大トリは¥ellow Bucks! ph-1、舐達麻、Dynamic Duo、Lee Young Ji等、日本・韓国のHIPHOPアーティストが集結した新たなフェス『GO-AheadZ(#ゴーアヘッズ)』最終日をレポート!
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¥ellow Bucks
日本と韓国のヒップホップアーティストを中心にさまざまなジャンルのアーティストが集結したイープラス主催のフェスティバル『GO-AheadZ(#ゴーアヘッズ)』。2日目も盛りだくさんだった。午前中はDADA、Kik5o、VivaOla、Bleecker Chromeといった勢いのあるニューカマーたちがフレッシュなパフォーマンスを披露した。お昼帯にはHIYADAMが登場。盟友・Yohji Igarashiとともに「Opera」からライブをスタートした。「人と違うことをする」というヒップホップイズムを追求する彼らは「I RAVE U」や「Mess」(JUBEE)といった代表曲をプレイ。最後に「5月にアルバム出ます!」と大きな発表をしてからステージを降りた。
HIYADAM
Lunv Loyalは地元・秋田の土崎港をテーマに制作した傑作アルバム『LOYALTY』の世界観をステージで再現。地元の祭囃子をサンプリングしたSEが流れると10人の女性ダンサーに担がれた籠に乗ってLunv Loyalがステージに現れ、そのまま「SHIBUKI BOY」へ。2曲目の「高所恐怖症」では男性ダンサー10人とともにパフォーマンスした。「LOYALTY」「存在」「KAZE」に加え、最後に披露された人気曲「100」では男女のダンサー約20名とともに芸術性の高いステージを見せた。
Lunv Loyal
Only UとHideyoshiの時間帯の幕張メッセは、真夜中を彷彿とさせるハイエナジーな空間となった。Only Uはリリースしたばかりの「LOVE DIVE!」をはじめ、「NEON SIGN」や「STRANGER」などパワフルなパフォーマンスでフェスのテンションを牽引した。Hideyoshiは観客に「まだまだ足りない」と大きな歓声を求めた。さすがのライブ巧者だ。Tokyo Young Visionのメンバーもフィーチャーして「MAKE IT BOUNCE」「百鬼夜行」や「Suicide」(BADHOP)などをプレイして場内を大いに盛り上げた。
Hideyoshi
Paleduskは日本はもちろん世界でも活躍しているメタルコアバンドだ。この日もヨーロッパツアーから戻ったばかりだという。「僕らはバンドの中でも変わった音楽をやってて英語で歌ってるからとっつきづらいとこもあるかもしれないです。でも(Paleduskのライブを)初めて観る人が多いなら一番良いものを観せたい。知らないアーティストをちゃんと観て、楽しもうとしてるみなさんの姿勢にリスペクトを感じました。はっきり言って今日はアウェイだけど、アウェイを愛してからホームになっていくと思うんで、みんなが次行くライブがバンドになるようにがんばります」と言って、日本初演奏となる「PALEHELL」や、Hideyoshiをフィーチャーした「SLAY!!」を凄まじいパワーでパフォーマンスした。
Paledusk
CHANGMOのパフォーマンスは圧巻だった。当たり前のようにラップがうまい。声が良い。さらにワードの発音が正確で、声量に安定感があり、フロウも多彩。サービス精神も旺盛で、ショーマンシップにあふれたライブアーティストだった。しかも楽曲センスも抜群なのだ。「Prime Time」(The Quiett)「PURE RAGE」「BAND」といったトラップ、「BIG LOVE」(Paul Blanco)のような聴かせるミディアムテンポのEDM、メロディアスな「TAIJI」と幅広いサウンドにラップを乗せて実力を見せつけた。
CHANGMO
日本のショーマンといえばDJ CHARIだろう。登場とともに「こんにちは〜。アンニョンハセヨ〜」と挨拶して「GOKU VIBES」「ビッチと会う」「チーム友達」といったヒット曲を立て続けにプレイ。ステージを縦横無尽に動き回って観客を煽り倒した。続いて日本の『SHOW ME THE MONEY』と言っても過言ではない『ラップスタア誕生』で昨年優勝したShowyVICTORが所属するShowyが登場し、「GENZAI」など3曲を歌った。CHARIは『ラップスタア』で活躍したKaneeeもフィーチャー。番組をきっかけに生まれたSTUTSとのナンバー「Canvas」などを歌った。DJ CHARIの最後の客演はMonyHorseだ。日本のヒップホップヒストリーが刻み込まれた「City of Dreams」でがっちりロックした。
