中村梅玉一門による『第二回 高砂会』 梅蔵、梅乃、梅秋、梅寿がみせた高砂屋の芸と品
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『第二回 高砂会』より 『忍夜恋曲者 将門』中村梅蔵(右)、中村梅乃(左) (C)Keiji OKAZAKI
2022年8月20日(土)~21日(日)、日本橋劇場で、中村梅玉一門による『第二回 高砂会』が開催された。2019年に開催されて以来、2回目。中村梅玉と中村莟玉の『ご挨拶』ではじまった。
梅玉は、弟子たちが春先より藤間勘祖の指導の下で稽古をしてきたことに触れ、「稽古を重ねるそのこと自体が、彼らの財産になります。今日の本番は、気持ちの中にそれを蓄えた上で、かたくならず充分に楽しみ、思い切り力を出してもらいたい」とエールを送った。
中村梅玉 (C)Keiji OKAZAKI
2019年の開催時には、梅丸の名前で一演目を担った莟玉が、今回は後見を勤める。梅玉は、自身が父・歌右衛門の後見を勤めた時を振り返り、大らかなエピソードを紹介。「皆様、どうぞなるべく莟玉の方は見ず、シンの役を勤める弟子たちを良くご覧いただければ」と呼びかけ、客席を笑顔にした。
莟玉は、公演を支えた関係者や演奏家の方々、そして来場者への感謝を述べた上で、「自分で申し上げるのもなんですが、パンフレットをご購入いただきますと、私と2ショット写真をおとりいただけます。その際は感染症対策として……」と、しっかり宣伝しつつ楽しませ、来場者と舞台の距離をぐっと近づけた。
中村莟玉 (C)Keiji OKAZAKI
■4人の門弟の3演目
最初の演目は長唄舞踊『越後獅子』。中村梅寿(うめとし)が、角兵衛獅子(かくべえじし)を勤める。花道に登場した梅寿は、爽やかな緊張感の中にも、迷いのない身のこなしと溌剌とした明るさ。彼が打つ太鼓の音、足を踏み鳴らす音が、実際の舞台と客席の距離の近さもあわさり、ダイレクトに響いてくる。もとは大道芸人の芸をモチーフにした舞踊とあり、後半には梅寿は一本歯の高下駄にはきかえ、両手で長い布を扱う。白い布で舞台上に大きな弧を描き、音楽と一体になって足拍子を鳴らし、楽しませた。
『越後獅子』中村梅寿 (C)Keiji OKAZAKI
続いて、常磐津の演奏で中村梅秋(うめあき)が踊る『一人景清』。蛇の目傘を半開きに、力強く足音を立てて花道から登場。熱い拍手が迎えた。白塗りの二枚目で、紫の茶帛紗を頭にのせる歌舞伎独自の拵えが色気を添える。廓にいる恋人の傾城・阿古屋のもとへ向かうところだという。が、しかし景清は平家の侍大将。一の谷の合戦を語りはじめ、ツケの音が勇ましく響く。かと思えば、しっとりとした曲調にも軽妙な曲調にもなり、変化に富んだ一幕。梅秋の品がよく丁寧な踊りが、景清の凛々しさも色気も物語っていた。
『一人景清』中村梅秋 (C)Keiji OKAZAKI
幕間には、予告通り、ロビーで莟玉がパンフレット購入者との撮影に応じていた。『越後獅子』でも『一人景清』でも、後見の莟玉がすっと現れると、つい反応してしまう。客席全体にもその空気があった。高砂屋一門全員を応援する気持ちの現れにも思え、微笑ましく心が温まる瞬間だった。
結びは『忍夜恋曲者 将門』。大宅太郎光圀に、中村梅蔵。傾城如月実は将門娘滝夜叉姫に、中村梅乃。花道のスッポンから現れた梅乃は、差し金の灯りの中、息をのむほどの凄まじい集中力を漲らせた。特に声がよく、傾城としての大きさ、華やかさ、将門の娘としての芯の強さを表すようだった。
梅蔵は、梅玉の一番弟子。どっしりとした佇まいで、踊りは雄弁。余裕さえ感じさせる(が、終幕の挨拶では「長年夢に見ていたお役でしたが、観るのとやるのとでは違いますね」と振り返っていた)。如月の正体が見顕されてから、ふたりは激しい立廻りとなる。より広い会場でも見たくなる舞台だった。しかし、この会場の距離感だからこその、客席と舞台の一体感が生まれていた。
