Waive、解散から18年を経て始まった大いなる挑戦 再結成第1弾ライブ『GIGS「Burn」』O-WEST公演を振り返る

レポート
音楽
2023.8.2
Waive

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Waive再結成! 第1弾ライブ GIGS「Burn」
2023.7.21 Shibuya Spotify O-WEST 

2005年の解散以降も“解散中”であることを明言した上で、何度かの再演でファンとの再会を果たしてきたWaive。だが、今年4月に発表された“再結成”と、それに伴うライブ&リリース活動は、これまでの再演プロジェクトとは全く性質の異なるものだ。今回、明確なゴールとして据えられたのは、2025年末に予定している日本武道館単独公演での“解散”。火のついた焼けぼっくいを完全に燃やし尽くす――その核たるテーマは再結成第1弾となったライブに名付けられた『GIGS「Burn」』というタイトルからも明らかだった。

OSAKA MUSEでの2公演を経て、東京での再始動一発目として選ばれた会場はSpotify O-WEST。待ちかねたファンを収めきるには明らかに小さすぎるハコで、2階席からもオーディエンスが零れ落ちそうな状況は、しかしライブタイトルを体現するにはうってつけと言えるだろう。1人ずつステージに上がるメンバーの最後に、田澤孝介(Vo)が後ろを向いて右腕を掲げ、杉本善徳(Gt)がイントロをかき鳴らして始まった1曲目は代表曲「バニラ」。その瞬間フロアからは一斉に手が振り上がり、弾けるような演奏がコンパクトなライブハウスに反響すると、一気に20年前へとタイムスリップしたような心地になる。サビで満場の手扇子が広がる客席に「恋しよう!」と田澤は跳ね回り、続く「FAKE」でも左右に大きく手を振るサビから拳の突き上がるアウトロまで、会場をさらっていく凄まじい一体感は“お見事”の一言。その熱に満ちたパフォーマンスに、結成から20年を超えた大人の余裕は見当たらない。あるのは“再始動”という初めての体験に対する初々しい衝動だけだ。

「なんとWaive、再始動いたしました!」と始まった田澤のMCでも、これまでの再演とは心持ちが違うことを告げ、「細かいことは抜きにして、今、目の前にいる我々のステージを思いっきり楽しんでくれたら」と、次々に人気曲を連投。Waiveらしさ満点の切なくも爽やかなメロディックチューン「あの花が咲く頃に」に始まり、「わがままロミオ」では初恋を知った少年のような表情を表しつつ、田澤は最後に凄まじいロングトーンを放って、声で戦い続けてきた男の凄味を見せつける。「will」でも《僕たちはこれからだから》という若さ由来の無敵感を現在の己の状況に落とし込み、最後の《愛してると伝えよう》というフレーズでオーディエンスを指差せば拍手喝采。甘酸っぱい若さとロマンティシズム、未来に対する前向きな希望とハピネス、人生をかけた目標への後戻りのできない覚悟と意気込み、そこに熟年のテクニックが加わって生まれる濃密な楽曲世界は、間違いなく今のWaiveでしか味わえないものだ。続くMCでの「燃え尽きるではなく、自分たちの意志で燃やし尽くすというコンセプト。今まであった全部を経て、今だからできることを、今の切り口でやれたらいい」という田澤の言葉からも、彼ら自身がそれを強く意識していることがわかるだろう。

「One」ではWaiveならではのメロの良さと、伸びやかな田澤の歌声との相性が抜群で、しばしば他のボーカリストから「上手すぎて共演したくない」という声を聞くのも当然と納得させられてしまう。エモーショナルな演奏に惹き込まれた「Be Kind」以降は、それまでの笑顔が似合う空間からシフトチェンジ。シリアスな色を帯びてロックに駆け抜ける「TRUE×××」、再びポップに転換したかと思いきや《最後の日に君と居れたら》と客席に手を差し伸べる「PEACE?」、堂々と《僕は生きていく》と歌い上げる「HONEY」と、重いメッセージを軽やかに刻み付けていくのもWaive流だ。

さらに“今だからできること”を強く体感させたのが、その後のバラードパート。「今まで旅の途中だったのが、ようやく最終地点に向かおうとメンバー全員同じ方向を向けるようになった」と田澤が語り、「再出発という、今の我々を表すような曲を」と贈られたのは「Departure」。力強いロッカバラードで、なりふり構わず田澤が歌声を吐き出せば、その心の揺れを杉本のヒリつくようなギタープレイが表し、貮方孝司も大きく身体を振って、歌詞の通り《果てしなく遠いこの旅路》で泣き笑い思い悩んできた心の内を、それぞれにさらけ出していく。最後に《この想いが届くまで》と歌い上げる田澤のロングトーンは、殊に圧巻。鳥肌が立つほどの“リアル”に凄まじい拍手が湧くと、逆に名曲「spanner」では失われゆく愛を描いた“物語”でオーディエンスの胸を震わせた。キャリアに裏打ちされた圧倒的表現力もまた“今のWaiveだからできること”にほかならず、「20代のときに書いた曲やってる。あの頃できなかったこともできる。新生Waive、よろしくお願いします!」という田澤の挨拶も、おどけて見えて実は本気だろう。

