Ra:IN、15年ぶりの音源を携えて全国ツアー中 PATA(Gt)とmichiaki(Ba)に訊くライブと音源制作

2023.8.21
インタビュー
音楽

Ra:IN

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PATA (Gt/X JAPAN)、 michiaki (Ba/exTENSAW)、DIE (Key)、 Ryu (Dr)というレジェンドたちによるロックバンド、Ra:IN(ライン)が、実に15年ぶりの音源となる3曲入りMAXI CDを携えて全国ツアー『Look At The Sky Tour 2023』開催中。「去年からは一気にやる気になっている」と語るメンバーに、その理由と、Ra:INならではの音源制作時のエピソードの数々を、メンバーを代表してPATAとmichiakiに訊いた。

――Ra:INは現在、絶賛ツアー中です。今回のツアー『Look At The Sky Tour』は、これまでのところ、どんな感触ですか?

michiaki:去年、Ra:IN結成20周年を迎えて、そのタイミングでツアーやライブも始めているんです。それまではライブ活動をガンガンしていくタイプのバンドじゃなかったんだけど、去年からは一気にやる気になっているというか(笑)。

――稀にみる精力的なライブ活動を、ここ最近はしていますからね(笑)。

michiaki:そうそう(笑)。それでプレイヤー側も観に来てくれるファンの人たちも、楽しく、そしていい感じでやっています。

――コロナ禍だったこともあり、生のライブにオーディエンス側も相当飢えていたでしょうからね。

PATA:このツアーっていつからやっているんだっけ?

michiaki:今年は3月にライブを3本やって、6月からツアーがスタート。

PATA:ああ、そうだ。去年のツアーの続きっていう感じがしていて。でも今年に入ってからのツアーは、収録されているのは3曲とはいえ、曲がりなりにもCDを発表したんで、CDを出して、ツアーをやらない理由がどこにあるっていうことでしょうな。

PATA

好きなバンドが、ずーっと音源を出さないより、3曲か4曲ぐらい入ってるのが出たら、すげー嬉しくない? というだけの理由です。(PATA)

――PATAさんは昔から言い張ってますからね。アルバムやCDはライブやツアーをするために出すものなんだ、と。

PATA:ああ、言ってたな、昔から。ライブやるための口実みたいなもんだから、CDやアルバムを出すのは(笑)。

michiaki:去年、バンド結成20周年というのがなかったら、多分、CDも作る気になっていなかったと思う(笑)。新曲のレコーディングも、たまに手を付けちゃ放っておくというのを、この数年間ずっと繰り返していたから。でも結成20周年のツアーを去年スタートさせたことで、いろんなことが動くきっかけになって。

PATA:そもそも今回のCD『Look At The Sky』のドラムテイクはさ、録ったのは6年ぐらい前だよ。

――エッ、そんな前からレコーディングはスタートさせていたんですか!?

michiaki:始まったのはね。

PATA:でも俺が病気したり、コロナさんだったりとか、いろいろあったからさ……。

michiaki:コロナ禍で動けなくなったとき、時間はあったから、たまに手を付けたりしてた。当初はフルアルバムにしなきゃっていうプレッシャーもあったけど、この人(PATA)が「3曲でいいじゃん」って。

PATA:まあ、3曲か4曲でいいんじゃねえかって。だって出さないより、出したほうがいいから。例えば好きなバンドがさ、ずーっと音源を出さないより、3曲か4曲ぐらい入ってるのが出たら、すげー嬉しくない? というだけの理由です。

michiaki

ああだ、こうだ、何度もやり取りしても、ふと最初のミックスを聴くと、そっちのほうがいいじゃんって(笑)。そういうのは多々ある。(michiaki)

――でもレコーディングがスタートしたのが約6年前。6年間という時間の流れの中でも、曲はいろいろ変化していったんですか?

michiaki:時間が6年間もあったから、テイクやフレーズを重ねすぎちゃって(笑)。とくにギターなんて、4本とか5本は当たり前、出てくる出てくる、いろんなフレーズとテイクが(笑)。

PATA:録ったエンジニアとミックスのエンジニアが違うから、最初にミックスしたとき、全部のテイクを生かしたものにしてくれていて(笑)。「あの……、これとあれとこのテイクはいらないですから」と。そういう作業とかもありぃので。

――ミックス作業は、数年前の自分たちとの邂逅みたいなものだったんですか?

