ヤユヨ、さよならを希望に変える現体制ラストライブ「今日は悲しい日じゃなくて、いい日だったと言えますように」
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『やゆヨ!vol.3〜こっち向いて!プカプカサマー〜』2023.8.4(FRI)心斎橋JANUS
ヤユヨが8月4日(金)、大阪・心斎橋JANUSで『やゆヨ!vol.3〜こっち向いて!プカプカサマー〜』を開催した。同イベントは、バンド名にちなみ毎年8月4日=『ヤユヨの日』に行われてきた自主企画で、今年は3回目にして初の地元・大阪で、ゲストにカネヨリマサルを迎え実現。同時にこの日は、『青い愛とぐるぐるワンマンツアー2023』のセミファイナル、7月15日(土)大阪・梅田Shangri-La公演で発表されたすーちゃん(Dr.Cho)の脱退に伴い、現体制でのラストライブとなった。
まずはカネヨリマサルが満場のJANUSに登場。焦燥感と疾走感をない混ぜに駆け抜ける「はしる、夜」や、映画『17歳は止まらない』主題歌の新曲「GIRL AND」等を演奏し、「わたし達のジャーニー」では「私たちはヤユヨと進んでいくよ!」(ちとせみな、Vo.Gt)と付け加えるなどエモーションを増幅。
MCでも、「ヤユヨは同じ大阪出身の、カッコいいしかわいい、大好きな後輩なんで……今日はちょっと先輩面して(笑)、いいライブを見せたい」(いしはらめい、Ba.Cho)、「2バンドとも人見知りなんで、対バンするたびに一歩ずつ距離を縮めて。ドラムのすーちゃんは今日で最後やけど、そんな特別な日に誘ってもらえてうれしい」(もりもとさな、Dr.Cho)、「人生にはいっぱい選択肢があって、自分が納得して選んだなら全部正解やと思ってるんです。きっとヤユヨのみんなも納得して変わっていくことを選んだ、ホンマに音楽に真っすぐな人たちなんやなって。ヤユヨが4人の最後の日に私たちを選んでくれたなら、全力で音楽で返すだけやと思ってます」(ちとせみな)と、メンバーそれぞれが溢れんばかりの思いを伝える。
最後の「グッドバイ」まで全10曲にわたり、ロックバンドの持つ重さとしなやかさ、ガールズバンドの持つ華とはかなさを漂わせ、スタンスだけでなくパフォーマンスでもしっかりと背中を見せてくれた、カネヨリマサルだった。
「これが最後」だと思って立つステージが、音楽人生にいったいどれだけあるだろう? 今日のヤユヨは、すーちゃんは紛れもなくそれで、サウンドチェックの一音一音からその感情が付きまとう。初恋の嵐の「Untitled」のSEを背に満を持して現れた4人は、カネヨリマサルの「もしも」のカバーでいきなり沸かせたかと思えば、続く「うるさい!」でも、ツアーを終えたばかりで仕上がりまくったアンサンブルを炸裂させる。
「一年に一度の8月4日=『ヤユヨの日』、対バンのカネヨリマサルも力をくれて感謝しています。私たちも負けていられないなという気持ちです。今日一日をいい日に、特別な日にしますので、「ここいちばん」楽しめますか大阪!?」
今日に賭ける気合いをひしひしと感じるそんなリコ(Vo.Gt)の宣言に応える歓声も、湿っぽさは一切なし。会場一体となってピークへと向かった「ここいちばんの恋」、堂々のたたずまいで鳴らした「星に願いを」と、序盤からライブバンドとしての成長をこれでもかと見せつけていく。ぺっぺ(Gt.Cho)がシンセを駆使する「POOL」も今や異端ではないセットリストへのなじみ具合で、ゆらゆらと落ちていくサウンドスケープに心地良く包まれる。
