梅津瑞樹「役者としてインプットを渇望している」SOLO Performance ENGEKI『HAPPY WEDDING』インタビュー
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SOLO Performance ENGEKI『HAPPY WEDDING』が2023年2月17日(金)~26日(日)、東京・シアターサンモールにて上演される。東映が手掛けるひとり芝居プロジェクトとして、キャスト・スタッフを最少人数で上演していく試み。第三弾となる今回は、第一弾の『HAPPY END』と同じ布陣が再び実現する。
本番を間近に控えたタイミングで、出演する梅津瑞樹にインタビュー。今作に込めたコンセプトやひとり芝居への思いを聞いた。
SOLO Performance ENGEKI『HAPPY WEDDING』
――このインタビュー時点では稽古終盤。手応えはいかがでしょうか?
今日は衣裳付き通しだったんですが、ここからまだ稽古ができる時間があることに安心しています。実は昨日が休みで、劇中で使う映像の撮影をしていたんですよ。一日稽古しなかっただけで、ものすごい不安になりました。ずっと喋ってきたから、少し時間が空いただけで口から出てくるセリフが妙に馴染みがない感覚があって……やってみたら大丈夫だったんですけど。連日どうにかこうにか台本を詰め込み、無理やり通してなんとなく落ちてきたところ。まだもっと行けるだろうと思っています。
――2021年に上演された『HAPPY END』のスタッフ陣と再びのタッグ。今作の成り立ちを教えてください。
前作は1人の人物を演じたんですが、今回は真逆の取り組みをしたいという思いからスタートしました。お客さんがどういう芝居を観たいかというと、役者が色んな役をやるところだと思うんです。違う一面が見えたり、こういう役もやるんだって驚いたり。ただ、一つの作品につき基本的には一つの役しか見られない。もし次があるなら、オムニバス形式や毎回違う人物が出てくる群像劇のような路線をやってみたいと、生意気にもリクエストさせてもらいました。
――やりたいことは、前作を踏まえて考えられたものですか?
『HAPPY END』とはまたベクトルの違うやりたいことでした。前作では基本的には1人の人間を演じて、年齢によって変わる様子や感情を楽しんでもらった。そっちをやったから、じゃあ今回は1人で色んな役を演じて遊びの幅を広げるパターンをやりたいなと。前回見てくださった方がいるのなら、どっちのほうがひとり芝居という手法に合うかということも考えてもらえる機会になるのではないでしょうか。
――“オムニバス”“群像劇”というリクエストを反映して作られたのが、結婚式のストーリーなんですね。
「こう来たか!」と思いました。たしかに、披露宴って色んな人が来ますよね。久しぶりに会う友達もいるし、新婦側の同級生とか同僚とか全然知らない人もいるし、オムニバス形式に近いものがある。友達の結婚式に出席したことがありますが、僕の個人的な経験としては感慨深さが勝ちました。中高6年間一緒に過ごしてきた友達だったんですが「部室であんな悪ふざけしてたやつが、結婚……!」って(笑)。自分の中では高3で時が止まっているけど、知らないところで友達の人生は地続きになっている。当たり前の話ですが、自分の人生は自分の主観だけど、皆には皆の主観があって一人ひとりの物語が構築されていく。それがすごく不思議で、なんだか……寂しいなって(笑)
――結婚式にはどんなイメージをお持ちですか?
僕は友達が少ないので、もし自分がやるとしたら招待する人をどうしようかと(笑)。この間数えてみたら……10人くらい? それも「今じゃ連絡取ってないけど、呼んだらきっと来てくれる」という打算も込みで。招待する人数って、新郎側と新婦側で合わせるんですよね? 相手の方が50人くらい呼んじゃったら、映画で見た代行業を頼んでみようかなと(笑)。結婚する2人の思い出が華々しくあれば、それでいいです。
――どんな役を演じられるかは劇場でのお楽しみとのことですが、演じる上での楽しさや難しさは?
役者として身につまされ、痛いところに刺さるワードがたくさんありました。色んな役を生きてきた僕が、最終的に生身の自分をさらけ出すという構造とシンクロできたらいいなと考えているところです。だからこそ、キツいですね。「自分は天才だ!」と思い込める日もあれば「なんでこんな下手くそなんだ……」っ落ち込む日もあって、どうにか虚勢を張って生きているわけです。向き合えば向き合うほど、すっからかんなんですよ。役であり梅津瑞樹であると言えるくらいの覚悟をしておきたいです。
――再びの一人芝居、どんな思いで臨まれますか?
