「20年続けてたらいろいろある」ET-KING、nobodyknows+、ONE☆DRAFTら全12組が熱唱、新しい出会いと再会の喜びに溢れた『FILTER88 ~6年ぶり!! 復活祭!!~』

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音楽
2024.1.30

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『FILTER88 ~6年ぶり!! 復活祭!!~』2023.12.10(SUN)大阪・GORILLA HALL OSAKA

2023年12月10日(日)に大阪・GORILLA HALL OSAKAで『FILTER88』が開催された。2002年にスタートし、今回も出演しているET-KINGやnobodyknows+らがブレイクする前から出演している、若手ヒップホップアーティストの登竜門とも言えるイベントで、今年は6年ぶりの開催となる。かつてはアメリカ村のclub JOULEを拠点に不定期で開催されてきたが、今回は2023年にオープンしたばかりの新しいゴリラホールが会場となる。

2Fがラウンジのように広いスペースになっているため、開演前からみんなお酒を飲み交わす賑わいっぷり。筆者を含め、アメ村でイベントが始まった当時を知らない人たちにとっては、もしかすると最近のライブハウスとはまた違った刺激的かつ新鮮なムードで、長年イベントに通ってきた人たちにとってはきっと懐かしさを感じたのではないだろうか。新しいライブハウスでの開催とはいえ、忘年会や同窓会のような、勝手知ったる居心地の良さがすでに充満していた。

忘年会や同窓会のような感覚は、この日の出演者にとっても同じ。デリカテッセン、ET-KING、nobodyknows+、ONE☆DRAFT、シクラメン、TEE、天才凡人、WHITE JAM、HIPPY、TSUBOI(アルファ)……とイベントを語るに欠かせない面々から、MACK JACK、Skip the Chips、空音……と初出場組を含む若い世代までが勢揃い。約8時間にわたって、とにかく出演者自身がこの日を楽しみにしていたことがわかるステージが、続々と繰り広げられていった。そしてたくさんの出会いと再会、気づきのある1日となる。

MACK JACK

MACK JACK

オープニングアクトのMACK JACKは、青春時代の憧れの先輩たちと同じステージに立てる喜びを露にしながらも、侍JAPANの大谷選手よろしく「憧れてるだけじゃなくて、このステージでぶちかましに来てるねん!」と気概を見せて、アグレッシブに「マイメン」を披露。福岡&熊本出身の2ボーカルユニット・Skip the Chipsも「6年ぶりに開催という大事なイベントに、声をかけていただいてありがとうございます!」と軽快なダンスと歌を届けてアピールして、大いに盛り上がりを見せる。

Skip the Chips

Skip the Chips

しばらくすると、イベント最多出場のTSUBOI(アルファ)が名誉顧問として、諸注意をアナウンス。21年前から知っている人もいれば、初めましての人もいるが、ここで知り合ったのも何かの縁だからと、無理のないように助け合っていこうと。「ヒップホップはユニティーです」と、出会いを大切に支え合おうと呼びかけた。この開会宣言が、この日のステージを、そして『FILTER88』のことを言い表していたような気がする。

TSUBOI

TSUBOI

「それでは、ここからスタートです!」とはいかず。常連組の年長者たちも集っているということで、「準備運動ラップでも」と、TSUBOIが<右のスピーカー問題なし、左のスピーカー問題なし、まんまるキックまるでゴムまり、スネアがバシ、スネアがバシ……>と口火を切る。「ミカサスカサ」(アルファ & DJ TASAKA)だ。これにはフロアから歓喜の声が上がる。さらには、袖で見ていたMC Panchoが呼び込まれて参加。イベントはまだまだここからだというのに、早くもハイライトを叩き出した。

デリカテッセン、MC Pancho

デリカテッセン、MC Pancho

デリカテッセンは、BA-K(MC)が「ライブ前に2階をウロウロしてたら、2002年のフライヤーを紙で持ってる人がいました」とトーク。21年もイベントが続けば、当時を知る人もいれば、来れなくなった人もいたり、見かけなくなったと思えば子供を連れて来た人もいたり。有名になった人もいたり……とイベントと共に積み重ねてきた月日に想いを馳せる。アニメ『ONEPICE』エンディング曲にもなった「アドベンチャーワールド」、再びMC Panchoを呼び込んで「Mic Check」、「Sekkyo」と立て続けに披露してフロアが沸騰。とにかく仲良く楽しそうな様子を見ているだけでもアガる。

空音

空音

先輩たちからのバトンを受けた、空音は2001年生まれ。「1歳の時から始まったイベント。誰やこのクソガキと思われるかもしれないですけど、楽しませる自信がある」と宣言。また、主催の夢番地・大野氏には、17歳の頃からお世話になっていると語り、空音なりに、6年ぶりに復活を遂げたイベントに花を添えたいと「月ひとつ」をメロウに贈る。堂々と硬派に想いをぶつけるステージは、とても痛快だった。

