ゴスペルシンガーを経てミュージカルの世界へ! 塚本直にインタビュー「音楽業界と演劇業界の架け橋になれたら」/『ミュージカル・リレイヤーズ』file.13

2022.8.31
インタビュー
舞台

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「人」にフォーカスし、ミュージカル界の名バイプレイヤーや未来のスター(Star-To-Be)たち、一人ひとりの素顔の魅力に迫るSPICEの連載企画『ミュージカル・リレイヤーズ』(Musical Relayers)。「ミュージカルを継ぎ、繋ぐ者たち」という意を冠する本シリーズでは、各回、最後に「注目の人」を紹介いただきバトンを繋いでいきます。連載第十三回は、前回奥山寛さんが、「ものすごく強烈な歌声! ただ上手いだけじゃなくて、深みがあって、心を鷲掴みにされる」と紹介してくれた塚本直(つかもと・なお)さんにご登場いただきます。(編集部)

 

「最近、音楽の現場では『舞台の人』、舞台の現場では『音楽の人』って言われるんです。それって何なのかなあって思うんですよね」

そう疑問を呈するのは、シンガーであり俳優の塚本直だ。

ゴスペルグループでの10年に渡る活動を経て、30歳で初めてミュージカルに出演。近年は『グレートコメット』『ビューティフル』『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』等、ミュージカル作品で持ち前のソウルフルな歌声を響かせ注目され始めている。

インタビューを通して異色の経歴を持つ彼女のルーツを探りつつ、業界の垣根を超えて活躍する今の率直な想いを聞いた。

突如芽生えた「音楽をやりたい」という想い

――まずは、塚本さんと音楽の出会いから教えてください。

母がオペラ歌手だったので、生まれたときからずっと身近に音楽がありました。生まれは熊本です。母は結婚して熊本に来ていて、その頃から教会や幼稚園の保護者の方にコーラスを教えていたそうなんです。時には私を抱っこしながら指揮をすることもあったみたいです。

――そんなお母様から、塚本さんも音楽のレッスンを受けていたんですか?

母はピアノも教えていたので、幼稚園くらいの頃に(ピアノを)習い始めました。でも、私が全く言うこと聞かない子で(笑)。譜面を見て弾くのが嫌だったので、自分の好きな曲を母に弾いてもらって、その指を真似て弾くといった感じ。もちろん母とは喧嘩になるし、結局あまり続きませんでした。小学校に入ってすぐにピアノを辞めて、水泳と空手を習い始めたんです。

――かなり突然の方向転換ですね(笑)。

全然方向性が違いますよね(笑)。音楽よりも身体を動かす方が向いていると思われたのか、兄弟と一緒に通うようになったんです。それからはしばらく音楽から離れていました。高校生の頃に歌が好きという想いはあったけれど、それはただカラオケで歌うのが好きというもの。カラオケでは友達から上手いと言われるので、「歌をやるのもいいなあ」と母に漏らしたら「あなたの声はガサガサで全然艶もないし、声楽は無理よ」とバッサリ(笑)。なので、声楽は諦めてポップスを歌えるようになりたいなあと考えるようになりました。でもその頃は歌を仕事にしたいとまでは思っていなかったんです。

――音楽の道に進もうと意識し始めたのはいつだったのでしょうか?

高校卒業の頃ですね。当時は熊本の進学校に通っていたので、卒業したら大学に進むつもりでセンター試験を受けました。でも第一志望の大学に少し点数が足りなくて。でも、だからといって一浪する程の気持ちもなく……。そのとき、本当に自分がやりたいことって何だろうと真剣に考えたんです。悩んだ末、親に「音楽をやりたい」と伝えました。そんなことを言ったのは初めてだったので、相当びっくりしたでしょうね(笑)。元オペラ歌手の母はもちろん、父も俳優を目指していた過去があって芸事には寛容な家庭だったので、みんな背中を押してくれました。そこで改めて音楽を勉強できる場所を探して、母の知り合いに紹介してもらった福岡スクールオブミュージック&ダンス専門学校へ通うことになったんです。初めて実家を出て一人暮らしも始めました。

>(NEXT)ゴスペルとの出会い。最初は「正直ちょっと引いてました(笑)」

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