LUNA SEA 素晴らしくドラマチックな「WISH」から魅せた『復活祭』Day1レポート

レポート
音楽
2022.8.29
LUNA SEA

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LUNA SEA 復活祭 -A NEW VOICE- Day1『Silky Voice』
2022.8.26 日本武道館

RYUICHI(Vo)の声帯にできた静脈瘤(微小血管病変)の除去手術、術後の療養にともない、2月に行なった全国ツアー『CRSS THE UNIVERSE』の大阪公演以降、活動を休止していたLUNA SEA。彼らが8月26、27日、東京・日本武道館において『復活祭-A NEW VOICE-』と銘打ったワンマンライブを2日間、コンセプトを変えて開催。ここではその初日となったDay1、RYUICHIが持つ艶やかでどこまでも広がっていくような美声にフォーカスした『Silky Voice』公演のレポートをお届けしよう。

RYUICHI

RYUICHI

2月に手術を受けてからわずか6ヵ月。新たに手にした声を猛スピードで磨き上げ、LUNA SEAのステージに戻ってきたRYUICHI。Day1の第1部はSilky Voiceがひときわ引き立つミドル、スローテンポのレア曲たちを中心に、RYUICHIがいまの声でこれらをどう歌うのか。その歌唱にスポットを当てたアクトだった。

舞台となった武道館のステージの床は真っ白。360度、ステージ後方まで解放した客席も、舞台から左右の1階席最前列の目の前まで伸びたスロープも、LUNA SEAの武道館ではおなじみの光景だ。この武道館という音楽の聖地で、RYUICHIはいったいどんなNEW VOICEを披露するのか。期待と少しの不安が入り混じるなか、この日の公演は開演時間を30分押して開幕。客電が消えると、スポットライトに照らされ、RYUICHIが一人ステージへ。舞台中央に立った彼は、無音のなか、いきなりアカペラで「WISH」を歌い出したのだ。この曲がライブのオープニングを飾るのは2000年12月26日、東京ドームで開催した『THE FINAL ACT』以来。しかも、今回はアカペラ。冒頭から予想外の強力なダブルパンチを浴びて驚愕した観客は、立ち尽くしたままステージを凝視。活動休止前に観たツアーで、苦しそうに歌っていたRYUICHIが別人と思えるほど、新しい声は伸びがあって、フリーテンポのなかで滑らかに響いてきた。それが、なによりも嬉しかった。第一声を聴いた瞬間「LUNA SEAのRYUICHIだ」という感動が武道館いっぱいに溢れていったのが分かった。その一方で《溜め息が時を刻む 長い夜の途中/あなたの夢繰り返す 孤独だけ抱きしめて》という歌詞にRYUICHIの心境を重ね、涙するファンも。そうして、いつの間にかオンステージしていたメンバーたちが、真矢(Dr)のカウントを合図に演奏を始めると、アリーナにはコロナ以降なかった銀テープが華やかに舞い降りる。客電がついたところで感傷的な思いはいっきに吹き飛び、オーディエンスはその光景に大喜び。J(Ba)が歌い終わったRYUICHIを「ほら、凄いだろ?」とでもいうように自慢げに指差した。後ろからRYUICHIを見守る真矢も、感無量という表情を浮かべている。こんな素晴らしくドラマチックな「WISH」はいままで聴いたことがない。まさに、RYUICHIの復活劇にふさわしいオープナーだった。

SUGIZO

SUGIZO

そこから曲は「PROMISE」へ。ここではINORAN(Gt)のコーラスとともに新しい声を試運転するように、RYUICHIが慎重にロングトーン、ファルセットを試していく。「武道館、会いたかったよ」とRYUICHIが挨拶を告げると、客席からは怒涛の拍手が沸き起こる。続けて、本公演について「メンバーが“復活祭”と名付けてくれて、僕の声が復活するのを待っててくれました」と打ち明けたあとに《声を聴かせて》と歌う「TWICE」という展開に、なんともいえない熱いものがこみ上げてくる。浮遊感あるグルーヴ、美しいメロディラインがたまらない、LUNA SEAのなかでも隠れたこの名曲披露に続いて、次はアルバム『A WILL』からロックバラード「MARIA」へ。SUGIZOがギターで奏でる裏メロ、Jの一瞬のベースソロが際立つこの曲をRYUICHIはメロウすぎないようにロックバラードとして少しエモーショナルに歌い上げてみせる。対して、タイトルコールで客席がざわめいた透明感ある「RECALL」は、さっきとは対照的な甘い歌声を使ってゆったりと歌唱。RYUICHIとINORANがアコギを弾き、曲中ずっとSUGIZOのヴァイオリンが切ないメロディーを奏でていく「I'll Stay With You」は、落ち着いた低い声を駆使しながら歌を届ける。