天才凡人

天才凡人

ミ⚪️キーが歌って踊る、子どもたちに大人気のあの楽曲を思わせる「しょんぼり三ツ木」で登場して、のっけから大盛り上がりとなった天才凡人。メンバーのHyonnは、この後に登場するWHITE JAMのリーダーでボーカルのSHIROSEと実の兄弟。地元大阪ということもあり、より同窓会のような、親戚の集まりのような「温かいイベントだ」と語る。上京する前はニッカポッカを履いて、ゴリラホールのある周辺で働いていたそうで、今ではこうしてステージに立っていることを感慨深そうに語っての「人生交差点」はとてもドラマチックだった。黄色い声援があちらこちらから飛んだWHITE JAM。SHIROSEは、「実のお兄ちゃんと楽屋が一緒て嫌ちゃう?」と話して笑いを誘う。和やかなMCと打って変わっての、しっかりと聴かせる美しい歌声で魅了。手を振りクラップで応えるフロアには、キラキラとした笑顔で溢れていた。

WHITE JAM

WHITE JAM

シクラメンのステージは、野球のユニフォームが似合う、土埃が立ち込めたような泥臭さに胸打たれる。機材トラブルのアクシデントもなんのその、百戦錬磨のライブ力で瞬く間に会場をひとつに。DEppaが「オファーをもらってから、1年で一番楽しみにしてきました!」との言葉通り、おもいっきりこの瞬間を楽しむように、縦横無尽に駆け回っては、歌いながら肩を組んでモモ上げダッシュをしたりとハイカロリーなステージングをみせる。キャリア15年選手の男たちに、ここまで全身全霊で汗をかきながら想いを届けられちゃ、グッとくるに決まっている。

シクラメン

シクラメン

さらには「昔はなんばHatchとかでライブやったんです。諦めたくないんです! ダサいかもしんないけど、次はここ、ワンマンで埋めたいです!」と訴えかけてからのラスト「MUSIC」。気づけばステージを降りて、フロアの真ん中で叫ぶように歌っている。拳が続々と突上がり、「FILTERから愛と平和!」が叫ばれてピースサイン。「サイコー!」と歓声が飛び、「次はHIPPY!」と言い残してステージを後に。これでもかと熱を上げ、見事にバトンを繋いだ。

シクラメン

シクラメン

かと思いきや、袖でTSUBOIが笑ってる。ステージに現れて、「次、HIPPYちゃうねん、ワシや。今から業務連絡(MC)しなアカンのに出にくくしてくれてどないすんねん!」とツッコミ。すごい勢いでステージに戻って土下座をするDEppa。なかなかライブじゃ見れない様子に場内大爆笑。めちゃくちゃいいライブの後の土下座の緩急! コンプライアンスの厳しいこのご時世に、関係性とリスペクトと愛が凝縮されたひとコマとしてみんなで笑えることの素晴らしさに、少し感動した。

HIPPY

HIPPY

そんなユニークな一幕から、9年ぶりの出演となったHIPPY。この間にメジャーデビューを果たし、シンガーとして成長した姿を見せる。最前の観客とハイタッチをしたり、ひとりひとりに語りかけるようにして歌を届けていく。一度は辞めようかと思い悩んだ日を乗り越え、今日ステージに立てている喜びを語り、大切に歌われた「大丈夫さ」。<ゆっくりでゆっくりでいいんだよ><心配いらないよ お前は一人じゃない!>の言葉が沁みた。

TEE

TEE

そんなHIPPYと同じ広島県出身の同世代で、共に支え合い、刺激を与え合ってきた盟友ともいえるTEEが登場。スモーキーな歌声で観客の心を掴んだかと思えば、MCではマシンガントークで笑いを誘ったり、キレッキレの動きでフロアのテンションを上げたり、HIPPYと「dear DREAMER」をコラボして熱い抱擁を交わしたり……と、30分のセットでめくるめく展開していく。

TEE、HIPPY

TEE、HIPPY

「音楽が閉ざされて、歌う場所がなくてこのマイクを置こうと思ったのよ。でもね、諦めずにいれたのは仲間だったり、家族だったり、ファンのみんなだったり……その声援がこのステージに立たせてくれました。辛いこと、むかつくこと、死にたくなることだってあるとおもう。だけど諦めへんかったら必ず晴れるって。そんな時にふと空を見上げて、でっかい空を見上げて自分のちっぽけさに気づいた日にできた曲を」と歌われた「空」。そして、ラスト「ベイビー・アイラブユー」を聴きながら、大切なものが何かをみんなで確かめ合うような時間は特別だった。

ONE☆DRAFT

ONE☆DRAFT

「MUSIC」をアグレッシブに歌い、鼓動音を高鳴らせて瞬く間にハイテンションへと誘ったONE☆DRAFT。「先輩方も同期も後輩も、このイベントを盛大に盛り上げて、成長していくところを見れて、みんなに会えて嬉しいです。みんなの大事な、貴重な人生の1日をここに来てくれて、今日という日を一緒に過ごそうと集まってくれてありがとうございます」と、喜びと感謝を真っ直ぐに伝える。昨年2月に、喉頭がんと診断され治療に専念してきたLANCE。この日、このステージが、ONE☆DRAFTの復活ライブイベントとなった。