DJ CHARI×MonyHorse
ralphはラップとライブのクオリティを愚直に追求することで多くのファンを獲得したアーティストだ。昨年大ヒットした「DOSHABURI」(kZm)や「Get Back」では合唱が巻き起こった。ralphのストイシズムにはいつも痺れさせられる。「POP KILLERS」(C.O.S.A.)や「Selfish」とハードボイルドなヒップホップを見せつけた。
TSUBAKILLがステージに出てくると一気に女性の歓声が増えた。彼女たちは韓国の超人気番組『STREET WOMAN FIGHTER』(通称『スウパ』)に出演するために結成された日本人のダンサーチーム。Akanen、$AYAKA、MIKI、Momo、YUMERI、Renaの6人はそれぞれがトップダンサーとしてキャリアを築いているが、TSUBAKILLとして日本でパフォーマンスするのは意外にも今回が初。XGのMAYAとCOCONAがラップした彼女たちの楽曲「SHOW YOU CAN」、番組内で披露したK-POP Mission(ITZY「Not Shy」、Stray Kids「Maniac」)を大声援の中で踊った。
TSUBAKILL
続くLee Young Jiも主に女性ファンを虜にした。韓国版『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』である『高等ラッパー』優勝者で、韓国の国民的大人気番組『SHOW ME THE MONEY』(通称『ショミド』)初の女性ラッパー優勝者でもある。実力が評価されていると同時にユーモラスなキャラクターも人気で、韓国カルチャー好きに広く愛される存在だ。今年1月に来日公演を成功させたが、今回はファン以外の前でのパフォーマンス。だが頭の回転が速い彼女は、曲の前に片言の日本語、簡単な韓国語と英語でたくさんコミュニケーションを取ってどんどん自分のペースに巻き込み、最後は大勢を笑顔にした。
Lee Young Ji
韓国ヒップホップシーンのレジェンド・Dynamic DuoはDJ Premierがプロデュースした「AEAO」からライブをスタート。人気曲「question mark」(Primary)や、足上げダンスがおなじみの「Fireworks」に加え、TSUBAKILLとLee Young Jiをフィーチャーした、大人気ダンスサバイバル番組『スウパ』発の「Smoke」も実現。さすがのベテランだ。これでもかとぶちあげて、舐達麻にバトンタッチ。
Dynamic Duo× Lee Young Ji
久しぶりのライブとなる舐達麻がこのアッパーな雰囲気の中でどんなパフォーマンスをするかが注目されたが、3人は動じることなく淡々と自分たちの世界観を見せつけた。ダークなライティングの中、「100MILLIONS」を歌うと場内は一気に舐達麻の世界観に覆われた。「LIFE STASH」でパンチライン「たかだか大麻ガタガタ抜かすな」を繰り出した後は、「FLOATIN'」「GOOD DAY」「BUDS MONTAGE」を畳み掛けるようにプレイ。ハードボイルドかつノワールでチルアウト。世界中でここにしかない存在感を見せつけた。あまりに強烈なライブで、終わった後も場内は騒然としていた。
舐達麻
韓国人ラッパー、ph-1は人気曲「ROSETTA」からライブをスタートして徐々に熱量を高めていった。前半は「Malibu」「ZOMBIES」「TIPSY」とメロウなナンバーを歌い、ミッドテンポのスタイリッシュなEDM「Cupid」ではイントロが鳴ると大きな声が上がった。歌とラップの混ざり方が絶妙だ。メロディの耳触りの良さとリズムの気持ち良さを同時に体感できる。かと思えば「U TELL ME」、『ショミド』発の人気曲「Achoo」(Miranni)、「Orange」ではさまざまなフロウのラップも聴かせる。いかに多才なミュージシャンかがよくわかる。コール&レスポンスで盛り上げまくった「Iffy」ではステージを降りて、最前の観客たちとハイタッチして回った。ラストはメロウな「Good Day」で素晴らしいショウを締め括った。
ph-1
