ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2023年春号】
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今シーズンの新作が出揃い、そろそろ賞レースなども始まろうかという春のブロードウェイ。筆者が昨年(2022年)5月に観てきた10本を2~3本ずつ紹介していこう企画も、今号で最終回となる。過去3号で紹介したのは7本で、つまりはあと3本残っているのだが、うち1本はもう随分前に紹介済(どの号かはリストご参照)の『ウィキッド』再訪で、もう1本はオフの、よく考えたらとりたてて書きたいこともない作品。またこれまでランダムにピックアップしてきた結果、ちょうど日本版が間もなく開幕する作品が残る形となったため、今回はその1本に絞ってお届けしたい――『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』である。
■『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』とは?
バズ・ラーマン監督による2001年のミュージカル映画を原作とする舞台。19世紀末のパリのナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」を舞台に、クラブの花形サティーンとアメリカ人作家クリスチャンの恋模様を、約70ものヒット曲をちりばめたジュークボックス形式で描く(映画も同じ形式だったが、舞台版には映画公開後のヒット曲も加わっている)。2018年のトライアウトを経て、2019年にブロードウェイで開幕すると、すぐさま大ヒット。その後コロナ禍に見舞われ長い休演を余儀なくされたが、再開後の2021年9月に発表されたトニー賞で、対象作品が非常に少なかったなかとはいえ、10部門(作品・演出・振付・編曲・装置・衣裳・照明・音響・主演男優・助演男優)受賞の快挙を成し遂げた。
■演出家アレックス・ティンバースとは?
監督のラーマンは2002年、同じ頃のパリを舞台にしたオペラ『ラ・ボエーム』でブロードウェイ演出家デビューも果たしているが、本作では演出をアレックス・ティンバースの手に委ねた。ティンバースと言えば、“イマーシブ(没入型、観客参加型)”演劇の名手。『ロッキー』ではクライマックスの20分に客席にリングを出現させ、間もなくオンに進出する『Here Lies Love』のオフ版では観客を上演時間中ずっと歩き回らせ、日本版演出を福田雄一が手掛けることが発表されたばかりの『ビートルジュース』では、まばゆい照明によって黄色いはずのプレイビルが赤く見える魔訶不思議な客席を作り上げていた。本作は、今やブロードウェイを代表する才能の一人となった彼に、初めてトニー賞をもたらした作品だ。
■『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』の魅力とは?
独断と偏見で、誤解を恐れずズバリ言おう、装置であると――! クラブ「ムーラン・ルージュ」そのもののなかで物語を展開するというティンバースのアイデアに基づき、『MJ』も手掛けた天才デザイナーが作り出したのは、豪華絢爛という言葉ではとても足りない、それはもうずっと眺めていても飽きない、観客から撮影許可を求められた係員がもはや“容認”とかではなく「開演中以外ならmore than welcomeだよ!」と“推奨”していたほど、スピーカーや客席ロビーまで抜かりなく装飾された、それだけで見物料(あるいは迷い込み料)1万円くらい払いたくなるような装置なのだ。筆者も推奨されて撮りまくったが、さすがに掲載は憚られるので、ここでは日本版の公式トレイラーで代用。日本版のあの座組と日本語歌唱ならばそれだけで十分楽しめることはほぼ間違いないが、果たしてあの装置が帝劇でどこまで再現されるのか!? という点にも期待しながら開幕を待ちたい。
【2022-23シーズンの新作】
*情報は2023年3月29日時点のもの
『&ジュリエット』
ロミジュリの後日譚をM・マーティンの大ヒット曲で綴るロンドンのヒット作がBWへ!
