リハーサルに潜入!Anly x Style KYOTO管弦楽団のオーケストラ・バンド「Style 京to琉」チーム力とアレンジの妙が光る、ライブ直前の舞台裏に迫る

2023.4.14
レポート
音楽
クラシック

Anly x Style KYOTO管弦楽団のオーケストラ・バンド「Style 京to琉」リハーサルレポ 撮影=ハヤシマコ

画像を全て表示(19件)

沖縄出身のシンガー・ソングライター・Anlyと京都のStyle KYOTO管弦楽団がコラボレーションして結成された、オーケストラ・バンド「Style 京to琉(スタイルキョウトリュウ)」がいよいよ本格始動した。今年1月1日のバンド結成の発表から約3ヶ月。4月29日(土・祝)、30日(日)に京都劇場で行われる公演まで1ヶ月を切った4月5日(水)と6日(木)、京都でメンバーの顔合わせとリハーサルが行われた。今回SPICEでは、この2日間の打ち合わせに潜入。水面下で行われた、ライブが完成するまでの裏側をレポートする。まさに未知の音楽体験への扉が開いた2日間となった。記事の最後には、リハーサルの音源が聴けるリンクも掲載しているので、記事と合わせてぜひチェックしてみてほしい。

「Style 京to琉」

関わる全員が「バンドメンバー」。新たな可能性を追求するクリエイティブ集団

プロジェクトの発端となったのは、Anlyの「オーケストラでLIVEしてみたい」という呟きから。そこからあれよあれよとご縁が繋がり、Style KYOTO管弦楽団とのオーケストラ・バンド「Style 京to琉」が結成された。

「Style 京to琉」のコンセプトは「オーケストラの新しい可能性を追求し、従来のシンフォニックコンサートやクラシカルなオーケストラ公演とは異なる、クリエイティブ集団としてのオーケストラ・バンドを目指す」というもの。表現者として新しいことを生み出すと同時に、肩肘張らず気軽にオーケストラライブを楽しんでほしい、という願いが込められている。ライブ当日もドレスコードは一切なく、カジュアルな装いで来場できる。Anlyも「ライブの感覚で、若い子にもたくさん来てもらいたい」と話していた(学割もあり)。

Style KYOTO管弦楽団自体は、「伝統と革新の融合」をモットーに誕生した、新進気鋭の若手で構成されるオーケストラだ。オーケストラ文化やクラシック音楽の枠を飛び越えて、サブカルチャーとのコラボレーションなども積極的に行っている。そんな素地のある彼らとタッグを組むのが、我らがAnlyとアレンジャーの湖東ひとみ、指揮者・松元宏康、コンサートマスター・三上亮。運営を支えるのは、Style KYOTO管弦楽団 音楽主幹・浦田拳一、プロデューサー・柴田智靖、株式会社奏-KANADE-・北岡良太らが名を連ねる。

アレンジャーの湖東ひとみ

特筆すべきは湖東の存在だ。今回、全演奏曲のアレンジを手がけた彼女。通常のコンサートでは、1人のアレンジャーが公演を丸ごと担当することは少ないという。楽団メンバーやAnlyとも年の近い湖東がアレンジの全てを担うことで、彼女自身もプレイヤーの1人という認識になる。実際に湖東も「編曲家もバンドメンバーとして積極的に音楽作りに参加する」とコメントを寄せていた。仕事の早さもさることながら、アレンジのセンスも現場で絶賛されていた。

指揮者の松元は、Style KYOTO管弦楽団と何度か共演経験があるため、メンバーと意思の疎通が図りやすいことに加えて、お笑い芸人としての一面も持つ。いつも笑顔を絶やさず、話しやすい空気を纏う気遣いのプロでもある。約30名の楽団メンバーとAnlyや湖東との橋渡し役も担う、頼もしい存在だ。ちなみに彼は琉球フィルハーモニックオーケストラの正指揮者もつとめている。

そして裏方として普段オーケストラ公演を手がける浦田と柴田、Anlyのライブ制作を担当する北岡。「クラシックとバンド」という異なる視点から知見を分かち合うことで、新たなアイデアがどんどん生まれていた。

本番までに設けられたリハーサル日は計4日。このスケジュールはオーケストラコンサートにおいては異例の多さ。通常はもっと少ない日数でリハーサルを行うそうだ。そんなところからも制作陣の意気込みが感じ取れる。楽団メンバーもリハの日数が多いことで、自分たちに求められる役割を理解している、と柴田は語っていた。能力の高さはもとより、目標と志が明確に共有されているからこそのパフォーマンスなのだろう。