ONE☆DRAFT

ONE☆DRAFT

「いろいろあって、1曲しか歌えない体になってしまったんですけど……今日という1日が将来の思い出になる日が来た時に、この景色を思い出すんじゃなくて、一人一人の顔を思い出せるように。今日まで歌ってきました。いろいろ考えて迷ってたんですけど、成長しているということは、生きようとしてんだなって。……もう1曲歌っていいですか? 今日という日を思い出す時に、みんなの顔を思い出す日になるように」と、歌われた「ワンダフルデイズ」。じっと聴き入りながら、一緒に口ずさむ人、涙を流す人。この瞬間、瞬間の尊さを噛み締めるように、1曲に込められた折々の想いと喜びを分かち合った。最後はみんなで人差し指を天に掲げ、ステージを後にしたLANCE。袖で主催・大野氏と抱き合う光景を目にして、また目頭が熱くなった。

ONE☆DRAFT

ONE☆DRAFT

nobodyknows+

nobodyknows+

今度は「Hero's Come Back!!」で、颯爽とステージに現れ、ぶっちぎりのスタートをきったnobodyknows+。続け様に「Let's Dance」でフロアのテンションをぶち上げてダンスホールに変える。ステージ上ではプロレス技のコブラツイストを掛けたりと大盛り上がり。これでもかとフロアの熱気をグングン上昇。

「デビューしたての頃から出させてもらってるイベントで、いろんな想いをそれぞれ持って来てます。とにかく今日を一番楽しみたいと思ってます!」と、披露された「ココロオドル」で大合唱の最高潮に。最後の「イマイケ サンバ」まで、踊らずにはいられない圧巻のステージをみせつけた。

nobodyknows+

nobodyknows+

ET-KING

ET-KING

そして、ラストはET-KING。「愛しい人へ」に始まり「こっちこい」とアンセムを連投。「相変わらず、歌ってます。この出会いに感謝!」とメンバーみんなで感謝を伝えながら、この日1日かけて繋がれたバトンを、20年続いてきたイベントの想いを、しっかりと握りしめながら、未来へと繋いでいくようなステージに胸が熱くなる。「チギレ feat.デリカテッセン」では、デリカテッセン&Panchoも登場。アメ村で遊びながら、共に切磋琢磨してきた今日までの日々に想いを巡らせながら歌われ、はち切れんばかりの笑顔で歌う姿が印象的だった。

ET-KING、デリカテッセン、MC Pancho

ET-KING、デリカテッセン、MC Pancho

「いろんなこと経験してきて、いろんな仲間がおったからたくさん曲もできたし、みんなに音楽を届ける時間をつくってもらえようになりました!」と今度は「新恋愛」。Panchoもフロアで観客に混じってしみじみと聴いている。

「長いことやっとったら、初めはおもろいと思ってたことがしんどなってもうたり。あたりまえやと思ってもうたり。人間、できてへんから忘れたあかんこと忘れてもうたりすんねんけど……。あんとき、ああやったなみたいな話するの好きちゃうねんけど、たまにはいいね。あの時を思い出させてくれる、FILTERほんまありがとう! これから先を描いていくには、パッとふりかえることも大事なんかなと思います」とコシバKEN。

「ET-KINGは来年、結成25周年です。いっぱい仲間もできて、別れももあったし、しんどい時、どうしていいかわからん時、さっきステージに立ってくれた仲間とか、大野さんとか、みんなが顔あげてくれて。しっかり歌え!と、お前らが大阪の看板やぞ!と言うてくれました。胸張ってそう言えるように、まだまだ夢みていかなあかんなと思います。今日はほんまに、どうもありがとう!」と、最後は「ギフト」を披露。歌詞の通り、一生忘れられないような、宝物のような時間を共に過ごすことができた。

ET-KING

ET-KING

終演後、TSUBOIが主催・大野氏を呼び込んで挨拶。TSUBOIが「約束をしたけど、当日になってめんどくさくなることがある。だけど、次に行けばいいやと思っていたら、次がなくなることもある」ということを、TSUBOIが話していて改めて考えさせられた。そして大野氏が「いろいろあった」と振り返った通り、20年以上も月日が経てば、その間、みんなそれぞれにいろいろあったはずだ。この日のように新しい出会いや再会の喜びがあれば、別れもあっただろう。

いつかまた、と思っていた日が来ないこともある。だからこそ、勇気を出して一歩前に踏み出してみたい。会いたい人には、会える時に会って、伝えたい想いはしっかりと伝えたい。簡単なようで難しい、あたりまえのようで忘れてしまいがちで後回しにしてしまうような、そんな大切なことを再確認させてくれる1日だった。そして、ひとりじゃ難しいこともたくさんあるからこそ、支え合いながらみんなで乗り越えて前に向かおう。そんなメッセージや思いやりに溢れた歌にたくさん背中を押された。ヒップホップはユニティーである。生きていればいろいろあるけど、ひとりじゃない。『FILTER88』が続く限り、ずっと歌い続けている限り、大切なことを忘れずに、未来に向かっていけそうだ。

取材・文=SPICE編集部(大西健斗) 写真=『FILTER88』(撮影=渡邉一生)


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