博多座二月花形歌舞伎『新・三国志』『夢見る力』市川猿之助・市川團子、合同取材会レポート
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(左から)市川團子、市川猿之助
歌舞伎俳優、市川猿之助と市川團子が、東京都内で行われた博多座二月花形歌舞伎『新・三国志 関羽篇』(2023年2月5~19日)、『夢見る力―特別舞踊公演―』(同2月21日)の取材会に出席した。
冒頭の挨拶で猿之助は、「コロナ以降ようやく博多座での公演となりました。より新しく生まれ変わった『新・三国志』をお目にかけられることになりました。結末がちょっと歌舞伎座とは変えるので一度見た方も楽しめると思う」とプロデューサー・演出家の顔も持つ猿之助が自信をのぞかせた。
猿之助ならではの斜め宙乗りに、成長著しい團子による本水による大立ち廻り
演出も勤める猿之助は、2022年3月に行われた歌舞伎座公演との違いを問われると「博多座といえば、音響そして舞台機構の素晴らしさ、その良さをフルに使った演出にしたい」と語った。
また「歌舞伎座では削った團子による本水を使った大滝の立ち廻り場面を復活させ、限られた劇場でしかできない斜め宙乗りも私が勤めます。ストーリーは歌舞伎座とは結末も変わり、原作寄りに戻すので歌舞伎座でご覧になった方も、違いを楽しんでいただけると思います。博多座の良さをフルに生かした演出で、コンパクトにお手軽にお楽しみください。」と歌舞伎座とは違った演出プランを明かした。
猿之助が亀治郎時代に演じた同役の團子は「『新・三国志』は子どものころおじいさまの映像を見て楽しんでいました。特に大滝の場面の後、最後の台詞の表現で、僕は小さいときは台詞をただワーッと言えばいいと思っていましたが、実際はそういうものではなく、ひとつの台詞の中での抑揚、強弱をつけていくという課題にぶつかってから、より一層猿之助さんのすごさがわかりました。」と尊敬の念を述べた。
『三国志』はどこを切り取っても面白い物語。新解釈の恋愛要素も取り入れ!?
三国志の魅力を問われると猿之助は「『三国志』は中国の大河ドラマで、日本で言うところの「南総里見八犬伝」のようにどこを切り取っても面白い物語。だからこそいろんな形で、何度もリメイクされています。この歌舞伎の『新・三国志』について言えば、男の世界になりがちですが、横内謙介先生の新解釈で恋愛要素も取り入れている。また今回は「三国志」の世界がわかるように、冒頭に映像で解説を入れました。言葉も現代語とまではいかないまでも、テレビの時代劇くらいの言葉づかいで初めての方もお気軽に楽しんで頂けると思います。」と語った。
続いて團子は「面白さは “人のつながり”だと思っています。最後、関平や孔明が一生懸命、夢を継いで走っていくような景色が浮かぶような幕切れがとても感動します。この“人のつながり”“受け継がれる思い”が魅力だと思います。」と語った。
若手育成にも励む猿之助 新作と古典も勉強して、お客様には見たことのない演目を!
猿之助監修で團子はじめ若手花形俳優による『夢見る力-特別舞踊公演-』を行ういきさつを猿之助に伺うと「若手には新作とともに古典もやってもらいたいという思い、そしてお客様には見たことのない古典をご覧いただきたいという二つの思いから企画しました。『新・三国志』終演後、まだまだ夜は長い。博多座には地下に素晴らしい稽古場がある。コロナ禍ですし、その時間、おとなしく宿にいるのなら毎日稽古をしようじゃないか!と思って(笑)。終電を気にすることもなく、こういう時にこそちゃんと稽古をする。そして『三国志』千穐楽後、一日空けて特別舞踊公演本番、それがお客様に見たことない珍しい演目をお披露目する。我ながらナイスアイデアですよね(笑)。」と後進への思いを語った。
市川猿之助
これを受け團子は「『悪太郎』で太郎冠者を勤めます。2021年1月歌舞伎座で『壽 初春大歌舞伎』を拝見し、特に最後の踊りが楽しかったこともあり、出演できることを嬉しく思います。踊りだけでなく、これまであまりやらせていただいたことはない狂言っぽい台詞をしゃべるところを今回しっかりと勉強したいと思います。」
成長著しい團子 歌舞伎界に入って今年で11年目 芸も身長もまだまだ伸び盛り!? 初舞台(2012年)から40㎝伸び「まだ油断できない」
記者からは、團子に初舞台から身長が大分伸びられたようですがという問いに「今、179cmです。初舞台(2012年)からは…40cmくらい伸びたと思います! 一年前に落ち着いてきたかなと思ったのですが、半年ほど前にまたまた伸びて……まだ油断はできません(笑)。」と述べると笑いに溢れた朗らかな雰囲気に包まれた。
市川團子
作品のテーマ「夢見る力」=「実現する力」(猿之助)
「夢見る力というのは、夢に走っていく姿勢が一番大切だ」(團子)
この『新・三国志』は23年前の上演時からテーマは一貫して「夢見る力」であるが、テーマについて聞かれると猿之助は「実は僕は夢を見るということが嫌いなんです(笑)! 夢は見続けるだけじゃ絶対ダメ。だから僕は「夢見る力」と書いてルビを読み替えて「実現する力」と思ってます。そしてその物事を実現させるには人と人のつながりが大切です。関羽を演じる上でも、孫権は力で実現させようとするのに対して、僕の関羽は人とのつながりを重んじ、それが崩れるのならば実現させなくてもいいとすら思う人物像と私は捉えています。それは伯父の猿翁演じた関羽ともまた違う僕の考えですので、初演とはお芝居のテイストが違うかもしれません。演じる俳優によって解釈が違う、それが歌舞伎の面白さ。ですので、團子がやる関平は僕のとは違う解釈になる。そうやって自分で作っていって欲しいと思います。団子はこのテーマについてどう思う?」
市川猿之助
「僕は「夢見る力」を信じます。初演の映像の最後に流れるある一文があるのですが、とても共感しました。そこには「夢見る力というのは、夢に走っていく姿勢が一番大切だ」と書かれていたのです。僕も、そのように思っています。」と述べた。
市川團子
最後に公演を楽しみにしている皆様へメッセージを伺った。
「生まれた地である博多座に出演できることを嬉しくも楽しみでもあります。歌舞伎座での公演から、さらに進化して博多座のお客様に楽しんでいただけるように精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。」と團子が抱負を述べると続いて猿之助は「来年2月、願わくばなるべくいい方向へ状況が向かい、劇場にお出でいただければ世の中の一切合切を忘れていただき夢のような・・それこそ劇場の中で夢を見ていただける、そんな“夢見る芝居”にするべく我々も一生懸命取り組みますので、ぜひ一人でも多くの方にご来場いただき盛り上げていただければと思います。」と熱い胸の内を語った。