テーマは“共鳴” 日本発の新作オリジナルミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』ついに開幕

2023.9.13
レポート
舞台

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2023年9月12日(火)、東京・よみうり大手町ホールにてオリジナルミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』が開幕した。

本作は、高橋亜子(作)×清塚信也(音楽)×鈴木裕美(演出)という錚々たるメンバーがタッグを組んだ日本発の新作オリジナルミュージカル。日本のミュージカル界を代表するクリエイター陣による新作ということで、開幕前から注目を集めていた話題作だ。主演にウエンツ瑛士/上川一哉(Wキャスト)、上山竜治/小柳友(Wキャスト)を迎え、いよいよ日本初演の幕が上がった。初日の本公演前に行われたゲネプロ(ウエンツ瑛士・上山竜治出演回)と囲み取材の模様をレポートする。


舞台という名のキャンバスに、個性豊かな役者という色を使って緻密な物語が描かれている。そんな印象を受ける美しい作品に仕上がっていた。

1960年代半ばのパリのとある美術館。20世紀初頭に不慮の死を遂げたとされる大画家アンドレ・デジールの作品を互いに愛するエミールとジャンは、運命的な出会いを果たす。デジールの魅力を語り合いながら二人が急速に心を通わせていくナンバー「俺たちのデジール」からは、彼らのどうしようもない高揚感が手に取るように伝わってくる。

繊細なエミールと情熱的なジャンという一見対照的な二人。しかし、一人ではできないことも二人一緒ならば無限の可能性が生まれる。そう気付いた彼らが声を重ねて文字通り“共鳴”していく様を体現する「二人なら」は、人と人とが繋がる尊さが凝縮された心に響く感動的なナンバーだ。

ジャンが語る言葉にエミールが耳を傾け、イメージを膨らませてキャンバスに絵を描いていく。この方法で次々と贋作(制作者や制作年代などを偽り、買手をだます意図のもとに制作された美術品)を生み出し、いつしか贋作ビジネスでお金を稼ぐようになったエミールとジャン。だが、2人の関係は最愛の画家アンドレ・デジールの「最後の作品」をきっかけに変化していくーー

高橋亜子と鈴木裕美によって約6年の歳月をかけて作られたという脚本は非常に練られており、伏線の回収が実に鮮やかだった。前半は輝かしい友情物語に胸が熱くなるが、終盤にかけて隠された真実に迫っていく怒涛の展開はまるでサスペンス。ストーリーを追いながら「そういうことだったのか!」と何度も唸らされた。

舞台セットは最小限に留められており、多くは役者と観客の想像力に委ねられている。シンプルなステージだからこそ、舞台中央のスクリーンに映し出される景色や絵画の映像が効果的に感じられた。シリアスなシーンの中にさり気なく笑いの仕掛けが組み込まれているのだが、その塩梅がまた絶妙。バレエやコンテンポラリーといったダンスシーンもあり、計2時間45分(休憩あり)の上演時間があっという間に感じられた。

清塚信也が手掛けた音楽も本作の成功には不可欠な存在だ。まるでパリを流れるセーヌ川のような心洗われる美しい旋律が劇場を包み込んだかと思うと、自然と情景が目に浮かぶのである。1曲の中でしっかりとドラマが息づき、そのメロディは登場人物が発する言葉や心情と一体になっているのだ。まるで音楽が芝居をしていると言っても過言ではないだろう。

このように劇中では本作のクリエイター陣の“共鳴”も確かに感じられた。そんな作品世界を生きるのが、8人の役者からなる登場人物たちだ。

感受性豊かで繊細な青年エミールは、天性の絵の才能を持つが故の孤独を抱えて生きていた。ウエンツ瑛士は、そんなエミールを透明感のある歌声と純粋な佇まいで表現することで役に説得力を持たせていた。

情熱的で世渡り上手な青年ジャンを活き活きと演じたのは、上山竜治だ。ジャンは少々お調子者なところもある憎めない人物なのだが、そんな彼を力強く真っ直ぐに演じる姿が生命力に溢れて魅力的だ。

透き通るようなソプラノで華を添えた熊谷彩春、誠実な芝居で存在感を発揮した戸井勝海、凛とした立ち居振る舞いが美しい水夏希をはじめ、幅広い役を演じきった6人のキャスト陣の安定感も素晴らしい。役者の表情や細かい仕草が肉眼で見える小・中規模の劇場で観たい、まるで繊細なオルゴールのような作品だ。

ゲネプロの前には囲み取材が行われ、エミール役Wキャストのウエンツ瑛士・上川一哉、ジャン役Wキャストの上山竜治・小柳友らの囲み取材も行われた。

>(NEXT)囲み取材の模様を紹介

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