michiaki:そうそう(笑)。

PATA:「俺はこんなフレーズ弾いてたっけ?」みたいなことも。自分が弾いた内容を全然忘れてるからさ。久々の再会というより、初めましてっていう感覚のテイクもあって。

michiaki:だからミックスだけで半年ぐらい掛かった(笑)。

――アルバムを出すまでに何10年も掛かったという海外バンドの話をよく聞くじゃないですか。あっ……、目の前にもいました(笑)。

PATA:俺、そういう話になると壁を作っちゃうよ~(笑)。

――でも始めると終わりがないレコーディングって、意外に普通なんですかね。

michiaki:普通にしたくはないんだけどさ(笑)。結果、時間は掛かったという。

PATA:同じ曲でもテイクがものすごくあったり、ミックスだけでもモノすごい量があったりするからさ。それこそマイケル・ジャクソンの話になるけど、100テイクのミックスを作って、最終的に落ち着いたのは最初のミックスだった、というのを聞いたことある(笑)。

michiaki:ああだ、こうだ、何度もやり取りしても、ふと、最初のミックスを聴くと、そっちのほうがいいじゃんって(笑)。そういうのは多々ある。

DIE

――そもそもRa:INの曲作りも、カチッと決まった形ではなく、終わりなきセッション的なノリが強いわけですよね。

PATA:昔はね。今は、みんなでスタジオでセッションしながらまとめる部分はあるけど、基本的には曲がちょっとまとまってからスタジオに持ってくる。例えば俺だったら、前はリフを2個ぐらい持っていって、「これをどうにかして」って、メンバーにブン投げる方式だった。ギターソロ周りとか、展開と展開の間とか、すげー適当っていうか(笑)。音源では5分もない曲だけど、ライブでやっていると10分ぐらいになっていたこともあって。

――今回、収録の3曲に関して、元ネタは誰が作ったんですか?

michiaki:これもまた古い話なんだけど、前にヨーロッパツアーをやったとき、なにか音源を持っていこうって話になって。ドラムがまだ向山テツだったとき。

――2009年のヨーロッパツアーのことですか?

michiaki:そう、15~16年前の話(笑)。そのときにヨーロッパ用にシングルを作って。そこに入れたのが「Pshychogenic」と「Circle」なんだけど、ミックスやマスタリングもせずにラフなままだったから。その後、2013年にドラムがRyuに替わって、あのときの曲をちゃんと手を付けようってことで、6年前からレコーディングが始まったという流れ。

――ヨーロッパツアーで限定リリースした2曲が、今のメンツによって蘇った形ですか。

PATA:そうだね。変な意味での録り直しということでもなく。

Ryu

――でもドラマーが替わったことで、同じ曲であっても表情が大きく変わったと思うんですよ。

michiaki:けっこうプログレっぽくなった。あと、向山テツはグルーヴタイプのドラマーだったから、Ryuになってタイトでソリッドになった。そういう違いがあるね。

――ドラムの変化によって、他のパートのアプローチなども変わっていきました?

michiaki:ミックスしているとき、逆にそこを感じたよね。ミックスでは客観的に聴いていたから。

――「Circle」は、同じテーマのフレーズで曲が転がりながらも、途中からどんどん世界が広がっていく。Ra:INのライブを体現したような仕上がりだと感じました。

michiaki:インストだから、いろんな構成がないと飽きちゃうから。それでいろんな世界観が出てくる曲で。

PATA:シーケンスリズムが入っているのも、Ra:INではこの「Circle」しかないんだよね。

PATA

今回の3曲は時間もあって何回も録っていたから、それが溜まっていっちゃって(笑)。そして最終的にどれがなんだか分かんなくなっちゃった。(PATA)

――ギターのアプローチも、ライブ同様にその場のインスピレーションで録っていったんですか?

PATA:あまりカチッと決めていかない。とくにこのバンドでは。

michiaki:でも、なにげに決まってるじゃん。

PATA:そういうところもあるけど、ギターソロはひとつも決めていかない。昔は、違うバンドのことだけど、レコーディング中にスタジオで曲を聴きながらボケーッとして、「あっ、これを入れよう」とかいうのはあった。最近はそんなに時間がないんですよ、レコーディングの。なので、パッパッと頑張って録っていくか、家でギターも持たずに曲を聴きながら頭で考えて。その思いついたものが、翌日のスタジオでできるのかって問題もあるけど(笑)。

michiaki:でも今回、ミックスのときに全トラックを立ち上げてみたら、重ねに重ねたギターがいっぱい入っていた(笑)。

――クイーンのブライアン・メイばりのギターオーケストレーションが?

michiaki:すごい本数だったよ(笑)。

PATA:いや、あれは違うテイクなんだよ。「一応、残しておいて」というテイクもいろいろあったから。それがミックスで全部出ていても、普通に曲が成り立っていたから、最終的に使うのはどのテイクでもよかったという話だけど(笑)。

michiaki:いやいや、「大事なテイクあるけど、弾いたのを録ってなかったんだっけ?」とかいうハプニングもあった。探したらテイクが出てきたけど。

PATA:ああ、あった(笑)。「あれっ? 急になにかがいない気がするんですけど」って、迷子になっているテイクを探しにいかなきゃいけなかった。

michiaki:いつ入れてるのか覚えてないけど、PATAは相当数のテイクやフレーズを入れてるんだよ。

PATA:適当にね(笑)。いや、言葉を間違えた。“適切”なやつを(笑)。

――昔からそんなに入れるタイプでしたっけ?

