約90分出ずっぱり、ノンストップ密室推理劇で”ごっこ遊び”~ TXT vol.3 『TQY』ゲネプロ・囲み会見レポート
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TXT vol.3 『TQY』舞台写真
東京・よみうり大手町ホールにて2023年7月9日(日)、 TXT vol.3 『TQY』が開幕した。『仮面ライダーギーツ』など仮面ライダーシリーズの脚本を手掛ける高橋悠也と、東映がタッグを組み舞台作品を生み出すプロジェクト第3弾。初日の前日に行われたゲネプロと囲み会見の模様をレポートする。
シリーズ3作目となる今作『TQY』は、“玩具(TOY)”だらけの一室を舞台に繰り広げられる密室推理劇。部屋の住人を名乗る初対面同士の人物が集まり、ある事件の真相を解き明かしていくサスペンスが描かれる。
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
陽気なBGMが流れる会場に入ると、色とりどりのおもちゃで彩られた部屋が。パステルブルーの壁に囲まれた室内に、ぬいぐるみやキッチンセットが所狭しと詰め込まれている。幼い頃に慣れ親しんだ遊び道具と、大人になってからも使う生活用品とが混在した不思議な空間だ。無造作に置かれている小道具だが、“密室推理劇”と銘打たれていることから、ついじっくりと観察してしまう。
物語の始まりを告げるのは、この部屋の主であるヘロー(小西詠斗)。室内のものはすべて、彼が趣味で集めたものだという。好きなものを詰め込んだ彼のおもちゃ箱とも呼べる一人暮らし部屋には、なぜか見知らぬ人間の姿が……。
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
いつのまにか部屋にいた彼らは、子供の頃に一度は夢見たような職業に就く者たち。スーツ姿のバン(近藤頌利)は、なんとスパイ。イエローカードやレッドカードも携えるプロサッカープレイヤー・フォワードエムブイピー(木原瑠生)に、氷の世界からやってきた王子様である魔法使い・スキー(中山咲月)。三ツ星レストランのシェフだというジューシー(田倉暉久)に、紋章を継ぐ伝説の勇者・ゼット(高本学)。彼らに触発され、ヘローもヒーローを名乗ることに。
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
一見、共通点のない6人だが、かつて全員がこの部屋に住んだことがあるらしい。突然、大家と思わしき人物から、ある事件の犯人が潜んでいるとの情報が与えられる。「一番好きな玩具を探してください」、そして「仲間外れを探してください」と問いかける謎の声に従い、6人は互いを疑い、探り始めていく。
この先は、息つく暇もない心理戦。まとめ役のバンは、頭の切れるスマートな役どころ。フェアプレーが信条のフォワードエムブイピーがホイッスルを鳴らして場を引き締め、スキーが冷静に状況を整理してくれる。可愛らしく立ち回るジューシー、血気盛んなで切り込んでいくゼットといったキャラクターのバランスは見応えがある。さらに物語の謎を深めるのは、ドクターエックス(松本利夫)を名乗る白衣を着た男。悪か正義か、どちらともいえないミステリアスな空気が癖になる。
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
登場人物中、最も感情の振れ幅が大きいのがヘローだ。玩具を愛する無邪気な笑顔から、追い詰められてもがき苦しむ姿まであらゆる心が体現されていた。
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
TXT vol.3 『TQY』舞台写真
会話劇、そして密室推理劇。演劇の醍醐味が詰まった要素に加え、今作ではドクターエックス以外の6人が約90分ものあいだ、ステージ上に出ずっぱりだ。可動式の舞台装置や映像を投影するためのスクリーンなどは使わず、劇中のBGMや効果音も必要最低限。その分、役者が発する一挙手一投足、セリフ回しに至るまで感覚を研ぎ澄ませて堪能することができた。
前半はコメディやほのぼのとするパートが多く、後半は畳みかける怒涛の展開。観劇の際には、感覚のすべてを研ぎ澄ませて臨んでほしい。全身で演劇の醍醐味を体感できるだろう。
TXT vol.3 『TQY』会見より
ゲネプロ前には小西詠斗、近藤頌利、木原瑠生、中山咲月、田倉暉久(THE SUPER FRUIT)、高本学、松本利夫(EXILE)らキャスト全員と作・演出を担当した高橋悠也による囲み会見が実施された。
ーー初日を迎える心境と意気込みを教えてください。
小西:ヘローはとても元気でまっすぐな青年。純粋だけど不器用で、子供の頃からヒーローにあこがれていて正義感もある。ちょっとドジなところもありますが、元気いっぱいに演じたいです。
近藤:1か月もなかった稽古期間ですが、会話劇ということでしっかり積み重ねてきました。演じるバンは説明セリフや推理が多く、結構難しい言葉も使う役。堅い役はなかなかない経験なので、楽しみながら挑みます。
