yonawo x 鈴木真海子 x Skaaiの「tokyo」が『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」』と作り上げた、最高にメロウでハッピーな1日
『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』
『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』2023.7.2(SUN)大阪・服部緑地野外音楽堂
7月2日(日)、服部緑地野外音楽堂にて『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』が開催された。『たとえばボクが踊ったら、(以下、ボク踊)』は、大阪のイベンター・夢番地の大野氏が「関西で魅力的なキモチいいフェスがしたい」という想いで企画した、2016年から続くイベント。今回はスピンオフ企画として、『yonawo presents「tokyo」』とのコラボでの開催となった。昨年7月に配信リリースされたyonawoの楽曲「tokyo feat. 鈴木真海子, Skaai」をコンセプトに、yonawo、鈴木真海子(バンドセット)、Skaaiの3組が東阪福でツアーを廻っていたが、そのファイナルが本イベントとコラボ。出演者はego apartment、Skaai、鈴木真海子、yonawo、離婚伝説(50音順)。そしてwelcome actとしてシトナユイが登場。司会進行をつとめたのは長年「ボク踊」を見守ってきた、FM802 DJの加藤真樹子。「ボク踊」ならではの緩さと温かさが充満した、まさにスペシャルな1日。きっとあの場にいた人の記憶にいつまでも残り続けるだろうイベントとなった。
『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』
過去の開催時において、天候に悩まされることが多かった「ボク踊」。しかしこの日は見事な晴れ。前日の雨の湿気で蒸し暑さも加わり、熱中症対策が必要ではあったが、申し分のない天気だ。服部緑地野外音楽堂には続々とオーディエンスが集合し、入場を始めていた。エントランスには「ボク踊」おなじみの暖簾がかけられ、ステージ上にはイベントロゴをあしらった爽やかなグリーンのドロップが吊られている。ステージに立つバナナの木やヤシの木が、南国感を演出していた。
この日は雨や日差しの心配が軽減される屋根付きステージバック指定席も販売されており、ステージ後方まで360°お客さんが入るというスタイル。他にも18歳以下はお得になるU-18が用意されていたりと、オーディエンスの過ごしやすさを考えた主催者の気持ちの表れだろう。
『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』
会場内には出店も。札幌スープカレーの「JACK」、立ち飲み屋の「THE MUSEN IN SHOCK」、焼肉「匠」がそれぞれ美味しそうなフードを出店していた。オフィシャルドリンクやグッズ販売のテントもあり、オフィシャルフェイスタオルの販売ブースの近くでは、出演者のイラストを手掛けたイラストレーター・RUGOSNによるライブペイントも実施。「ボク踊」は独特のゆるさと過ごしやすい雰囲気があり、みんなめいめいに好きなように開演までの時間を過ごしていた。
『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』
FM802 DJの加藤真樹子の呼びかけでステージ前のスペースには人がたくさん集まり、アーティストを迎える準備は整った。最前列はステージとかなりの近距離だ。いよいよ『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』がスタートする。
『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』
シトナユイ
開場中、welcome actとして大阪在住のアーティスト・シトナユイが登場。彼女は音楽大学の課題で音楽を作り始め、その際毎回ボーカリストを頼んでいたが、毎回頼むのも……と思い、自分で歌うようになったそう。加藤は「歌ってくれてありがとう」と感謝を口にしていたが、確かにそう思うほどのライブを見せてくれた。
