次世代ロックシーンの旗手「NOISEMAKER」新曲リリースに伴い、彼らの楽曲の世界観などに食い込むロングインタビュー
NOISEMAKER
若手ロックバンドの中でも、次世代を担うアーティストを取り上げるというSPICEの今年のテーマの元、昨年中も多くの音楽フェスに出演したり、数々のバンドとの共演を果たし、その圧倒的なステージングなどで、その名を知られてきた「NOISEMAKER」。
彼らが今年に入り、シングル「Butterfly」をリリースするということで、この新しいサウンドと共に、これからの「NOISEMAKER」の展望や、今回のリリースにかける思いを直撃インタビューで取り上げる。
──1月19日にシングル「Butterfly」をリリースされますが、曲としてはいつ頃に作ったものなんですか?
HIDE:一年前ぐらいに作って、一年越しで完成した感じですね。壮大な曲、大きなステージに合う曲が作りたいと思って何曲か書いていてたんですけど、1年経って唯一飽きなかった曲なんですよ。飽きなかったっていうことは良い曲なんだっていう確信があったので、そこからリードになるぐらいまで磨いていった感じです。
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──ちなみにですけど、作っていたのは冬頃?
HIDE:いや、夏です。
AG:冬っぽい感じします?
──特にイントロのギターから感じたんですけど、全体的に感傷的な雰囲気が強いので、もしかしたらそうなのかなって。
AG:(HIDEの性格が)冷たいんじゃないの?(笑)
YU-KI:でもなんか、(地元の)北海道っぽいのかな。寒い地域の感じ。
AG:なんか、じと〜っとしてんのかもね(笑)。
一同:(笑)
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──UTAさんは「Butterfly」を最初に聴いたときはどんな印象がありました?
UTA:デモの段階からいつもと違うなっていう感じはあって。いつもみたいな8ビートで速い曲じゃなくて、かと言ってバラードまではいかないんだけどミドルテンポにしては遅いし、なんだこの感じは?って。
AG:中途半端だなって?(笑)
UTA:いや、そういうわけではないんだけど(笑)。でも正直、最初はそこまでいいなとは思ってなかったんですよ。だけど出来ていくにつれて、これきたんじゃね?って。
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──YU-KIさんは聴いたときの印象というと?
YU-KI:最初のギターのリフが印象的で、自分たちでは“宇宙な感じ”って言ってたんですけど、そういう雰囲気を受けましたね。なんか、隕石が降ってる感じっていうか(笑)。彼(HIDE)が作る曲って、一貫して映像が見えるんですよ。そういう情景が見えた印象でした。だから“広い”感じですね。イメージとしては。
HIDE:この曲の仮タイトルは「宇宙」だったんですよ。
AG:「Butterfly」だって言ってるのに、みんな“「宇宙」がさぁ”とか言ってて。
UTA:(タイトルがそのまま「宇宙」だったら)逆に一番パンチあるかも(笑)。
──今までタイトル全部英語だったのに、急に日本語ですからね(笑)。AGさんはどんなものを感じました?
AG:なんか得体の知れないすごい力がありましたね。ロックバンドって、太い弦を使って、ヘヴィチューニングでガツンとこさせることって多いと思うんですけど、それとは逆の方向っていうか。音色とか雰囲気で胸を掴む感じがあるんだけど、でも破壊力や厚みもあって。
──こういう雰囲気の楽曲をシングルのA面にしてくるバンドって、最近そんなにいないんじゃないかなとも思ったんですが。
AG:あぁ、確かに。結構勇気がいると思うんですよね、これをやるのって。俺らもそうだったし。
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──そうだったんですね。
AG:こういう曲をやりにくいっていう現状もあると思うんですよ、日本っていう国では。やっぱりアップテンポなものだったり、リード曲のサビってこういうものだよねっていう、わかりきった展開を求められがちだから。
──アップテンポでノれるとか、ツーステップが踏めるとか。
AG:あとは激しくてめっちゃ暴れられるとか、モッシュできるとか。特にこういうジャンルに関しては、そういうものがリードに求められるんだけど。だから、ぶっちゃけ日本のキッズに刺さるのか?っていうのはあるんだけど、自分たちが本当にいいと思うものを伝えていかなきゃいけないし、もし伝わりづらかったとしても、それがいいものなんだって広めていきたいし。
──そういう意志を込めた挑戦的な楽曲であると。
AG:そうですね。でも、ファンとかキッズもそんなにバカじゃないと思うんですよ。なめてたらダメだと思うんで。彼らもいろんな音楽を聴いているだろうし、バンドが何を考えているかもわかると思うんですよね。だから「Butterfly」は挑戦でもあるんだけど、もしかしたらわかってくれてるんじゃないかなっていう気持ちもあります。意外とこういうものも求められているんじゃないかなとも思うし。
──ファンやキッズを信頼しているから出せるところも?
