『X Games Chiba 2023』を盛り上げる! 永原悠路が見据えるスケートボードの頂点
-
ポスト -
シェア - 送る
(C)齊藤 僚子
昨年の『X Games Chiba 2022』で行われた男子スケートボードパークで、初出場ながら日本人最高位の4位となった永原悠路。6月で18歳になるという若さながら、すでに数々のタイトルを獲得。4月に行われた『第2回 マイナビ スケートボード日本 OPEN supported by Murasaki Sports』では大会連覇を成し遂げた。
さらなる注目を集める中で、今年の『X Games』を迎えることとなるが、その心境はいかなるものか? 『X Games』、さらにはスケートボードへの思いを聞いた。
『X Games』は勝ち負けを超えた“お祭り”
――『日本オープン』の優勝、おめでとうございます。
永原悠路:ありがとうございます。
――日本のトップに立ったことで、さらに注目度が高まる中、『X Games』を迎えることとなります。まずは大会への意気込みをお聞かせください。
永原悠路:今年も盛り上げてやろうという気持ちです。昨年は4位だったので、それを超えた順位……表彰台を目指して頑張りたいと思っています。
――大きな大会が続きますが、コンディション作りが難しいのではないですか?
永原悠路:大会があってもなくても、毎日スケートボードに乗っているんで、あまり関係ないです。楽しんでやっています(笑)。大会が続くということは、常に目標があるということなので、自分にとっては良いことだと捉えています。身体は多少疲れていますけど(笑)。でも結局、大会では今の自分にできることしかできないんです。だから、自分のできることを100%出し切るということを常に考えています。
(C)齊藤 僚子
――昨年の『X Games』では、初出場で日本人最高位の4位という結果でした。この結果については、現在、どう捉えていますか?
永原悠路:初出場で4位になれるとは思っていなかったので、良かったのかなと思っています。
――試合後のインタビューでは、「やりたいことはすべてできた。良いものが見せられた」とおっしゃっていましたが、世界最高峰の舞台で納得のいくパフォーマンスが出せましたか?
永原悠路:自分の思っている以上に出し切ることができたと思っています。悔いのない大会でしたね。
――大舞台で実力を発揮できるというのは、すごいことですね。
永原悠路:去年について言えば、自分は追う立場だったので、自分の限界以上のものをやらないと、トップの選手たちには届かないと思っていたんです。最初から、いつもはやっていないことにチャレンジしようとは決めていました。やってやろうという気持ちが強くて、それが良い結果になったんだと思います。
――世界最高峰と呼ばれる舞台で、緊張はしませんでしたか?
永原悠路:もちろん緊張はありました。でも、『X Games』は一番大きな大会ではあるんですけど、お祭りのような雰囲気もあるんですよね。
――『X Games』はやはり他の大会とは雰囲気が違いますか?
永原悠路:違いますね。会場も特設ですし、観客も多くて、しかも勝ち負けを超えて、会場を盛り上げた人を賞賛してくれるんですよ。緊張の中にも楽しさがあるんです。だから去年はすごく良い気分で挑むことができました。そこが『X Games』の良いところだと思うので、今年も盛り上げてやろうと思っています。
――勝ち負けを超えたものを『X Games』には感じたんですか?
永原悠路:そうですね。「ただ勝ちに行くだけじゃつまらないよね」という雰囲気がありました。
――観客の気持ちをつかんだ選手が、真のチャンピオンということですね?
永原悠路:結果として1位というのは決まるんですけど、誰もが1位というか、みんなそれぞれのスタイルを出し切れることができたなら、それが一番素晴らしいことだという感じなんです。
――では出場選手はライバルというよりも仲間という意識が強い?
永原悠路:仲間だと思います。みんな努力しているし、この日のためにやってきたというのもみんな一緒。それはすべての選手が理解していることだと思います。
――相手のことを受け入れて敬意を払うというのは、スケートボードの素晴らしいところですね。
永原悠路:そう思います。
(C)齊藤 僚子
「自分もやってみたい」そう思われるような姿を見せたい
――誰もが1位だという話をうががった後に聞くのは申し訳ないのですが、4位ということは、優勝まであとわずかの差だったということだと思います。ご自身では何が足りなかったと考えていますか?
永原悠路:存在感ですね。もっともっと『X Games』での存在感を高めないと。それが足りなかった気がします。もちろん技の難易度や全体的な滑りの完成度も劣っていたと思うので、そこも上げていかないといけないですね。『X Games』は練習時間が2時間くらいしかないんですよ。なので、練習時間の少なさに対応できていれば、もっと自分を出せたかなと思います。
――素人からすると試合を控える段階で2時間も練習したら、疲れてしまうような気がします。
永原悠路:普段の感覚からいうと、2時間の練習で自分の実力を100%発揮するのは難しいんですよ。パークに慣れる時間が必要なので。他の競技と違って、スケートボードパークは、どこも同じ規定のコースではなくて、それぞれの会場で違うんです。だから、まずはパークに慣れるところから始めるんです。普段は1日かけてやることなんですが、それを2時間でやらないといけない。そんな中で、どれだけ自分を見せれるか? というのも『X Games』の醍醐味で、それができるのが本物だと思います。
――去年の経験が、今年の『X Games』につながりそうですね。
永原悠路:そうですね、良い結果につなげていきたいです。
(C)齊藤 僚子
――『X Games』ではどんなところを見てもらいたいですか?
