まで、『十二月大歌舞伎』は12月5日から26日までの公演。
公演情報
十三代目市川團十郎白猿襲名披露
『十一月吉例顔見世大歌舞伎』
八代目 市川新之助初舞台
会場:歌舞伎座
八代目市川新之助初舞台相勤め申し候
夜の部 午後4時~(予定)
八代目市川新之助 襲名披露 口上(こうじょう)
市川新之助
福山かつぎ:市川新之助
※上記、襲名披露演目以外については決まり次第、掲載します
公演情報
十三代目市川團十郎白猿襲名披露
『十二月大歌舞伎』
八代目 市川新之助初舞台
会場:歌舞伎座
昼の部 午前11時~(予定)
歌舞伎十八番の内 押戻し(おしもどし)
八代目市川新之助初舞台相勤め申し候
夜の部 午後4時~(予定)
八代目市川新之助 襲名披露 口上(こうじょう)
市川新之助