木梨憲武による展覧会『GOKAN 〜5感〜』レポート 見て触れて感じて、元気をチャージ!
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『GOKAN 〜5感〜 木梨憲武』
2023年6月7日(水)から6月25日(日)まで、『GOKAN 〜5感〜 木梨憲武』が東京・代官山ヒルサイドフォーラム&エキシビションルームで開催されている。全国の美術館で展覧会を開催し、ユニークな作風で多くの人を魅了してきた木梨憲武。今回は、本展のために制作された立体や、TBSラジオ『土曜朝6時 木梨の会。』でリスナーからシールを集めて制作した作品など、新作や話題作をふんだんに鑑賞することができる。また、国内外で触覚を生かしたワークショップを行っている美術作家・西村陽平との出会いより、西村の代表作や、西村が所蔵するハンディキャップアーティストの作品も紹介されており、実に盛りだくさんな内容だ。木梨憲武の多彩な才能が窺える展示を紹介しよう。
※本レポートは開幕前日に行われた内覧会の様子をレポートしています。
※6月15日に展示変更が行われました。同日11:00より販売作品も追加されています。
アートで実感する「つながり」 パワフルな作品が盛りだくさん
会場入口から外を見ると、にょきにょきと伸びるガラス製の手が目に入る。透き通ったガラスの質感と鮮やかな色がマッチしており、ファンタジックでユーモラスな作品だ。一つひとつに個性があり、観客を手招きしているようなので、楽しい世界に招待されたようだ。
手招きしているようなガラス作品
会場に入ると、更に多くの手に囲まれる。ここ「REACH OUT」のコーナーでは、絵具やマジックなどのさまざまな画材をつかった絵画、木製の手による立体作品、あやとりをしているような手のオブジェ、太陽にも見える手の彫刻など、あらゆる手の表現を堪能できるのだ。
「REACH OUT」の作品。手がぎっしりと描かれている
「REACH OUT」の作品。手と手のつながりを感じられる
その先にある「フェアリーズ」のコーナーでは、ダンボールやお菓子のパッケージなどからつくられた小さなキャラクターたちに出迎えられる。無数のフェアリーたちは、恐竜のようであったり、鳥に似ていたり、人間を思わせるフォルムだったり、また宇宙人に見えたりするなど、同じものはないようだ。無数のフェアリーたちのかわいらしさと、作品の密度に驚嘆させられる。
「フェアリーズ」のコーナーでは、無数のフェアリーたちに会える
フェアリーたちはいずれも個性豊か。思わずじっと見入ってしまう
続くコーナーは、TBSラジオ『土曜朝6時 木梨の会。』のリスナーから募集したシールで制作を始めた「STICKER DIARY」、カラフルで明るい絵画で壁面が埋め尽くされている「感謝」などだ。会場全体に、作家が今まで関わってきた人や来場者に対する感謝の気持ちがあふれており、あらゆるものとのつながりを感じられるように思った。
日本初公開の絵画や、本展のための新作も
日本で初めて公開される絵画や、この会場で初めて鑑賞できる作品も多い。アメリカ・ニューヨークの個展で披露された「Friends」のコーナーでは、色とりどりのキャラクターが仲間同士で肩を寄せ合う様子が描かれており、ユーモラスでありながらもスタイリッシュでな雰囲気が漂う。ユニークなキャラクターたちは、海外のギャラリーでも明るく洗練された印象を与えたことだろう。
おしゃれな雰囲気の「Friends」の作品
「Friends」のキャラクターも、ユーモラスで親しみがある
本展のために制作された五枚組の「MOVE」は、大きさもかたちも異なる白いハートが描かれた立体作品だ。白く光沢のあるハートは、一見生クリームのデコレーションのように華やかだが、大胆な筆致で描かれ、今にも飛び出してきそうな迫力がある。なお、「MOVE」の作品は実際に触ってみることができる。
チャーミングさとダイナミックさを兼ね備えた、「MOVE」の作品
さまざまなアーティストの作品が結集し、相乗効果が生まれる
本展には、木梨憲武の作品のほか、木梨が知り合った美術作家の西村陽平の作品も展示されている。また西村とのつながりで、ワークショップで目を閉じて制作した人、子供たち、視覚障がいなどハンディキャップを持っている人たちの作品なども鑑賞できる(木梨以外の作家の作品には、キャプションに作家名が記載されている)。西村の「5冊の雑誌」は焼成本の作品で、本のかたちのみならず、一枚一枚のページのヨレまでもが残っている。極めて緻密で繊細ながら、素材の重量も感じさせ、ものの本質や質感の魅力を示す美しい作品だ。
緻密で美しい、西村陽平の「五冊の雑誌」
木梨・西村以外の作品も、立体と絵画を組み合わせた作品や、ダークトーンの色彩が目をひく絵画など、記憶に残るものばかりだ。いずれも力強く、互いに個性を引き立たせているようだった。
木梨の作品と他のアーティストの作品が、互いに会場を盛り上げている
美術館で展示されている美術品は、ガラスケースなどで隔てられていたり、少し離れたりしながら鑑賞することが多いが、本展においては、「MOVE」の立体や「REACH OUT」にある作品の一部など、見るだけではなく、触れて感じることができるものが多数ある。指で凹凸をそっと確認すると、作品と自分のつながりを感じ、触れることによって、見るだけでは分からない情感が伝わってくるようだ。また、体を動かして作品を堪能することで、自分が展示に参加しているのだと実感できるように思う。
触れる作品は、人々が接触したことにより、会期の最初と最後で、かたちや色や与える感想に変化があるかもしれない。それは、観客と作品の間に良い化学反応が起きたことの証と言えるだろう。
触って凹凸を確認できるものも。作品と自分とのつながりを感じられる、貴重な機会
本展はグッズも充実しており、物販コーナーにあるTシャツやトートバッグ、バッジやキーホルダーなど、いずれもカラフルでおしゃれで、本展の雰囲気を体現している。どれにしようかじっくり迷うのも楽しい。
物販コーナー
見て、触れて、感じて、五感を使って味わうことができる本展は、色彩あふれる会場で作品のエネルギーを浴び、元気をもらえる展覧会だ。アーティスト・木梨憲武の作品を堪能でき、西村陽平や西村とつながりのあるアーティストの作品との相乗効果を実感できる『GOKAN 〜5感〜 木梨憲武』、どうぞお見逃しなく。