梅津瑞樹、プレビュー公演と本公演は「二度おいしい」ーーミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』インタビュー到着
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梅津瑞樹
韓国発のミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』が、2月15日(木)〜2月25日(日)に東京の草月ホール、3月2日(土)〜3月3日(日)にて松下大阪のIMPホールにて、日本キャスト版として上演される。ダイン役の梅津瑞樹へのオフィシャルインタビューが到着したので紹介する。
韓国で数々の賞を受賞したミュージカル作品の日本版として、2023年7月に1日限りのプレビュー公演を公開した、ミュージカル『伝説のリトルバスケットボール団』。高校生たちの青春やいじめへの悩みなどを繊細に描き、心地よいナンバーで青春を追体験するミュージカルの本公演が間近に迫っている。演じるのは橋本祥平、梅津瑞樹、糸川耀士郎、吉高志音、太田将熙、平野良の実力ある俳優たち。6人のキャストが様々な役柄をエネルギッシュに演じ分けしながら、楽しくも感動する物語を紡いでいく。
今回はダイン役の梅津瑞樹にインタビュー。ダインは高校生の幽霊3人組のうちのひとりで、黒縁メガネで知的な印象を受ける。その反面、ポップなナンバーや表情によって楽しそうな様子も見せるが……。プレビュー公演という新しい試みや、梅津の学生時代の演劇活動について話を聞いた。
シンプルで観やすい話の構成が魅力
――プレ公演から約半年経ちますが、今の心境は?
梅津:率直に、だいぶ月日が経ってしまったなと思います。もちろんその間、色々とお仕事をしていたのであっという間でした。思い出し稽古が始まりますが、覚えているだろうか。少し恐ろしいですね。
――最初に脚本を見た時の印象、感想は。
梅津:すごくシンプルだなぁと思いました。起承転結や話の構成の仕方、難しくなくわかりやすい。でも後半からは急に色々発覚して突然シリアスになるので、その辺りは韓国の映画やドラマの感じを彷彿させられました。
――普段から韓国ミュージカルなどを見るのでしょうか。
梅津:ミュージカルはあまり見る機会はないですが、映画はちょくちょく見てます。邦画に飽きると洋画、洋画に飽きると邦画というのを繰り返して、日本語を聞きたくないなと思うときは韓国映画を見ます。
――梅津さんから見る、韓国映画のおもしろさは?
梅津:顔で言えば同じアジア人なので日本も韓国も似ていますが、韓国の俳優さんたちはどちらと言うと濃いお芝居をする。アメリカ映画のほうに近い演じ方なのかなって思います。そういう演じ方が見ていてとても面白いです。
――ダインという役柄の魅力について。
梅津:ギャップがあったり、少し可愛らしいところが魅力ですね。そういう風に役作りしたというのもありますが。ダインにとっては海のシーンがクライマックスに近いと思っています。もちろんその後にも見どころはありますが、ダイン個人としてはそこに感情を持っていくのに一番効果的な役作りはなんだろうと考えて、ああいう感じになりました。
幽霊3人は不条理なことに振り回されて亡くなっています。ヘビーなリアルがある反面、死してなお明るく振る舞う3人。死のうとしていたスヒョン(橋本祥平)もいますが、彼のように実際に生きている人間よりも生き生きとしている、そんなところが魅力でしょうか。
――ダインという役柄の役作りのためにしたことは?
梅津:ないですね。あえて言うならば稽古場の雰囲気づくりをしました。探り合いが稽古場で最初は発生していたので、率先してふざけていって、なにしてもいいんだよという雰囲気を作っていった感じです。コーチ役の平野さんと僕が年長だったということもあって、まずは環境を整えていったということもあります。最終的にはみんななんでもできるような、言えるような感じになりましたけどね(笑)。
――作品自体が持つ魅力について。
梅津:重複してしまいますが、シンプルで見やすいところですかね。公演時間も長すぎない。そして歌がすごくキャッチーだなと思っています。どれも印象に残りやすいんですよね。シャワー浴びながら歌ったりもしちゃうくらい。稽古の休憩時間などにもみんなでどの歌が好きかなんて話もしていたのですが、結構みんなバラバラでした。
――梅津さんはどの歌が好きですか?
梅津:僕はもちろん「アイスの曲」と言わざるを得ませんね! 他にはクライマックス付近の曲や、スヒョン(橋本祥平)とサンテ(太田将熙)が歌う曲も。ジェットコースターに乗っているような軽快で不思議な良い曲でした。すごくポップなメロディーなんですが、歌詞がすごく切なくて。
――覚えやすいという意味での「好き」でしょうか?