(C)Keiji OKAZAKI
結びには、それぞれが関係者と来場者に感謝を述べた。そして莟玉は、この日出演した4人には「日ごろ、支えてもらいっぱなし」であると語り、「少しでもサポートでき、嬉しかったです」と思いを語った。梅玉が「一門で結束し、芸道に精進してまいります」と挨拶をし、これからの応援も呼びかけ、熱い拍手の中、閉幕した。無事に執り行われた高砂会。一門それぞれの個性を通し、師匠梅玉、さらに、その父・中村歌右衛門へのリスペクトとDNAを感じさせる機会となった。
梅玉と莟玉は、9月4日に歌舞伎座ではじまる『秀山祭九月大歌舞伎』の第二部に出演。梅玉は『松浦の太鼓』で大高源吾を、莟玉は『揚羽蝶繍姿』で藤の方を勤める。その他、YouTubeチャンネル『歌舞伎ましょう』や各SNSでも歌舞伎の魅力を発信している。
取材・文=塚田史香
公演情報
『第二回 高砂会』
■会場:日本橋劇場
ご挨拶
中村莟玉
後見:中村莟玉
後見:中村莟玉
傾城如月実は将門娘滝夜叉姫:中村梅乃
梅玉会事務所 kuma.jinya24@gmail.com
歌舞伎美人 ニュースサイト:https://www.kabuki-bito.jp/news/7706
公演情報
二世中村吉右衛門一周忌追善
会場:歌舞伎座
貸切:第一部:8日(木)、9日(金)、13日(火)、14日(水)、15日(木)
松 貫四 構成・演出
一、白鷺城異聞(はくろじょうものがたり)
本多平八郎忠刻:中村又五郎
秀頼の霊:中村勘九郎
刑部姫:中村七之助
腰元白鷺:中村梅枝
腰元名月:中村米吉
局明石:中村歌女之丞
宮本三木之助:中村萬太郎
家老都築惣左衛門:中村錦之助
千姫:中村時蔵
寺子屋
尾上松緑(奇数日)
武部源蔵:松本幸四郎(奇数日)
尾上松緑(偶数日)
戸浪:中村児太郎
菅秀才:初舞台 中村種太郎(歌昇長男)
小太郎:初舞台 中村秀乃介(歌昇次男)
春藤玄蕃:中村種之助
百姓吾作:坂東彌十郎
涎くり与太郎:中村又五郎
園生の前:中村東蔵
千代:中村魁春
【第二部】午後2時40分~
一、松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
劇中にて追善口上申し上げ候
宝井其角:中村歌六
お縫:中村米吉
里見幾之亟:市川染五郎
渕部市右衛門:大谷廣太郎
早瀬近吾:松本錦吾
江川文太夫:市川高麗蔵
鵜飼左司馬:大谷友右衛門
大高源吾:中村梅玉
戸部和久 構成
二、揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)
籠釣瓶花街酔醒/鈴ヶ森/熊谷陣屋/播磨潟だんまり
白井権八/源義経:中村歌昇
奴智恵内:大谷廣太郎
呉服屋十兵衛/一條大蔵長成:中村種之助
兵庫屋九重/典侍の局:中村児太郎
相模:大谷廣松
新中納言知盛:中村鷹之資
藤の方:中村莟玉
佐々木盛綱:市川染五郎
番頭新造八重咲:中村梅花
下男治六:中村吉之丞
幡随院長兵衛:中村錦之助
兵庫屋八ツ橋:中村福助
【第三部】午後5時45分~
祇園一力茶屋の場
寺岡平右衛門:市川海老蔵
赤垣源蔵:中村橋之助
富森助右衛門:中村鷹之資
大星力弥:片岡千之助
矢間重太郎:中村吉之丞
鷺坂伴内:片岡松之助
斧九太夫:嵐橘三郎
遊女おかる:中村雀右衛門
松 貫四 構成
川崎哲男 脚本
昇龍哀別瀬戸内(のぼるりゅうわかれのせとうち)
二、藤戸(ふじと)
浜の男磯七:中村種之助
浜の女おしほ:中村米吉
浜の童和吉:尾上丑之助
郎党黒田源太:中村吉兵衛
郎党小林三郎:中村吉之丞
郎党和比八郎:坂東亀蔵
郎党長井景忠:坂東彦三郎
佐々木三郎兵衛盛綱:中村又五郎