INORAN

INORAN

こうして、曲ごとに様々なSilky Voiceを自分の喉と相談するように慎重に届けていったRYUICHI。この後「武道館、盛り上がっていこうか」と煽りを入れると、曲はアッパーな「SHINE」へ勢いよく突入。フレッシュで明るい空気が、いっきに場内に充満していく。そのなかで、軽やかに左右へ散らばっていったJとINORANとSUGIZOの3人が声を一つに重ねて、RYUICHIの歌を引き立てるようなバックコーラスを入れていく。みんなで声を合わせたのがたまらなかったことを確認するように、4人は間奏が始まると自然と真矢のドラム台の下に集まり、視線を交わし合う。ここで熱くなった空気を「absorb」の連打で、今度はさらに濃いものにして体内へと送り込んでいく。このテクニカルな6/8拍子の楽曲を、キレのある歌声でのりこなしていったRYUICHIは、Silkyな声の奥に太い芯を感じさせるいまの声をフルに使って、アドリブであらゆるシャウト、フェイクをビシバシ入れていきながら、喉を存分に使いこなしたところで第1部は終了。そうして、場内は20分間の換気タイムへ。

J

J

RYUICHIの復活。その幕開けとなるストーリーを、曲ごとにいまのSilky Voiceで見せていった第1部がRYUICHIの声の復活を祝う祭りだとしたら、このあと迎えた第2部は、RYUICHIの声とともに復活したLUNA SEAを祝う祭りだった。おなじみの「月光」をBGMに、衣装を着替えて再びステージに姿を表した5人。「武道館、飛ばしていくぞ」。冒頭からシャウト気味の声でRYUICHIがオーディエンスを煽り、第2部は「ROSIER」でパワフルにスタート。床下から風とCO2が勢いよく吹き出すエリアで、SUGIZOが体を後ろに反らせ、颯爽とギターを弾くと、RYUICHIの声はSilkyを飛び越え、どんどんエモーショナルに高まっていく。そこから「Dejavu」へ。盛り上がらない訳がない。キラーチューン連打で、LUNA SEA復活を華々しくアピールしたあとの「IN SILENCE」がまた素晴らしかった。LUNA SEA史上最強の美しさを誇るイントロを、SUGIZOが付点8分ディレイを使ったギターフレーズで奏でると、場内がパッときらめく。真矢のドラムが風を呼び込むと体が地面からふわりと浮かび上がるような感覚になり、武道館の真っ白い天井はいつの間にか天国のような幸せな空間に。そこから「銀ノ月」への展開で美しさはさらに深みを増す。アルバム『A WILL』(2013年12月発売)から2曲を披露した第1部に続く同アルバムからの選曲に、観客がざわめく。大きなミラーボールが回転するなか、ここではINORANの叙情的なアコギとRYUICHIのメロウな歌声がどこまでも重なり合い、武道館に美しい夜空を描いていった。

そうして、ステージが照明で真っ赤になったあと、SUGIZOのギターが嵐を巻き起こす「STORM」でバンドを再びブーストさせると、RYUICHIのボーカルも激しさがエスカレート。どんどん熱を帯びていく。「今夜はSilky Voiceの日なのに、1日早くNaked Voiceも出ちゃいました」と笑うRYUICHIはとても楽しそう。そうして久々の披露となった「BLUE TRANSPARENCY」でRYUICHが迫力あるシャウトをきめ、大いに盛り上がったところで、最後の「BELIEVE」へ。客席は一斉ジャンプで一つになり、ステージではすれ違うときにINORANにお尻をタッチされたSUGIZOがINORANを追いかけて仕返しをするなど、楽しい空間が広がるなかでライブはフィニッシュ。