梅津:いや、メロディーがすごく絶妙なんです。自分が知っている歌や曲の王道とはちょっと違う、一段階外したところから入ってくるような譜でしたね。そこさえクリアしてしまえば覚えやすいのですが。
――バンドさんがステージ後方に居て生演奏をされるんですよね。
梅津:軽快に前に進んでいくようなテンポの曲が多いので、あまりバンドの方とセッションをしているような感覚はなかったですが、「アイスの曲」は特に気を付けていたことがありました。僕は役者で、ミュージカルを多くやってきているわけではありません。ではどういう風に歌を表現しようかと考えた時、芝居の流れを強く意識して歌うことでした。微妙にニュアンスを変えながら歌ったりもしています。そうすると、軽快なテンポの曲では感じなかったことが、繊細な「アイスの曲」だとバンドの皆さんがこちらに気を使いながら弾いているのが非常によくわかりました。なので、こちらも歌で会話するような雰囲気で……、そうやって歌うと応えてくださるんですよね。これがなるほどセッションか、と。おもしろかったです。生でバンドさんが居る意味を肌で感じました。
プレビュー公演と本公演で「二度おいしい」
梅津瑞樹
――プレビュー公演という試みについて聞かせてください。
梅津:プレビュー公演の役割は、「周知する」ことと言いますか。作品のクオリティがある程度担保されているということが分かったうえで、本公演がある。それってすごく良い試みなんじゃないかなと思いました。前回は大きめの会場でしたが、本公演は違う劇場で空間が変わるので、プレビュー公演を観に来た人にとっても見え方が変わると思います。僕らもまた繊細な部分を伝えやすくなりますね。ある種「二度おいしい」とも言えるのかな。なかなかこういう試みはありませんでしたよね。
――セリフや歌などは、どのくらい覚えていられるのでしょうか?
梅津:先日バスケの稽古をして、プレビュー公演の映像を見返しました。正直覚えているかだいぶ不安に思っていたのですが、意外と覚えているなと。ただ、ミュージカルなので歌やダンスナンバーが多く、会場も違うので複雑なダンス中の立ち位置とかは見当がつきませんでした。セリフはなんとなく覚えてはいるのですが、また覚え直さないととは思っています。
――時間があいて再度同じ公演をやるのは2倍大変?
梅津:前回は一か月しっかり稽古をして1日だけだったので、よりお祭り感があったというか。本番を迎えてすぐにもう終わってしまった……というような。韓国の方々も観に来てくださって絶賛していただいたのですが、始まったという実感も終わったという実感もあまりないままに終わってしまった感覚ですね。今回はわりと長い期間場を重ねる中で、見えてくる景色を大事にしながらやりたいなと思います。
――プレビュー公演での稽古場について教えてください。
梅津:終始なごやかでした。最初は緊張感がありましたが、前半は脚本も重くないので、一人一人が楽な状態で作っていかないとなと思い、最終的には各々自由に表現を出しながらおもしろく作っていったという感じになりました。楽しかったなぁ。ダンスを抜きにすれば(苦笑)。
――ダンスを抜きにすれば、ですか?
梅津:ミュージカルなので、当たり前のことながら歌とダンスがあります。その両立って実はすごく大変なので、僕は今でも歌とダンス両方を上手くできてしまう人のことが信じられません。ダンスは飛んだり跳ねたり上下運動もあるじゃないですか。そんな中で声を出すと、ブレたり切れたりして普通に歌うときよりも真っ直ぐに声が伝わらないはずなんです。音程を安定させつつ、歌詞をきれいに発声し、ダンスも手を抜かず全力でするのはすごく大変なことだなと、この作品の稽古をしていて改めて思いましたね。
――ダンス中もスポーツの動きが取り入れられていましたよね。
梅津:バスケをハードに練習するというシーン。バスケット監修のスタッフさんと、ドリブルやパスの動きを取り入れたダンスシーンでしたね。でもそれはもはやダンスじゃなくてバスケなんですよ! バスケをしながら歌うって! とても大変でした。
――本公演に向けて、今回の稽古ではどんなところを重点的にやりたいですか。
梅津:個々課題はあると思いますが、一番課題となるのは歌とダンスですね。それ以外のバスケや役作りに関しては完成していると思います。
――キャストはそれまでにすでに共演歴のある方が多いですが、この人は役とすごく合っているなと思われた方はいますか。
梅津:今となっては稽古でひと月を共に過ごしてきたので、もうみんなその役にしか見えません。でも昨年殊更に僕と一緒にいる機会がすごく多かったのが、スヒョン役の橋本祥平という男です。誰かに振り回されたりする役が似合う人です。そういう意味でも彼はすごく主演っぽい性質をしてますよね。別作品ですが、彼が命を投げ出すことを考えていて、僕がそれを止める役という今回の舞台の内容に似たお芝居をしたこともあります。そんな妙な絡み合いをすることが多かったので、そういう意味でも橋本祥平のスヒョンは特に合っていたのかなと思います。そういえば去年は橋本祥平イヤーでした。
悩み続けた学生時代と現在――人生の暗と明。
――質問は変わりますが、梅津さんはどんな10代でしたか。