AG:うん。そこも少なからずありますね。型にはまったものをぶち壊したいっていう気持ちももちろんあるんだけど。
──歌詞はどういうところから出てきたんですか?
AG:今の自分が歌えることと言ったら、やっぱり北海道から出てきたっていう状況だなと思って。それが曲の雰囲気とすごくマッチしてるなと思って書いたんですけど、今回の歌詞って、2曲とも地元に対してのことを歌ってるんですよ。離れて気付くことがあったり、結局失ってしまうものもあったりするんだけど、そういうのって俺たちだけじゃなくていろんな人が経験していると思うので、そういう人たちに向かって歌っている曲っていうか。
──でも、それがなぜ「Butterfly」だったんです?
AG:蝶の標本をイメージしたんですけど、標本ってガラスのケースがあって、そこにピンで刺されているけど、そのピンは自分たちを縛るものであったり、出来ないと思っているものへの言い訳だったりで。俺らは地元が北海道だから、海を渡らないと本州に行けないんだけど、そこに対してハードルが高いことを感じていて。単純にお金もすごくかかるし、いろんなリスクがあるんだけど、それでもそういうケースの中から飛び立って、自分が停まる枝を見つけるんだっていう。それでもやっぱり、自分たちの時間にはすごく限りがあるわけで。自分の家族とか地元の友達とか、すごく当たり前だった存在の人たちがいるけど、その人たちと自分が死ぬまでに会える回数って、もしかしたらもう数えられるぐらいしかないかもしれないんですよね。なんかそれってすごいことだなと思って。そういう状況なんだから、やるからにはおもいっきり飛ばなきゃいけないなっていう歌です。
──そのままカップリング曲の「Point of Origin」の歌詞についてもお訊きしようと思うんですが、タイトルは発生地点という意味ですね。
AG:これは「NO MATTER BOARD」っていう、スノーボードとか横乗り系のスポーツをやってる番組がありまして。デカいイベントとかもやってるんですけど。
──1月23日にZepp Sapporoで行なわれるイベント(「NO MATTER LIVE」)に出演されますよね。
AG:そうです。その番組のオープニング曲をやらないか?っていう話になって、じゃあイチから作ろうってなったんですけど、「NO MATTER~」で何を歌うかとなったら……やっぱり自分たちは地元のストリートから始まったんですけど、地元の人たちの声が俺達の灯台になっていて、導いてくれているんですよね。だからこそ、次は俺らがみんなを導く声になるんだっていうメッセージを込めました。地元に対してアンサーソングっていうか。
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──となると、2曲共に決意が根底にあるんですね。曲はどういうところから作り始めたんですか?
HIDE:最初は違う曲をやろうとしてたんですよ。でも、去年の夏にサマソニに出たときに、とあるバンドを観て刺激を受けて、予定していた曲を全部やめて書いたのがこの曲ですね。
YU-KI:「NO MATTER~」のオープニング曲っていうのもあって、これはスノボーっぽいなとか、そうじゃないなとかって決めてたんですけど。で、この曲が出来たからこれにするねってデモを聴いたときに、雪山やん!って(笑)。なんか、俺的にAメロのハットの刻みは、結構風が強い日に滑ってて、雪が顔に当たってくる感じっていうか。
AG:辛い曲だな(笑)。
UTA:そのハットを刻んでるときの僕の顔を観てもらいたいですよ。ほんとにすごいつらそうな顔してるんで。もう視界真っ白のところで叩いてるような感じ。
──ホワイトアウト状態だと(笑)。それこそビートがおもしろい曲ですよね。
HIDE:ヒップホップとかエレクトロも普段聴くんで、ロック!っていうよりは、オルタナティブな感じっていうか。「このジャンルって何なんだろう?=オルタナティブ」っていうのが自分の中にあるんですけど、そういういろんな要素が入っている曲になってます。
──もう1曲は「NEO remix」。昨年リリースされたアルバム『NEO』に収録されている「Hades and Tails」のフレーズが印象的だったんですが、なぜまたリミックスを?