初日:「まさかこんなアレンジが!」バンド感が増した、顔合わせとリハーサル

4月5日(水)、ロームシアター京都 ノースホール。この日はAnlyと「Style 京to琉」メンバー、関係者の顔合わせ、そして楽曲リハーサル、アー写撮影が行われた。湖東、松元、浦田、柴田、北岡をはじめ、運営、音響スタッフも集合(コンサートマスターの三上は事情により欠席)。主に行うのは、これまでデータで共有されていた演奏曲のアレンジを、実際に譜面を見ながら合わせる作業だ。

12時、Anlyと楽団メンバーが続々と会場入り。先に入ったメンバーは楽器を触って音出しを始める。13時からは顔合わせ。楽団には年齢層の若いメンバーも多く所属しており、大学を卒業したばかりの人もいるとのこと。確かな実力と柔軟性を兼ね備えた個性豊かなメンバーたちだ。

全員が揃うと挨拶し、それぞれに意気込みを述べる。Anlyも「今日はとっても楽しみにしてきました。一緒に良い空間を過ごせたらなと思っているので、よろしくお願いします」と挨拶。改めて想いをひとつに束ね、新しいオーケストラ・バンドの形を全員で作り上げていく。

ここから夕方までは、間に休憩を挟みつつ、演奏予定曲として発表されている「カラノココロ」「Moonlight」「We'll Never Die」「CRAZY WORLD」「星瞬~Star Wink~」も含む楽曲のリハーサルが行われた。

アレンジャー・湖東ひとみ(左)、指揮者・松元宏康(右)と楽譜を見ながら微調整していくAnly

前半はAnlyと制作陣が見守る中、オーケストラのみで演奏してゆく。Anlyは分厚い譜面を手にし「こんなの見たことない」と感動したように笑顔を見せていた。まずは1曲ずつ譜面通りに演奏しながら、その都度テンポやアレンジを確認したり、各パートの細かいすり合わせを行なったり、調整を繰り返して全員で腑に落としてゆく。基本的に譜面ありきで動くことの多いオーケストラだが、「このフレーズだとどうでしょう?」と自ら手を挙げて提案するメンバーもいて、主体的な参加姿勢が印象的だった。

演奏中はみんな真剣な表情ながらも、現場は終始和やかな空気で、笑いが起こる場面も。肩肘張らない雰囲気で、とても良い空気感だ。Anlyも普段のリハとはまた違ったムードを楽しんでいるようで、動画や写真を撮ってSNSにアップしていた。

それにしても、音源と生音では迫力が全く違う。「まさかこんなアレンジが!」と感嘆の声が漏れ出てしまうほどカッコ良い展開に、Anlyもスタッフも大興奮。楽団メンバーが身振りを使って参加する楽曲もあり、本当に通常のクラシックコンサートでは見られない表現ばかり。あくまでも「バンド」という位置付けだからこその表現の幅広さ。Anlyの楽曲の可能性をグッと広げていると感じた。

「さすが」と思ったのは、楽団メンバーの対応力。Anlyや湖東から飛んだ要望や、松元の指示にも即座に対応して、次の演奏で修正する。楽譜通りに演奏する「決め打ちの美しさ」ももちろんあるが、求められる音を瞬時に理解し、確実に表現する柔軟性とレベルの高いやり取りにただ脱帽する。

「Style 京to琉」

松元はフランクな雰囲気ながら、その眼差しは鋭く細かい。ほんの一瞬のポイントも見逃さず、小節ごとに細かな修正を行っていく。わずかなニュアンスでも曲の表情が変化するのだ。理想の音作りへの追求はさすがプロ。まさにアーティスト、アレンジャー、オーケストラが三位一体となり、納得いくまで音を作り上げてゆく。

後半はAnlyの歌も含めたリハを行なった。音の響きやバランスなど、オーケストラだけでは見えてこなかった改善点を洗い出し、より精度を上げていく。歌が入ることで空気が大きく動き、楽団メンバーの表情も心なしか引き締まる。Anlyもオーケストラとの演奏が初めてのため慣れるところからのスタートだが、「めちゃくちゃ楽しいです。指揮されるなんて久しぶり(笑)」と高揚していた。