木原:サスペンス作品は初めて。稽古場から和気あいあいとしていて、場当たり後の楽屋でも笑いながら役について話し合っていました。一言一句、聞き逃せないような雰囲気でやりつつ、僕と同じくおもちゃ好きな方にとっては心に残る作品になっているはずです。
中山:スキーは皆に共感していくキャラクター。その日その日、皆の感情の高ぶりに乗っかって演じてきました。いい意味で稽古と変わらず、本番にも挑めたら。
田倉:この作品で、初めてお芝居をします。来ていただいた皆さんに笑顔で帰っていただけるような素敵な演技ができたら。ここにいるキャスト、関わっている皆さんと一致団結して作り上げていきたいです。
高本:あっという間に稽古が過ぎ、こうして初日を迎えられるのが嬉しいです。同じ芝居が一度もなく、受け手も発信する側も変わっていくのが演じていて面白かった。公演ごとにどんどん成長していくでしょうし、自分自身も色んな感情に出会えるのが楽しみです。
松本:短いながらも集中して稽古をすることで、一丸となれた。いいステージになるのではないでしょうか。皆さんセリフ覚えが早かったので、足を引っ張らないように頑張りました(笑)。安全第一はもちろん、キャラクターが引き立つ群像劇を通じて、お客様に何かの“TQY”を残せたら。
小西詠斗
高橋:告知から今日に至るまで、1か月も経っていません。舞台というカテゴリでも異例の速さです。「鉄は熱いうちに打て」のように「舞台は熱いうちに打て」という言葉があるとしたら、この作品をおいてこんなにホットな状態のものはない。まだ冷めてないので、見る人によっては火傷しちゃうかもしれません(笑)。アツアツを楽しみたい方は早めに、もう少し置いた状態のものがお好きなら千秋楽付近の公演をぜひご観劇ください。
木原瑠生
中山咲月
田倉暉久(THE SUPER FRUIT)
ーー役柄や稽古の日々を踏まえて、注目ポイントは?
松本:群像劇かつワンシチュエーションの芝居なので、キャラクターがどんどん立っていく。セリフの裏側も感じていただくと「次はどう展開するんだろう?」と引き込まれていくはず。ワンステージごとに大切に、クオリティの高いものを作り上げていきたい。
高本:ゼットはアクティブなキャラクター。前面に押し出していきつつ、笑えるコメディシーンも楽しみたい。一緒に謎を解いていく面白さがあるので、お客様も登場人物になったつもりで観劇していただけたら。
田倉:ジューシーはおっとりとして、最年少感がありながらも背伸びしたイメージ。19歳である今の僕もちょうど同じくらいの時期ということで、楽しく演じています。個性がバラバラな登場人物たちが、どう変化していくのか注目してください。
中山:サスペンスなので、やはり皆さんも一緒に推理していただきたい。かつ、一回結末を知った後に観ても面白いものになっているはず。キャラクター目線でも体感してほしいですし、ぜひ何度も観劇していただきたいです。
木原:僕が演じるのはサッカーにまつわる役で、体育会系なところや仲間思い、かつ天然な部分が愛らしいキャラクター。今日の場当たりが終わってからも、他のキャストから色々と研究させてもらっているところなので、僕自身どうなるかわかっていません(笑)。
近藤:(笑)。僕の一番の押しはフォワードエムブイピーですね。
木原:おおっ!
近藤:笑いを取れる、愛おしいキャラ。僕が演じるバンにはないので、少し嫉妬の目で見ています(笑)。マツさん(松本)を除く6人は、ずっと袖にはけません。出ずっぱりの僕らを、部屋の窓からのぞき見しているような気持ちで観劇してください。
小西:悠也さんが描き出す世界観に巻き込まれながら、劇中で投げかけられる問いを一緒に考えてきた稽古期間でした。テンポや間の有効な使い方を意識して作っているので、そういうところも観ていただきたい。個人的には感情的なシーンが多いので、ぜひ注目してほしいです。
高本学
松本利夫(EXILE)
高橋悠也
ーーカンパニーの雰囲気は?
高橋:初期の頃は、全員が比較的おとなしいタイプで、お互いを探りながら稽古してきましたが、小屋入りしてからは急に空気が引き締まって距離感が縮まった。ついさっきも場当たりの後でキャラづくりの話題で盛り上がっていました。スロースターターでありながら、エンジンがかかればトップスピードになれるメンバーです。
ーー最後に、皆さんを代表して小西さんと近藤さんからお客様へメッセージを。
近藤:夢は、自分自身を信じれば叶うもの。忘れてしまった大人にも、これから夢を持つ子供にも「本気で見れば夢は叶う」と感じてもらえるはず。応援よろしくお願いします。
小西:キャストの皆さんと、全身全霊で作り上げてきました。全力でごっこ遊びをするので。楽しんでいただけると嬉しいです。……緊張してます(笑)!
近藤:(小西に触れながら)本当だ。体、熱い(笑)!
取材・文・撮影=潮田茗
公演情報
TXT vol.3 『TQY』
出演 小西詠斗 近藤頌利
木原瑠生 中山咲月 田倉暉久(THE SUPER FRUIT)
高本学 / 松本利夫(EXILE)
公式Twitter @project_txt(https://twitter.com/project_txt)
企画・プロデュース 東映