「カネヨリマサルは大阪の優しいお姉ちゃんなんですけど、(ちとせ)みなちゃんがMCで、「ヤユヨのことを友達やと思ってる」と言ってくれたのが心に残っていて。今日は特別な日やからこそ、そう言ってくれたカネヨリマサルをお誘いさせてもらいました。今日を選んだみんなもセンスいいね! 今年の夏はどうやって過ごすん?」というリコの呼びかけに、「小学校の校庭とかでやる地元の祭りに紛れ込んで、その土地の人の顔をしてなじみたい(笑)」と答えるぺっぺ。はな(Ba.Cho)が「私は夏の甲子園を見に行きたいな」と言えば、「もしかして今日の衣装って……阪神?(笑)」と返すリコと、トークでもとことん場を和ませるヤユヨ。続けてすーちゃんが、「私はキャンプに行きたい。星を見ながらホットサンドとか作りたい(笑)」と語れば、リコは「毎年言ってるけど線香花火がしたい。いいやん、こぢんまりしてさ、安全性も高いし(笑)」と持論を展開するなど、いまだに今日が現体制最後の日とは思えないアットホームなムードだ。
後半戦は、「夏祭りも甲子園もキャンプも線香花火もいいけど、やっぱり夏の思い出はライブでしょ。地元・大阪、今日一番デッカい声を期待してます!」とリコが促せば、ずっしりとしたベースラインが動き出し、「ユー!」のコール&レスポンスがあっという間にフロアを包囲。リコも思わず「最高!」と漏らすグッドヴァイブで、その後も躍動感たっぷりに「Yellow wave」~「ピンク」と息をつく暇もなく畳み掛けていく。
「みんなの私たちに対する愛情がライブハウスに溢れて、私たちも愛で返して、それがすごく温かくて、どんどん温度が上昇して……暑いです(笑)。今日は4人体制最後のライブですけど、それは悲しいことではなくて、私たちは私たちで楽しい道を歩んでるので、そこを応援してもらえたらうれしいなと思うばかりです。あなたのためにも私たちのためにも、楽しい日にしようと思ってます。2019年にヤユヨが始まってから初めて作った曲を、一緒に歌いたいな」(リコ、以下同)
ヤユヨがシーンに躍り出すきっかけとなったアンセムであり、ライブでやらない日はほとんどなかったであろう「さよなら前夜」は、この4年間で共に見た景色を鮮やかに浮かび上がらせたことだろう。「愛をつかまえて」で軽やかな鍵盤の音色に揺れた後は、自ずとセンチメンタルにならざるを得ない「キャンディ」と、めくるめく代表曲の数々がいよいよライブのクライマックスを告げる。
「たった一回のさよならで、くよくよしてしまう人生はイヤやなと思います。だから、さよならを希望に変えられる人でありたいし、泣きたくないし、泣かせたくない。でも、こういう日に限って、宝物のような時間がよみがえりますし、つらかったけど続けて良かったと思ったりもするんです。だから、あなたにとっても私たちにとっても、今日は悲しい日じゃなくて、いい日だったと言えますように、最後はこの曲で締めくくることにしました。特別な日に来てくれてありがとうございました。大阪から来た、4人のヤユヨでした」
4人のヤユヨが幕引きに選んだのは、「あばよ、」。彼女たちの意志を、その音楽を、一身に受け止めるオーディエンスが、バンドという青春の一つの節目を見届ける……。
やまない拍手に呼び戻されたアンコールでは、「また会いましょう。今日で終わりじゃないんで、まだまだ続いていくんで。本当にありがとうございました!」と、「今度会ったら」を披露。<自分でも少し恥ずかしいくらいに/眩しかったなあ>……愛する人との別れをつづったこの曲を最後の最後に歌い上げるさまが、もうたまらない。言葉よりも何より音楽が、全てを物語っていた一夜。第一期ヤユヨ、これにて終幕!
なお、今後はサポートドラムを据え活動を続けていくヤユヨは、各地のフェスやイベントに出演後、9月29日(金)北海道・ベッシーホールでのワンマンライブを皮切りに全国8カ所を巡る『赤い愛でスタンドバイユー!ツアー』をスタート。宮城はなきごと、広島はbokula.、福岡はConton Candy、香川はブランデー戦記を招き、大阪、愛知、ツアーファイナルの11月4日(土)東京・WWWXはワンマンライブを実施する。
取材・文:奥“ボウイ”昌史 撮影:日吉“JP”純平