​​「俺たちがやってきた14年は間違ってなかった」ハンブレッダーズ x フレデリック、『SOUND CONNECTION -BLOW UP-』初対バンで深めた絆

2023.7.18
レポート
音楽

『SOUND CONNECTION -BLOW UP-』 撮影=渡邉一生

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『SOUND CONNECTION -BLOW UP-』2023.7.1(SAT)大阪・大阪城音楽堂

MBSテレビと関西のイベンター、エンタテインメント業界がタッグを組み、アーティストとオーディエンスはもちろん、関西から音楽シーン全体を「つなげる」ことをコンセプトにした音楽イベント『SOUND CONNECTION』が、7月1日(土)に大阪城音楽堂で行われた。出演はハンブレッダーズとフレデリック。意外にも2バンドが対バンするのは、この日が初めて。SPICE編集部ではイベントに先駆けて両バンドに事前にインタビューを行ったが、その記事に掲載されていた写真の撮影時が初対面だったそうだ。お互い関西出身、2009年結成で14年間バンド活動を続け、今のタイミングで出会った彼ら。「BLOW UP」は直訳すると「爆破する、膨らませる」という意味だが、スラングでは「非常に人気がある」という意味もある。まさに、それぞれの努力と実力で人気を獲得してきた2バンドの魅力がバーストした素晴らしい1日となった。お互いはもちろん、そのファンもつなげるキッカケとなった『SOUND CONNECTION』。今回はそんなスペシャルなライブの模様をお届けしよう。


7月1日は朝から雨が降ったり止んだりの天気だった。開場時も雨が降っていたが、会場に集まったオーディエンスはカッパやポンチョを着用してフォトブースで笑顔で写真を撮ったり、グッズを購入していた。その様子からはワクワク感が伝わってくる。それぞれのバンドやイベントオフィシャルのタオルで後ろの芝生席までカラフルに彩られた大阪城野音は高揚感に包まれていた。

会場内のテントでは、今年もアパレルブランド『PLAYDESIGN』とコラボしてオリジナルオーバーサイズTシャツを販売したほか、公式オリジナルカクテル&ノンアルコールカクテルも限定発売。ミントとライムがきいた爽やかなブルーモヒートが夏の訪れを感じさせた。

ステージの上にはハンブレッダーズとフレデリック、そしてイベントロゴがそれぞれあしらわれた3枚のドロップが並んで吊るされていた。

ハンブレッダーズ「俺たちはずっとロックバンドをやっていく」

ハンブレッダーズ

先攻は大阪出身のハンブレッダーズ。SEが流れると客席は総立ちに。ムツムロアキラ(Vo.Gt)、でらし(Ba.Cho)、木島(Dr)、ukicaster(Gt)が登場、でらしは雨の様子をうかがうように空を見上げる。木島の元へ3人が集まり、ジャーン! と音を放つ。1曲目は三原健司(Vo.Gt)が事前インタビューの「お互いのライブで聞きたい曲」で挙げていた「BGMになるなよ」。力強く繰り出されるサウンドに客席は歓喜。メンバーも楽しそうで、のっけからグッドバイブスで一体感を作り出す。

ハンブレッダーズ

そしてムツムロが「俺たちのライブはコールアンドレスポンスとかここで踊ってくださいとか手叩いてくださいとか、そういうルールはマジで一切ないので、好きなように楽しんでください。ロックバンドって、そういうもんだと俺は思ってます」と言うと、お立ち台に乗ったでらしのスラップが炸裂して「ワールドイズマイン」へ。キャッチーなメロディと張りのある歌声が気持ち良い。ukicasterとでらしはステージの端へ前へと縦横無尽に動き回る。続く「いいね」ではギターロックサウンドをギュンギュン飛ばし、そこで生まれたエネルギーを固めるようにじわじわ熱量をあげていく。

ハンブレッダーズ

MCではムツムロが「大阪城音楽堂でフレデリック先輩とツーマンということで嬉しいです。フレデリックはKANA-BOONやキュウソネコカミと仲が良くて同年代っぽいんですけど、その2バンドとは俺たち結構仲良くさせてもらってるんです。フレデリックはめちゃ良い人たちだったんで、俺たちがその3バンドの中で(1番)仲良くしてあげてもいいかなと思ってるんですよね」と言って会場を笑わせる。

ハンブレッダーズ

音楽に救われた経験のある人なら刺さるであろう「DAY DREAM BEAT」の落ちサビでは客席の大合唱が響き渡り、会場がひとつに。さらに15歳のムツムロが7年間好きだった子と初デートをしたのがカラオケだったというエピソードが添えられた「カラオケ・サマーバケーション」、ギターとベースのフレージングのオンパレードが一層会場を高めた「才能」を連投した後は、熱を冷ますようにミドルナンバーの「名前」をじっくりと披露。色々な表情を見れるのはツーマンライブの醍醐味だ。