https://andjulietbroadway.com/
『Bad Cinderella』
ロイド=ウェバー大先生の新作。ロンドンでは『シンデレラ』だったが改題された。https://badcinderellabroadway.com/
『A Beautiful Noise』
ニール・ダイアモンドの伝記系ジュークボックス。M・メイヤー演出、W・スウェンソン主演。
https://abeautifulnoisethemusical.com/
『Camelot』プレビュー中/4月13日開幕予定
ラーナー&ロウ(『マイ・フェア・レディ』)の古典をリバイバルの名手、B・シャー演出で。
https://www.lct.org/shows/camelot/
『Dancin’』
鬼才ボブ・フォッシー(『シカゴ』)の振付に焦点を当てたレビューが41年ぶりに登場。https://www.dancinbway.com/
『Kimberly Akimbo』
オフの賞を総なめにした話題作がオンに。早老症の女子高生の物語をJ・テソーリの音楽で。https://kimberlyakimbothemusical.com/
カンダー&エッブ音楽、LMミランダ追加作詞、S・ストローマン演出ってなんかすごい。https://newyorknewyorkbroadway.com/
『パレード』
J・R・ブラウンの代表作がオフでの絶賛を受けてオンへ。M・アーデン演出、B・プラット主演。https://paradebroadway.com/
『Shucked』プレビュー中/4月4日開幕予定
J・オブライエン(『ヘアスプレー』)の最新演出作。とうもろこしが題材のコメディのよう。https://shuckedmusical.com/
マリリン・モンロー主演の名作映画をC・ニコロウ(『アラジン』)の演出・振付で舞台化。
https://somelikeithotmusical.com/
ソンドハイムの傑作を『ハミルトン』の演出家がリバイバル。ジョシュ・グローバン主演。
https://sweeneytoddbroadway.com/
【2023-24シーズンの新作】
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』2023年6月30日プレビュー開始予定
言わずと知れた大ヒット映画の舞台化。ロンドンでオリヴィエ賞を受賞してのBW入り。https://www.backtothefuturemusical.com/new-york/
『Here Lies Love』2023年6月17日プレビュー開始予定
『ムーラン・ルージュ!』の演出家による超参加型ミュージカルがまさかのオン進出。https://herelieslovebroadway.com/
『メリリー・ウィー・ロール・アロング』2023年9月19日プレビュー開始予定
オフで
『Once Upon A One More Time』2023年5月13日プレビュー開始予定
ついに登場、B・スピアーズのジュークボックス。但し伝記ではなくオリジナルストーリー。https://onemoretimemusical.com/
【ロングラン作品(2021-22シーズンの準新作を含む)】
■日本で既に上演された/されている作品
『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/
→2020年春号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/266843)
『シカゴ』
『オペラ座の怪人』が終われば上演中の作品としては最長ロングランとなる名物作。
https://chicagothemusical.com/
→2020年冬号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/263251)
『ファニー・ガール』2023年9月3日まで
58年ぶりのリバイバル。M・メイヤー演出。『glee』のリー・ミシェルが最後まで登板予定。
https://funnygirlonbroadway.com/
『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/
→2020年冬号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/263251)
『オペラ座の怪人』2023年4月16日まで
35年間ロングラン中のメガヒット作。大千秋楽に向け、
http://www.thephantomoftheopera.com/
→2020年冬号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/263251)
『ウィキッド』
開幕から20年近くが経ち、ようやく
https://wickedthemusical.com/
→2020年春号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/266843)
■日本未上演の作品
2011年のトニー賞を制した、もはや“古典”の領域の傑作。1周回って日本語版を妄想中。
https://bookofmormonbroadway.com/
→2020年春号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/266843)
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/
近年最大のモンスター級ヒット作。ディズニー+で配信中(日本語字幕付き)。
https://hamiltonmusical.com/
→2021年夏号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/289039)
M・ジャクソンの伝記系ジュークボックス。トニー賞受賞の主演俳優は4月2日で降板。
https://mjthemusical.com/
→2022年夏号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/304899)
2021年のトニー賞受賞作。原作はB・ラーマン監督の映画。日本版、間もなく開幕!
https://moulinrougemusical.com/
ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!バンドまで全員女性。
https://sixonbroadway.com/