さまざまな個性が融合した『GO-AheadZ』のトリを引き受けた¥ellow Bucksのライブは最初からトップスピード。大ヒット曲「Higher Remix」から始まり、「In Da Club」でぶちあげる。「今日は韓国と日本のアーティストがここに来てるってことだろ? みんなエイジアン・フローを持ってるんだよな」とフェスの趣旨を意識したMCから「Asian Flow」(TEE)をキメる。名古屋の先輩・AK-69との楽曲「Way Up」、ゲストのeydenを招いた「HOT BOYZ」と休む間もなく次々とダンストラックを繰り出していく。休む間もなく次々とダンストラックを繰り出していく。ジャージークラブの「What?」、代表曲「Yessir」で大合唱となり、「Aesthetics」「We Know It」まで畳み掛けるようにラップしたところでようやく自己紹介のMCに入る。
「¥ellow Bucksです。幕張調子はどうっすか? ここまではアゲてきたから次はゆっくりチルにいこう。俺の大好きな曲。知らなくてもいいから、気持ちいいトラックで揺れてってほしい」と言って、メロウなウェッサイチューン「Remember」を届ける。ライブの展開は変わるが、観客のテンションは落とさない。そのためのコミュニケーション。だから¥ellow Bucksのライブでは誰も置いてけぼりにならない。横揺れのセクシーな楽曲のあとは「俺には都合の良い女の子がいるんですけど、次の曲はその子のために書いた曲です」と悪い男の複雑な心境を歌った「Insurance」。¥ellow Bucksの大きな特徴のひとつは色気だ。ステージで圧倒的に映える華がある。しっとりとしたグルーヴの後はJP THE WAVYのド派手なヒット曲「WAVEBODY REMIX」。フックの「くだらない大人のTalkシカト/前髪より気にしろ足元/仲間たちと遊ぶの仕事/こんな奴らいないな絶対どこも」というボースティングが¥ellow Bucks とJP THE WAVY にはよく似合う。曲間なく2人で「GIOTF」へ突入。フックの「Get It on the floor」は縦乗りで合唱した。
¥ellow Bucks×JP THE WAVY
「俺ら名古屋から来てるんですけど、地元のパイセン連れてきてるから」と話すと大歓声が起こった。LEDビジョンにレジェンド・TOKONA-Xが映し出されて「WHO ARE U? 2022」(DJ RYOW)がスタート。TOKONA-Xのヴァースは当然大合唱だ。自分のヴァースをぶちかましたあとは、AK-69のトラップ「Bussin'」へ。この流れが成立するのは名古屋のヒップホップDNAを受け継いだ¥ellow Bucksだけ。文字通りのヤングトウカイテイオーだ。「Wow Wow Wow」のリリックは¥ellow Bucksの音楽に対する真摯な姿勢が表れている。特に「みんなが勘違いしてる成功を/たしかに調子は良い/それでもわからねえ成功法/隣が綺麗に見える理由は隣だから/実際どのみち行けどもガッタガタのクソ凸凹」というラインにはさまざまなものを背負っている彼にしか言えない重みを感じさせた。
人気曲「Balls Out」ではMIYACHIとShurkn Papが登場。幕張メッセの大舞台にばっちりハマるスケール感のある楽曲だ。Shurkn Papとはスタイリッシュなアフロビーツ「Oasis」も歌い、その流れのまま「Jamming」(AK-69&¥ellow Bucks)も届けた。「次は名古屋の街に書いた歌を歌わせてもらっていいっすか? みんないろんな街に住んでると思うけど、“自分(という存在)”は環境とか、相手がいて作り上げられるから。俺は名古屋の街に作り上げられたけど、みんなにもそういう街があると思う。そういう気持ちで聴いてくれよ」と言って「You Made Me」を歌う。そして「今いろんな街のやつがいるって言ったけど、ここで“Link Up”しようぜ」と話し、Awichとの名曲「Link Up」を歌った。最後は「My Resort」。約1時間に及ぶ完璧な大トリのステージだった。
¥ellow Bucks
『GO-AheadZ』には日本と韓国のさまざまなアーティストが出演した。全アクトを観て感じたのは、大トリの¥ellow Bucksが歌ったAwichの名曲「Link Up」のフック「いらない壁は砕け散った THANKS TO HIP HOP」につきる。良い音楽しかなかった。日本だけ、韓国だけのラインナップでは得られない感動だった。まさに「Link Up」の¥ellow Bucksによる「夜の街でFucked upしてLink up/んででっかく繋がってくEast side to da west side」な感覚だ。多くの人にとって新しい体験だっただろう。それを言語化するならヒップホップの重要な精神のひとつであるユニティではないだろうか。ぜひこれからもこういった感動を浴びたいと感じた2日間だった。
文=宮崎敬太 撮影=藤田陽介、小林一真
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