「みんなの声が聞こえて鳥肌たったよ!」Ken Yokoyama、10-FEET、BRAHMAN出演のロックイベント開催、愛媛県・今治市に1000人が集結
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『Diamond Dance 2022』 写真=オフィシャル提供(撮影:Shingo Tamai)
『Diamond Dance 2022』2022.11.6(SUN)今治市公会堂
11月6日(日)、愛媛県・今治市の今治市公会堂にて、ロックイベント『Diamond Dance 2022』が開催され、Ken Yokoyama、10-FEET、BRAHMANの3バンドが出演。松山のライブハウス「W studio RED」主催の本イベントは、ライブハウスの5周年記念として2019年に企画されたものだったが、コロナ禍の紆余曲折を経て、松山から今治に会場を変更。3年越しに開催が実現し、
約1000人のキャパに数倍の応募があったという本公演。愛媛県北東部に位置する今治市の中心にある今治市公会堂には、全国からたくさんのファンが集結し、エントランスには愛媛県の名店が集結した飲食ブースも。ロビーのオフィシャルグッズ、アーティストグッズ売り場も賑わい、開場前から盛り上がりをみせていた。
10-FEET
10-FEET
トップバッターは、約5年ぶりのアルバム『コリンズ』が12月14日(水)にリリース、ロングツアーが発表されたばかりの10-FEET。TAKUMA(Vo.Gt)、NAOKI(Ba)、KOUICHI(Dr)がお馴染みのSEとともに姿を現すと、今治市公会堂は総立ちに。ホールの鳴りをたしかめるようにオープニングにも終盤にも似合う「2%」からライブがスタートした。「とばしていこか!」とTAKUMAが鼓舞すると後方までたくさんの拳があがる。この夏はたくさんのフェスやイベントに出演し、ワンマンライブ『10-FEET 25th ANNIVERSARY ONE-MAN TOUR 2022 FINAL in 太陽が丘』を直前に控えたタイミングだったこともあり、仕上がりまくっている3人。ジャンプでホールが揺れる「VIBES BY VIBES」から最近のライブではかかせない曲となった「ハローフィクサー」への流れは、常に最新の音に挑戦を続ける彼らの新旧の魅力がギュッとつまっていて、心が揺さぶられる。
10-FEET
観客の手拍子がグルーブを加速させ、ビシっときまった前半を終えると「かっこよ!」と思わず自画自賛したTAKUMA。そして、そのあとに発せられた「なーんもないこの街!」という一言に会場は爆笑。早めに現地入りし、レンタカーで周辺を走ったが見るものが何もなかったそう(笑)。「国道細! 中古屋さん多すぎ!」と今治の町をイジりながらも、過去の愛媛ライブの想い出を語り会場を沸かせた。さらにこの日の出演者の中で、際立つ後輩感にボヤくくだりも。「BRAHMANと一個しか歳かわらんのに」とNAOKI。『AIR JAM』にもなかなか出演できずに、京都で働いていた当時を振り返る。「俺らがいくら頑張っても、下ネタ炸裂のKen(Yokoyama)さんと悪口のあとに優しくするTOSHI-LOWがみんなもっていく!」(TAKUMA)と笑わせた。
10-FEET
3人のコーラスワークがライブ映えするヘヴィ&ラウドな「aRIVAL」では、KOUICHIのつきあげるようなドラミングが楽曲の生命力を強くする。曲終わり、デス声のままひとしきりふざけたあとは「うまいこといってるか? お前ら! 元気出していくぞ! 明るく優しくカッコ良く生きていけたらいいなぁ。カッコつけていこうぜ!」とウルっとさせて「蜃気楼」へつないだ。TAKUMAの言葉は押しつけがましくなく、いつもポンっと肩を叩いてくれる。10-FEETらしい緩急にまんまとやられて「RIVER」へ。どんな時も側にいてくれるようなこの曲はどの街で聴いても心に響くものだ。ラストの「ヒトリセカイ」で「神様、俺たちを音楽でベロベロに酔っぱらわせておくれ!」とシャウトしたように、彼らの音楽と人柄に酔わされた45分は一瞬。愛と優しさと笑いがつまったステージとなった。
10-FEET
