「性暴力と心の傷」をテーマに前田敦子が挑んだ物語　三島有紀子監督『一月の声に歓びを刻め』予告編を解禁

2024年2月9日（金）公開の映画『一月の声に歓びを刻め』から、予告編が公開された。

『一月の声に歓びを刻め』は、『繕い裁つ人』『幼な子われらに生まれ』『Red』などで知られる三島有紀子監督の長編10作目となる映画。三島監督が47年間向き合い続ける“ある事件”をベースに自主映画から製作がスタートしたオリジナル企画で、「性暴力と心の傷」をテーマに挑んだ作品だ。三島監督自身の体験をモチーフにして作り上げた“劇映画”で、直接的な性被害の描写なしに作り上げられているとのこと。

「3つの罪と方舟」をテーマとした物語では、八丈島の雄大な海と大地、大阪・堂島のエネルギッシュな街と人々、北海道・洞爺湖の幻想的な雪の世界を背景に、人間たちの“生”を描かれる。洞爺湖近くにひとりで暮らすマキを演じるのは、『道頓堀川』『自虐の詩』などのカルーセル麻紀。本作で、約10年ぶりの映画出演を果たす。また、『蛇の道』『ゼブラーマン』などの哀川翔が八丈島で暮らし、男手ひとつで育てた娘の妊娠・帰省に戸惑う父親を演じる。そして、『もらとりあむタマ子』『旅のおわり世界のはじまり』などの前田敦子が、愛する恋人とどうしてもセックスができない女性“れいこ”を演じる。そのほか、坂東龍汰や片岡礼子、宇野祥平、原田龍二、とよた真帆らがキャストに名を連ねている。

北海道・洞爺湖。お正月を迎え、一人暮らしのマキの家に家族が集まった。マキが丁寧に作った御節料理を囲んだ一家団欒のひとときに、どこはかとなく喪失の気が漂う。マキはかつて次女のれいこを亡くしていたのだった。一方、長女の美砂子は女性として生きるようになったマキに複雑な感情を抱えている。家族が帰り静まり返ると、マキの忘れ難い過去の記憶が蘇りはじめる。東京・八丈島。大昔に罪人が流されたという島に暮らす牛飼いの誠。妊娠した娘の海が、5年ぶりに帰省した。誠はかつて交通事故で妻を亡くしていた。海の結婚さえ知らずにいた誠は、何も話そうとしない海に心中穏やかでない。海のいない部屋に入った誠は、そこで手紙に同封された離婚届を発見してしまう。大阪・堂島。れいこはほんの数日前まで電話で話していた元恋人の葬儀に駆け付けるため、故郷を訪れた。茫然自失のまま歩いていると、橋から飛び降り自殺しようとする女性と出くわす。そのとき、「トト・モレッティ」というレンタル彼氏をしている男がれいこに声をかけた。過去のトラウマから誰にも触れることができなかったれいこは、そんな自分を変えるため、その男と一晩過ごすことを決意。やがて、それぞれの声なき声が呼応し交錯していく。

解禁された予告編は、れいこ（前田敦子）が、レンタル彼氏（坂東龍太）を前に、「なんで私が、罪感じなきゃいけないんだよ」と吐露する場面からスタート。その後は、前夜に楽しげに踊り、一夜をともにした二人の姿が映し出される。そして、雪深い道なき道を歩むマキ（カルーセル麻紀）が「れいこ」と呟き、誠（哀川翔）が険しい顔つきで鉄パイプを手に握る姿も。そして、れいこが「わたし、6歳のときに変な男に変なことされたんで。自分の身体なんか、好きな人とできる身体じゃないなって」と明かし、泣きじゃくるのだった。幼心に罪深い影を落とした心の傷が、成長したれいこを今でも苦しませ続ける。

なお、予告編で前田がアカペラで歌うのは、奇妙礼太郎の「きになる」（作詞・作曲：早瀬直久）をカバーした劇中歌だ。三島監督は本作の脚本を執筆中に、とある映画館のカフェで同曲を偶然耳にしたとのこと。

『一月の声に歓びを刻め』は2024年2月9日（金）テアトル新宿ほか全国公開。