曲を重ねるにつれて、だんだんチーム感が増してゆくのがわかる。楽曲の仕上がりについては当日会場で確認していただきたいのでネタバレは控えるが、ある楽曲の一体感には思わず鳥肌が立った。完成度の高さも素晴らしい。もうすぐ休憩、というところで「今ノッてきたからもう1曲いっちゃいたいです」と休憩を伸ばす場面もあった。時間ぴったりに終了したリハーサル。皆笑顔で、手応えを感じた様子だった。あとは本番前のリハーサルで磨きをかける。奏者の感情が入ることにより生のグルーヴが生まれるんです、と柴田は嬉しそうに語った。

Anly

最後は全員衣装に着替えて、アーティスト写真を撮影。この撮影で一気にAnlyとメンバーの距離が近づいたようだ。帰り際、一人ひとりにAnly自ら「動画撮らせてください」と楽団メンバーに話しかけていて、メンバーも嬉しそうだった。松元によると、皆リハでのテンションが高かったとお墨付き。共にライブを作り上げていくことに喜びを感じていたようだ。その様子はこの日に撮影されたアー写を見てもらえれば、一目瞭然だろう。

2日目:「伝えたいことがしっかりと伝わるように」楽曲や演出を入念に打ち合わせ

4月6日(木)は、京都市内某所で、楽曲の打ち合わせが行われた。参加メンバーはAnlyとマネージャー、アレンジャーの湖東、指揮者の松元、プロデューサーの柴田、音楽主幹の浦田、制作の北岡。その前後にAnlyはメディア取材もこなす。

議題はライブ当日の曲順、演出、アンコールについて。前日の手応えや感覚を振り返りつつ、和気藹々とした雰囲気でそれぞれ意見を出し合う。1人が仕切るのではなく、全員参加型で進むミーティング。時にはリハ音源を聴き直し、「伝えたいことがしっかりと伝わるように」と、テンポや小節を調整していく。思案する時間もありながら、言語化して落とし所を見つけていく様子に、「こうやって決まっていくんだ」と感心してしまった。いつも享受するだけのライブだが、曲間や音符のひとつにどれだけの想いが詰まっているのかを知ると、見方も変わる。

広報活動についてもこの場で決まったことがあるので、AnlyのSNSとスタッフアカウントをチェックしてほしい。また「Style 京to琉」オリジナルの新曲は鋭意制作中。こちらも完成が楽しみだ。バンドとして、チームとして、確かな手応えを感じることのできた2日間。Anlyも「ライブを成功させたい」と意気込んだ。ぜひ当日、京都劇場にてこの日のために作り上げられた音を体感してほしい。

Style 京to琉 アーティスト写真

取材・文=久保田瑛理 撮影=ハヤシマコ

ライブ情報

『Style 京to琉』
会場:京都・京都劇場
日時:4月29日(土・祝)16:00開場 / 17:00開演
   4月30日(日)15:00開場 / 16:00開演
出演:Anly(Vo)/松元宏康(指揮)/Style KYOTO管弦楽団(管弦楽)/三上亮(コンサートマスター)/湖東ひとみ(アレンジ)
演奏予定曲:カラノココロ / Moonlight / We'll Never Die / CRAZY WORLD / 星瞬~Star Wink~ / and more
 

一般:6,000円/学生:5,000円
※6歳以上有料 / 5歳以下入場不可
【学生券をご購入の方】入場時に受付にて学生証をご提示ください。
学生証をお忘れの場合は通常料金(差額)をお支払いいただくことがございます。
学割対象者は小学生・中学生・高校生・大学生・専門学校生となります。
小学生は年齢を証明できるものを、中学生以上の方は学生証をご持参ください。

主催:Style KYOTO/アーツイノベータージャパン
協賛:バックスキンビール
協力:京都劇場/イープラス/京都新聞社/α-STATION
制作:Style KYOTO/N cube Entertainment Inc./奏 -KANADE
問い合わせ:サウンドクリエーター https://www.sound-c.co.jp
(電話での問い合わせ)06-6357-4400(平日 12:00〜15:00 ※祝日を除く)
(メールでの問い合わせ)https://www.sound-c.co.jp/contact/

インフォメーション

・Anly
公式サイト:https://www.anly-singer.com/
ツイッター:@Anly_singer
インスタグラム:@anly_singer
 
・Style KYOTO管弦楽団
ツイッター:@ArtsInnovator
インスタグラム:@artsinnovatorjapan
  • イープラス
  • Anly
  • リハーサルに潜入!Anly x Style KYOTO管弦楽団のオーケストラ・バンド「Style 京to琉」チーム力とアレンジの妙が光る、ライブ直前の舞台裏に迫る