僕は一人芝居が好きなんです。「役者としてこういう武器もある」と提示していくことを、シンプルに楽しめているのかもしれない。もちろん、集団で一つのものを作り上げる演劇の良さもよく知っています。関わる人の数だけ自分にはないものと出会えることは、演劇の醍醐味でもある。一人芝居の場合は、自分の中にあるものを出していくしかない。上演時間約1時間半、責任は自分1人で取る。1人だからこそ、コントロールしやすさもあります。舞台上のお芝居を理性でやるのか、それとも瞬間の揺らぎに任せるために放棄するのか。すべての匙加減を自分の手で積み上げていって、ゴールを目指すのはわかりやすいです。
――ちなみに、初めての一人芝居というと?
(所属していた)「虚構の劇団」への入団試験のような形で上演しました。自分で脚本や演出プランを書いて、音楽も全部自分で編集して……1人で何かを作ることが自分に向いている自覚はありましたが「サボろうと思えばとことんサボれるけど、やろうと思えばいくらでも自分に鞭打てるんだ」という発見がそこでできました。
――改めて、前作『HAPPY END』を振り返っていかがでしたか。
商業で一人芝居をずっとやりたいと思っていて、念願叶ったのが『HAPPY END』。とはいえ、コロナ禍が始まった時期ということもあり、正直心配でした。果たして、自分はお客さんを呼べる役者なのかと。1時間半も役者が1人しか出てこないとなると、見る側はやっぱり飽きてしまう。自分の芝居の能力でその時間を持たせられるかということを考えましたが、その実態を自分自身で知っておくことも大事だなとも感じていました。ああいう状況にも関わらず、わざわざ足を運んで見に来てくれたり、配信で楽しんでくれたりした方がいらっしゃったということがわかった。当時は1席ずつ空けていましたが、今回は詰めている。2年経って僕に興味がなくなった人もいるし、ついこの間気になり始めた人もいるはず。いろんな変動がある中で、今どういう人たちが見たいと思ってくれているのかを知ることは、大きな意味があると思っています。
――ここ数年はキャリアの幅を広げている印象があります。インプット、アウトプットも目まぐるしかったのでは?
インプット、全然できていないんですよ。とてもありがたいことに仕事が続いていて、それ以外のことに目が届かない。映画は見ていますけど、お芝居の勉強としてうまく自分に作用するのかというと、ちょっと違う気がします。本屋も毎週1回は絶対行くようにしていますが、この仕事をする前から読書は好きだったのでただ楽しんでいるだけ。ちなみに先日は、ショーン・ターンの絵本『いぬ』を買いました。役者としてのインプットを、今は渇望しています。
――今回もライブ配信がありますが、配信ならではの見どころは?
人物毎の細かな仕草や動きも演出の粟島さんと話し合いながら、つくってきたので、その辺は寄りで見れる映像ならではの楽しみ方かもしれません。あと、映像特典につくインタビューとかも今日、撮ったんですが、いつもとはちょっと違った感じで話せたかも……なので、楽しみにしていてください。
――最後に、意気込みとお客様へのメッセージをお願いします。
劇場に足を運び、客席に座り、上演が始まり「そろそろ違う人が出てこないかな」と思っても……残念ながら、僕しか出てきません(笑)。あと、ライブ配信だとずっと画面に映るのは僕だけです(笑)。けど、僕しか出演していませんが、僕じゃない人がいっぱい出てきます。皆さんが退屈で寝てしまわないよう、頑張りたいです。
取材・文=潮田茗、撮影=中田智章
公演情報
会場:シアターサンモール
演出:粟島瑞丸
出演:梅津瑞樹
公演
お祝い席(プレミアム席) 9,800円(税込)※引出物(仮)付き・前方座席
S席 7,800円(税込)
※未就学児入場不可
※引き出物(仮)は公演パンフレットとトートバッグのセットを予定しております。
配信サービス: Streaming +ほか
Streaming+配信
視聴
ライブ配信公演回:
■2月17日(金)19:00 特典映像付き配信(特典映像:メイキング・コメント)
アーカイヴ視聴:2/23(木・祝)23:59 まで 販売期間:2/23(木・祝) 22:00
■2月26日(日)13:00 特典映像付き配信(特典映像:生コメント配信 ※本編終了後、生配信で梅津瑞樹のコメントをお届け予定)
アーカイヴ視聴:3/4(土)23:59 まで 販売期間:3/4(土)22:00
■2月26日(日)17:00 特典映像付き配信(特典映像:梅津瑞樹インタビュー)
アーカイヴ視聴:3/4(土)23:59 まで 販売期間:3/4(土)22:00
■公演特設HP https://solo-engeki.com
■公演公式Twitter @EngekiSolo