村井良大、桜井玲香らがカップルや家族のやりとりをコミカルに見せる ミュージカル『ファースト・デート』ゲネプロレポート
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ニューヨークのレスラン・バーを舞台に、“ブラインド・デート(一度も会ったことのない状態でするデート)”に臨む二人と彼らを取り巻く人々の様々な思惑を描くミュージカル『ファースト・デート』。村井良大、桜井玲香、植原卓也、音くり寿、オレノグラフィティ、保坂知寿、長谷川初範の7名が、100分間ノンストップで笑って泣けるラブコメ・ミュージカルを繰り広げる。
2023年1月19日(木)からの初日を前にゲネプロが行われ、キャスト陣からのコメントも到着した。
“ブラインド・デート”や宗教観など、日本人からするとピンときづらい部分もあるものの、初対面の人間との距離感、恋人候補を見極めるための駆け引きなどは万国共通だろう。
初めて会った者同士、相手の発言にムッとしたり、何気ない言葉にときめいたり。
そんな二人を見ながら「ここでそれを言う?」とハラハラしたり、「これにキュンとする気持ち、分かる」と共感したり、レストランに偶然居合わせた客の一人になったような気分で楽しめる。
アーロンは投資をはじめとする金融の仕事に打ち込む真面目なユダヤ系。仕事はできるが元カノのこともあって恋には奥手で不器用な男を、村井は実にチャーミングに演じている。微妙なギャグを会話に挟んだり、ケイシーの言動に一喜一憂したりと大忙しな姿が愛らしい一方、誠実さやふとした瞬間に見せる優しさに惹きつけられ、応援したくなる。
対するケイシーは、華やかな見た目のイケている女子。尖った言動と壁を感じさせる雰囲気が魅力的で、どこか影のある佇まいに目を奪われる。桜井は一見軽くて強く見える彼女の内面を繊細に表現していた。
「ファーストデートでは踏み込んだ質問はなし」と言いながらも、二人は家族のことや宗教、過去の恋愛についてなど、次々に話していく。価値観の違いや思わぬ共通点に戸惑いつつ少しずつ相手を理解し、手探りで距離を縮めていく様子が微笑ましい。初対面だからこそ見えるものや届く言葉もあり、ヒューマンドラマとしてもグッとくる。
自分とは違う立場・環境にいる人間が相手だからこそ浮き彫りになる偏見、“インターネットやSNSで相手のことを調べる”など、現代ならではの話題も盛り込まれており、「分かる!」と頷いたり自省したりするシーンも多い。
村井と桜井は二人の絶妙な距離感や心境の変化を丁寧に見せ、アーロンとケイシーがお互いに惹かれていく過程を説得力を持って描き出している。ズレているのか噛み合っているのか分からないやりとりの間、それぞれの歌声と美しいハーモニーも素晴らしく、個性的なキャラクターが次々に登場する中でも確かな存在感と魅力を放っていた。
植原演じるレジーはパッと目を引くビジュアルで登場したかと思うと、可愛さ満点のラップで抜群のインパクトを残す。電話に出ないケイシーを心配し、あれこれと想像を膨らませてやきもきする姿がキュートだ。クセになるキャラで客席のハートをがっちり掴み、登場するたびに客席から「待ってました!」と言わんばかりの笑い声が起きていた。
長谷川が演じるウェイターは気さくでお茶目な雰囲気。仕事をしつつ若い二人の様子を気にかけ、ブラインド・デートを見守る彼の存在は、時にピリッとした空気になる中で癒しになっている。
物語のほとんどがレストラン内で進み、村井と桜井はバーカウンターやテーブル席からほとんど動かない。だが、頭の中で彼らを鼓舞したり諌めたりする人々がステージ上を目まぐるしく行き交い、たった7人で上演している作品とは思えないほどカラフルで楽しいパフォーマンスが繰り広げられる。
オレノグラフィティが演じるアーロンの親友・ゲイブは、女性慣れしていないアーロンに様々な助言をする兄貴肌の頼れる男としてイキイキと存在。アーロンの元カノ・アリソンを演じる音は、魅力的だがひどい女をコケティッシュに演じる。ゲイブとアリソンはアーロンの脳内にいる存在のため、アーロンの気持ちの変化に合わせて印象が少しずつ変わっていくのが楽しい。
ケイシーの姉・ローレンは、耳の痛いアドバイスもズバッと告げるしっかり者。姉妹喧嘩のテンポの良さも楽しい。保坂のあたたかい眼差しと厳しくも愛のある言葉から妹を心配する姉の思いが伝わってくる。
作中の楽曲はロマンティックなバラードや迫力満点のラップ、エスニックミュージックまで多彩。お互いの言葉によって湧き上がる様々な感情がキャッチーな楽曲と等身大の歌詞に乗って表現され、ロマンティックな雰囲気やブラックな楽しさを倍増させている。
村井と桜井以外のキャストが曲やシーンに合わせて様々なキャラクターを演じ分けているのも大きな見どころだ。メインとなる役どころ以外も個性的な人物ばかりで、1回の登場で絶大なインパクトを残すキャラクターも多数存在する。アーロンとケイシーの頭の中を反映するようなしっちゃかめっちゃかな光景に、ゲネプロでありながら何度も笑いや拍手が沸き起こっていた。
カップル未満な二人の駆け引きやすれ違いに笑い、家族愛や互いに歩み寄ろうとする姿勢にほろりと涙し、魅力的な音楽にノって、100分があっという間に過ぎていく本作。二人の“ファースト・デート”の行く末を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
>(NEXT)キャストコメントはこちら