PATA:ううん、あっさり終わらせるタイプ。ただ、今回の3曲は時間もあって、何回も録っていたから、それが溜まっていっちゃっただけの話であって(笑)。そして最終的にどれがなんだか分かんなくなっちゃったという話。「この子はいつ生まれた子ですか? こっちの子は? もう、お父ちゃんは覚えてません認知してません」っていうフレーズも多々、見つかったりしたわけです(笑)。

――それが折り重なったことで、「Circle」は大曲の風合いになったわけですか。2曲目「Pshychogenic」は、プログレ的な構築性もあります。

PATA:ヨーロッパ盤とはドラマーが違うからね。前よりタイトな感じになったかな。こっちがやっていることは基本的に変わらないし、なにかを変えようって意識もなかったけど、ドラムの変化によって上モノも勝手に変わっているでしょうっていう。

――最近録ったテイクも相当入っているんですか?

PATA:今年の頭ぐらいには録ってるよね?

michiaki:録ってる。1年ぐらい前からまた触り始めたとき、その後に思いついたものは録っていってるから。

PATA:前のテイクをまた聴き直して、それも使いつつ新たなテイクやフレーズを考えたりして。ライブでは適当に弾いてるからどんなことやってもいいんだけど。いや、言葉が違った。ライブでも適切に弾いているんで(笑)。

Ra:INでは曲のベーシックができるとライブでちょっとやってみることもよくある。ライブでやってみて、どこのアレンジを変えようとか。(michiaki)

――フィーリングのままに弾いていると(笑)。「Pshychogenic」と「Circle」は、もともとヨーロッパツアーに向けて作った曲ゆえか、ヨーロッパの風土や文化にフィットした表情や香りを持っていますよね。

michiaki:ありがとうございます。ブリティッシュロック好きの自分としてはそう言ってもらえると嬉しい。

PATA:2009年のヨーロッパツアーでやった……よね?

michiaki:いや、微妙(笑)。シングルCDをグッズとして販売しただけだったかも(笑)。

PATA:「Circle」はライブでやった……、いや、やってないか(笑)。微妙だな、記憶が。

――いろんな意味でレアな2曲が蘇ったことになりますね(笑)。それから1曲目「Look At The Sky」が最新曲ですか?

michiaki:それも最新ではない(笑)。

PATA:その原曲デモで、クリックのパターンを作ってくれたのが神戸のライブハウスの子で。

michiaki:それをドラムのテツが「このクリックはズレてる」って言って。

――向山テツさんの話が出るってことは、2013年以前の話ですね、それは(笑)。

PATA:当時、関西でツアーをやっていたんだけど、ライブ後に楽屋でアレンジ作業ですよ、みんなで。

michiaki:Ra:INでは、曲のベーシックができると、ライブでちょっとやってみるってこともよくあるので。ライブでやってみて、どこのアレンジを変えようとか。だから「Look At The Sky」のベーシックなものは、Ryuが入るちょっと前にはあったと思う。でもベーシックを作りながら、そのまま放ったらかしちゃうってことも、Ra:INではよくある(笑)。そういうのが多いっすね。

PATA:この「Look At The Sky」も、あれからほとんどやってないからね。久しぶりにライブでやったときもあるけど、そこからまた数年、触ってないし。

michiaki:そういう曲がRa:INにはまだ何曲もある(笑)。「Look At The Sky」が今回収録されたのは、Ryuが6年前に録ったドラムテイクが残っていたから。

PATA:そこから手を付けていこうっていう(笑)。一番、手っ取り早いじゃん。ドラムテイクが残っているのがあるから、それからやって、まず出そうって。

――そういう感じで選ばれた3曲だったんですか。数奇な運命を辿って、ようやく形になった3曲。でも「Look At The Sky」は日本語詞の歌があり、分かりやすさもあるメロディも散りばめられている。「Psychogenic」はプログレッシヴさもあり、サウンドアプローチ面でもアコースティックな展開も持ち込むなど、立体的で構築的。そして「Circle」は、生き物のような熱さや生命力、そしてアレンジがどう展開するか読めない神秘性もある。うまいことバランスがとれた作品になりましたね。

michiaki:だからこの3曲で聴きごたえ十分でしょ?