ハンブレッダーズ

「花火を3年見れてないので、今年は打ち上げ花火を見に行こうと思ってます」とムツムロの予定が明らかになった「SUMMER PLANNING」では木島の跳ねるリズムに身体が揺れる。そして地元・北摂の思い出が詰まった「アイラブユー」の間奏ではギターの弾き比べをするかのようにukicasterとムツムロが背中合わせで演奏。疾走感にダイナミックな動きを乗せつつも、決して力技でいかないのはキャリアに裏打ちされた実力の証だろう。

ちなみに、でらしが「ここから夏フェスシーズンで、僕らが出るフェスはほぼ全日、フレデリックもいるんですよね。一緒にツアーを回るみたい(笑)。今日は初日です」と話していたが、2バンドの共演はこの夏たくさん見ることができそうだ。

ハンブレッダーズ (番号:5933)

後半パートはグッと熱量アップ。時間を効率的に使う「タイパ」が浸透していると述べたムツムロは「本当に効率を求めてたら、人間生きてることなんてめちゃ効率悪くないかと思っちゃうんですよね。だから自分の命のパフォーマンス、ライフパフォーマンスを考えていこうって、ロックバンドやってます。お前らの人生のフルコーラス、ギターを弾いてやる」との熱い言葉から「ヤバすぎるスピード」を投下。そこから加速するように「ギター」「THE SONG」を激しく叩き込む。メンバーの全力パッションが客席の拳を突き上げ、叫びにも似た大歓声を巻き起こす。ムツムロの顔に浮かんだ笑顔がこの時間の濃密さを証明していた。

ハンブレッダーズ

ここで、10月29日にハンブレッダーズが大阪城野音で初のワンマンライブを行うことがアナウンスされる。バンド14年目の最後のライブということで、メモリアルな日になりそうだ。コロナ明け2本目のライブが野音で、有観客だったもののマスク着用&声出しNGで悲しかったと話したムツムロ。「やっと今日マスクを外してる人がいて、声も出せる状況で野音でやれてるのが嬉しくて仕方ないです。コロナで失ったものもいっぱいあったけど、得たものもいっぱいあったんで、俺たちはずっとロックバンドをやっていくという覚悟がより強くできました」と一気に語り、最後に「銀河高速」をプレイ。彼ら自身が辿ってきた道程と決意が詰め込まれた楽曲を爽やかに奏で、ハンブレッダーズらしいステージでライブを終えた。14年のキャリアを重ねてもなお、フレッシュさがあるのも彼らの魅力。堂々と手を振ってステージを去るメンバーの姿が眩しい光を放っていた。

ハンブレッダーズ

フレデリック「何で今まで出会ってなかったんやろ」

フレデリック (番号:3160)

後攻はフレデリック。会場BGMがSEに変わると客席は総立ち&大歓声でメンバーを迎える。健司の「『SOUND CONNECTION』始めます!」を合図に赤頭隆児(Gt)、三原康司(Ba)、高橋武(Dr)が音を鳴らす。健司が「俺たちフレデリックは全力で煽ります! 何でかって? その方がええやんなって思ってるから! 俺たち音楽を愛してるから。その音楽が今日一番輝くように煽ります」と、ハンブレのMCを受けての咆哮。その気迫がステージから伝わり鳥肌が立った。早くもホームのような熱狂を作り出し、「スパークルダンサー」で幕を開けた4人の勢いは止まらない。「60分1本勝負、全力でいきます。全力でこい!」と煽り「YONA YONA DANCE」を情緒豊かに披露。

フレデリック

続いて康司のグルーヴィなベースリフが地を這うように響き渡ると「強制はする気ないけど、俺たちの気持ち伝えていい? 踊ってない大阪城野音は気に入らないです!」と「オドループ」を投下。サビでは客席の手が一糸乱れずピッタリ揃う。爽快なまでの盛り上がりに、メンバーも嬉しそうにステージを駆け回る。康司は健司の横に行ってマイクで一緒に歌ったり、歌う健司の後ろに回ってちょんと肩を突いたりとちょっかいを出して楽しそう。赤頭もお立ち台に登り、テクニカルなギターソロをバシッとキメる。高橋は終始笑顔で複雑なボトムのビートを支え続ける。バチバチにカッコ良いパフォーマンスながら、のびのび自由にやっていることがよくわかる。

フレデリック

MCでは健司がハンブレッダーズのことを「なんで今まで出会ってなかったんやろと思うくらいめちゃくちゃ良いバンドですね」と讃え、「MCによると仲良くさせていただけるそうなので」とムツムロへの返答で会場を湧かせる。そして「お互いの音楽が面白いなと思った人がいて、この大阪城野音で対バンしてほしいという想いがあってここに集まって。俺たちもハンブレも呼ばれた側ではあるけど、ハンブレのライブを見て、今日が最高の土曜日になると感じました。ハンブレだけにおいしい想いはさせたくないので、フレデリックとしてもちゃんと60分1本勝負でやらせていただきます」とイベント主催者への想いも汲みながら、バンドとしてぶつかる決意も見せた。

