アイビーカラー 「失恋3部作“失うに恋”」がバンドにもたらした変化と、これから向かう方向とは?

2022.8.26
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アイビーカラー

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アイビーカラーがバンドの総力を結集して挑んだ野心的試み、「失恋3部作“失うに恋”」が完結した。2月に「次で最後にしてね。」、4月に「ミッドナイトロマンス」、7月に「ほどけた二人」と続いた配信リリースは、4人のミュージシャンを着実に成長させ、失恋をテーマにした悲しくも魅力的なドラマは、これまで彼らを知らなかったリスナーをもしっかりと魅了した。彼らはいかにして高い壁に挑み、それを乗り越えたのか? バンドにとって大きな飛躍ポイントとなった3部作の制作エピソード、そしてこれから向かうバンドの方向について、4人の言葉を聞いてみよう。

――「失恋3部作“失うに恋”」の制作を発表して、第一弾「次で最後にしてね。」を初演奏したのが1月22日の恵比寿リキッドルームでした。あの時にはもう、3曲すべての制作が進んでいたわけですか。

佐竹惇(Vo&G):いえ、全然。「失恋3部作」というテーマだけ決めて、リキッドルームで発表した時には、2作目には全然手をつけれてなかったと思います。

――あ、そうだったんですね。見切り発車じゃないですか。

佐竹:そうです(笑)。いつもギリギリでした。

――あれから約半年が過ぎて、3部作が見事に完結しました。振り返って、どんな時間でした?

佐竹:今年はその前の2年間と比べるとライブもたくさん増えてきた中で、2作目、3作目と制作を進めていたので、コロナ以前のあの忙しさがまた戻ってきた感覚はありました。2年間でなまっていたぶん、大変な感じもあったんですけど。曲を作って、ライブができて、そこで消化できるという生活が戻ってきて、すごく良かったなと思いますね。

佐竹惇(Vo&Gt)

「ほどけた二人」は、こういう曲をやりたくてアイビーカラーを組んだとはっきり言えるくらいの曲。現時点で自分ができる完成形の詞とメロディができたんじゃないかなと思います。

――吉博くんは楽曲制作だけじゃなく、ミュージックビデオの撮影と編集もやっていたから、特に忙しかったんじゃないかと思います。

酒田吉博(Dr):まあ、そうですね。1、2作目のMVは僕が作らせてもらったので、いろいろ大変なこともありましたけど、僕は制作するのが基本的に好きなタイプなので、楽しくやれたかなと思います。3曲目の映像に関しては、僕は撮影に関わってはいないんですけど、スタッフチームの方々が、3曲目のディレクターさんの選択やとりまとめを、僕がやってもいいんじゃないか?ということで、3曲目にもちゃんと携わらせてもらって。自分的には、すごくいい3部作ができたなと思ってます。

 

――あらためて、1作ごとに振り返りながら制作エピソードを語ってもらおうと思います。1作目「次で最後にしてね。」は、ライブで初めて聴いて、シンセベースや電子ドラムを使ったアレンジに驚いたんですけども。ああいうアイディアは、惇くんの頭の中に最初からあったんですか。

佐竹:あ、いえ。僕は、アイビーカラーのすべての曲がそうなんですけど、僕が詞とメロディとある程度のコード進行を、弾き語りの状態でメンバーに提出して、そこからのアレンジはメンバーに任せるスタイルなので。今までのアイビーカラーでは珍しいシンセベースが入ったりとかは、メンバーが考えてくれたことで、レコーディングの1、2週間前にシンセベースを奈緒が買ったりだとか。

――え。そんな直前ですか。

碩奈緒(Ba):はい(笑)。

佐竹:なので僕も、ほったらかしていたわけではないんですけど、メンバーに任せていたら、気づいたらすごいことになってるな、みたいな感じでした(笑)。

――実際やってみてどうでした? この新しい音作りは。

:楽しかったです。ライブしながらの制作だったので、時間がカツカツだったのがプラスに出たところもあって、移動中にパソコンでベースを打ち込むことが多くて、それをしたおかげで、シンセベースのアイディアが出たので。もともとEDM寄りの、電子的な音作りの楽曲にしたいという話はあったんですけど、新しい機材を買うことまでは考えていなくて、でもそっちのほうがしっくりくるかな?と思って、レコーディングの1週間ぐらい前に楽器屋さんに行きました。現物がその場になかったので、頼んで、届いたのが3日前とかでした。

――なんと。本当にギリギリ。

:練習は、家にあるちっちゃい鍵盤でやっていたんですけど、届いてからは、音作りが一番難しかったです。弾くことよりも。

――でも、ばっちりですよね。いい感じです。

:はい。いい感じになったんじゃないかと思います。

川口彩恵(Key)

「次で最後にしてね。」はアイビーカラーのどの曲よりも弾きやすい曲やと思います。でもそのぶん、アレンジはダントツで難しかったです。

――では彩恵さん。「次で最後にしてね。」は、プレイヤーとしてはどういう楽しみがある曲ですか。

川口彩恵(Key):プレイヤーとしては……正直、アイビーカラーのどの曲よりも弾きやすい曲やと思います(微笑)。めちゃくちゃシンプルなので。リキッドルームの時に初披露やったんですけど、普通だったら初めて演奏する曲はすごい緊張するんですけど、あの曲はそんなに、プレイ自体の緊張がないぐらい、珍しくシンプルな曲やなと思っていて。でもそのぶん、アレンジはダントツで難しかったです。

――ああー。そうですか。

川口:奈緒ちゃんも言ってたんですけど、けっこう時間がなくて、私も遠征帰りの車の中で夜中にフレーズを考えたりしていたんです。シンセの音をメインで使うことになった時に、普通のピアノの音との兼ね合いとか、フレーズをどういうふうに重ね合わせたらいい感じになるかな?というのをすごい考えて。大変ではあったんですけど、出来上がってみて、また一つ成長できたかなって思った曲でもあります。

――吉博くんは、こういうエレクトロっぽい音作りのアレンジは、作りながらどう感じてましたか。

酒田:僕は普段からR&Bとかを聴いていることもあって……もともとこの曲はEDM調というか、「海外で流行るような曲の感じで」という話になっていたんですけど、ドラムに関しては、EDMにしすぎると、バンドで演奏するような曲ではなくなってしまうので。バランスを考えた時に、普段聴いているR&B系から取り入れるのはどうかな?と思って、ああいう形になりました。生ドラムはサビでしか叩いてないですし、サビの中でも、たとえばスネアの音一つ取っても、5つの音を重ねているんですよ。

――5つも? それはすごい。

酒田:一個一個はスネアの音じゃなくて、たとえばクラップの音だったり、金属を叩く音とか、5種類ぐらいをくっつけてスネアの音にしてます。J-POPではあまりやらない手法ですけど、R&Bではわりとやってる人が多くて。いろんな曲を聴いて、考えながら作っていきましたね。

――そんな隠し技があったとは。

酒田:そうなんです、実は。厳密に言うと、サビ以外のスネアは3つの音でできていて、サビでは5つの音に変わるみたいに、音を変えているんですけど。

――惇くん、すごいですね。頼もしいメンバーですね。

佐竹:そうですね(笑)。アレンジ面に関しては、こだわり抜いてくれます。僕が意見を言うこともありますけど、それもちゃんと尊重してくれるので。特に「次で最後にしてね。」は時間がなくて、たぶん3部作の中で一番もめたというか、意見が交差した曲ではあったんですけど、でもすごくいい形になったと思います。