新道トモカ、アーティストとして踏み出す個展『Two sides of the same coin 知ってるわたしと知らないわたし』開催への想いを語る
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新道トモカ
写真家・ダンサーとしてキャリアを築いてきた新道トモカ。8月に渋谷・道玄坂のeplus LIVING ROOM CAFE&DININGで開催する個展は、彼女がこれまで手掛けてきた仕事や作品のイメージを良い意味で裏切られるものになっている。作品のベースとなる手法は写真だが、そこに表現されているのは今・現在、社会を取り巻く空気やそこで生きる自らの感性をリアルタイムで描き出したコンテンポラリードローイング。写真家・ダンサーからアーティストへと、自らを“アップデート”した経緯を聞いた。
個展をするということが私にとっては「自分を越える」作業になるのですが、今回、個展に向けて準備を進めていく中で、今までの“かっこよさ”や商業的な価値を追い求める感覚から社会と向き合う作風にシフトしていきました。今までは写真家・新道トモカという肩書で個展をしていたけれど、今回はアーティストに自分をブラッシュアップしたんです。それは立場を改めたというよりアップデートした感覚がすごく近い。世界観と、肩書というか。
ダンスは24年目、写真は12年目に入るんですけど、その中で常に流動的に変化していく自分や一定のところにとどまらない自分みたいなものに、いつも追いついたり追い越されたりしていたんです。私が私に振り回される瞬間もいっぱいあって。去年娘がお腹にいるときに、初めて立ち止まって考える時間ができたんです。考えてみると、写真家とダンサーの経歴に縛られていたことに気が付きました。たしかに、今まで同様に踊ったり撮ったり仕事はするんですけど、自分を置いてきている感覚になったんです。その遠慮は誰に対してだって考えて自分が親になって、初めて親に対して遠慮していたことに気が付いて。自分の親が私の活動を見て喜ぶことは嬉しかったんです。けど本当にこれでいいのかなって。やりたいことをやれているのかなって。応援している友達のシンガーやアーティストに対しても、みんなの領域に入り込んじゃいけないっていう思いもどこかにあって。とりわけ誰にも求められていないんです、そんなことは。やるなとも言われていなければ、やっていいとも言われていないから。遠慮をするのはやめようと思いました。
本来の私は人前で表現をすることが好きだし、向いている。裏方で仕事をしていても私の存在が表に出てきてしまう瞬間もあったんです。そういう葛藤がこの3年であり、とくに出産後にその葛藤が大きくなっていって、抑えていた自分のいろんな面が前に出てきてしまって。私の存在価値は、表に出て発信するとか、人の心に直接メッセージを投げかけてリアクションをもらって、どんどんみんなと良い方向に持っていくこと。そのとき生きがいを感じる。今回の展示は、私のエネルギーをアップデートできている気がします。
今回のタイトルは『Two sides of the same coin 知ってるわたしと知らないわたし』。人間の2面性をどう表現しようかと思ったときに、フィルムの反転のことを思いつきました。ネガの状態と現像した時では出る絵が違う。展示するのは「the sun」と「the moon」の2つのシリーズで、反転させているのが「the moon」。月の満ち欠けは新月だったり満月だったり、元気な時もあれば、今日は静かにしたいなって日もあったり、人間そのものに近いと思ったんです。私自身がモヤモヤしていたこの3年くらいは多分世界がモヤモヤしていた3年間で、自分の裏側の感情が、蓋をしてたけど出てきちゃった人たちがきっといっぱいいただろうと思って。世の中のせいにはしたくないけど、なんとなくそう思っちゃう時もあったし、そういう自分をあまり見たくなかった。反転してる絵を見て、自分の嫌だったり見たくない部分すらも、あ、裏側も案外素敵かもしれないっていう風に、少しでも思えたらそこから絶対変わるし、いいなって。
出産を経てみて、30年後の娘の未来に対して、今、私の活動があるかなっていう風にはちょっと思ってて。おそらくすごくちっちゃなことなんですけど。自分の命よりも大切って思うものがこんなにもここまでかっていうぐらいびっくりするぐらい大きな存在だったので、出産は本当に大きかったですね。子供が生まれてからは社会と向き合う、もう向き合わざるを得なくなりました。向き合ってみると、社会派の作品を作りたいじゃなくて、「それを作る」だなっていう感覚に落ちてきたんです。いつか娘が自分の作品を見たときには、どうしてこれを作ったのという問いに対してやっぱり答えは必要だなと。負のエネルギーはやっぱり1番強くて、そのエネルギーで人を食ってしまうくらい強い。このエネルギーをもっと前向きに変換できたら。私の作品を見ることでそのきっかけになればいいなっていう風に思って、このコンセプトに行きついています。
個展情報
『Two sides of the same coin 知ってるわたしと知らないわたし』
【会場】eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
【開催期間】2022年8月1日(月)〜2022年8月31日(水)
【入場料】無料
※飲食店の為ご来場の際はオーダーをお願いします
【営業時間】月〜土 11:00〜23:00(L.O FOOD 22:00/DRINK 22:30)
日・祝 11:00〜22:00(L.O FOOD 21:00/DRINK 21:30)
※休前日は通常営業
※営業時間は変更となる場合がございます。店舗HPをご覧ください。
http://livingroomcafe.jp