MCでは杉本の足元だけに扇風機が置かれている秘密が明かされたり、東京のお客さんを笑わせるために「抱腹絶倒」という曲を作ろうという話になったりと、関西人らしい突き抜けたトーク術も健在。「音楽は好きかい? 音楽に夢中かい? Waiveに夢中かい!」と雪崩れ込んだ「Lost in MUSIC.」でも、楽器隊のソロ回しからのコール&レスポンスで場内温度をグッと上昇させる。さらに「燃えていこうぜ!」と叩きつけられたのは、今回の再始動のために作られた新曲「火花」。厚みあるロックサウンドが20年選手の貫禄を感じさせる一方、そこに乗るメロディックな旋律は紛れもなくWaive節で、《あの日の僕に まだ届くなら すべてを燃やし尽くせ》というフレーズから、今の彼らの決意が痛いほど伝わってくる。導火線の先にある結末は、ただ一つ――ならば、自らの想いのまま派手に燃やし尽くさんと、ガンガン頭を振って超ハイスピードで暴れきる「ネガポジ」、杉本が低音ボーカルを利かせ、貮方も高井淳(Ba)も腰を落として床スレスレでプレイする「Sad.」と、容赦なくエモーションを放出。中でも「ガーリッシュマインド」のリフを貮方がかき鳴らした途端、一斉にオーディエンスが同じ振りを繰り出す様は壮観で、これぞWaive!と背筋が震えたほどだ。間奏では高井の一吠えが往時と変わらず場のテンションをグッと引き上げ、拳と共に“ハイ!ハイ!”と声があげるフロアに向かい、田澤は「もっと浴びせてくれ!」と一喝。本編ラストの「いつか」も確かな熱を帯び、ラストフレーズは今のWaiveとあまりにもシンクロして、どんな未来が待っていようとも全速力で駆け抜けていくのだという、彼ら自身の誓いがそこに窺えた。

アンコールで「同じ気持ちだったら嬉しいな。とても幸せです!」と笑みを見せた田澤は、今回の再始動を「振り返る思い出を増やしていける時間」と位置づけ、「どんな景色が見れるのかわからないけど……どうです? Waive、良いバンドだと思いません?」と、オーディエンスに同意を求める。当然、返ってきた賛同の拍手に応え、贈られたのは「Days.」。2016年の再演時に書かれたナンバーは、一聴しただけでWaiveとわかる伸びやかなメロディ感を備え、サビ始まりの第一声、第一音から圧倒的な意志を感じさせた。良いバンドだからこそ、それを外に向かって堂々とまき散らし、華々しく終わりたい。解散がファンにとって残酷なものならば、せめて今までに見れなかった光景を最後に見せたい。再始動にあたり公開されたムービーでメンバーが語っていたように、この先に待つゴールは悲しいだけのものではないとわかっているから、今、彼らは笑顔でステージに立っているのだろう。10月からは4都市ライブサーキット『GIGS「爆ぜる初期衝動」』がスタート。O-WESTの600人を起点に、最後はどこまで広がっていくのか。解散から18年を経て、始まったばかりの大いなる挑戦に、心は躍るばかりだ。


取材・文=清水素子 撮影=田辺佳子

 

ライブ情報

■秋の4都市ライブサーキット開催決定!
GIGS「爆ぜる初期衝動」

2023年10月22日(日) 神奈川・横浜BAY HALL (開場16:15/開演17:00)
2023年11月5日(日) 愛知・名古屋 Electric Lady Land (開場16:15/開演17:00)
2023年11月23日(木祝) 大阪・梅田 CLUB QUATTRO (開場16:15/開演17:00)
2023年12月10日(日) 東京・神田 SQUARE HALL (開場17:15/開演18:00)

■オフィシャルファンクラブ「WAVE」限定GIG開催決定!
GIG「CASE OF ウェイ部」

2023年10月15日(日) 大阪・OSAKA MUSE (開場16:30/開演17:00)
2023年11月29日(水) 東京・渋谷STREAM HALL (開場18:00/開演18:30)
7/14(金)18:00より
Waiveオフィシャルファンクラブ「WAVE」にて上記公演の最速先行受付スタート!
※オフィシャルファンクラブ「WAVE」へのご入会はこちら
https://www.waivewaive.com/fc
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