PATA:それに今のしゃべりを、そのままキャッチフレーズにしてくれ(笑)。

Ra:INのライブは、当日ステージが始まってみないとなにが起こるか分からないんだよ(笑)。でもそれは“本日のライブ”ってことで。(PATA)

――現在のツアー『Look At The Sky Tour』の曲は黄金のポジションを与えられていますか?

michiaki:ライブでもちろんやってますよ。Ra:INは今年で21年目だけど、なんか初めて、こんな本気でツアーやっているのは(笑)。

PATA:去年からの流れからね(笑)。でも結成したころって、こんな感じだったよ。結成2年目のライブも、なんやかんや、すっげー廻ったもん。

michiaki:ああ、そうだった。

――今回の『Look At The Sky Tour』では、8月26日に横浜ベイホールでスペシャルライブがあったり、翌27日には横浜でのフェスもあったり、あと9月下旬にはRyuさんのデビュー40周年記念も兼ねたライブなど、盛りだくさんのツアーですね。そしてツアーファイナルは11月16日、川崎CLUB CITTA'です。

michiaki:ツアーファイナルもおもしろいライブやりますよ。

PATA:Ra:INのライブは、当日、ステージが始まってみないと、なにが起こるか分からないんだよ(笑)。多分ね、昔のロックミュージシャンも適当にやってるとこあるじゃん。それでみんなで合わせてるじゃん。あれは、なんとかなってるだけなんだよ。だって、ライブ盤を聴くと、おかしいところいっぱいあるから。でもそれは“本日のライブ”ってことで。

――予想外の展開、いろんな曲の膨らみ方をしますからね、Ra:INは。ライブ中のメンバーの演奏でのやり取りは、瞬間芸術みたいなもんですよね。

michiaki:そうそう。合うんですよ、たまに。

PATA:たまに合うと気持ちいいよね(笑)。毎回合うと、決まり事みたいに感じちゃって、すげーつまんないときもある(笑)。

――とにかくなにが起こるか分からないライブの演奏。刺激を求めてる方、本物のロックはどんなものなのかと思っている方は、Ra:INのライブを目撃すべきですよね。

PATA:なんか、マサ伊藤の断言みたいになってるぞ、オマエ(笑)。いや、レコードの帯に使いたいよ、さっきからオマエが言うことを。

――お褒めの言葉、ありがとうございます。

PATA:とりあえず8月下旬の横浜のライブ、その後も続くツアー。みなさん、観に来ていただきたいなと思っております。


取材・文=長谷川幸信

 

ライブ情報

Ra:IN New Maxi CD発売”Look At The Sky Tour 2023"
スペシャル・ワンマンライヴ『REVOLUTION ROCKS』

8/26 (Sat) 横浜ベイホール
 
YOKOHAMA SUMMER ROCK FES.
REVOLUTION ROCKS 2023

8/27 (Sun) 横浜ベイホール
<出演>
Ra:IN (PATA、michiaki、DIE、Ryu) with 宙也

本田恭章 "Band Members ASAKI / 澤英孝 / 森戸皓平"
80’s Rock Jam (有待雅彦、michiaki、本間 大嗣、潮崎裕己、村上孝之)

5X (ジョージ吾妻、マッド大内、ミワ斉田 、曽我 “JETTSOUL” 将之)
Saybow & the R+X+S (Saybow、原田ジュン、菊池琢己、Satomin)
SLAVE SISTERS with 松本淳、柏原輝
VVV with 田中一光、Kyoko
NO JOBs
Ra:INBOW (Monsters of Rock Special Band with 西田竜一)
 
Look At The Sky Tour 2023
9/30 (Sat) 澁谷サイクロン 西田竜一デビュー40周年記念ライヴ
10/19 (Thu) 水戸 SONIC (振替公演)
10/26 (Thu) 京都 都雅都雅
10/27(Fri) 名古屋 ell.SIZE
11/16(Thu)
CLUB CITTA'

■Ra:INオフィシャルサイト https://rock-and-inspiration.com/ 

リリース情報

Maxi CD「Look At The Sky」
発売中
<収録曲>
1. Look At The Sky
2. Pshychogenic
3. Circle
 
  • イープラス
  • Ra:IN
  • Ra:IN、15年ぶりの音源を携えて全国ツアー中 PATA(Gt)とmichiaki(Ba)に訊くライブと音源制作