フレデリック

次の曲は事前インタビューでukicasterがラブコールを送っていた曲。健司は「YouTubeもMVも上がってない、数年に1回ぐらいしかやらないアルバムの曲を選んでくれてうれしかったので」と、『OWARASE NIGHT』(2015年)に収録されている「セーターを脱がさないで」を披露。小気味良くループするギターリフや健司と康司のツインボーカルが耳に心地良く、フレデリック特有の気怠さや物悲しさが野音の湿気によく似合う。

フレデリック

やがて波音が頭上に迫ったと思えば、「季節感がおかしくなったんで夏の曲を」と「トライアングルサマー」で夏にカムバック。さらに「midnight creative drive」をプレイ。アーバンなサウンドでゆらゆら踊らせつつ、不協和音と妖しげな赤と青の照明で独自の世界へ導いてゆく。そのままセッションが徐々にリズム隊のビートに変わるとクラップが発生。「俺たちは強制はしませんが、その音楽が1番輝けるように提案をします。俺たちのダンスミュージックで気ままに自由にあなたが好きなように選択してください」と滑らかに「ナイトステップ」へ移行。丁寧に歌声を響かせる健司はどこか神秘的で、周囲の木々にかかる霞や湿気、重たいブルーのライト、スモーク、全てが楽曲を鈍く煌めかせる。野音でホールのような空間を作り出せることに驚き、しばし呆然としてしまった。

フレデリック (番号:3369)

いよいよ残り3曲。「Wake Me Up」が投下されると、健司の声に牽引されて一斉にハンズアップ&ジャンプ! しかしまだ足りないとばかりに「このままやったら後輩に良い顔見せられへんやんか!」と煽り「KITAKU BEATS」へ。全員での連続キメから間髪入れず、「ハンブレッダーズとフレデリックの音楽を愛してくれたライブジャンキーのあなたに!」と叫んでラストチューン「ジャンキー」を全力プレイ。言わずもがなの圧倒的な盛り上がり。最後の最後まで煽り続け、美しき気迫を見せつけたフレデリック。晴れやかな表情や高橋のガッツポーズから、4人にとっても手応えのあった60分だったことをうかがわせた。

フレデリック

熱烈なアンコールに応えて再び登場した4人。健司は「むちゃくちゃ良い出会いになりました。デビューのタイミングの違いもあるからさ、タイミングがなければなかなか出会えなかったわけで。14年経って、お互い最高の景色も最低の景色も見てきた。自分を出し切ったなという日があれば、全然できんかったなって日もあったりさ。ここでは語りきれんぐらいのものを見てきた2バンドが14年越しに初めましてをして、ライブをしたら(ハンブレッダーズが)1個1個、1日1日を大事にするバンドで、俺たちがやってきた14年が間違ってなかったんやなと気付かされた。ほんまに良い出会いになったなと思ってます。これからこの2バンドで全国でライブジャンキーの心を音楽でしっかり掴み取って、新しい仲間を増やしてまたここに帰ってくるので。その1日目を今日ここで作れて良かったなと思います」と語った。

冗談を言い合えるほど打ち解けた2組。彼らの交流はここから始まる。ファンに対しても「フェスとか行った時にこの2バンドが特別な存在になるんじゃないかな。そういうツーマンを今日は作れたと思います」と改めてハンブレッダーズに感謝を伝えた。

フレデリック

アンコールは「過去にしがみついて音楽をやるのはすげえ嫌だなと思う気持ちもありますし、常に「今この日が1番フレデリックにとって最高のライブをしよう」という気持ちでいる。でも過去の思い出があったからこそ今があって、今を最高のものにして明日めちゃくちゃ良い感じで生きていく、そんなバンドになりたいと思う」と述べて「名悪役」で締め括った。健司は事前インタビューで対バンライブのことを「持ち時間もたっぷりある分、緩急のあるセットリストを入れやすいので、表現の幅が広がりつつ相手のバンドのことを考えながらやれる」と答えていたが、まさにそれを体現したライブだったと思う。

フレデリック

共に14年というキャリアを積み重ねてきたハンブレッダーズとフレデリック。彼らのつながりを作り、ライブジャンキーたちの心をつないだ最高の『SOUND CONNECTION -BLOW UP-』。この日の出会いが双方にどのような影響を与えるのか、両バンドの今後を見守っていきたい。また、この日のライブの模様はMBSテレビ 深夜番組『よんタメ』8月上旬に放送予定。またスペースシャワーTVにて8月9日(水)22:00~23:00にもOAされるのでチェックしてみよう。

『SOUND CONNECTION -BLOW UP-』メンバーとMBS藤林アナウンサーの集合写真

取材・文=久保田瑛理 写真=オフィシャル提供(撮影:渡邉一生)

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