HIDE:CDを出すにあたって、CDとして出す価値みたいなものをすごく気にしていて。曲は多ければ多いほうがいいと思っているんで、本当はもう1曲書きたかったんですけど、なかなか難しかったんですよ。それでアコースティックバージョンとかいろんな候補があったんだけど、最終的に行き着いたのがリミックスで。最初は『NEO』のいろんな曲を入れようとしてたんですけど、コードの音階が少ない「Hades and Tails」が一番作りやすくて。それで集めていたサンプルとかをいろいろ組み替えたりして、楽しくできましたね。
──リミックスってやってみたいものでもありました?
HIDE:趣味でたまにSEとか作ったりしてたんですよ。普段からそういう音楽も聴くし、ロックギタリストだからっていうわけじゃなく、こういうこともやってみたいなって思ったものを純粋に作ってみたもののひとつですね。
──そして、本作の発売日には代官山UNITで『TOWER RECORDS presents TWINTOWER』が開催されます。これは3ヶ月連続ツーマン形式で行なわれるイベントになっていますが、#001にはavengers in sci-fi、2月18日の#002にはHello Sleepwalkersが出演することになっていて(#003の出演者は後日発表)。
AG:それこそフェスでしか出会わないようなバンドとやってみたいなっていうのがあって。やっぱり広げて行きたいんですよ。自分たちの音楽を、毛嫌いではないしろ、食わず嫌いをしている人たちは絶対いると思うんで。お互いのファンが新しいものに触れて、混ざるキッカケになるんじゃないかなっていう。なんか、洋楽嗜好の人も邦楽嗜好の人も、両方混ざったら面白いのになっていうところから始める3本のライヴです。
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──その信念はすごく一貫されてますよね。垣根なく自分たちの音楽を届けたいというところは。
AG:そうですね。去年からフェスにもちょっとずつ出させてもらってきていて、まだガン!っていう実感があるわけではないですけど、手応えは少しずつあって。このシングルを出して、3本のライヴをやって、今年の活動もいろいろもう決まっているんですけど、それを終えたときにどれぐらいのレスポンスが返ってくるのかっていう。そのときに初めて実感が沸くのかなって思います。
──それをふまえ、2016年はどんな年にしたいですか?
YU-KI:『Butterfly』は、今までの俺たちらしさを残しつつ、ちょっと違う毛色のものになっていて。それが今まで聴いていた人たちに新鮮に届いてほしいし、『TWINTOWER』では「Butterfly」を入り口で観てもらって、NOISEMAKERいいじゃんって思ってもらえるような、“はじめまして精神”で2016年はやりたいなと思ってます。
UTA:2015年はフェスに恵まれた年だったんですけど、今年はそれ以上にライヴの本数も増やして、行ったところがない場所にも行って、まだ呼ばれていないフェスにも出たいですね。今年出たフェスでも、もうワンランク上のステージにいきたいなって思ってます。
HIDE:いろんなことにチャレンジして、今想像していることを具現化できるようにしていきたいです。結構細かいところまで気になるんですよ。CDのジャケットひとつとっても、さっきも言った通り、作るからにはちゃんと価値を見出したいので。
──作品を出すときに、どこかが手落ちになると刺さるものも刺さりにくくなったりしますもんね。
HIDE:そうですね。たとえば言葉ひとつとっても、「Butterfly」みたいな曲もやったりしているのに、“めっちゃヘヴィ”みたいな言葉で聴いてくれなかったり、“めっちゃポップ”って言われてるのに、なんでこんなに音が歪んでんの?とか。そういう言葉ひとつとっても見え方が違ってくるので、そういう細かいところとかもいろいろ考えて追求していく1年にしたいですね。
──AGさんはいかがですか?
AG:2016年はやれることは全部やろうと思ってます。躊躇してる暇ないなって。思いついて出来ることは何でもトライして、貪欲にチャレンジしていこうと思います。
──今年よりもより動く1年になりそうですね。
AG:そうですね。アグレッシブに行きたい。ライヴでもっとこうしたいっていうところもあるし、『TWINTOWER』みたいなライヴを自分たち発信でもっとやっていきたいし。おもしろいアイデアを考えつく限り考えて、それを実現していきたいです。
撮影=秤谷建一郎 インタビュー=山口哲生
<リリース情報>
2016年第1弾シングル「Butterfly」
TWIN TOWER
TOWER RECORDS presents TWINTOWER #001