梅津:恥の多い10代を送ってきました。孤狼感と言いますか、当時の日々が身を結ぶ、結実するとは思えないという思いを非常に強く持っていた気がします。中・高時代は演劇部で多忙な日々を過ごしていましたが、学生時代はいつか終わってしまうものであり、この日々に意味はあるのか、この演劇が自分の為になるのかと。将来も不安で、漠然と「やりたいこと」はあれど周りに同じ熱量を持つ人がいない。僕の「やりたいこと」をやることで集まって来た面白い人たちも、全員が同じ方向を向いているかと言えばそうでもない。そういう虚しさを感じていたこともありました。
だから今こうして演劇ができて、仕事をしていてというのは本当に良かったと感じています。好きなもの、自分の作りたいものを作って生きていられるのはすごくハッピーです。
――学生時代の演劇で印象に残っていること。
梅津:今は芝居の良い悪いが自分の中に明確にありますが、当時はただ先輩から受け継いだこと、学生特有の厳しい上下関係の中で活動することに必死でした。稽古では声が大きいことが正義で、とにかく大声で発声練習をしていました。その頃に変声期が来たので、今みたいな低い声に。部活をやめようと脱走したこともありました。先輩には部室に呼ばれ、部長や同級生からは相談してくれれば良かったと言われ。なぜ楽しい振りをするの? と、胸中複雑な思いを抱きながら、結局は部活に戻りました。
――その時の経験が今に役立っていること。
梅津:根性、ですね。「この時の演技プランが今も役立っています!」ということはなく。しかしどんな状況でも芝居を続けなければならない「Show must go on」の精神は、文化部ながら運動部のような恐怖政治の中で生き抜いてきただけあり、根性は人一倍あります。どんなに体調が悪くとも怪我をしていようともやらなければならない。
――文化部ですが運動部同様の体力が求められますよね。
梅津:今でこそ、各セクションの方々が自分たちの仕事をします。音響さん、照明さん……そういう人たちが舞台を作ってくれています。学生の頃は舞台に関する全てを自分たちでやらなければならない。それに比べれば今はすごく楽です。この世界に入って驚いたことのひとつでもありますね。ただ、劇団に入っていた頃はそういうのも自分たちでやっていました。重たく高価なプロジェクターを、狭い階段を上っていった先のブースに取り付けたり。今は役に向き合える時間が増えているので、すごく幸せです。
――キラキラした「青春」にまつわるエピソード。
梅津:日なたの人間を妬み嫉みながら日陰で生きてきた人間にはなんて辛い質問(苦笑)。強いて言うなら、自分でサークルを立ち上げ、運営していた大学生の時ですかね。自分でやりたいことをやったということは、ひとつの成功体験につながっています。サークル活動やグループ展をする中でみんなに気を配ったりするのはすごく大変でしたが、今思えばその大変な日常が僕にとっては「青春」だったのかもしれません。
――最後に公演内容の質問に戻ります。演じるのが楽しみなシーン。
梅津:うーん、全部楽しみです。好きにさせていただいたのですが、これからもっと面白くできたらと思います。前半は心くすぐられるシーンも多いので、そういう楽しい場面はもっと良くしたいな。
――ここを特に見てほしい! という見どころポイントを教えてください。
梅津:終盤の僕ら幽霊ともう一人とのとあるシーンです。僕のような10代を否定しがちな人間でも、忘れているだけで思い返すと胸がきゅっとする日々があったんじゃないかなと思う、良い作品になっていると思います。何も感情を動かさないまま、それっぽく演じることはできます。でも演じるときに過去を思い出して、ちょっとした恥ずかしさが自分の中に発生すること。その部分が実は青春なんじゃないかな。終盤のこのシーンは、そういうちょっと恥ずかしい心地もする「青春」を思い出させてくれる場面です。
――公演の意気込みをお願いします。
梅津:僕は30代ですが、今回は高校生役です。振り絞れば何かが出てくるもので、高校生成分や、経験したことがないはずの楽しかった青春の成分を抽出して僕のダインが生まれました。今回はその先のテクニカルな部分のダンスや歌という課題を絞っていきつつ、更に良いものをお届けできたらいいなと思います。
そしてアイスは食べるし、海にも行く、幽霊も出ます! 夏感がすごいのに、冬の一番寒い時期にやるんですよ。冷え性の方にも、寒いのが苦手な方にも、心の方は温かくなっていただきたいです。
――ありがとうございました。
取材・文=松本裕美
公演情報
<東京公演>2024年2月15日(木)〜2月25日(日)草月ホール
<大阪公演>2024年3月2日(土)〜3月3日(日)松下IMPホール
【キャスト】
スヒョン役 橋本祥平、ダイン役 梅津瑞樹、スンウ役 糸川耀士郎、ジフン役 吉高志音
サンテ役 太田将熙 ・ ジョンウ役 平野良
<バンドメンバー>
キーボードコンダクター:田中葵、ギター:朝田英之、ベース:澤田将弘、ドラム:足立浩
【スタッフ】
作 :パク・ヘリム
作曲:ファン・イェスル
オリジナル・プロダクション:アンサン文化財団、IM Culture
演出・振付:TETSUHARU
日本語上演台本・訳詞:私オム
協賛:スポルディング・ジャパン
企画・制作:FAB
主催:FAB、サンライズプロモーション大阪
(c)リトルバスケットボール団 製作委員会
【公演HP】http://littlebasketball.jp/
【公式Twitter】@_littlebasket(ハッシュタグ:#リトルバスケ)
【公演に関するお問い合わせ】http://info@fabinc.co.jp