My Hair is Bad、5年ぶりに武道館へ帰還 「一番かっこいいマイヘアが戻って来ました」
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My Hair Is Bad 撮影=西槇太一 (※写真は19日公演のもの)
My Hair is Bad presents アルティメットホームランツアー 2023.2.18. 日本武道館
「サバイブホームランツアー振替公演」「ライブハウスシリーズ」「対バンシリーズ」と行われて来た、My Hair is Badの『アルティメットホームランツアー』の最終シリーズが、2月10・11日の大阪城ホールと、2月18・19日の日本武道館で行われた。振替公演になった広島と横浜の「対バンシリーズ」が4月に残ってはいるが、ニューアルバム『angels』を携えて2022年5月に始まった同ツアーが、この武道館2デイズで一区切りを迎えたことになる。なお、My Hair is Badが日本武道館に立ったのは、2018年3月30・31日の『ギャラクシーホームランツアー』以来、5年ぶりである。以下、日本武道館の1日目、2月18日(土)のレポ。
おなじみのSEのギターのアルペジオが響く中、3人がステージに現れ、ドラム・山田淳の前に集まって気合いを入れ、椎木知仁が鳴らしたギターに続き、ベース・山本大樹と山田淳が演奏に加わった瞬間、真っ白な光で武道館が包まれ、ライブがスタートする。
この日演奏されたのは、本編23曲、アンコール3曲の26曲・2時間15分。『angels』収録の13曲からは、「舌」と「ギャグにしようぜ」を除く11曲がプレイされた。頭2曲は『angels』と同じく「カモフラージュ」と「サマー・イン・サマー」、という始まり方。前半で「翠」「正直な話」「綾」を披露し、中盤から後半にさしかかるあたりで「花びらの中に」と「白春夢」を並べ、本編ラストは「歓声をさがして」──というふうに、『angles』の曲が、ライブの重要なポイントとなる場所に配置されたセットリストである。
3人が立つステージの間口は、大きめのライブハウスぐらいで、特別なセットもないし、花道なども設けられていない。My Hair is Badはいつもそうだが、3人を映す画面以外は、ライブハウスでやる時と同じ、極力シンプルなステージである。「カモフラージュ」と「サマー・イン・サマー」に続けて、ファースト・シングル収録の「18歳よ」を歌いきった椎木、「2018年、初めてここでワンマンライブをしました。それから5年後、2023年2月18日、一番かっこいいマイヘアが戻って来ました、よろしくお願いします!」と挨拶。自分のことを好きって言ってくれる人、やっぱりあんまり嫌いになれない、だからおカネを払って時間を使って俺らを観に来てくれた人の前で、言うことやることはもう決まっている──と、次の曲、「ドラマみたいだ」のタイトルを告げる。
「やってる側と観てる側にならないようにしたいな、と思っていて。ひとりで来ていても、どんだけ遠くにいても、もっと近づくから。楽しい日にしようよ」という言葉から始まった「翠」では、ステージ後方のLEDも照明も、翠一色になる。続く「彼氏として」では、イントロのドラムの四つ打ちのキックに合わせて、客席からハンドクラップが巻き起こる。
語りのようでもあり、歌のようでもある、椎木特有のあのパフォーマンスを、ギターと共にしばらく聴かせてから入った、My Hair is Badの代表曲であり続ける「真赤」が、中盤のハイライトだった。フロアからもスタンドからも、リズムに合わせて拳が突き上げられる。歌い終えた椎木は、みんながここに来てくれたことにお礼を言った後、「けどやっぱ、かましたいわけ、俺は。俺はかましたいんだよ。控えめに言って、俺はこれからかますんだけど、みんなもかました方がいいと思うんだよ」と、淡々とした口調でオーディエンスを煽る。「ディアウェンディ」のイントロでは「映像でもない! 雑誌の中でもない! 本物のMy Hair is Badです、本物が一番かっこいいんだよ!」と叫んだ。
15曲目にプレイされた、「リルフィン・リルフィン」は、ヘヴィ・ロックな曲調にラップが乗る感じが新鮮で、ライブの中におけるアクセントとして機能している。次は、「これはロックじゃない、ブルースでもない、ヒップホップでもない、ポエトリーでもない。ポエムでもない。なんなんだ武道館、俺のこの叫びは、このシャウトはなんなんだ!」から始まった、椎木がその時思っていることを言葉にする「フロムナウオン」。マイヘアのライブにおいて、長年もっとも重要なポイントを担い続けているこの曲には、今日は「俺らの価値はどのくらいになる? SNSフォロワー、スマホ抜きにして、どれだけのものとつながってる? 胸張って言えよ」というフレーズが、織り込まれていた。続く「戦争を知らない大人たち」では、「Good night」のリフレインが、優しく武道館を満たしていく。
「今夜ここにある、すべての若気の至り、すべての20代」に捧げられた「花びらの中に」、コロナ禍に書いてコロナ禍にリリースした「白春夢」、そして歌い終えた椎木から「いっぱいいろんな力が、ここに集まっているように思います。全然自分も知らない自分に、今日も出会えました。本当にどうもありがとうございます」という、今日を総括する言葉が出た「味方」を経て、いよいよ本編最後のブロックへ。
その曲の主人公の気持ちになって歌うから今は「味方」モードになっている、でもここからはモードに入れない、みんなと楽しみたいと思っている──と、「宿り」「熱狂を終え」「歓声をさがして」を曲間なしで三連打する。「歓声をさがして」が始まると、客電と白い照明で、武道館が明るくなる。「大好きばかり 見つけに行きたい」「もう持っているのにどこにあるのか わからなくなるから困っているんだろうな」「DJ もういいや 僕の曲は僕が歌うことにするから」等々、椎木ならではの必殺の1行だらけのこの曲を終え、3人はいったんステージを去る。
アンコールのMCでは、「『カモフラージュ』の1サビの歌詞がわかんなかった」「俺もびっくりした」と、椎木とベースの山本大樹が言い合う。マイクがない(あえて置かないのだと思う)山田淳は、地の声で客席に「(今日)よかったよねえ?」と問いかける。そして、「みんなが呼んだんだからね? 今日イチで盛り上がるつもりでいる?」という椎木の言葉から、10月26日にリリースされた現時点での最新曲「瞳にめざめて」、曲の後半で大きなシンガロングが起きた「いつか結婚しても」、すごい勢いで始まってあっという間に終わる「噂」の3曲が追加された。
メンバーふたりが去ったあとも、名残惜しそうに最後までステージに残る椎木に、アリーナからも1階スタンドからも2階スタンドからも、大きな拍手が降り注いだ。
取材・文=兵庫慎司 撮影=西槇太一
ライブ情報
4/6(木)【振替公演】広島CLUB QUATTRO
★対バン公演 SIX LOUNGE
開場 18:00 / 開演 19:00
4/24(月)【振替公演】横浜F.A.D
★対バン公演 サンボマスター
開場18:30 / 開演19:00