シトナユイ
加藤に呼び込まれ、身ひとつでステージに現れたシトナが挨拶。この日が初野外ライブとなる。ハスキーな地声も魅力的だが「morning moon」で紡ぎ出されたスモーキーな歌声、ブルージーでクールなナンバーは非常にカッコ良い。堂々としたパフォーマンスに、入場中のオーディエンスも思わずステージに釘付けになっていた。
シトナユイ
続いて、打ち込みをベースにホーンやシンセなどを縦横無尽に入れ込んだ7月5日(水)リリースの「The City's Heart Beat」を披露。最後は新作EPのタイトルトラック「MUSEUM」を披露。ゆらゆらと空気と体を揺らすジャジーなダンスナンバーで、イベントの幕開けを彩った。
離婚伝説
離婚伝説
本編トップバッターは離婚伝説。松田歩(Vo)、別府純(Gt)からなるDIYバンドで、2022年1月に結成したばかり。まだ関西でのライブもそれほど多くはなく彼らもこの日が初野外とあって、このタイミングで見れたのはかなり貴重だ。今回はサポートにキーボード、ベース、ドラム、マニュピレーター&ギターの4人を迎えた6人編成。バンドメンバーと別府が先にステージに登場して音を鳴らす。その空気感が「楽しくて堪らない!」といった様子で、客席も自然に温かい雰囲気に。そこに松田が颯爽と現れて「愛が一層メロウ」を歌い始める。ブーツカットのパンツを着こなしたレトロな格好、一声放つと一気に惹きつけられる存在感には驚きを隠せない。
離婚伝説
アーバンかつ懐かしさも感じられる、うっとりするグッドメロディーの未発表曲のほか「スパンコールの女」など、昭和歌謡を思わせる歌モノを連続で披露して客席を揺らせる。MCでは「初めましてー! 離婚伝説でーす! すごい名前だと思ったでしょ!」と別府が明るく挨拶。それだけで彼の人懐っこさが伝わってくる。松田もニコニコして嬉しそうだ。松田と別府は肩を組んで、6月28日に配信リリースされた新曲「さらまっぽ」を軽快に飛ばす。あまりの気持ち良さで全身が喜ぶのがよくわかる。
離婚伝説
最後は「メルヘンを捨てないで」。終わってしまうのが勿体無いと思うほどの最高のチル空間を作り出した離婚伝説。曲の完成度の高さ、メロディーの美しさ、歌声の柔らかさ、包容力たっぷりのアンサンブル。どれをとっても素晴らしかった。今後が非常に楽しみだ。
離婚伝説
ego apartment
ego apartment
2番手はego apartment。Dyna(Laptop.Ba)、Peggy Doll(Gt.Vo)、Zen(Gt.Vo)からなる、1998年生まれ3人組の彼ら。それぞれの足元にはエフェクターがずらりと並ぶ。1曲目は「NEXT 2 U」。低音ボーカルのZenと音域の広いPeggy Dollのボーカルが交互に歌われ、サウンドに奥行きを作り出す。キャッチーでどこか哀愁漂うギターリフとコーラスワークが心地良い「mayonnaise」に続いてはシームレスに「N o o N」、「REACH!」をプレイ。変幻自在に変化するギターの音色が面白く、実験的な要素も感じられるようだ。
ego apartment
MCではDynaが「暑い! 水分補給してくださいね」と気遣いながら挨拶。打ち込みのビートにZenのギターとDynaのベースがジョインし、さらに重なるノイジーなPeggy Dollのギターがエッジーな「1998 album ver」を経て、どんどん楽曲をつないでゆく。ルーパーやMPCも駆使した盛りだくさんの展開が生み出す没入空間。うだるような暑さも良きスパイスとなる。
ego apartment
「Here we go! 1.2.3.4!」の合図で「huu」が投下されると、3人の勢いとフロアのダンスは加速。2度目のMCでは「汗だくですけど心配しないでくださいね」と言うDynaに、立ち位置的に1人だけ最初から直射日光を浴びていたPeggy Dollが「言っていい?(自分は)ずっとやねん」と反論。笑いで和ませてラストパートへ。Zenのスモーキーな歌声とメロウなセッションで意識を溶かしてから、グルーヴィなナンバー「Call me」で締め括った。その瞬間、暑さを耐え抜いたご褒美のように涼しい風が野音を吹き抜けた。
ego apartment
鈴木真海子
鈴木真海子