BRAHMAN
BRAHMAN
ステージを隠す紗幕の後ろにメンバーがスタンバイ。KOHKI(Gt)が紡ぐオリエンタルなフレーズからはじまる「TONGFERR」のスケール感はオープニングに相応しい。天井から足元まで覆う紗幕いっぱいに映し出される色彩豊かな映像とTOSHI-LOW(Vo)のエモーショナルな歌声がシンクロし、物語を紡ぐようにゆるやかな流れではじまったBRAHMANのステージ。そして、お馴染みのSE「molihta,majcho i molih」が大音量で響き渡ると、目覚めのような感覚で脳が覚醒し、オーディエンスは、祈りのポーズとともに彼らと一体になる準備を整えた。「A WHITE DEEP MORNING」が鳴らされると、森に降りしきる雨の映像が視覚を刺激し、木々からこぼれ落ちる何かに想像力がかきたてられる。すべてが音像と重なり、没入感がハンパない。時折、紗幕の向こうで演奏するメンバーのシルエットが浮かび上がる演出にも痺れる。現実と非現実の中を行き来するかのような暗景演舞。「Slow Dance」で、紗幕に映し出されるリリックも刺激的で、MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)による激しい鼓動のようなツービートが空気を揺らし続けるとここで一区切り。
BRAHMAN
「過去なんかにすがらねえ! 後戻りもしねえ! 常にあるのは今、今日、今夜、どんな時代からも逃げも隠れもしねえ!『Diamond Dance 2022』、 BRAHMANはじめます!」TOSHI-LOWの咆哮を合図に紗幕が取り払われ、リアルなメンバーが目の前に姿を現す。全力で時代とともに踊るバンドのありのままの姿に呼応したオーディエンスは、声のかわりにハンドクラップを力強く響かせた。中盤は「BASIS」「SEE OFF」「BEYOND THE MOUNTAIN」とアグレッシブにたたみかけ、息もつかせぬ展開に。
BRAHMAN
終盤、大河の流れのようにゆったりとしたリズムと柔らかな音色のギターで紡がれた「ANSWER FOR…」。緩急激しく、語りかけるような歌唱が鮮やかなコントラストで魅了する。そして、いつにも増したTOSHI-LOWの包容力ある歌声が印象的だった「今夜」も披露され、温かいい拍手が会場を包んだ。ラストナンバー「真善美」で深く一礼したTOSHI-LOW。
BRAHMAN
<さあ!幕が開くことは 終わりが来ることだ>歌詞の一節を叫ぶと、「一度きりの短い人生の中でおれを救ってくれたのは、バンドであり、音楽であり、ライブハウスだ。そろそろライブハウスへ帰ろう!」と拳をまっすぐに突き上げ、ひとつひとつの言葉をかみしめるように観客に語りかけた。「元に戻るんじゃねえ、元のものを越えていくんだよ。2年間無駄じゃなかった。大事なものを失わないためには、変わっていくしかない。俺たちはそれを全力でやり続ける」コロナ禍以前に戻るのではなく、常に今を生きて前進するというバンドの信条を少しの言葉と音楽で雄弁に語ったBRAHMAN。
最後に「さあ、次は一度きりの意味をお前が問う番だ!」と強烈なメッセージを残し、ステージを後にした。
Ken Yokoyama
Ken Yokoyama
「今治でロックンロールを鳴らすのは初めて。最後まで愉しんでいってちょうだい! いこうか!」とギターをギュンギュンさせながら、Minami(G)、Jun Gray(B)、Eiji(Dr)とともに登場したKen Yokoyama。すべてのロックキッズのカリスマ的存在なのに、いつまでもヤンチャなお兄ちゃんのような親近感。でも存在だけで空気を変えてしまうオーラがとんでもない。
「聞いた話によると……マスクしてたらちょっと声だしても大丈夫らしいですよ!」2バンドの演奏が終わったタイミングではあったが、冒頭からちょっとうれしい情報が伝えられた。観客の歓喜に満ちた拍手が会場をうめつくすと、勢いそのままに「Punk Rock Dream」をドロップ! マイクスタンドを上手・下手に移動させながら、ロックの楽しさを全身で表現するギターヒーローのプレイに会場は一気にヒートアップ。続いての「4Wheels 9Lives」もハイテンションなビートでぶっ飛ばしていく。
