ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート、2023年はウェルザー=メスト指揮で初登場曲が14曲 デジタル配信は1/6スタート
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日本で高い人気を誇る名門オーケストラ、ウィーン・フィル。彼らのコンサートの中でも最も有名なのが毎年1月1日に行なわれるニューイヤー・コンサートだ。
元旦に黄金のムジークフェラインザールからTVとラジオを通じて世界90カ国以上に放送され、総計5千万人が視聴するというこのクラシック音楽界最大のイベントは、1939年に始まる80年以上の歴史を誇る。
音楽の都ウィーンを象徴するシュトラウス一家のワルツやポルカが演奏され、その高額の
2023年の指揮者は、現在クリーヴランド管弦楽団の音楽監督をつとめるフランツ・ウェルザー=メスト(1960年リンツ生まれ)。
フランツ・ウェルザー=メスト
ウィーン・フィルとの初共演は1998年1月のモーツァルト週間で、J.C.バッハとモーツァルトの間にメシアンを挟む個性的なプログラムを指揮している。それ以来現在に至るまで200回近く共演を重ね、2010-2014年はウィーン国立歌劇場の音楽監督を務めるなど、ウィーン・フィルとはゆかりの深い指揮者の一人。
ニューイヤー・コンサートには2011年に初登場し、その後2013年にも再登場した。2023年は10年ぶり3度目のニューイヤー・コンサート登場となるとともに、両者の共演開始25周年を寿ぐという趣向だ。
ウェルザー=メストの曽祖父は19世紀末にヨハン・シュトラウス2世たちが演奏したカフェ「ドムマイヤー」の経営者ということもあって、シュトラウス一家の音楽には個人的に深いつながりを感じているというウェルザー=メスト。
それゆえ、2011年の初登場の時は「人生で最も緊張した演奏会だった」と語るウェルザー=メストだが、3度目の登場となる2023年はシュトラウス作品への深い理解と共感に溢れた音楽を披露してくれることだろう。
2023年の演目の特徴は、予定されている演目15曲のうち、14曲がニューイヤー・コンサート初登場だという点だ。初登場曲はこれまで多くて5曲程度だったが、今年はその約3倍で、これほど初登場曲が多いのは同コンサート史上初めてのこと。このことからもこのコンサートについてのウェルザー=メストとウィーン・フィルの気概が見て取れよう。
また今回はヨハン2世の弟ヨーゼフ・シュトラウスの作品が8曲も含まれていることにも注目が集まる。ヨーゼフは、もともと音楽家になるつもりはなく別の職業を選んだが、兄ヨハン2世がオペレッタの創作に力を入れるようになってからはシュトラウス楽団の中心になって演奏を牽引した人物。
兄とは音楽的な質も少し異なりワーグナーやリストら当時のロマン派の人気作曲家の音楽を指向する姿勢もあった。呼応半で演奏されるヨーゼフのポルカ・フランセーズ「上機嫌」作品281では、ウィーン少年合唱団に加えて、その姉妹合唱団ともいうべきウィーン少女合唱団がニューイヤー・コンサートに初登場し、ウィーン・フィルと共演を果たすのも新機軸の一つである。もちろん定番のアンコールや新年の挨拶も予定されている。
元旦の演奏会でのライヴ収録直後に音声の編集が行われすぐさま発売・配信されるのがニューイヤー・コンサートの通例で、2023年は1月6日に全世界でデジタル配信が開始される。ヨーロッパのCDショップの店頭に並ぶのは1月13日。国内盤での発売はCDが1月25日、ブルーレイが2月15日の予定。CDの音声はフリーデマン・エンゲルブレト率いるベルリンのテルデックス・スタジオ、ブルーレイの収録はオーストリア放送協会(ORF)が担う。
毎年の収録を通じてホールの特性を知り尽くした両者が生み出す鮮明な音声と映像は、たくさんの花で美しく彩られた黄金のホールで繰り広げられる音楽の饗宴を生々しく楽しむ贅沢を与えてくれるだろう。ブルーレイには、海外ではTV生中継の休憩時間に放映されるウィーン・フィルのメンバーによる室内楽でつづった映像作品のほか、恒例のウィーン国立バレエ団によるバレエ・シーン付きの特典映像が収録される予定だ。