上田発、内藤裕敬×仲道郁代でクラシックと演劇のコラボ
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ショパンとブラームスがもしも出会っていたら
その待合室のベンチで二人は出会ってしまった
ロマン派の二人、その人生と音楽の病が明らかになる・・・
今年3月20日(日)に「仙台フィルハーモニー管弦楽団 上田公演~2016春~」と題した演奏会がサントミューゼで予定されている。その関連事業として、仙台フィルの演奏プログラムから、ショパンとブラームスにスポットを当てたリーディング劇が行われることになった。白羽の矢が立ったのは、サントミューゼのレジデンス・アーティストで、大阪・南河内万歳一座の内藤裕敬、国内外で活躍するピアニストの仲道郁代だ。二人はこれまで共同企画として『仲道郁代のごめん!遊ばせクラシック』『4×4』『窓の彼方へ』という、クラシック音楽と演劇の世界観の融合を試みた作品を手がけてきた。いわば二つのジャンルを橋渡しをしてきた伝道師とも言える。
1810〜1849年にポーランドを生きたショパン。1833〜1897年にドイツを生きたブラームス。同じロマン派にカテゴリーされるものの、生きた時代も空間も違う二人の大作曲家が、偶然の出会いを果たすという奇想天外の物語から、二人の人間像、音楽に対する思いがユーモアとともにをあぶり出される。物語の展開に合わせるようにセレクトされた楽曲を、仙台フィルのヴァイオリニスト・小川有紀子、チェリスト・吉岡知広が生演奏は、それはまるでそれぞれの主人公たちの心情を表すよう。そんな贅沢な演奏とともに、ナイロン100℃の松永玲子、大阪を拠点に活躍する俳優・坂口修一がリーディングしていく。
サントミューゼはホールと美術館を併設した施設の特徴を生かすべく、これまで美術と音楽、美術とダンスのコラボを行ってきたが、今回が初めての音楽と美術のコラボになる。この作品は、将来的に舞台化される可能性もありそうだ。
内藤 「ショパンとブラームスを題材にした企画と言われて、分厚い本がドドンと送られてきました。これはとてつもなく難しいですよ。とりあえず全部読めと。けれど読んでみるとけっこう面白い。劇作家として触発される人間像が感じられ、形になりそうだなと思いました。あまり芸術家だとか歴史上の偉人だとか、そういうイメージで二人をとらえてはいなくて、二人が作り手として表現者としてどう苦悩しながら、そしてどんな人生を歩んだかということの中に、人間的で、わりと下世話な印象を持ちましたね。むしろ身近に感じたというか。
ワーグナーなんかは大きな社会性の上に踏ん張っている感じがするんですよね。けれどショパンとブラームスもロマン派ですから。自分の内面とか自分の人生に躓きながら作業しているような気がして、非常に叙情的であり、ロマンティックだと思うんだけど、いわばそれが二人の共通点。彼らの中に踏み込んでいくと、自分の中にある何かが引っ張り出されたり、あるいは自分の外に何かを発見したり、またはリアルに触られる感じがある。これを見て、お聞きになったお客さんが、ロマン派症候群に陥っていただきたいです。胸キュンストーリー? そうはならないです。教授みたいな二人だから理論派だと思うんです。その理論のもとに非常に集中した作業をしていくんだが、そのストレスというか、自分の論理性から外れたものに惹かれる、それは恋愛だったんじゃないかと思う。理由はわからないんだけど、あのお姉ちゃん好きだなあというのが実際は作業の原動力になっているというか」
内藤裕敬
仲道 「密やかだけれど強い心をピアノの音にのせて語ったショパン。心の傷、悩ましさを建築的に打ち立て昇華せしめたブラームス。タイプは異なれど、二人とも悩みに悩みながら作品を残した作曲家ですので、やっぱり心の奥底にずしりと響くものはあります。お聞きになる方、演奏する人も、どちらかというと雲の上の人と思いがちですよね。けれど人間としての苦悩がどんなものであったのか、それを知ることによって曲の聞こえ方も変わるのではないでしょうか。逆にもっと深く入り込むことができるのではないかと思います。
音楽のフィールドにいる者とすれば、ショパンとブラームスが出会い、語り合うなどという設定は考えませんよね。でも彼らが語り合った時にどんな本音が出てくるのか、どんな言葉が出てくるか楽しみです。その中に、きっと彼らの音楽の本質が笑いと見えてくるのはお客様に面白いのではないんでしょうか」
仲道郁代
◇サイト:https://www.santomyuze.com/hallevent/the-romantics-syndrome/