有森也実がセリフを封じ、キーになる⼥性をバレエで表現 演劇ユニット戯曲組が舞台『令和X年のオセロー』を上演
-
ポスト -
シェア - 送る
2022年9⽉3⽇(⼟)に吉村元希(⼥性俳優、映画監督、脚本家)が主宰する演劇ユニット戯曲組が、シェイクスピアの『オセロー』をジェンダーギャップの観点から翻案した舞台『令和X年のオセロー』を吉祥寺シアターと配信にて上演する。
本作は「ジェンダーロールにとらわれず、⼀⼈ひとり⾃分らしく⽣きること」を、演劇にダンスを取り⼊れた⾝体表現を⽤いて、観客に投げ掛ける。有森也実がセリフを封じ、物語のキーになる⼥性「バーバラ」をバレエで表現するのも⾒所だ。
戯曲組『令和X年のオセロー』より
戯曲組『令和X年のオセロー』より
吉村はこれまでも⼀貫して「ジェンダー」をテーマにした作品を制作してきたが、⽇本はまだ男性中⼼の古い社会構造から抜け出せず性差に対する固定概念や偏⾒が多く存在し、⽣きづらさを感じたり、⾃分らしさを表に出せず苦しんでいる⼈が少なくない。
吉村が⻑年活動してきた⽂化芸術界も男性が占める割合が多く、男性中⼼の社会で、「⼥性らしさ」ばかりが求められ、男性と同じ仕事をしても認めてもらえない、という経験をしてきましたという。この問題は⼥性だけの問題ではなく、⾃分の個性にはそぐわない「らしさ」を押しつけられ、⽣きづらさを感じている⼈は、性別に関係なく存在している。「⾃分は⼤丈夫」「私の問題ではない」と思っている⼈にこそ、⼀度⽴ち⽌まり、冷静に現実を受け⽌めてもらいたいという思いを強く持ち、この作品を発表するに至った。
また、吉村は2023年に⽇本の⼈⼝の50%が50歳以上になることにも注⽬。映画や舞台において「50代の⼥性」を「60代の⼥性俳優」が演じることが多く、実際の50代の⼥性と、世間⼀般がイメージする50代の⼥性の間には乖離がある傾向がある。加えて、男性が多い⽂化芸術界ではジェンダーバイアスが掛かった作品が多く、男性俳優が⽣涯を通じて幅広い役を演じられるのに対し、⼥性俳優の多くは若さに価値が置かれ、選ばれ、物語の中に配役される。
男性主体の「⼥性らしさ」を求められ、その⼈⾃⾝が持っている実⼒や魅⼒を⾒てもらえず、思うように活躍できず、歳をとるとやりたい役がないという問題が⼥性俳優にはある。
吉村は50歳以上の⼥性俳優が活躍できる場がもっとたくさんあるべきと考え、脚本を書き、また⾃分⾃⾝も舞台に⽴つ。
本作では今年60歳になる吉村⾃⾝が、ヒロインを演じることで「レイシズム」「セクシズム」「エイジズム」を乗り越えることを試みている。
吉村元希 コメント
何故私は⽣きて⾏くのが⾟いのだろう、とずっと考えていました。最近になってそれは、私が⼥性だったからなのだと気付かされましたけれど、まだ漠然としていました。私が脚本家、映画監督など、⼥性らしさを求められていないジャンルで仕事をしているからなのだと思っていました。
コロナ禍以降⼥性の⾃殺率が上がっていることに、この⽣きづらさは私の職業特有のものではなく、⼥性全体のことなのだとさらに気付きました。そこに気付くだけでも、多くの⼥性が少し楽になれるのです。男性からは⾒えない⼥性の息苦しさ。まずは男の⾟さを知れ、と切り捨ててしまう前に、ちょっとだけ、この作品で、⼥性の⽴場から⾒た世界を覗いてみてください。
有森也実 コメント
⾵になびくカーテン、雲、⾏き交うスクランブル交差点の⼈々、猫のあくび…
⽇常にダンスを感じるシーンは溢れていると私は感じていますが、⽇常的な⼈々の営みと叡智を越えた何かとの繋りをもたらすツールもまた、踊る事なのだと思います。演劇とダンスの融合。私がずっと漠然と夢⾒た世界を表現するチャンスを元希さんからいただいて、緊張と供に嬉しさでいっぱいで稽古に励んでいます。
今回、私がバレエを通して演じるバーバラという⼥は過去の⼥達を内在した役割りを持っています。過去は変わらない、だから想いだけは抜け出して今に漂う。現存する⼥によって浄化される時を待つように。過去の⼥達の命を全うできる時を『令和Ⅹ年のオセロー』に乗せたいと思っています。
『オセロー』はウィリアム・シェイクスピアにより書かれた悲劇。ヴェニスの軍⼈であるムーア⼈のオセローは、デズデモーナと愛し合い結婚をする。しかしオセローは旗⼿イアーゴーの策謀にかかり、デズデモーナの貞操を疑い殺してしまう。
今作では、デズデモーナがトゥシューズ(“⼥性はこうあるべき”と定められた美しさの象徴)を履く。現在の⽇本において、そのような伝統的な美しさに憧れながらも、社会構造によって与えられたジェンダーロールに苦しむ⼥性は多い。この物語では、デズデモーナがトゥシューズを脱ぐ。「 ⼀度その靴を脱いでみませんか?」という提案、「違う⽣き⽅も出来るのではないか」と⾔う可能性を提⽰する。
公演情報
〜予め死んでいる⼥たち、あるいはデズデモーナマシーン〜
俳優、映画監督、脚本家、演出家。戯曲組主宰。
その後、アニメーションのシナリオ制作に従事し『おジャ魔⼥どれみ』『ボボボーボボーボボ』『美少⼥戦⼠セーラームーンSuperS』『ゲゲゲの⻤太郎』『忍たま乱太郎』など40以上の⼈気作品に携わる。
雑誌モデルとして活動後、86年に映画「星空のむこうの国」で映画デビュー。同年には映画「キネマの 天地」(監督:⼭⽥洋次)のヒロイン役で、 第29回ブルーリボン賞新⼈賞、第10回 ⽇本アカデミー賞新⼈俳優賞を受賞。その後も、テレビ、CM、映画、舞台などに多数出演。
主な出演映画に 「新・仁義の墓場」「いぬむこいり」「星空のむこうの国 (2021年)」などがあり、精⼒的に舞台にも出演し、主な舞台には「放浪記」「頭痛肩こり樋⼝⼀葉」「ある⼋重⼦物語」「化粧⼆題」「フラガール-dance for smile-」がある。近年では、NHK「NHK 短歌」で司会も務め、ドラマ「今野敏サスペンス 暁鐘警視庁強⾏犯係 樋⼝顕」(TX)にも出演し、写真集『prayer』を出版。
有森也実プロフィール:http://the-tomboy.net/narimi-arimori/profile.html