「優しいのにキレがある、あの声でみんなで踊りましょう!」と加藤から呼び込まれた鈴木真海子は「静かな曲やりまーす」と笑わせて「Blue」からしっとりライブスタート。ryo takahashi(Dr)、TiMT(Gt)、井上真也(Ba)、ESME MORI(Key)、沼澤成毅(Key)からなるフルバンドを従えて(レアな編成!)、柔らかい歌声とアンサンブルで「judenchu」を披露。
鈴木真海子
「yonawo x 鈴木真海子 x Skaai最終日でーす! 最高のイベントだね。全アーティストカッコ良いから間違いないぞ。ただ暑いね」と何度も暑いと連発していたがそれもそのはず、ステージに直射日光が突き刺す時間帯。そんな気候でも、ジャジーでクールな「19」、シンセが清涼感をくれたボサノヴァ調の「どっかの土曜日」でナイスグルーヴで満たしてゆく。
鈴木真海子
中盤は「Lazy river」、chelmicoのDJをつとめる%Cの楽曲で、BASIと鈴木がフューチャリングした「TIME IS OVER」、iriをフューチャリングした「じゃむ」、そしてSTUTSとSIKK-Oとのコラボ曲「Summer Situation」と夏にピッタリの楽曲を連投してぐんと気分を高め、暑さをも味方にする。鈴木はバックスタンド席にも手を振り、「野音でバンドでできてすごい嬉しいです」と感謝を述べて「Contact remix」をブルージーに響かせてライブを終えた。チャーミングでカッコ良く、ヘルシーなステージに元気をもらうことができた。
鈴木真海子
Skaai
Skaai
日が傾いて涼しくなった頃に登場したのはSkaai。待ってましたと言わんばかりの大歓声が湧き起こる。DJはプロデューサーで盟友の、金髪にしたuin。そんなuinがプロデュースを手掛けた「Nectar.」に続いて「BEANIE」を熱量高く叩き込む。さらに「HOMEWORK」をキレキレで披露。波に乗りまくっている様子だ。
Skaai
MCでは「最近思うことがあって。「誰々と〇〇させてもらってます」とかよく聞くんだけど、お前は何してんの?ってすごく思う。よくある構文。じゃあお前は何やってんだよって言われると思うんだけど、俺はこの会場で1番ロックする自信がある。俺はこのステージに命懸ける。みんな自分の時間を使って見に来る選択をしてるじゃない。この会場を自分で選んで来たんだぜって気持ちをぶつけてほしい。俺は全力で出るから。明日死ぬつもりでやってるから」と「SCENE!」へ。大きく身体を使ってライミングし、客席と距離を近づける。
Skaai
「Laws of Gravity」、「Floor is Yours」と重量感のあるナンバーを経て、「floccinaucinihilipilification」ではステージを駆け回りながらパワフルにフロウを繰り出す。その後のMCで「実は3日前くらいに救急車で運ばれて。俺、生死の境界線立っちゃってるわと思って。境界線って直訳するとFINE LINEなんだよ。ライブでFINE LINE歌わずに死ぬの嫌だなと思っちゃって。俺ほんとライブ好きだな。だから歌わせてよ」とSIRUPとの楽曲「FINE LINE」を滑らかに歌う。Skaaiのこの日の生命力、「命を懸ける」という言葉の重みを理解してオーディエンスも負けじと食らいつく。ラストチューンまで全力で歌いきったSkaai。「最後まで生きて楽しんで!」「ありがとー!」と後ろまで届く地声で感謝を伝え、命を燃やした熱狂のステージを終えた。
Skaai
yonawo
yonawo
そして大トリは、2021年の『Chillaxx』にも出演したことがあるyonawo。サウンドチェックをまったり行い、そのまま板付でふわりとライブをスタート。メンバーを呼ぶ声の大きさやグッズを持つ人の多さから、期待値の大きさをひしひしと感じる。まずは「tonight」でしっとり聞かせてゆく。荒谷翔大(Vo.Key.Gt)のまろやかな英語詞とメロウなバンドサウンドが最高に美しい。続いてどうにも感情が動かされる「苺」で暑さを洗い流し、新曲の「Stay」を披露。荒谷の色っぽい歌声、斉藤雄哉(Gt)のうねるギター、さらに後半のゴリッとした展開が全身を心地良く包み込む。
yonawo
yonawo
