混声コーラスグループ・フォレスタ 結成20周年を記念したコンサートがまもなく開催 オフィシャルインタビューが到着
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フォレスタ (C)源 賀津己
2003年4月からBS日テレで放送中の音楽番組『BS 日本・こころの歌』でレギュラーを務めている混声コーラスグループ「フォレスタ」が、結成20年を記念したコンサート『フォレスタコンサート ~結成20年スペシャル~ in 新宿』を2022年12月7日(水)に新宿文化センター 大ホール(東京都新宿区)で開催する。
節目を祝う公演は、フォレスタ創設時から演出を担う一条貴之が構成を担当。「人生の折節の出会い、心の糧となる名歌」をテーマに、歌声とピアノ1台で集大成のステージを展開する。
公演を前にリハーサルを重ねているメンバーから、リーダーの大野隆(バス)、横山慎吾(テノール)、小笠原優子(ソプラノ)、内海万里子(同)の4人に、20年目を祝うコンサートに向けた意気込みを聞いた。
【オフィシャルインタビュー】
(C)源 賀津己
ーーフォレスタは、人気音楽番組「BS日本・こころの歌」の放送開始に合わせ、音楽大学を卒業した男女メンバーで構成された実力派混声コーラスグループ。2016年から12月に渋谷のBunkamuraオーチャードホール(東京都渋谷区)でコンサートを開いていましたが、今冬は駅からのアクセスが良い新宿文化センター 大ホールに移されてステージが行われます。節目のコンサートでは、結成20年を記念したスペシャルな企画を考えているそうですね。
大野:フォレスタは、日本の教科書から消えゆく童謡、唱歌。また抒情歌などを歌い継いでいきたいという思いで結成されました。僕らは日本語が持つ美しい響き、旋律を次世代に伝えたいという思いを20年間大切に持ち、歌い続けてきました。12月に新宿で行われるコンサートでは、その歩みの歴史をプログラムにのせてお届けしたいと考えています。
番組の構成・演出も手掛けておられる一条貴之さんに全ての構成をお願いしています。番組と同じように、ピアノの伴奏に合わせて歌を、ハーモニーを楽しんでいただけると思います。
ーー本番を控えリハーサルを繰り返しているメンバーの皆さんですが、それぞれ思い入れがある曲は何でしょうか?
大野:僕は松山千春さんの『大空と大地の中で』です。元々プログラムには入っていなかったのですが、僕がアルバイトをしながら、音楽を頑張っていたときに聴いていた大好きな曲だったので、一条先生に『ぜひ歌わせてほしい』とお願いしたんです。『♪生きる事が つらいとか 苦しいだとか いう前に 野に育つ花ならば 力の限り生きてやれ』という歌詞には何度も励まされました。
横山:僕は曲目としては、かぐや姫の『神田川』に思い入れがあります。僕たちは全員音楽大学を卒業しているのですが、音大では西洋音楽を学ぶことが多く、昭和歌謡は習わないんです。でもフォレスタとして活動をするようになった初期の頃、レコーディングをする際に、『この曲は君の声に合うんじゃないか』と言われたのが『神田川』で。それがとても印象に残っていました。
12月のコンサートでは、僕は歌わずに女声だけで披露させていただくので、男声と女声の違いを聴き比べていただきたいです。女性目線の歌詞を、オリジナルと同じように男性が歌うのではなく、あえて女性コーラスだけでやろうというところに、一条先生のこだわりも感じます。
内海:私は『荒城の月』(土井晩翠作詞、瀧廉太郎作曲)です。1901年に生まれた『荒城の月』は教科書にも載っている曲。121年もの間、親しまれてきた曲ですが、うち20年間は私たちも歌い継いで来ました。今回は抒情歌など、新しい曲目もたくさんあるのですが、あらためてこの長く愛されている曲を、私たちフォレスタのハーモニーでお聴きいただけたらうれしいです。みなさまそれぞれが曲への思い出をお持ちだと思うので、その感情を呼び起こすことができたらと思います。
小笠原:コンサートの中で行う、自己紹介のコーナーを楽しみにしていただきたいです。コンサートは、全編を通して一条さんが物語のような構成をして下さっているのですが、中でもこの自己紹介のコーナーは、それぞれの人となりを感じていただけるもの。一条さんが『あなたの声には、この曲が合うね』と選んでくださったので聴きごたえがあります。コンサートでも番組でも歌ったことがない新曲も入っているので、きっとお楽しみいただけると思います。
ーー20年の集大成として、また新たな挑戦として新曲も披露するコンサート。発表されているプログラムには、結成20年を記念したオリジナル・ミニアルバム「君の道を」(2022年8月発売)に収録した楽曲も並んでいます。夏に発表したばかりの同曲は、「♪笑って さぁ行こうよ」と掛け合う部分も印象的で、コロナ禍で沈みがちな心を鼓舞してくれる応援歌のような楽曲ですね。
大野:僕らが生きているいまは、コロナ禍で閉塞的な話題が多く、国と国との争いもある暗い世の中。これまでフォレスタがリリースしてきた曲は混声四部合唱で、しっかりと歌い上げるというものが多かったのですが、プロデューサーの一条さんが『肩ひじを張らずに、前向きになれるような明るいシングルを作らないか』と発案して生まれたのが『君の道を』でした。最初はシングルとしてリリースする予定でしたが、候補曲が3曲あって。それぞれが素敵だったので、『じゃあ、ミニアルバムにする?』って。
