2025年4月開業予定の神戸アリーナは神戸の街をどのように変えるのかーープロジェクトを推進する3社代表のセミナーで語られた展望「365日、人が集まる場所に」
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神戸アリーナ(2025年春完成予定)
2025年4月に開業が予定されている日本初の270度海に囲まれた水辺のアリーナ・神戸アリーナ(仮称)。11月28日(火)、同アリーナに関する対談セミナーがオンラインで開催され、神戸アリーナプロジェクトを推進する株式会社One Bright KOBEからは代表取締役社長の渋谷順氏、朝日放送グループ株式会社ベスティ代表取締役 江﨑 仁祐氏、スカパーJSAT株式会社メディア事業部門経営企画部 兼 Sol Levante Sports株式会社代表取締役社長 森元 光一氏が登壇し、「次世代アリーナが描く新たな協創コンテンツとは」をテーマに今後の展望などについて語った。
神戸アリーナプロジェクトは2021年、神戸市公募の新港突堤西地区(第2突堤)再開発事業の優先交渉権を獲得した運営企業として、クラウドサービスを軸に行政デジタル化やスマートシティ等を手掛ける株式会社スマートバリューと株式会社NTTドコモが手を組み、アリーナの開発企画をNTT都市開発株式会社が担う、3社企業コンソーシアムによる民設民営のプロジェクト。「この世界の心拍数を、上げていく。」を存在意義とし、同アリーナの創出ほか地域活性化への貢献も目指すなどしている。
神戸アリーナは、収容人数が関西最大級の1万人。プロバスケットボールのB.LEAGUEのB2に所属(2023年12月時点)する神戸ストークスの公式戦、アリーナスポーツや音楽イベント、国内外の大型コンベンションなどに活用される。
One Bright KOBEの渋谷氏は、1995年に起きた阪神淡路大震災について触れ「2025年で節目の30年。30年間、神戸市は新しい開発がなかなかできずに復興に注力され、資源もそちらに割かれる傾向だった。ようやく復興から次のステップに移るタイミング」と神戸が新たなフェーズにはいっていることを指摘。
加えて「神戸港は約150年前に開港していますが、日本、関西のなかで海外から新しい文化がどんどん輸入してきたゲートウェイ。一時期はアジア1、世界一の港としての機能を持っていた神戸港が、震災もありいろんな形でしんどい時期も迎えました。しかしここから次の21世紀、22世紀に向かう新しい社会のあり方のなかでの、新しい価値を作れる都市だと思っている」と街の振興を期待。神戸アリーナの建設は、神戸市のウォーターフロントエリアの再開発計画のなかでも「目玉の一つである」とした。
さらに渋谷氏は「海外のアーティストを積極的に誘致したい。格闘技、アニメ、2.5次元、声優さんが活躍できる場、eスポーツなどいろんなイベントが用意されている」とすでにさまざまな分野から声がかかっていると明かす。ほかにもアリーナ近辺の賑わいについても言及。「アリーナを軸に、ICT基盤構想による神戸の新たなまちづくり、スマートシティも取り組もうとしています」「270度、海に囲まれている神戸港を目の前にした立地を生かし、食フェス、アートイベントなども予定しています。そして365日、人が集まる場所にしていきたい。(アリーナで)興行がない日も日常的に人が集う場所、年間300万人が集まるエリアを目指す」と語った。
スカパーJSAT株式会社の森元氏は「世の中的は配信にシフトをしていって、全世界的にその波は止まらない。(スポーツなどの)ライブは唯一無二のコンテンツになり、ライブコンテンツの価値はもっと上がっていく。そのなかで民設民営の神戸アリーナが生み出す可能性は非常に高い。これからはライブコンテンツの価値が大切になる」とし、同プロジェクトに参画した理由についても「自由度が高いものに吸い寄せられて、新しいコンテンツ、スペシャルワンなものを作れるところが魅力的」と語った。
朝日放送グループホールディングスの江﨑氏も「テレビはかつて(コンテンツの)“出口”として機能し、受け手も選択肢がテレビ以外になかったことから視聴率で商売ができていました。しかし現在は個人の趣味が多様化し、いくらでも出口が作れる時代になった。視聴スタイルが変化したなら、我々も事業スタイルを変えていこうと」と参画理由について話し、「特にスポーツの分野は可能性が高い。我々のグループが持つ映像やイベントの企画力、制作力、PR力を生かして新たなコンテンツを作り出していけるということがこの場所では可能。今後は顔の見えるコミュニケーションの時代、そこにビジネスチャンスがある」と可能性が大きいプロジェクトであることを強調した。
モデルケースの一つとなっているのは、2023年に開業した北海道北広島市にあるエスコンフィールドHOKKAIDO。プロ野球の北海道日本ハムファイターズの本拠地でもある同ボールパークは当初、交通の不便さなどがクローズアップされた。しかしふたをあければ経営的にも大きな成功を収めた。神戸アリーナの存在も、神戸ストークスの公式戦などをおこなうことで、B.LEAGUEの盛り上がりの後押しになることが予想される。森元氏は、エスコンのようにスポーツをセットにする事業には「掛け算以上のものになっていく価値がある」と言い、江﨑氏も「(神戸アリーナは)神戸に根差したものになる。もっともっといけるんじゃないか」と想定以上の成果が出ると見込んだ。
渋谷氏は、「日本はグローバルに見たら、市場があるのに遅れていて「もったいない」と言われる。そんな方々にも「神戸、やったやん!」「進んでるな」と(思わせたい)。いろんな領域の方々が「日本の神戸にすごくおもしろいプロジェクトがある」とやって来るくらいおもしろいものになれば」と世界を意識。「ニューヨークに行ったら(現地の人は)「マディソン・スクエア・ガーデンを見せたい」となる。そういう象徴的なものになれば良いなと思います」と神戸アリーナを街のシンボルにしていくことを誓った。
取材・文=田辺ユウキ