MCでは荒谷がキーボードの前に座り「こんな感じでゆるっとパキッと楽しくやっていくんで、引き続きよろしくお願いします!」と「yugi」をメロウに披露。どこからかセミの鳴く声が聞こえてくる。さらに夕暮れにピッタリの「焦がれ Night」を美しく奏でる。野元喬文(Dr)は目を閉じて1音1音を丁寧に叩き出す。アンサンブルが実に素晴らしく、客席はじっくりと聴き入っていた。演奏が終わると子どもの声が聞こえ、荒谷が「終わったよー! 聞いてくれた?」と優しく話しかける。続いては「cart pool」から「ijo」へのメドレーパート。田中慧(Ba)のベースラインに荒谷のハイトーンボイスが柔らかく絡みつく。
yonawo
yonawo
後半は徐々に熱を帯び、音の波に潜ってゆく。歪で美しく、平熱ながらも秘めた芯を感じさせる演奏だ。さらにGrover Washington Jr.の「Just the Two of us」のカバーから「矜羯羅がる」につながる流れにオーディエンスは熱狂。残り1曲となったところで荒谷が田中に目配せし、冬のツアーのフライヤーを取り出す。この写真は近所のコンビニの証明写真機で4人で撮影したものだそう。ぜひチェックしてみてほしい。惜しまれつつのラストチューンは「天神」。空に上るようなアコギリフとキーボードのフレーズが気持ち良すぎる。客席はただ酔いしれて極上の時間を味わった。
yonawo feat. 鈴木真海子, Skaai
そしてお待ちかねのアンコール。このイベントは「tokyo」のツアーファイナルでもあるのだ。となれば登場するのは鈴木真海子とSkaai。荒谷と3人でステージにカムバックする。「ついに最終日、ラストアンコールこれで終わりになります」との鈴木の言葉に「寂しいよねー」と名残惜しそうな一同。最後は豪華にいきたいと、yonawo、鈴木のバンドメンバー、uinも呼び込み、ステージ上に12人という大所帯に。日頃から交流の深い3組なのでファミリー感もバッチリだ。
yonawo feat. 鈴木真海子, Skaai
アンコール1曲目はSkaaiとBIMをフューチャーした「FLOOR IS MINE」。パーカッションにuinも加わり(パーカッションは総勢4人という状況)、Skaaiがパワフルにフロウを繰り出す。鈴木と荒谷のハモりも最高に気持ち良く、演奏が終わるとこれ以上ない歓声が湧き上がった。
yonawo feat. 鈴木真海子, Skaai
2曲目は鈴木真海子の「空耳」をカバー。バンドメンバーを交代してほぼ全員総動員でアンサンブルを奏でる。それぞれのソロの見せ場も用意され、スペシャルな空気を作り出した。鈴木は荒谷に「この歌詞あってないようなもんなんだけど、全部覚えてくれたの。ありがとね」ともう1度息ピッタリに歌って感謝を述べる。
最後の最後はもちろん「tokyo」。この曲だけ撮影許可が出ると、客席は大歓喜! みんなスマホを手に、みんなにとってもアンセムとなったであろう「tokyo」のサウンドに身を任せる。ラスサビでは音を止めて会場全体でシンガロング。説明不要の盛り上がりで大団円を迎えた。
yonawo feat. 鈴木真海子, Skaai
そしてMCの加藤が登場。本日の全出演者を呼び込み、客席も一緒に写真撮影。「ボク踊」スタッフも一緒に撮影していたのも印象的だった。とても温かな空気に包まれた服部緑地野外音楽堂。こうして『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』は大成功で幕を閉じた。
「ボク踊」も『Chillaxx』もイベント終了後、みんながちゃんと持ち帰るためゴミが残らないんだそうだ。台風やコロナなど様々な困難を乗り越えてきた「ボク踊」。大切に築き上げてきたことをオーディエンスも出演者もわかっているのだろう。毎年このメンツでやってほしいなと思うぐらい、主催者・アーティスト・オーディエンス・スタッフ、それぞれの愛が伝わる素敵な1日となった。
『たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」× yonawo presents「tokyo」』
取材・文=久保田瑛理 写真=たとえばボクが踊ったら、presents「Chillaxx」提供(撮影:ハヤシマコ/Hoshina Ogawa)
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