でもミニアルバムにすると4曲は少ないからと、メンバーが歌詞を考えた『響け、未来へ』などを追加した6曲入りとしてリリースさせていただきました。これまでフォレスタのコンサートでは、第一部の最後にお客さまと一緒に歌うというコーナーがあったのですが、いまはコロナ禍で声を合わせることができなくなってしまいました。でもこの曲では声を合わせる代わりに、歌詞をリフレインするところで、ジェスチャーで参加をしていただけるようにしています。
こんな時代だから、声を出さないコール&レスポンスができるようにって。横山くんが『手を挙げてください』とかお客さまに声を掛けてリードしてくれているので、会場に一体感が生まれます。和やかな空気に包まれるので、とても良い曲を書いていただいたなと感謝しています。
内海:ミニアルバムを発売した後に、回ったツアーでも毎回に近いくらい歌わせていただいています。それぞれの場所でノリが違うのが楽しいですね。元気いっぱいにやってくださるところもあれば、上品な所もあって。
はじめは控えめなアクションも、段々とスイングが見えてきて、声を出さないでアクションするのって難しいと思うのですが、『♪さぁ、行こうよ』とみなさん楽しそうに手を挙げて下さっているのがうれしいです。歌声を合わせることはまだ難しそうですが、みなさんと一緒にできる喜びがとても大きいです。
小笠原:この曲を歌うときは、いつも会場を明るくして、客席が見えるようにしていただいているんです。マスクをしているので目元しか見えないのですが、それでもみなさんが楽しんでくださっている様子が伝わってきます。親指でグッドのマークを作って下さったり、大きくなる手拍子からも、ステージと客席がひとつになる感じが分かるのが、とてもうれしいです。
横山:この曲は8月17日にリリースしたばかりの新曲なので、知らないお客さまも多いんです。(フォレスタの公演で司会を務めている)MCの石川牧子さんも、どういう曲なのか説明をして下さっているほどで。そんな生まれたばかりの曲ではありますが、お客さまからの問い合わせ数を集計する有線の『お問い合わせランキング』で2022年8月に1位をいただきました。月の中頃にリリースされた曲が、その月のランキング1位をいただいたことに驚くとともに、とてもうれしくみんなで喜びました。
コンサートの際にはこの喜びと感謝をお客さまにお伝えしながら、『“問い合わせ”なので、それが“売り上げ”になるように』と冗談も言ったりして。一緒に手を挙げて動いた後は『自宅でもやってみてくださいね』と呼びかけています。「自分たちも楽しんで、お客さまにも楽しんでいただく」その橋渡しのきっかけになる曲が生まれたことは、結成20年を迎えて、そしてこれから新しいチャレンジを続けて行くにあたって良い曲が生まれたなと感じます。
ーー活動を続けた20年の間には、メンバーの活動休止・再開。コロナ禍などいろいろなことを経験されました。この14人だから乗り越えることができたと感じたエピソードは何でしょうか?
横山:コロナ禍で始めたことは、フォレスタのYouTubeチャンネルを開設したことでした。コンサートが中止や延期になって、ファンのみなさんとお目にかかることもできませんでしたが、僕らも集まることができないので、それぞれ自宅から作業をしたんです。
慣れない自宅録音に苦戦するメンバーもいたけれど、それぞれが持つ「曲を届けたい」という思いが伝わって来ました。『あざみの歌』をやったときは、すごい反響で。いまでも突出して再生回数が多いのですが、『みなさん、聴きたいんだな』『お好きなんだな』という思いを感じることができました。メンバーとも、ファンのみなさまとも対面できない時期でも繋がりを感じることができました。
小笠原:撮影も編集も、みんなめきめき上達して、メンバーの吸収力の高さを感じました。横山くんの発案で始まったのですが、コロナ禍にならなければ目を向けることもなかったかもしれないこと。『歌を届けたい』という思いも強くすることができたと思います。
内海:コンサートが中止になる中で、いま何ができるのかを考えて、行動できたことは良かったなと思っています。自分が歌うことが楽しいというのもありますが、歌うことで皆様や仲間とコミュニケーションを取っているところが、わたし自身にはあります。
大野:歌うことで、自分自身が励まされている、救われたなと感じている部分もありますよね。それで歌をやっているところもありますし。YouTubeは再生回数もそうですが、コメントを書き込んでくださる方もいて。会えない時期にも、反応が分かったことも良い経験だったと思います。『あざみの歌』以外も観て欲しいなと思ったりもしましたけど(笑)。
印象に残っているのは『宇宙戦艦ヤマト』の(同名)主題歌を歌唱した動画を配信したときのことです。2番の歌詞に『♪誰かがこれを やらねばならぬ~』と歌う部分があって、目にされた医療従事者の方が、『気持ちを代弁してもらえた』とメッセージを寄せてくれました。
(C)源 賀津己
ーーファンの方からいただいた言葉で、思い出深かったエピソードは何でしょうか?