真矢

真矢

そして、この日のアンコールはまさにお祭り騒ぎだった。ワンマンのステージで他のバンドと滅多にからんだりしないLUNA SEA直々のオファーで、GACHI SEAがステージに登場したのだ。客席も、ステージのメンバーも大はしゃぎでにぎわうなか、GACHI SEAのメンバーだけは大緊張。GACHI SEAとは「LUNA SEAが活動休止中は自分たちがつなぐ」といって、テレビ朝日系『かまいガチ』番組内で今年2月、LUNA SEAを愛するかまいたちの山内(Vo)が相方の濱家(Gt)とトム・ブラウン布川(Gt)、トム・ブラウンみちお(ファン役)、ジョイマン高木(Ba)、本家LUNA SEAの真矢をドラマーとして迎えて結成したバンドのこと。番組内で復活祭への出演オファーを知らされ、歌も楽器も素人の彼らが2ヵ月間本気で練習してマスターしたLUNA SEAの「TRUE BLUE」を、この日生演奏で披露。プレイが始まると、本当にガチで練習してきたんだなという仕上がり具合に驚かされ、観客たちは大いに盛り上がる。

GACHI SEAとLUNA SEA

GACHI SEAとLUNA SEA

LUNA SEAのメンバーはステージ袖でGACHI SEAのプレイを見守るなか、SUGIZOだけは濱家の目の前に椅子を置いて、プレイを鑑賞。演奏が終わると客席、メンバーから割れんばかりの拍手が送られ、RYUICHIも「真剣度がめちゃめちゃ伝わった」とGACHI SEAを大絶賛。「でも今日のGACHI SEAは“ガチガチシー”だったけどね」と真矢が笑う。そして、この日LUNA SEAが復活したことで「我々の役目は終わったので、GACHI SEAは本日をもって活動を休止させて頂きます」と山内が宣言すると、「もうちょっと聴きたいな」というRYUICHIの提案から、番組内でエア演奏した「ROSIER」を共演することに。演奏に入る前、Jがジョイマン高木に向かって「J(=ジョイマンのJ)さぁ、途中大事なところあるよね? そこ任せるよ。あと、その後も」と伝え、一夜限りの生コラボがスタート。RYUICHIと山内は交互にボーカルをとるなか、Jの英詞パートをジョイマンが歌詞を見ながら歌っていると、その前にINORANが笑顔で立ちはだかるも、なんとかマイク投げまで(控え目に)再現。LUNA SEAの面々がGACHI SEAのメンバーを影武者のように引き連れてステージを動き周り、最後は真矢の前に全員が集結。復活祭を大いに盛り上げ、役目を終えたGACHI SEAはステージを後にした。

このあと、未来の希望をたっぷり込めて「IN MY DREAM」、すべての想いを届けるように「I for You」を大切にプレイしてライブは終了。最後にメンバーとオーディエンスがエアジャンプで一つになったあと、ステージを後にするRYUICHIを、観客とともにメンバー4人が盛大な拍手で見送るとういう幕引きでDay1は終了したのだった。

取材・文=東條祥恵
撮影=田辺佳子、岡田裕介、横山マサト

 

セットリスト

LUNA SEA 復活祭 -A NEW VOICE- Day1『Silky Voice』
2022.8.26 日本武道館

<第1部>
01. WISH
02. PROMISE
03. TWICE
04. MARIA
05. RECALL
06. I'll Stay With You
07. SHINE
08. absorb

<第2部>
01. ROSIER
02. Dejavu
03. IN SILENCE
04. 銀ノ月
05. STORM
06. BLUE TRANSPARENCY(限りなく透明に近いブルー)
07. BELIEVE

<ENCORE>
01. TRUE BLUE
02. ROSIER
03. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
04. I for You
 

ライブ情報

『黒服限定GIG 2022 LUNACY』
 
12月17日(土) さいたまスーパーアリーナ
12月18日(日) さいたまスーパーアリーナ
 
詳細はLUNA SEAオフィシャルサイトにて近日公開!
LUNA SEA OFFICIAL SITE
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