植田圭輔×菊池修司「あの経験は間違いなく、僕らを強くした」　舞台「ヴァニタスの手記」-Encore- インタビュー

舞台「ヴァニタスの手記（カルテ）」-Encore-が2023年3月10日（金）～12日（日）、東京・サンシャイン劇場にて上演される。望月淳による同名漫画が原作。「19世紀パリ×吸血鬼×スチームパンク」をテーマに、滅びゆく吸血鬼たちの物語が描かれる。

2021年1月に1ステージのみ実現した本作が、山崎彬の脚本・演出により再び上演される。初演より続投となるヴァニタス役・植田圭輔、ノエ役・菊池修司へインタビューを実施。再演にかける思いを聞いた。

――再演おめでとうございます。熱い声援を受けて実現したとのこと、決定した時の心境をお聞かせください。

植田：やっぱり前回は悔しかったんです。一度だけステージを踏ませてもらったけど、ずっと心残りではありました。何より修司が一番悔しかったと思う。

菊池：前回、僕が降板という形になってしまって……正直、自分のなかではいい思い出ではなかった。ものすごく悔しかったし、皆が必死になって現場にいる間に自分は家にいることしかできない虚しさもあり、色んな感情が渦巻いていました。

植田：再演というものは、簡単にできることじゃない。僕らが思っている以上にいろんな方々の努力や作品を思う気持ちがあったからこそ、アンコールという形でやらせていただけることになりました。身が引き締まる思いです。

菊池：お客さんやスタッフの方々のお力のおかげで、一年越しにやらせていただけることにすごく感謝しています。その思いも全部ひっくるめて、今しかできない「ヴァニタスの手記」を作っていきたいです。

――あの1ステージは、お二人にとってどんな公演だったのでしょうか。

菊池：たぶん僕と圭輔さんで、感じ方が全然違ってきますよね。

植田：うーん……お客さんのためというのが一番大きかったです。そもそもずっと修司と作ってきたものだし、演じる相手が変わるのはある意味違う作品になるということ。修司への思い入れもあったから……正直、やる意味について考えさせられることもあった。でも、やっぱり公演できてよかったです。何が正解かわからないから、その時の最善を探るしかないんです。とはいえ、この作品があったからこそ俺ら自身が仲良くなったのは良かったかな。

菊池：たしかに。圭輔さんとの見えない信頼関係は、あの時にできたのかもしれないですね。当時はすごい悔しい思いがあったんですけど……ノエって、全部のキャラクターと関わるんです。一か月間稽古したことに嘘はないですし、圭輔さんが演じたヴァニタスをはじめ、キャストの皆さんは僕が演じるノエを通して役を作っていった。本番にはいられなかったけど、僕を通して作られたキャラクターたちを1公演でも届けられたことで、報われた気もしていたんです。今でも拭い切れていない感情はありますが、アンコールという形でやらせていただくからには全部払拭したい。終わった後はこれまでとは違う新しい人生が始まるんじゃないかってくらい、僕にとってスケールの大きいことなんです。

植田：場当たりまでは修司も参加してたもんな。修司といたはずの楽屋に、今度は代役に入ってくれた高本学がいて……楽屋の冷蔵庫を開けたら、修司が持ち込んだエナジードリンクが大量に残されているわけですよ。「これ、いただこう！」って飲みました（笑）。

菊池：あ、飲んでたんだ！　それは知らなかった（笑）。

植田：飲んじゃったから、次に別の作品（舞台『東京リベンジャーズ ―血のハロウィン編―』）で共演したときにそっくりそのまま返したの。本人は置いていったことを覚えていなかったんですけど「あの時、冷蔵庫にあった分」って渡したら、半泣き状態で抱き着かれました（笑）。そういう思い出が綺麗かどうかはさておき、あの経験は間違いなく僕らを強くしてくれたのではないかなと思っています。