小笠原:コロナ禍のいまは、直接お客さまから感想をうかがうことが難しくなりました。コロナ禍の前は、『コンサートに来て本当に良かった。また来たい』と涙を浮かべて伝えて下さる方がいらして。涙が浮かんでいる姿を見ると、そこまで思って下さっているのかと、感動します。この瞬間の時間が本当に大切だと感じるし。それぞれの方が、涙を浮かべられるほど大切な曲を歌うことができているのかと思うと、これはどんな状況になっても続けて行かなくてはいけないという思いが強くなります。
内海:私は子どものころに歌う童謡や唱歌などを歌う中で、例えば『里の秋』を歌った後などに、『普段の生活の中で、幼少期を思い出すことはないけれど、子どもの頃に歌っていた曲を聴くと、忘れていた風景を思い出す。歌詞がすらすらと出て来る』などの感想をお客さまからいただくことがありました。
ーー家族との思い出が詰まった曲。恋人とのエピソードが詰まった曲など誰もが持つ「心の歌」。4人にとっての「心の歌」は何ですか?
内海:私は長崎県の出身なので、個人的にも藤山一郎さんの『長崎の鐘』をよく歌わせていただいています。フォレスタとしては、男声と混声で歌っているのですが、歌うたびにこの曲は残して行かなくてはいけないと思っています。そしてフォレスタが歌ってくれると、色んな人が力づけられるのだろうなと思います。
あとは一条さんから、島倉千代子さんの曲を『歌ってみるように』と勧められて、よく勉強するようにしています。折々歌わせていただいているんです。北海道では『襟裳岬』とか。あとは『からたち日記』や『逢いたいなァあの人に』など。客席のみなさんが昔を懐かしんで聴いて下さっているのが分かるので、大事に歌っていきたいと思います。
大野:好きなのはやっぱり、松本零士さんのアニメーションを見て育った世代なので、『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』ですね。ささきいさおさんの声も、自分の理想に近い声なので大好きです。バスとしてすごいなと思うのは、『有楽町で逢いましょう』、『おまえに』などで知られるフランク永井さんです。上條恒彦さんは、歌も声も素晴らしいですね。中村敦夫さん主演のドラマ『木枯し紋次郎』の主題歌『だれかが風の中で』はいまでも大好きですね。
小笠原:私は青森の出身なので、故郷の景色の断片が歌詞の中に含まれている、石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』や、細川たかしさんの『望郷じょんがら』などを歌うときは、グッときます。『吹雪』などの言葉を口にすると、故郷の景色が目の前に広がっていきます。故郷のことを歌っているときは、歌詞に出てくる土地が、その方の故郷ではなくても、ご自身の思い出を重ねて聴いてくださっているのかなと思うと、何とも言えない気持ちになります。
『望郷じょんがら』には『♪みんなは達者か 変わりはないか』と故郷に残している家族を思う歌詞があるんです。上京してきている人もいらっしゃると思うので、家族や親せきを思っているのかなと想像したり。日本の演歌に出て来る歌詞やメロディーには、故郷に思いを馳せるものがたくさんあって。心の故郷を思い出させる曲を大切に歌っていきたいという気持ちが強くなりますね。
横山:僕は美空ひばりさんの『川の流れのように』です。『♪雨に降られて ぬかるんだ道でも いつかはまた 晴れる日が来るから』という歌詞から、サビへと続くのですが、そこは気持ちがぐっと入ります。お客さまもそうみたいで、気持ちを一体にできている感覚もあります。
ーー12月7日のコンサート。来場者には、「紅白のぬくもりカイロ」がプレゼントされますね。渋谷から新宿へ、場所を移して初めての公演です。楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。
大野:紅白まんじゅうではなく、紅白のカイロで温もりを感じていただけたらと思います。コンサートは、フォレスタ20年の集大成と言っても良い内容になっています。これまで歌ってきた唱歌から童謡、昭和歌謡、抒情歌など、いろいろな曲が出てきます。ご家族と聴いた、戦争中に聴かれたなど、みなさまにとって思い入れがある曲をお届けできると思います。それぞれの思い出の曲を探しに、コンサートに足を運んでいただけたらと思います。
取材・文=翡翠 撮影=源 賀津己