Ken Yokoyama
「改めて東京から来たKen Yokoyamaです。Ken Yokoyamのテーマソングやろうかな。続けていこう! 繋げていこう!」と少しずつ前進する現状を重ねるかのように「Let The Beat Carry On」で怒涛のツービートをお見舞い。そして、「久しぶりにみんなで歌えるかな。まだ、マスクありの声出しが100%OKって訳じゃないけど……。一歩進んでみようか!」選んだナンバーは、1stアルバムから「Believer」だ。「声が小さくても構わない。なんとなくでいいから。俺と一緒に歌おうぜ!」<I’m a believer>会場からは歌のレスポンスが響き渡る。「みんなの声が聞こえて鳥肌たったよ! 3年ぶりだもんな!」笑顔で興奮を抑えられないKen Yokoyama。屋内での声出しはまだまだ実現が難しい場所もあるはずなので、この景色は本当に感動的だった。
Ken Yokoyama
Ken Yokoyama
Ken Yokoyama
MCでは10-FEET・TAKUMAの予想通り、下ネタ全開で絶好調に暴走。グレッチの響きが最高にイカすギターのイントロから「I Won't Turn Off My Radio」がはじまり、<Radio>コールが響きわたる感動的な時間。そして、Hi-STANDARDの名曲「THE SOUND OF SECRET MINDS」で特大のハンドクラップとともにみんなの笑顔が輝く。「喜んでもらえるかなとおもってさ」とはにかむkenに「ありがとう!」とたくさんの声があがった。
「このイベントを企画したアニキにも拍手を!」と労った「W studio RED」を運営するアニキこと八木隆憲氏とは、25年来の付き合いだという。アニキとの思い出や「そのころから一緒にやってるBRAHMAN、年下だけど人として尊敬する10-FEETとここに来れてうれしいです」と対バン2バンドへの想いも語られた。
Ken Yokoyama
そして、「今日のありがとうが全部次の曲につまってる。知ってる人は、俺と一緒に歌ってくれ!」と演奏されたのは「While I’m Still Around」<生きているうちに”ありがとう”を言わせてくれ>そんな歌詞に、今この一瞬がかけがえのないものだと実感させられる。「久しぶりに仲間と会えて、みんなと一緒に歌えてうれしかったよ。ありがとう! また会おうな! 久しぶりに松山のアニキのライブハウスにも行こうかな」。最後は、「もう1曲やってくわ」とテレキャスターに持ち替えて「I Love」を披露。明るさ全開の曲で締めくくり、今治の地に新たな歴史を刻んだ一夜は、幕を閉じた。
Ken Yokoyama
終演後にこのイベントの主催者であるアニキこと「W studio RED」八木隆憲氏に話を聞くことができた。
今回のブッキングについては、当初予定していた規模からは縮小してしまったものの出演をオファーした3バンドとは長い付き合いだという。「横山健とは、25年来の仲なんです。話せばすごく長くなる(笑)。彼と過ごした時間の中で、ライブハウスとしてどうあるべきかを自問自答してきました。初心を忘れずにこの先も進んでいきたいという想いもあって、彼を呼びました。BRAHMANも20数年来の仲。今年の『SATANIC CARNIVAL2022』の映像を見て、これは愛媛でも見たいなと。 TOSHI-LOWが「愛媛に俺らが出られるフェスがねえ!」と言うから「俺作るわって」と(笑)。10-FEETも彼らのライブに5~10人しかお客さんが入らない頃からの付き合いです。最近のアルバムは、年を重ねて良くなっている。一緒にいてくれたら心強い存在です」と話してくれた。
声出しが実現したことについては、「鳥肌がたちましたね。あれはみんなの心の叫びだったと思う。ホールやライブハウスで、お客さんの声が響き渡る場面はなかなかなかったから」と八木氏。今後は「地元のバンドが目指せる場所になれば」と来年も12月頃の開催を予定(会場未定)しているとか。四国・愛媛からロックシーンを変えるイベントに注目していきたい。
取材・文=岡田あさみ 写真=オフィシャル提供(撮影:Shingo Tamai)