永原悠路:滑りももちろん見てほしいんですけど、『X Games』の楽しさ、スケートボードの楽しさが伝わればいいなと思っています。僕らもお祭り気分で、『X Games』を楽しんでいるよということが伝われば、観ている人が「自分もやってみたい、出てみたい」と思ってくれるかもしれない。そう思われるような姿を見せたいです。
――例えば、「この技に注目すると競技がもっと楽しめる」といったポイントがあれば教えてください。
永原悠路:具体的にはまだちょっと言えないんですけど(笑)、いくつか大会で出していない新たなトリックに取り組んでいるんです。それは楽しみにしていてほしいです。
――必殺技を開発中なんですね!
永原悠路:ははは(笑)。新しいトリックが出せるように頑張ります。
――当日の状況や体調などによっても、演技プランは変わるでしょうから、断言はできないと思いますが、期待しています。
永原悠路:ありがとうございます。まずはやってみることが大事だと思うので、メイクできなくてもチャレンジしてみようと思っています。
――競技をする上で、心がけていることはありますか?
永原悠路:“置きに行かずに攻め切る”ということですね。勝てる試合を確実に勝つというのも大事だと思うんですけど、悔いが残るのは嫌なんです。1位だったとしても攻め切らずに終わったら、「もっとできたのに」って後悔することになる。それは嫌なので。
――採点競技なので、勝ち負けは第3者が判断することですしね。
永原悠路:そうなんですよ。得点というのは、他人が決めることなので、まずは自分のやりたいことをやり切る、自分らしい滑りをすることが大事だなと思います。そこに結果がついてくるので。
(C)齊藤 僚子
「今でも新しい発見がある」それがスケートボードの魅力
――2021年に大きなケガ(大腿骨開放骨折)を負われたそうですが、ケガでスケートボードから離れざるを得ず、いろいろと考えることも多かったのではないですか?
永原悠路:それまで、本当にスケートボードしかやってこなかったんです。毎日スケートボードのことしか頭になかったのですが、復帰するまでの期間は、スケートボード以外のことも考えることができました。改めて、いろいろな人にお世話になっていたんだと気づきましたし……。基本的なことなんですけど、そんなことも見失っていたというか、視野が狭くなっていたんでしょうね。それで、スケートボードのいろいろなことに関わってみたいと思ったんです。スケートボードのイベントの手伝いもやりました。
――競技以外の場所からスケートボードを見てみたんですね。
永原悠路:そうですね。貴重な時間になったと思います。
――選手生命に関わるような大きなケガだったと聞きました。もうスケートボードはできないんじゃないかといった不安もありましたか?
永原悠路:それは全然なかったです。「たとえ歩けなくなったとしても、スケートボードはやってやる!」って思っていたので。自分は5歳の頃からスケートボードをやっているので、スケートボードがない人生は考えられないんです。スケートボードなしでは自分の人生はないと思っています。仕事だからやっているというものでもないですし、試合に出れなくなったとしても、スケートボードをやめることはないと思いますね。スケートボードがないと、自分はおかしくなってしまうんじゃないかな(笑)。
――それほど、スケートボードは必要であり大切なものだと?
永原悠路:人生にないといけないものですね。ケガをしたときは、逆に、周りの人の方が心配していました。例えば、父は「もうスケートボードができないんじゃないか」と思っていたそうです。周りの人たちもすごく心配してくれて、そういうところから、先ほど話したような気付きがありました。
(C)齊藤 僚子
――5歳から続けてきたスケートボードですが、どんなところに魅力を感じていますか?
永原悠路:10年以上やっていても、今でも新しい発見があるというところですね。どんな競技にもあるんでしょうけど、自分はスケートボードをやっていて、日々それを感じています。スケートボードには、まだまだ自分のやっていないトリックがありますし、やらなくてはいけないと思っていることもたくさんある。大会に出れば、上には上の選手がいますし。
――やればやるほど、新しい発見があり、面白さも深まっていくんですね。
永原悠路:もちろん、嫌になることもあります。嫌になるというか、何かに挑戦していて、それがなかなかうまくできないと、モチベーションが下がりますよね。でも、その先にはまだ見たことがないもの、もっと楽しいものが待っている。常にそう信じてやっています。「今は辛くても、これは自分を強くするチャンスなんだ」。「辛いときこそ頑張れば、その先には新しいものが待っているんだ」と。実際、できなかったことを実現した時の達成感は、ものすごく大きいですし、それも辞められない理由の1つですね。
――子どもの頃から、ポジティブ思考だったんですか?
永原悠路:キッズの頃は何も考えずにやっていました(笑)。とにかく楽しいというだけですね。自分は学校にあまりなじめなくて、小学校の低学年の頃は、教室から抜け出してしまうようなタイプでした。そういうときに、「1週間学校にしっかり通えたら、スケートボードに連れていってあげるよ」って親から言われたんです。「スケートボードのために頑張ろう」と思えましたね。スケートボードのおかげで、学校生活を改善することができたんです。
――日常生活にも前向き取り組めるようになったんですね。
永原悠路:そうなんです。スケートボードをやっていることで、人間としても成長できたと思っています。
――当面の目標は『X Games』で素晴らしいパフォーマンスを披露すること、そして優勝を成し遂げるということだと思いますが、将来的な目標はなんでしょうか?
永原悠路:近い目標はパリ五輪でメダルを獲ることです。それがお世話になっている方々への一番の恩返しだと思うので。誰かのためにメダルを取りたいということではなくて、自分自身が獲りたいと思っているんですけど、それによって、周りの人たちに喜んでもらえたら嬉しいですね。いろいろな大会で活躍して、最終的には「永原選手のようになりたい」と憧れられるようなスケーターになりたいです。
(C)齊藤 僚子
イベント情報
『X Games Chiba 2023』
日時:5月12日(金)予選日
5月13日(土)開場 11:00/閉場 21:00 ※予定
5月14日(日)開場 10:00/閉場 17:00 ※予定
場所:ZOZO マリンスタジアム(千葉県)